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弁護士 岸上大起

承認や許可に「あとで額を通知する」という条件が付いていたら、後から届いた金額の通知は、それ自体を裁判で争えるのか――裁判例紹介:東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

補助金で取得した財産について財産処分の承認を申請すると、承認の段階では納付する金額が示されず、「納付額は別途通知する」とされ、しばらくしてから納付通知書が届く、という流れになることがあります。届いた通知には、納付すべき金額と期限が書かれています。この通知は、それ自体を取消訴訟で争うことのできる「処分」なのでしょうか。それとも、承認のときに既に決まっていた義務の支払を求めているだけの、請求書のようなものなのでしょうか。

この違いは、争い方を左右します。処分であれば、処分があったことを知った日から6か月以内に取消訴訟を起こす必要があり(行政事件訴訟法14条1項)、その期間を過ぎると、よほどの瑕疵がない限り争えなくなります。処分でなければ、取消訴訟ではなく、納付義務がないことの確認を求める訴え(同法4条の当事者訴訟)などで争うことになります。どちらの道を選ぶかを間違えると、金額の当否という中身の議論に入る前に、入口で退けられるおそれがあります。

この問いに正面から答えた裁判例が、東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁です。補助金の事件ではなく、国の行政財産(自衛隊基地の建物の一部)の使用許可に際して「別途通知する額」とされていた使用料が、使用期間の最終日の直前に届いた納入告知書で初めて示された、という事件です。裁判所は、この後から届いた通知によって、使用許可の附款として別途定めるとされていた使用料を確定する行政処分がされた、と判断しました。

本稿は、裁判例を紹介するシリーズの一本です。はじめに、附款(負担)とは何かを一言で定義し(1)、事件の中身(2)と第一審の判断(3)、控訴審の判断(4)を判決の文言で紹介します。そのうえで、補助金適正化法22条の財産処分の承認と、後から届く納付の通知にこの判断を引き直し(5)、通知を受け取った事業者が何をすべきかを述べます(6)。

以下には当職の私見が含まれます。

1 附款(負担)とは何か――「あとで額を通知する」型の問い

附款(ふかん)とは、許可や承認といった行政行為に、法律で規定された事項以外の内容を付け加えたものをいいます。最三小判令和3年3月2日民集75巻3号317頁の最高裁判所判例解説民事篇は、次のように整理しています。

引用(荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)79頁)

「ここでいう「条件」は,講学上の「附款」に当たるところ,附款とは,許認可等の法効果について法律で規定された事項以外の内容を付加したものをいうとされている。そして,附款の種類としては,①許認可等の効力の発生,消滅を将来の不確実な事実にかからしめる条件,②許認可等の効力の発生,消滅を将来発生することが確実な事実に係らしめる期限,③許認可等を行うに際して,法令により課される義務とは別に作為又は不作為の義務を課す負担,④許認可等を行うに際して,将来撤回することがあることをあらかじめ確認しておく撤回権の留保等が挙げられている」

このうち本稿で扱うのは③の負担です。一言でいえば、負担とは、許可や承認と引き換えに「これをせよ」と相手方に義務を課す付け足しのことです。教科書の例を引きます。

引用(曽和俊文「行政法を学ぶ 第12回 行政行為(4)行政裁量(その2)・附款」法学教室380号61頁(有斐閣、2012))

「負担とは,行政行為の相手方に一定の義務を課するものである。例えば,道路上への電柱の設置(道路占用許可)に際して占用料を課する附款,ガス事業免許に当たり事業経営の手法に注文を付ける附款などがある。」

「附款もそれ自体相手方の権利義務を左右する法効果を持つので行政行為である。」

占用料や使用料を払え、補助金相当額を納付せよ、というのが負担の典型です。そして、負担は本体の許可とは別に、それ自体を取消訴訟で争うことができると一般に考えられています(見上崇洋「行政行為の附款(2)」行政判例百選Ⅰ〔第6版〕194頁(有斐閣、2012)は、「附款が独立して抗告訴訟の対象となりうるかについては,少なくとも負担については一般に積極に解されており」と述べています)。

ここまでは、負担が許可と同時に、金額まで決まった形で付けられた場合の話です。本稿の問いは、その先にあります。許可の時点では「額は別途通知する」とだけ書かれ、後から金額の通知が届いた場合、処分と呼ぶべきものはどこにあるのか。許可の時点なのか、通知の時点なのか、それとも通知は処分ではないのか。この問いに答えたのが、以下の事件です。

