補助金に関する紛争・法律問題
返還を求められた。振り込まれない。減額された。――そのまま応じる前に、ご覧ください。
「補助金を返してください」「現在審査中です。お待ちください」「今なら残存簿価の返納だけで済みます」――中小機構や事務局からのそうした言葉に、そのまま従う前に、知っておいてほしいことがあります。
交付決定された補助金は、法律上、容易に取り消したり、減額したり、返還させたりできるものではありません。実際に届く通知や打診には、法律のルールからずれているものが少なくないと考えています。そして、そのずれは、争うことができます。
まず、いま起きていることに近い状況を選んでください。各ページの冒頭に、そのお悩みへの「結論」を書いています。
本ページの記載は一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。具体的な対応は、交付決定通知書等の資料に基づく個別の検討が必要です。
いま、どのような状況ですか?
最も近い状況を選ぶと、対応する解説ページに移動します。
- 「「交付決定を取り消す」と言われている・取消通知が届いた」取り消せる理由は、法律上3つだけです。処分前なら選択肢はさらに多い。01交付決定の取消し・返還請求→
- 「交付決定が出たのに、補助金が振り込まれない」受け取る権利は、交付決定の時点で発生しています。02交付遅延→
- 「「対象外」として減額すると言われている・減額された」確定検査は「答え合わせ」。後出しの否認は許されないと解されます。03減額確定→
- 「「残存簿価の返納で済ませる」と言われている」前提の「目的外使用」が無ければ、応じる義務はありません。04自主返納の求め→
- 「「既存事業にも使うのは目的外」と指摘された」補助事業に使っている限り、原則「目的外」ではありません。05既存事業との併用→
- 「廃業・設備の廃棄を考えている(求められている)」廃業=廃棄ではなく、廃棄も直ちに違反ではありません。06廃棄処分→
- 「補助事業を続けられない。事業ごと手放したい」事業譲渡で、返還せずに継続義務から解放される道があります。07事業譲渡→
- 「IT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)・ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金で返還を求められている」FAQは契約書ではありません。契約にない義務は負っていません。08負担付贈与契約型補助金のトラブル→
いずれも、正式な処分・通知の前の「言われている」段階からご相談いただけます(むしろその段階が、最も選択肢の多い段階です)。どれに当たるか分からない場合も、そのままご相談ください。お問い合わせはこちら →
手続のどの段階か――お手元の状況から
まだ処分はされていないが、資料・報告・検査を求められている
取消通知・返還命令・納付の求めが届いた
期間の制限(出訴期間・時効・取消しの時期)
士業・支援機関・お取引先企業の方へ——顧問先・支援先・販売先に関するご相談・ご紹介も受け付けています。
連携のご案内 →お手元の交付決定通知書で、「争い方」が分かります
補助金は法的性質により2つに分かれ、争い方が根本から異なります。見分けるポイントは、交付決定通知書の主語です。
- 事業再構築補助金
- 新事業進出補助金
- 新事業進出・ものづくり補助金
- 中小企業省力化投資補助金
- IT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
※ どちらの型でも、取消し・返還請求が容易に認められるものではない点は共通です。
このサイトが扱う補助金——国・中小機構の補助金と、自治体の補助金の違い
ひとくちに「補助金」といっても、根拠となる法令も、手続の定め方も異なるものが混じっています。このサイトの解説がそのまま当てはまるかどうかは、お手元の補助金が次の3つのどれに当たるかで変わります。
1. 国が交付する補助金(補助金適正化法の「補助金等」)と、中小機構が交付する助成金
補助金適正化法が「補助金等」と呼んでいるのは、国が国以外の者に対して交付する補助金・負担金・利子補給金等です(同法2条1項)。このサイトで取り上げている交付決定の取消し(17条1項)や財産の処分制限(22条)は、いずれもこの「補助金等」についての定めです。
中小機構は独立行政法人であって「国」ではありませんので、同機構が交付する事業再構築補助金等は、この定義にそのまま当てはまるものではありません。もっとも、中小機構法16条が、同法15条1項6号等に基づいて同機構が交付する助成金について補助金適正化法を準用し、同法中の「各省各庁の長」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構の理事長」と、「国」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構」と読み替えるものとしています。そのため、取消しも財産の処分制限も、国の補助金と同じ規律が及びます。
2. 自治体が独自の財源で交付する補助金
都道府県・市町村が自らの判断で出す補助金は、地方自治法232条の2(「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」)を根拠とし、申請・交付決定・取消し・返還の手続は、各自治体の補助金交付規則・交付要綱で定められます。
