弁護士 岸上大起

補助金の減額確定

確定検査での減額、受け入れる前に

このページの結論

交付決定のときに認められた経費を、確定検査の段階で「対象外」に変えることは、許されないと解されます。

その減額には、応じなくてよい可能性があります。減額した内容で実績報告を出し直す前に――そして、既に減額されてしまった後でも――できることがあります。

こんな状況ではありませんか

  • 実績報告を出したら、「この経費は補助対象外」「汎用性があるから対象外」と言われた
  • 指摘された経費を除いた内容で実績報告を出し直すよう促されている・「このままでは減額して確定することになる」と言われている
  • 確定検査の結果、交付決定よりずっと少ない金額で確定された。差額は「出せません」と言われた
  • 認定支援機関の先生に相談したら、「おかしいとは思うけど、事務局が言うなら仕方ない」と言われた

ひとつでも当てはまるなら、このページはあなたのために書いています。その指摘は、法律のルールからずれている可能性があります。

何がおかしいのか

あなたが言われていること

「この経費は補助対象外と判断されました。該当部分を除外して実績報告を出し直してください。」

しかし、法律のルールは

確定検査は、交付決定の内容どおりに実施・支出されたかを照合する「答え合わせ」の手続。交付決定で認めた経費を、あとから採点し直す場ではありません。

大津地判平成9年12月8日/補助金適正化法15条

つまり、交付決定の時点で「補助対象」と認めたものを、お金を払う直前になって「やっぱり対象外」と言うこと自体が、確定という手続の役割を超えているのです。あなたが交付決定の内容どおりに事業を行い、支出したのであれば、減額される理由はないはずです。

なぜ「争える」といえるのか

1

確定検査は「答え合わせ」にすぎません

裁判所は、確定について「交付決定の存在を前提にしており、実績報告書に基づいて客観的に行なわれることを予定しているため、確定手続で(交付決定権者の)裁量権を行使することも許されない」と述べています。確定の場で経費の適格性を審査し直すことは、この判示に真っ向から反します。

大津地判平成9年12月8日(引用は小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕』232頁による)

2

「汎用性がある」は、後出しできません

そのシステムや設備に汎用性があることは、交付決定のときから分かっていたことです。それを承知で補助対象として交付決定した以上、確定の段階で持ち出して「対象外」とする理由にはなりません。
3

減額確定は、裁判で取り消すことができます

減額確定は行政処分であり、取消訴訟という正面から争う手段が法律上用意されています。取り消されれば、交付決定額どおりの補助金を受け取れる可能性があります。「決まってしまったから終わり」ではありません。

小滝・前掲230頁、233頁(「これに不服があれば抗告訴訟を提起しうることはいうまでもない」)

詳しい法的整理を読む(判例・文献の引用)

本来の「減額確定」とは

補助金適正化法15条の確定処分には、額の確定、減額確定、額の変更を伴わない確定の3つの態様があるとされ、「減額確定」とは、本来、補助事業の実支出額が交付決定ベースの事業費を下回る場合をいいます。交付決定で内装工事費1,000万円とされていたところ実際は900万円で済んだ場合に、実支出額の900万円で確定する――事業者自身の支出額に基づく精算にすぎず、経費の適格性を事後審査する手続ではありません。

実際に行われている処理の流れ

中小機構はこれを適正化法15条に基づく通常の精算手続と位置づけていますが、実質は、確定の枠を借りた交付決定の一部取消しです。交付決定の一部取消しであれば、本来、適正化法17条1項所定の取消事由(3類型)への該当と、理由提示(行政手続法14条1項)等の手続が必要です。

大津地判平成9年12月8日の判示

同判決(園城寺補助金確定取消行政訴訟)は、確定を「交付決定の内容たる事業費と実績事業費とが符合するか否かを調査確認の上、国が最終的に交付すべき補助金等の金額に変更を加えるか否かを判断し、この額を定める清算的手続行為である」とした上で、「確定は、交付決定の存在を前提にしており、また、実績報告書に基づいて客観的に行なわれることを予定しているため、交付決定権者の裁量権を侵害するような確定を為し得ないことはもちろん、確定手続で右裁量権を行使することも許されない」と判示しています。

実際に寄せられたご質問から

ご質問(要旨・一部改変)

事業再構築補助金で1,500万円の採択を受けましたが、確定検査で「システム費用に汎用性があるから対象外」とされ、680万円の返還を求められました。交付決定のときは対象経費として通っていたものです。認定支援機関の先生も「おかしいとは思うが仕方ない」という反応で、既に返還してしまいました。今からできることはありますか。

回答(要旨)

できることはあります。減額確定の取消訴訟の検討です。出訴期間(行政事件訴訟法14条)のハードルはありますが、事案によっては期間徒過の「正当な理由」が認められ得ると考えています。システムに汎用性があることは交付決定の時点で分かっていたことですから、それを理由に確定段階で対象外とすることは当然にはできません。減額確定が取り消されれば、交付決定額と同額の補助金を受け取れる可能性は十分にあると考えられます。

※ 実際のやり取りを一般化・匿名化して掲載しています。結論は個別の事案の内容(交付決定・実績報告の内容等)によって異なります。

あなたが今できること

まだ確定前なら――出し直しに応じない

減額した内容での実績報告の出し直しは、急いで応じるべきではありません。まず、その指摘が法律上の取消事由(適正化法17条1項の3類型)のどれに当たるのかを、相手に確認しましょう。明確に答えられないなら、そもそも減額の根拠がない可能性が高いといえます。

確定されてしまったなら――6か月以内に動く

減額確定は取消訴訟で争えます。ただし、原則として処分を知った日から6か月という出訴期間があります(行政事件訴訟法14条)。確定通知が届いた日を確認して、早めにご相談ください。

返してしまったなら――取り戻せる場合があります

取消訴訟に勝訴すれば、返還したお金は法律上の原因を欠く「不当利得」となり、返還を請求できる場合があります。返した後でも、諦める必要はありません。

減額確定のご相談

交付決定通知書と実績報告の控えがあれば、その場で具体的な検討ができます。

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