2 どのような事件か――見込額の約3.4倍の使用料が、使用期間の最終日の直前に通知された

(1)事件の流れ

国(防衛省)は、航空自衛隊の基地(東京都目黒区)の建物の一部(23.00平方メートル)を、隊員向けの展示即売店のために使わせる業者を公募しました。公募公告には、国有財産使用料は「日額1平方メートル当たり59円(税込み)程度(見込み)」と記載されていました。応募した業者は、使用料を「北関東防衛局長の指示のとおり」とする使用申請をし、平成23年3月31日付けで、国有財産法18条6項に基づく使用許可を受けました。この使用許可では、使用料は「別途通知する額」とし、歳入徴収官の発する納入告知書により指定期日までに納入しなければならない、とされていました。使用期間は、平成23年4月から平成24年3月までのうちの計12日です。

ところが、実際の使用料が算定されたのは平成24年2月20日、納入告知書が送付されたのは同年3月9日でした。使用期間の最終日の直前です。しかも、その額は日額201.57円/平方メートル(税抜き)と、公告の見込額の約3.4倍になっており、使用料の年額は5万8404円とされました。業者はこれを支払わず(日額60円で計算した額を供託しました)、国が、未払使用料5万8404円と延滞金の支払を求めて提訴しました。東京簡易裁判所に起こされた訴えは、東京地方裁判所に移送されています。

(2)使用料の算定方法は通達で決まっていた

使用料の算定方法は、法律ではなく、「行政財産を使用又は収益させる場合の取扱いの基準について」(昭和33年1月7日蔵管第1号大蔵省管財局長通知。判決では「取扱基準」と呼ばれています)という通達で定められていました。近隣の賃貸取引事例2事例以上の平均価格を基に算定し、事例の選定に当たっては「利用用途,建物の構造,品位,経年,使用面積,階層等の類似する事例を選定するものとし」とされています。国は、使用面積21.00平方メートルの事例(調整後の日額69.83円)と、使用面積6.00平方メートルの事例(調整後の日額333.31円)の二つを選び、その平均で201.57円を算出していました。

使用料の額を決める根拠が法律ではなく通達(行政内部の基準)にあった、という点を覚えておいてください。後記5で補助金に引き直すときに効いてきます。

3 第一審(東京地判平成30年9月14日)――使用料は「合意」で決まるとした

第一審である東京地判平成30年9月14日(平成29年(行ウ)第519号)判例タイムズ1470号138頁は、行政財産の使用関係は基本的に私法上の賃貸借と異ならず、使用料は合意によって決まる、という立場をとりました。

引用(東京地判平成30年9月14日判例タイムズ1470号145頁)

「その関係が成立するためには同法18条6項の規定による行政処分としての使用許可が必要であるが,その関係を構成する使用料等の具体的な債権債務については,法令に特別の定めがない限り,使用者と国との間の合意によって形成され,又はその範囲が確定されるものと解するのが相当である」

そのうえで、両当事者の合理的な意思解釈として、公告の見込額とそれ程相違のない相当な額で合意したと認め、使用面積の著しく異なる事例を算定の基礎とするのは合理性を欠くとして、日額70円/平方メートル(税抜き)を相当額とし、2万0280円の限度で国の請求を認めました。

この考え方によれば、使用料の通知は処分ではなく、金額の当否は通常の民事訴訟の中で争うことができます。使用者にとっては楽な道に見えます。しかし、国だけが控訴し、控訴審は、結論は同じでも、理由を根本から組み替えました。

4 控訴審(東京高判平成31年3月7日)――後から届いた通知は「附款を確定する行政処分」

(1)使用料の決定は行政処分(附款たる負担)である

控訴審は、まず、募集から使用許可までの各段階を見ても、使用料を合意で形成することとしていたと解する根拠はない、としました。

引用(東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁・判決理由第3の2)

「募集,使用申請及び使用許可の各段階を見ても,使用料を合意によって形成することとしていたと解する根拠は見いだし得ず,むしろ国の行政処分(附款たる負担)により決定されることを踏まえた手続がとられていたということができる。」

(2)許可に後れて告知された場合でも、附款であることは変わらない

本稿にとって要となるのは、次の判示です。

引用(東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁・判決理由第3の2)