補助金適正化法が直接適用されるものではありませんので、取消しや返還を求められた場合に最初に読むのは、同法の条文ではなく、その自治体の規則・要綱です。
3. 国の補助金を財源として、自治体等が交付する補助金(間接補助金等)
国の補助金を直接又は間接に財源とし、その交付の目的に従って国以外の者が交付する給付金は、補助金適正化法の「間接補助金等」に当たります(同法2条4項1号)。同法は、間接補助事業等を行う者についても、目的に従って事業を行う義務(11条2項)や、報告・立入検査(23条1項)の定めを置いています。
いわゆるグループ補助金(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)のように、申請の窓口も交付要綱も県のものでありながら、財源に国の補助金が入っているものがあります。「自治体が交付するものだから補助金適正化法とは関係がない」と単純に切り分けることはできません。
※ このサイトの各ページは、中小機構が交付する補助金(上の1のとおり、補助金適正化法が中小機構法16条により準用されるもの)と、各補助金の事務局が交付主体となる負担付贈与契約型の補助金を念頭に書いています。自治体が交付主体となる補助金は、根拠となる規則・要綱が自治体ごとに異なるため、ここでの説明がそのまま当てはまるとは限りません。お手元の補助金がどれに当たるかは、交付要綱の財源の定め(国庫補助金が入っているか、自治体の単独財源か)と、交付決定通知書の主語からご確認いただけます。
お手元の書面から探す
事務局・中小機構から届く書面は、名前が似ていても意味が違います。いま手元にある書面がどれかで、確認すべき欄も、次にお読みいただくページも変わります。
交付決定通知書
補助金の交付が決まったことを知らせる書面です。あなたと相手方との「約束」の内容は、この書面と、そこに附された条件で決まります。後から「公募要領に書いてある」と言われたときに、立ち返る先がここです。
真っ先に確認する欄:交付決定をする主語が「中小機構は」か「事務局は」か(争い方が変わります)。附された条件として何が書かれているか。公募要領・交付規程が条件として取り込まれているか。
実地検査の通知・資料の追加提出の求め
補助事業の状況を調べるために、報告や資料の提出を求め、又は事業所等に立ち入って帳簿書類を検査する旨の書面です。交付主体が補助金適正化法23条に基づいて行う立入検査は行政調査であって、犯罪捜査ではありません(同条3項)。求める側の権限にも「必要があるとき」という限定があります。もっとも、検査を拒むことは罰則の対象とされていますので、帳簿書類の提示と事実についての質問には協力したうえでお考えいただくことになります(同法31条3号)。
真っ先に確認する欄:根拠として挙げられているのが補助金適正化法23条1項か、15条か(限度の立て方が違ってきます)。求められている資料の範囲と、提出の期限。
額の確定通知(確定通知書)
実績報告を審査した結果、交付する額を最終的に決めた通知です(補助金適正化法15条)。交付決定額より少ない額で確定されていれば、それが「減額確定」です。
真っ先に確認する欄:交付決定額といくら違うか。減らされた経費と、その理由。通知の日付(取消訴訟の6か月の出訴期間の起算点になり得ます)。
事業化状況報告の提出の求め・未提出の指摘
補助事業の完了後に、事業化の状況について報告を求める書面です。交付規程は、この報告を行わなかった場合を、交付決定の取消し等をすることができる場合の一つとして挙げています(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程22条1項10号)。もっとも、報告をしていないことと、補助事業を続けていないことは、別のことです。
真っ先に確認する欄:求められている報告の年次と、根拠として挙げられている条項。提出の期限。取消しの予告が書かれているか。
取消しの事前通知(意見を述べる機会の通知)
交付決定を取り消す予定である旨を、処分の前に知らせる書面です。まだ取消しはされていません。書面で意見を述べることができる、最初の機会です。
真っ先に確認する欄:どの事実が、補助金適正化法17条1項の3類型(他の用途への使用・補助条件違反・法令違反)のどれに当たるとされているか。意見を述べる期限。
交付決定取消通知書
交付決定を取り消す処分そのものの通知です。中小機構が交付主体の補助金では行政処分に当たり、取消訴訟で争うことができます。
真っ先に確認する欄:根拠条文が補助金適正化法17条1項か、交付規程か。どの事実がどの取消事由に当たるのかが書かれているか(理由提示。同法21条の2)。受け取った日(原則6か月の出訴期間の起算点)。
返還命令・納付の通知(財産処分に伴う納付を含む)
お金を払うよう求める書面です。ここには性質の違う2つが混在します。交付決定の取消しに伴う「返還」命令(補助金適正化法18条1項)と、財産処分の承認(同法22条)の条件として求められる「納付(返納)」です。
真っ先に確認する欄:取消しを前提とする返還なのか、財産処分の承認を前提とする納付なのか。根拠条文。納付の期限。財産処分の承認申請を、いつ・誰の求めで出したことになっているか。
※ 書面の名称は補助金・事務局によって異なります。名称が違っても、主語・根拠条文・日付の3点を確認するという見方は共通です。
