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弁護士 岸上大起

補助金Q&A

補助金の返還・取消し・財産処分について、実際に多いご質問に短く答えています。

それぞれの問いに、2〜3文の答えと、根拠となる条文・公式資料を付けています。もっと詳しい法的整理は、各ページからリンクしている状況別の対応ページとコラムをご覧ください。

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補助金で取得した設備・内装をどうするか

売る、貸す、捨てる、事業ごと譲る、既存事業にも使う――財産の扱いに関する問いです。

補助金の「目的外使用」とは何か

目的外使用とは、①補助金そのものを本来の使途以外に使うこと(他用途使用)、又は②補助金で取得した財産を補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、若しくは担保に供することをいいます。設備について問題になるのは②です。

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補助事業を途中でやめたい・縮小したいとき、補助金はどうなるのか

処分制限期間の内側であっても、補助事業をやめられないわけではありません。ただし、やめる時期に応じて、あらかじめ承認を受けること(補助事業の実施期間中)又は届出をすること(補助事業の完了後の事業計画期間中)とされています。返還や納付が問題になるのは、補助金で取得した設備・ソフトウェアを「どうするか」――手元に残すのか、売るのか、廃棄するのか、事業ごと引き継ぐのか――によって分かれます。

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補助金で導入した設備を取り外して保管している――管理義務に反すると言われたら

取り外して手元に置いていることは、交付規程24条1項が「処分」として挙げる行為(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等)のいずれにも当たらないと考えております。交付規程23条1項が課しているのは、取得財産等を善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を図る義務であり、現物を自社で保管して管理していることは、むしろこの義務を果たしている状態であると考えております。

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取消し・返還・減額を求められたとき

取消しの事前通知・取消通知・返還請求・減額の指摘を受けた方向けの問いです。

賃上げできなかったら、交付決定の取消し・補助金の返還になるのか

交付規程上は、賃上げ要件を満たさない場合に、中小機構が補助金の全部又は一部の「返還を命ずる」と定められています。もっとも、私見としては、賃上げ要件はそもそも補助事業者に義務を課す補助条件になっておらず、達成できなかったとしても補助金適正化法17条1項の取消事由には当たらないと考えております。

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補助金の「減額」とは何か

補助金の減額とは、補助事業に実際にかかった経費が交付決定のときの見込みを下回った場合に、実際の支出額に合わせて補助金の額を確定することをいいます(減額確定)。

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交付決定取消しの事前通知が届いたら

事前通知は、交付決定を取り消す予定であることを、処分の前に知らせる書面です。まだ取消しはされていません。事前通知に対して書面で意見を述べることが、取消しを回避するための最初にして最大の機会になります。

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補助金の返還を求められたら、加算金・延滞金は払うのか

加算金は、補助金適正化法19条1項が「納付しなければならない」と定めているもので、17条1項による交付決定の取消しに伴って補助金の返還を命ぜられたときに生じます。もっとも、その前提は返還の命令であり、返還の命令の前提は交付決定の取消しですので、取消しそのものを争うことが、加算金を争うことにもなります。

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補助金の返還請求に時効はあるのか

補助金の返還請求権も金銭の支払を求める権利ですので、消滅時効にかかります。もっとも、期間が何年になるかは、その返還請求権がどういう性質のものかによって、適用される条文が変わります。

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補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか

交付主体が補助金適正化法23条に基づいて行う立入検査は、行政調査(判断に必要な事実を調べ、資料を集める活動)であって、犯罪捜査ではありません。同条3項が、同条1項の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと定めています。

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交付規程に違反したと言われたら――交付規程を守ることは「補助条件」なのか

中小機構が交付主体となる補助金について、交付決定を取り消す根拠になるのは、交付規程ではなく補助金適正化法17条1項です。交付規程の条項に違反したという指摘は、同項の三つの取消事由のうち「交付の決定の内容又はこれに附した条件」(補助条件)への違反に当たるかどうかという問題になります。交付決定通知書に「交付規程で定めるところに従う」との記載があることのみによって、交付規程の全部が補助条件になったと解することは難しいと考えております。

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交付決定の取消しに期間の制限はあるのか――返還請求権の時効とは別の問題

補助金適正化法17条には、交付決定の取消権をいつまで行使することができるか、という期間の制限の規定が置かれていません。文献は、取消権を時間的に無制限に行使しうると解することは適当ではないとしていますが、何年という線を正面から示した裁判例は、手元では見当たりません。

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事業化状況報告を出していなかった――それだけで交付決定の全部を取り消され、全額の返還と加算金を命じられるのか

交付規程は、事業化状況の報告を行わなかった場合を、交付決定の取消し等をすることができる場合の一つとして挙げています(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程22条1項10号)。もっとも、同条1項の柱書は「交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することができる」という定め方ですので、10号に当たるとされたとして、そこから全部の取消しが当然に導かれるわけではないと考えております。