「そもそも使用の対価をどの程度にするかは,使用許可の範囲ないし具体的内容(対象物件の範囲や,用途,使用期間等)と密接な関連性があり,使用許可に付される付随的な条件ともいうべきものであるから,これが使用許可と同時に確定額が決定され相手方に告知された場合はもとより,本件のように使用許可の際には別途通知するとされ,同許可に後れて決定され告知された場合においても,これを行政処分である使用許可と性質を異にし使用者と国との間の合意によって形成され又はその範囲が確定されるものであると解することは不自然であって相当といえないし,」

「そして,本件においては,実際の使用料が北関東防衛局の防衛事務官により算定され,平成24年3月9日,歳入徴収官から被控訴人に対し納入告知書が送付されているところ,これは本件仕様書において北関東防衛局長が別途定めることとされた国有財産使用料にほかならないから,上記送付による告知に当たって,本件使用許可の附款として別途定めるとされていた使用料を確定する行政処分がされたものと解することが相当である」

判決は、三つの段階を踏んでいます。第一に、使用料は使用許可に付される付随的な条件、すなわち附款(負担)である。第二に、許可と同時に額が決まっても、許可に後れて決まっても、附款であることは変わらない。第三に、本件では、納入告知書の送付による告知の際に、附款として「別途定める」とされていた使用料を確定する処分がされた。つまり、「あとで額を通知する」型の附款では、後から届いた通知の段階で、附款の中身を確定する処分がされたと位置付けられたのです。

判例タイムズ1470号の匿名コメント(判決の末尾に編集部が付する無署名の解説)は、この判示を次のように整理しています。

引用(判例タイムズ1470号141頁《解説》)

「そして,本件においては,納入告知書の送付による告知に当たって,使用許可の付款として別途定めるとされていた使用料を確定する行政処分がされたものと解されるとした。」

「控訴審判決は,納入告知処分をもって使用料決定処分としているわけではなく,納入告知書の送付に当たり,使用許可権者である北関東防衛局長が使用料決定処分をし,納入告知書の送付によってそれを被告に通知したものとみているものと思われる。」

通知の書面そのものを処分とみるか、通知の裏にある決定を処分とみて書面はその伝達とみるか、という読み方の違いがあることになります。同コメントは、この違いが、理由の提示や不服申立て・取消訴訟の教示が要るかどうかに関わると指摘しています(同141〜142頁)。事業者の側からみれば、この違いは、取消しを求める対象をどう特定するかという問題として現れます。通知の書面だけを対象にするのではなく、その前提となる許可(承認)も併せて対象にしておくのが安全である、ということです。

(3)通達は裁量の基準であり、そこから外れた算定は違法になる

使用料の決定が処分であるとすると、次に、その処分が適法かどうかが問われます。判決は、行政庁に裁量を認めつつ、次のように述べました。

引用(東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁・判決理由第3の3(2))

「行政庁には使用料の決定に当たり一定の裁量が認められるが,裁量権を逸脱し又はこれを濫用した場合は違法な処分となるものと解される。」

そのうえで、取扱基準(通達)の算定方法を「合理的なものと認められる」とした上で、国がその基準どおりに事例を選んでいなかったことを捉えて、次のように判断しました。

引用(東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁・判決理由第3の3(4))

「イの物件を本件使用許可物件に類似するものとして選定した上で本件使用許可物件の使用料を算出したことは明らかに合理性を欠き,控訴人(北関東防衛局長)が有している裁量権を逸脱ないし濫用したものとして違法なものであったといわざるを得ない。」

ここで押さえておきたいのは、「通達に沿って計算した」と行政が言えば足りるのではない、ということです。通達自身が「類似する事例を選定する」と求めている以上、類似しない事例を選んで計算すれば、通達の基準から外れたものとして、裁量の逸脱・濫用になります。金額の算定過程は、裁判所の審査の対象になるのです。

(4)処分と扱われたことの代償――取消訴訟を経ていなければ、無効でない限り争えない

使用料の決定が処分であるとされた結果、取消訴訟を起こしていなかった業者は、本来であれば、その効力を争えないことになります。判決は、まずその原則を確認しました。

引用(東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁・判決理由第3の3(5))

「行政処分が違法なものであっても,処分の相手方が当該処分の効果を否定するためには,処分の取消しを求める訴訟を提起して当該処分の取消しを得る必要があるのが原則であり,取消しを得ていなくても処分が当然に無効であるとしてその効果を否定するためには,当該処分に重大かつ明白な瑕疵が存することが要件となると解される」