取扱分野の全体像(8類型)
問題の全体像を俯瞰したい方は、こちらの分類からご覧ください。
中小機構から取消し・返還・減額・返納を求められた/支払われない
交付決定の取消し・返還請求
中小機構等から交付決定の取消通知・返還請求書を受領した場合の対応です。補助金適正化法17条1項所定の3類型該当性、理由提示の適法性、比例原則違反等を検討し、必要に応じて取消訴訟(行政事件訴訟)を提起します。
詳しく見る →02交付遅延
交付決定後、補助金の交付(支払)が遅延している場合の対応です。中小機構本体(理事長宛)への内容証明による督促、実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法4条後段)による給付請求、国家賠償請求等を検討します。
詳しく見る →03減額確定
補助金適正化法15条の確定処分により不当な減額を受けた場合の対応です。確定処分は実績報告と交付決定の客観的照合にすぎず(大津地判平成9年12月8日)、減額確定の取消訴訟により争うことができます。
詳しく見る →04自主返納の求め
「全額返還だが残存簿価で済ませる」等の自主返納の打診への対応です。取消事由に該当しない場合は応じる法的義務がないことを踏まえ、中小機構・事務局との交渉対応を行います。
詳しく見る →補助金で取得した財産の使い方・処分・出口に悩んでいる
既存事業との併用
補助金で取得した財産を既存事業にも使用していることを理由とした取消し・返還請求への対応です。原則として補助金適正化法17条1項所定の取消事由3類型のいずれにも該当しないものと考えられます(最三令和3年3月2日調査官解説)。
詳しく見る →06廃棄処分
補助金で取得した財産の廃棄処分に関する問題への対応です。補助金適正化法22条が列挙する制限類型に「廃棄」は含まれていません(東京地判平成2年1月30日)が、最三令和3年3月2日の調査官解説の動向にも留意しつつ対応します。
詳しく見る →07事業譲渡
補助金で取得した財産を含む事業譲渡の問題への対応です。適正化法22条の「交付目的に反して」との要件を踏まえ、事業継続性を確保した事業譲渡スキーム(交付規程26条1項の届出制を含む)をご提案します。
詳しく見る →IT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)・ものづくり補助金等で返還を求められた
短い答えを探す(Q&A)
「5年たてば自由に処分できるのか」「違反があれば必ず取り消されるのか」といった問いに、2〜3文で答えています。ページの末尾には、通知書に出てくる用語の一覧も置いています。
- 事業再構築補助金は5年たてば自由に処分できるのか →
- 補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか →
- 補助金の交付申請が却下された。争うことはできるのか →
- 借りている土地・店舗に補助金で設備や内装を付けた。退去するときどうなるのか →
- 補助金の「目的外使用」とは何か →
- 補助事業を事業譲渡したら、補助金の返還や罰則の対象になるのか →
- 賃上げできなかったら、交付決定の取消し・補助金の返還になるのか →
- 補助金の「減額」とは何か →
- 交付決定取消しの事前通知が届いたら →
- 補助事業を途中でやめたい・縮小したいとき、補助金はどうなるのか →
- 補助金の返還を求められたら、加算金・延滞金は払うのか →
- 補助金の返還請求に時効はあるのか →
- 補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか →
- 交付規程に違反したと言われたら――交付規程を守ることは「補助条件」なのか →
- 交付決定の取消しから6か月を過ぎたら、取消訴訟は起こせないのか →
- 交付決定の取消しに期間の制限はあるのか――返還請求権の時効とは別の問題 →
- 事業化状況報告を出していなかった――それだけで交付決定の全部を取り消され、全額の返還と加算金を命じられるのか →
- 補助金で導入した設備を取り外して保管している――管理義務に反すると言われたら →
- 申請を認定支援機関に手伝ってもらった――「制度を知っていたはずだから悪質だ」と言われたら →
- 交付決定の取消しの通知に不服があるとき、どこに言えばよいのか →
- 立入調査は、支援した当社にも来るのか――補助金ごとに違う「調査の相手方」 →
- 支援事業者としての登録が取り消されると、関与した顧客の交付決定も全部取り消されるのでしょうか →
- 顧客の交付決定が取り消されたとき、販売事業者である当社にも返還が命じられるのでしょうか →
- 事業計画の目標(付加価値額等)に届かなかった――補助金を返さなければならないのか →
- 廃業・破産したら、補助金の返還はどうなるのか →
日々の発信
補助金に関する法的整理や実務の動きは、noteとXでも継続的に発信しています。このサイトの各ページの内容も、それらの発信と実際の対応経験に基づいています。判例・文献に基づく全文解説は、サイト内のコラムにまとめています。
補助金トラブル・中小企業法務・一般民事
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士業・支援機関・お取引先企業の方からのご相談・ご紹介も受け付けています。連携のご案内 →