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弁護士 岸上大起

補助金に関する紛争・法律問題

返還を求められた。振り込まれない。減額された。――そのまま応じる前に、ご覧ください。

「補助金を返してください」「現在審査中です。お待ちください」「今なら残存簿価の返納だけで済みます」――中小機構や事務局からのそうした言葉に、そのまま従う前に、知っておいてほしいことがあります。

交付決定された補助金は、法律上、容易に取り消したり、減額したり、返還させたりできるものではありません。実際に届く通知や打診には、法律のルールからずれているものが少なくないと考えています。そして、そのずれは、争うことができます。

まず、いま起きていることに近い状況を選んでください。各ページの冒頭に、そのお悩みへの「結論」を書いています。

本ページの記載は一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。具体的な対応は、交付決定通知書等の資料に基づく個別の検討が必要です。

いま、どのような状況ですか?

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いずれも、正式な処分・通知の前の「言われている」段階からご相談いただけます(むしろその段階が、最も選択肢の多い段階です)。どれに当たるか分からない場合も、そのままご相談ください。お問い合わせはこちら →

手続のどの段階か――お手元の状況から

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お手元の交付決定通知書で、「争い方」が分かります

補助金は法的性質により2つに分かれ、争い方が根本から異なります。見分けるポイントは、交付決定通知書の主語です。

主語が
「中小機構は」
行政処分型 ── 取消訴訟(行政訴訟)で争えます
  • 事業再構築補助金
  • 新事業進出補助金
  • 新事業進出・ものづくり補助金
  • 中小企業省力化投資補助金
主語が
「事務局は」
負担付贈与契約型 ── 契約上の債務の有無を民事で争います
  • IT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)
  • ものづくり補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

※ どちらの型でも、取消し・返還請求が容易に認められるものではない点は共通です。

このサイトが扱う補助金——国・中小機構の補助金と、自治体の補助金の違い

ひとくちに「補助金」といっても、根拠となる法令も、手続の定め方も異なるものが混じっています。このサイトの解説がそのまま当てはまるかどうかは、お手元の補助金が次の3つのどれに当たるかで変わります。

1. 国が交付する補助金(補助金適正化法の「補助金等」)と、中小機構が交付する助成金

補助金適正化法が「補助金等」と呼んでいるのは、国が国以外の者に対して交付する補助金・負担金・利子補給金等です(同法2条1項)。このサイトで取り上げている交付決定の取消し(17条1項)や財産の処分制限(22条)は、いずれもこの「補助金等」についての定めです。

中小機構は独立行政法人であって「国」ではありませんので、同機構が交付する事業再構築補助金等は、この定義にそのまま当てはまるものではありません。もっとも、中小機構法16条が、同法15条1項6号等に基づいて同機構が交付する助成金について補助金適正化法を準用し、同法中の「各省各庁の長」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構の理事長」と、「国」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構」と読み替えるものとしています。そのため、取消しも財産の処分制限も、国の補助金と同じ規律が及びます。

2. 自治体が独自の財源で交付する補助金

都道府県・市町村が自らの判断で出す補助金は、地方自治法232条の2(「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」)を根拠とし、申請・交付決定・取消し・返還の手続は、各自治体の補助金交付規則・交付要綱で定められます。

補助金適正化法が直接適用されるものではありませんので、取消しや返還を求められた場合に最初に読むのは、同法の条文ではなく、その自治体の規則・要綱です。

3. 国の補助金を財源として、自治体等が交付する補助金(間接補助金等)

国の補助金を直接又は間接に財源とし、その交付の目的に従って国以外の者が交付する給付金は、補助金適正化法の「間接補助金等」に当たります(同法2条4項1号)。同法は、間接補助事業等を行う者についても、目的に従って事業を行う義務(11条2項)や、報告・立入検査(23条1項)の定めを置いています。

いわゆるグループ補助金(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)のように、申請の窓口も交付要綱も県のものでありながら、財源に国の補助金が入っているものがあります。「自治体が交付するものだから補助金適正化法とは関係がない」と単純に切り分けることはできません。

※ このサイトの各ページは、中小機構が交付する補助金(上の1のとおり、補助金適正化法が中小機構法16条により準用されるもの)と、各補助金の事務局が交付主体となる負担付贈与契約型の補助金を念頭に書いています。自治体が交付主体となる補助金は、根拠となる規則・要綱が自治体ごとに異なるため、ここでの説明がそのまま当てはまるとは限りません。お手元の補助金がどれに当たるかは、交付要綱の財源の定め(国庫補助金が入っているか、自治体の単独財源か)と、交付決定通知書の主語からご確認いただけます。