そのうえで判決は、使用料が申請するかどうかの決定的な考慮要素であること、公告の見込額の約3.4倍という額が「上記見込額から合理的に予測される範囲を甚だしく逸脱していた」こと、通知が使用期間の最終日の直前で、使用をやめることも実際上できなかったこと、処分の存在を信頼する第三者の保護を考える必要がないこと、という事情を挙げて、次のように結論しました。

引用(東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁・判決理由第3の3(5))

「これらの諸事情に照らせば,控訴人(北関東防衛局長)による本件使用料決定処分は,行政処分の原則に従って被控訴人が処分の取消しを得なければ支払請求を受けた訴訟において処分の効力を争うことができないとすることは著しく不当であるといわざるを得ず,少なくとも当審における審理の対象となっている部分,すなわち2万0280円を超える部分(1平方メートル当たりの単価が日額70円/平方メートルを超える部分)については,重大かつ明白な瑕疵があるため当然に無効であると認めることが相当である。」

この業者は救われました。しかし、それは例外的な事情が重なったからです。判例タイムズのコメントも、控訴審は、課税処分について瑕疵が重大かつ明白とはいえなくても無効となり得るとする判例法理によったのではなく、「瑕疵の明白性を必要とした上で,上記法理で考慮要素とされている諸事情をも考慮して,瑕疵の明白性を認めたものである」と整理しています(同142頁)。後から届いた通知が処分だとされる以上、本来は、取消訴訟の期間内に争っておかなければ、通知どおりの支払を求める訴訟の中では原則として争えない。この判決から事業者が受け取るべき教訓は、むしろこちらです。

(5)帰趨と、この判決の位置

控訴審は、原判決は結論において正当であるとして控訴を棄却しました。判例タイムズ1470号141頁によれば、国は上告せず、この控訴審判決が確定しています。同コメントは、この事件を「1審と控訴審との間で,結論は同一であるが,結論に至る理由を異にした点でも珍しい事例」と評しています(同142頁)。

高等裁判所の一件の判決であり、最高裁判所の判断ではありません。この点は正直に申し上げておきます。もっとも、同じ構造の問題について、道路の占用許可で「別途発行する納入告知書の額」とされていた占用料の納入告知を処分と認めた大阪高判令和3年12月14日判例時報2545号27頁があります。同判決は、納入告知が占用許可の附款とみることができるとした上で、「本件各納入告知を占用許可の附款と位置付けることができるからといって、直ちにその処分性が否定されることになるわけではない」と述べ、占用料の納付義務は「納付すべき金額、期限及び場所」を明記した納入告知の書面によって初めて発生するとして、処分性を認めました(判決理由第3の1(2))。この判決については、別稿で紹介しています。

5 補助金の財産処分の承認と、後から届く納付の通知に引き直す

(1)22条の承認は処分であり、納付の条件はその負担である

補助金適正化法22条は、補助事業により取得した財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないと定めています。この承認について、最高裁判所判例解説民事篇令和3年度は、「禁止の解除の効果を持つ独立の行政行為であり,講学上の許可に相当する」と述べています(同79頁)。そして、最三小判令和3年3月2日は、次のように判示しました。

引用(最三小判令和3年3月2日民集75巻3号317頁)

「法22条に基づく承認に際しては,補助事業者等において補助金等の全部又は一部に相当する金額を納付する旨の条件を附すことができると解される」

この納付の「条件」は、前記1で定義した附款のうちの負担に当たります。同解説は、負担を付すには法律の根拠が必要であるとしつつ、22条の承認に負担を付す根拠は法の仕組みにある、と説明しています(同80〜81頁)。承認を得ずに目的外の処分をすれば交付決定の取消し・返還命令・加算金・強制徴収という重い結果になる以上、交付した補助金の範囲内で、加算金のつかない納付義務を負担させることは許容される、という理屈です。この点と、承認そのものを争う方法については、財産処分の承認を受けたら、補助金を返さなければならないのか――裁判例紹介:最三小判令和3年3月2日で述べました。負担の限界については、処分制限期間中に補助金で取得した設備を廃棄したら、残存簿価相当額を納付しなければならないのかをご覧ください。