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申請を認定支援機関に手伝ってもらった――「制度を知っていたはずだから悪質だ」と言われたら

支援を受けて申請することは、制度が予定している進め方です。事業再構築補助金の公募要領でも、事業計画について金融機関等又は認定経営革新等支援機関の確認を受けていることが、主な事業類型の補助対象事業の要件の一つに挙げられています。支援を受けて申請したことが、補助金適正化法17条1項が定める三つの取消事由のいずれかに当たるという定め方は、されていません。

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交付決定の取消しの通知に不服があるとき、どこに言えばよいのか

中小機構が交付主体の補助金では、交付決定の取消しは行政処分ですので、取り消されるまでは有効なものとして扱われます(講学上の公定力)。窓口に電話をして不服を伝えても、それだけで取消しの効力が止まるわけではありません。覆す方法は、原則として、交付主体に撤回を求めるか、取消訴訟を提起して取消判決を得るかのいずれかです。

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事業計画の目標(付加価値額等)に届かなかった――補助金を返さなければならないのか

「未達でも返還はない」と一般化することはできません。付加価値額の目標の未達を返還の定めの対象としている枠が現にあり(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程27条2項4号のグローバルV字回復枠。中小企業省力化投資補助金交付規程28条2項1号のカタログ注文型は、未達に加えて「補助事業者の故意又は過失が原因で」という部分を置いています)、どの補助金・どの公募回・どの枠かで分かれます。

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申請・交付の手続のこと

交付申請の段階で起きた問題に関する問いです。

補助金の交付申請が却下された。争うことはできるのか

中小機構が交付する事業再構築補助金などについては、交付申請の却下(不交付の決定)も、行政処分として取消訴訟の対象になり得ると考えております。独立行政法人が法律に基づいて交付する助成金について、交付しない旨の決定が裁量権の逸脱・濫用として違法とされた最高裁判決もあります。

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支援事業者・販売事業者ご自身のお立場のこと

補助事業者を支援し、又は補助事業者に製品・設備を販売された会社ご自身が、交付規程上どの立場に置かれているかに関する問いです。

立入調査は、支援した当社にも来るのか――補助金ごとに違う「調査の相手方」

補助金によって違います。IT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)の交付規程32条1項は、立入調査の相手方として補助事業者とIT導入支援事業者を並べて挙げており、支援した側が直接の相手方になります。中小企業省力化投資補助金も、カタログ注文型では販売事業者が「補助事業者等」に含まれますので、同じく直接の相手方です。他方、国が直接交付する補助金と、中小機構が交付主体となる事業再構築補助金では、条文が相手方として挙げているものが異なります。

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支援事業者としての登録が取り消されると、関与した顧客の交付決定も全部取り消されるのでしょうか

IT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)の交付規程は、IT導入支援事業者の登録取消しを行った場合に、当該支援事業者に係る全ての交付申請について交付決定の取消しを行うことができる、と定めています(8条3項前段)。もっとも、同項には「なお、当該補助事業者の責に帰する事由でないIT導入支援事業者の登録取消の場合は、この限りでない。」というなお書きが続いており、全部が当然に取り消されるという定め方はされていません。

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顧客の交付決定が取り消されたとき、販売事業者である当社にも返還が命じられるのでしょうか

中小企業省力化投資補助金の交付規程は、カタログ注文型の「補助事業者等」に販売事業者を含めており(2条6号)、交付決定の取消しの事由(23条1項)も、取消しに伴う補助金の返還命令(同条2項)も、「補助事業者等」について定められています。返還命令が販売事業者にも向けられ得る建て付けになっております。

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いま、どの段階ですか

用語の一覧

通知書や事務局の説明に出てくる言葉を、短く定義しています。詳しい整理は、それぞれのリンク先をご覧ください。

交付決定

補助金を交付すべきものと認めたときに、交付する側が行う決定です。中小機構が交付する補助金では、この決定に際して条件を付すことができるとされており、交付決定通知書とそこに付された条件が、補助事業者の義務の出発点になります。

根拠:補助金適正化法6条1項/交付規程9条1項・3項

交付決定の取消し・返還請求 →
額の確定

補助事業の完了後、実績報告を受けて、交付すべき補助金の額を最終的に決める手続です。報告された成果が交付決定の内容と条件に適合するかを調査して行われます。交付決定額より少ない額で確定されたものが、いわゆる減額確定です。

根拠:補助金適正化法14条、15条

補助金の「減額」とは何か →
取消しの事前通知

交付決定を取り消す予定であることを、処分の前に知らせる書面です。この時点では、まだ取消しはされていません。補助金等の交付に関する処分には行政手続法の聴聞・弁明の機会の付与の規定が適用されないため、意見を述べる期限と方法は、事前通知の記載によります。