お手元の書面から探す

事務局・中小機構から届く書面は、名前が似ていても意味が違います。いま手元にある書面がどれかで、確認すべき欄も、次にお読みいただくページも変わります。

交付決定通知書

補助金の交付が決まったことを知らせる書面です。あなたと相手方との「約束」の内容は、この書面と、そこに附された条件で決まります。後から「公募要領に書いてある」と言われたときに、立ち返る先がここです。

真っ先に確認する欄:交付決定をする主語が「中小機構は」か「事務局は」か(争い方が変わります)。附された条件として何が書かれているか。公募要領・交付規程が条件として取り込まれているか。

実地検査の通知・資料の追加提出の求め

補助事業の状況を調べるために、報告や資料の提出を求め、又は事業所等に立ち入って帳簿書類を検査する旨の書面です。交付主体が補助金適正化法23条に基づいて行う立入検査は行政調査であって、犯罪捜査ではありません(同条3項)。求める側の権限にも「必要があるとき」という限定があります。もっとも、検査を拒むことは罰則の対象とされていますので、帳簿書類の提示と事実についての質問には協力したうえでお考えいただくことになります(同法31条3号)。

真っ先に確認する欄:根拠として挙げられているのが補助金適正化法23条1項か、15条か(限度の立て方が違ってきます)。求められている資料の範囲と、提出の期限。

額の確定通知(確定通知書)

実績報告を審査した結果、交付する額を最終的に決めた通知です(補助金適正化法15条)。交付決定額より少ない額で確定されていれば、それが「減額確定」です。

真っ先に確認する欄:交付決定額といくら違うか。減らされた経費と、その理由。通知の日付(取消訴訟の6か月の出訴期間の起算点になり得ます)。

事業化状況報告の提出の求め・未提出の指摘

補助事業の完了後に、事業化の状況について報告を求める書面です。交付規程は、この報告を行わなかった場合を、交付決定の取消し等をすることができる場合の一つとして挙げています(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程22条1項10号)。もっとも、報告をしていないことと、補助事業を続けていないことは、別のことです。

真っ先に確認する欄:求められている報告の年次と、根拠として挙げられている条項。提出の期限。取消しの予告が書かれているか。

取消しの事前通知(意見を述べる機会の通知)

交付決定を取り消す予定である旨を、処分の前に知らせる書面です。まだ取消しはされていません。書面で意見を述べることができる、最初の機会です。

真っ先に確認する欄:どの事実が、補助金適正化法17条1項の3類型(他の用途への使用・補助条件違反・法令違反)のどれに当たるとされているか。意見を述べる期限。

交付決定取消通知書

交付決定を取り消す処分そのものの通知です。中小機構が交付主体の補助金では行政処分に当たり、取消訴訟で争うことができます。

真っ先に確認する欄:根拠条文が補助金適正化法17条1項か、交付規程か。どの事実がどの取消事由に当たるのかが書かれているか(理由提示。同法21条の2)。受け取った日(原則6か月の出訴期間の起算点)。

返還命令・納付の通知(財産処分に伴う納付を含む)

お金を払うよう求める書面です。ここには性質の違う2つが混在します。交付決定の取消しに伴う「返還」命令(補助金適正化法18条1項)と、財産処分の承認(同法22条)の条件として求められる「納付(返納)」です。

真っ先に確認する欄:取消しを前提とする返還なのか、財産処分の承認を前提とする納付なのか。根拠条文。納付の期限。財産処分の承認申請を、いつ・誰の求めで出したことになっているか。

※ 書面の名称は補助金・事務局によって異なります。名称が違っても、主語・根拠条文・日付の3点を確認するという見方は共通です。

取扱分野の全体像(8類型)

問題の全体像を俯瞰したい方は、こちらの分類からご覧ください。

短い答えを探す(Q&A)

「5年たてば自由に処分できるのか」「違反があれば必ず取り消されるのか」といった問いに、2〜3文で答えています。ページの末尾には、通知書に出てくる用語の一覧も置いています。

日々の発信

補助金に関する法的整理や実務の動きは、noteとXでも継続的に発信しています。このサイトの各ページの内容も、それらの発信と実際の対応経験に基づいています。判例・文献に基づく全文解説は、サイト内のコラムにまとめています。

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