(2)承認の段階で額が示されず、後から納付通知書が届く運用は、東京高判と同じ構造にある

中小機構が交付する事業再構築補助金などでは、交付規程が、承認通知書と納付通知書とを別の様式として定め、処分制限財産に係る補助金額を限度として納付させることができるとし、その取扱いは経済産業省の通達「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16・6・10会課第5号。以下「財産処分取扱基準」といいます)の各規定を踏まえるものとしています(交付規程の条文については、前掲の納付命令の記事の1で引いています)。つまり、承認がされれば当然に一定額の納付義務が生ずる仕組みにはなっておらず、納付させるかどうかと、その額は、承認とは別に行政の側で決められ、納付通知書で初めて事業者に示されます。

これを東京高判の事件と並べてみます。

第一に、本体の行為が法律に基づく処分である点が同じです。国有財産法18条6項の使用許可と、補助金適正化法22条の承認です。第二に、本体の処分がされれば当然に金銭の納付義務が生ずる仕組みにはなっておらず、負担を付すかどうかと、その額が行政の判断に委ねられている点が同じです。第三に、額が本体の処分の段階では示されず、後から届く通知で初めて示される点が同じです。第四に、額の算定基準が法律ではなく通達(行政内部の基準)にある点が同じです。

東京高判の論理をそのまま当てはめれば、後から届いた納付通知は、22条の承認の附款(負担)として別途定めるとされていた納付額を確定する処分である、と解する余地があります。大阪高判令和3年12月14日の論理によっても、「納付すべき金額、期限及び場所」を明記した書面によって初めて納付義務が発生するのであれば、附款であっても処分性は否定されない、ということになります。

(3)反対の材料――調査官解説は「納付の求め」を処分ではないとしている

ただし、ここで正直に挙げておかなければならない材料があります。前記(1)の最高裁判所判例解説民事篇令和3年度は、その事件における「納付の求め」について、次のように述べています。

引用(荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)83〜84頁)

「なお,本件申請においては具体的返納金額が記載されていたものの,これを受けてされた本件承認の附款である本件附款には,納付すべき金額が具体的に特定して記載されていたものではないが,これにより補助金相当額のYへの納付という義務が課されるものである。その後にされた関東農政局長による納付の求めは,これにより,XからYへの納付という義務を発生させるものではなく,行政処分には当たらないと考えられる。第1審・原審は「本件納付命令」という略語を用いているものの,本件附款により発生した義務の履行を求めるにすぎないものである。」

行政の側が「納付通知は処分ではなく、承認で既に生じた義務の履行を求めているだけだ」と主張するとすれば、その根拠はこの一節になります。これは、22条の承認に付される納付条件について直接述べたものであり、重く受け止める必要があります。

もっとも、この一節の前提も読む必要があります。その事件では、承認の申請書に具体的な返納金額が記載され、承認の附款は「補助金相当額」の納付義務を課すものでした。つまり、承認の時点で、納付義務の内容は、申請書の額と結び付いて定まっていたのです。そして、後の納付の求めで求められた額が申請書に記載された額と同じであったことが、処分でないとする理由の一つとして挙げられています(同84頁)。同解説は、注8で、承認に付された条件に不服があれば、承認自体又は附款である条件について審査請求や取消訴訟を提起することが考えられる、としています(同93頁)。争う対象は承認(とその附款)であり、納付の求めではない、という整理です。

(4)当職の整理――分かれ目は、納付額がいつ定まるか

以上を並べると、分かれ目は、納付義務の内容、とりわけ額が、承認の時点で定まっているか、後の通知で初めて定まるかにあると考えております。

承認の時点で額が定まっている場合(申請書に額が記載され、承認がそれを受けている場合)には、調査官解説の整理が当てはまり、処分は承認(とその附款)であって、後の納付の求めは履行の請求にとどまります。この場合、争う対象は承認であり、期間は承認を知った日から数えることになります。

これに対し、承認の時点では額が示されず、「別途通知する」とされ、後の通知で初めて額と期限が示される場合には、東京高判平成31年3月7日と大阪高判令和3年12月14日の論理が当てはまり、通知の段階で附款を確定する処分がされたと解する余地があります。

ただし、この線引きは確立したものではありません。裁判所が調査官解説の整理を広く当てはめ、額が後から示された場合でも「通知は処分でない」とする可能性は否定できません。そのため、実際に争うときには、どちらに転んでも中身の審理に進める形を組んでおく必要があります。当職は、次の二段構えが筋であると考えております。第一に、承認と納付通知の両方を対象とする取消訴訟を、通知を知った日から6か月以内に提起する。第二に、納付通知が処分に当たらないとされる場合に備えて、納付義務が存在しないことの確認を求める当事者訴訟(行政事件訴訟法4条後段)を、関連請求として併合する(同法13条6号、16条1項)。処分性が否定されれば当事者訴訟で、認められれば取消訴訟で、いずれにしても納付額の当否と附款の限界を裁判所に判断してもらう、という組み立てです。

6 納付の通知を受け取ったら何をすべきか

第一に、期間を数えてください。通知が処分であるとすれば、取消訴訟は処分があったことを知った日から6か月以内です(行政事件訴訟法14条1項)。承認通知書を先に受け取っている場合には、承認を知った日から期間が進んでいる可能性もあります。東京高判は取消訴訟を経ていない業者を無効の法理で救いましたが、それは見込額の約3.4倍、使用期間の最終日の直前の通知、という例外的な事情が重なった事案です。無効の主張を当てにして期間を過ごすべきではありません。

第二に、算定の根拠を求めてください。東京高判は、通達の基準から外れた事例の選定を裁量の逸脱・濫用としました。補助金でも、財産処分取扱基準(通達)が、国庫納付額の算定方法と、国庫納付条件を付さないことができる場合(同基準5.(2))を定めています。通知に算定の根拠が示されていなければ、どの計算式で、どの数値を基に、どの事情を考慮して額が決まったのかを、書面で問うべきです。通達のどの定めをどう適用したのかが追えない通知は、裁量の逸脱・濫用の疑いを検討する入口になります。資金繰りの悪化等により処分制限財産を維持することが困難になった場合に納付条件を付さないことができるという定め(同基準5.(2)②b)が検討された形跡があるかどうかも、確かめるべき点です。

第三に、支払う前に決めてください。処分である通知に従って納付した後に、その額が過大であったとして返還を求めるには、処分の取消し又は無効を経ることになり、道は狭くなります。納付に応じるかどうかは、争う道を確かめてから決めるべきです。

財産処分の承認に伴う納付通知書を受け取った方、承認は受けたが額はまだ示されていないという方は、ご相談ください。通知を受け取った日から、争うことのできる期間が進み始めている可能性があります。

7 まとめ

東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁は、行政財産の使用許可に際して「別途通知する額」とされていた使用料について、使用料は使用許可に付される附款(負担)であり、許可に後れて決定され告知された場合でもそのことは変わらず、納入告知書の送付による告知に当たって、附款として別途定めるとされていた使用料を確定する行政処分がされた、と判示しました。そのうえで、通達の基準から外れた算定を裁量の逸脱・濫用として違法とし、例外的な事情の下で、相当額を超える部分を無効としました。国は上告せず、確定しています。

補助金適正化法22条の財産処分の承認に際して、承認の段階では額が示されず、後から納付通知書が届く運用は、この事件と同じ構造にあります。承認は法律に基づく処分であり、納付の条件は負担であり、額は後の通知で初めて示され、算定基準は通達にあるからです。この論理によれば、後から届いた納付通知は、承認の附款を確定する処分と解する余地があります。他方で、最高裁判所判例解説民事篇令和3年度は、承認の時点で額が定まっていた事案について、後の納付の求めは処分でないとしています。分かれ目は、額がいつ定まるかにあると考えておりますが、この線引きは確立したものではなく、取消訴訟と当事者訴訟の二段構えで争うのが筋です。

後から届いた通知が処分であるとされる以上、期間内に争わなければ、原則として通知どおりの支払を求められる側に回ります。通知を受け取ったら、期間を数え、算定の根拠を求め、支払う前に争う道を確かめる。この三つを、順に行ってください。

顧問先・支援先が財産処分の承認に伴う納付通知書を受け取ったという中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方、認定支援機関の方も、ご相談ください。この論点は、通知を受け取った日から期間が進む可能性があるため、早い段階で争い方を決めておく必要があります。士業・支援機関の方との連携の進め方は、士業・支援機関の方へにまとめております。

※ 本稿は、執筆時点の法令・文献・裁判例に基づく一般的な整理であり、私見を含みます。個別の事案についての結論を保証するものではありません。承認や納付の手続は補助金ごと・公募回ごとに異なります。

※ 本稿は、執筆時点の法令・公表資料に基づく一般的な整理であり、当職の私見を含みます。個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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