根拠:補助金適正化法24条の2

交付決定取消しの事前通知が届いたら →
交付規程

中小機構が補助金ごとに定めている規程です。最高裁判所の調査官解説は、同種の交付要綱について、内部的な規範(講学上の行政規則)にすぎず、国民に対して直接の法的効力を有するものではないと述べています。交付決定の取消しの根拠は、交付規程ではなく補助金適正化法17条1項です。

根拠:山本拓・最高裁判所判例解説民事篇令和5年度551頁/補助金適正化法17条1項

取消しの処分性と理由付記の不備 →
公募要領

公募の際に示される募集の手引きです。法令ではなく、事務局が申請者向けに示した説明や審査の基準ですので、公募要領に記載があるというだけで補助条件になるわけではないと考えております。

根拠:当職の見解(/column/concurrent-use 5(3))

既存事業との併用(公募要領の位置づけ) →
処分制限財産

処分が制限される財産のことです。事業再構築補助金では、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産とされています。

根拠:交付規程24条1項/公式「よくあるご質問」財産処分Q3

処分制限期間

処分制限財産について、承認を受けずに処分することができない期間です。交付の目的と財産の耐用年数を勘案して定められ、事業再構築補助金では減価償却資産の耐用年数等に関する省令を準用するとされています。一律10年というルールはありません。

根拠:補助金適正化法施行令14条1項2号/交付規程24条2項

処分制限期間は何年か →
残存簿価相当額

財産の取得価額(税抜)から、処分の時点までの減価償却費の累計額を差し引いた金額です。無償譲渡や目的外使用の場合に、納付額の計算の出発点になります。

根拠:公式「よくあるご質問」財産処分Q11

返還額はいくらになるのか(計算式と計算例) →
目的外使用

補助金そのものを本来の使途以外に使うこと、又は補助金で取得した財産を交付の目的に反して使用・譲渡・交換・貸付け・担保供与することをいいます。

根拠:補助金適正化法17条1項、22条

補助金の「目的外使用」とは何か →
財産処分の承認

処分制限期間の内側で処分制限財産を処分しようとするときに、あらかじめ受けることとされている承認です。調査官解説は、この承認を、禁止の解除の効果を持つ独立の行政行為(講学上の許可に相当するもの)と整理しています。

根拠:補助金適正化法22条/交付規程24条3項(様式第12-1)/荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)79頁

残存簿価の納付を求められたら →
附款

許認可等を行うに際して、法律で定められた事項以外の内容を付け加えたものです。調査官解説は、財産処分の承認に「国に納付すること」という条件を付す場合、それは附款の一種である「負担」に当たり、負担を付すには法律の根拠が必要と解されていると述べています。

根拠:荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)79〜80頁

納付命令とその限界 →
事業化状況報告

補助事業終了年度の終了後を初回として、以降5年間、事業化の状況などを報告する義務です。交付決定の名宛人である補助事業者に課された義務ですので、事業譲渡をしても当然に譲受人に移るものではないと考えております。

根拠:交付規程25条1項

事業化状況報告を出していなかったら →
収益納付

事業化状況報告により、補助事業の事業化などによる収益が生じたことが確認されたときに、補助金額を上限とする金額の納付を命ぜられる仕組みです。報告の決算が赤字の場合は納付を免除するものとされています。財産処分に伴う納付とは別の仕組みです。

根拠:交付規程27条1項/公式「よくあるご質問」事業化状況報告Q27

収益納付との違い →
加算金・延滞金

交付決定の取消しに伴って返還を命ぜられたときに、補助金の受領の日から納付の日までの日数に応じて課される年10・95パーセントの加算金と、納期日までに納付しなかったときに課される同率の延滞金です。なお、交付規程は、補助事業の中止・廃止の申請を承認した場合などを加算金の対象から除いています。

根拠:補助金適正化法19条1項・2項/交付規程22条3項

加算金・延滞金は払うのか →
消滅時効

権利を行使しないまま一定の期間が過ぎることで、権利が消滅する仕組みです。補助金の返還請求権についてどの条文によるかは、その請求権が公法関係のものか私法関係のものかによって変わります。金銭の給付を目的とする国の権利については会計法30条(行使することができる時から5年)、民法によるのであれば166条1項(知った時から5年、行使することができる時から10年)です。

根拠:会計法30条/民法166条1項

補助金の返還請求に時効はあるのか →
中小機構と事務局の違い

交付決定の主語が中小機構である補助金は、法律に基づく行政処分として交付されており、取消しは取消訴訟で争えます。事務局が交付主体となる補助金は、負担付贈与契約と解され、争い方が民事上のものになります。交付決定通知書の主語を見るのが、最初の見分け方です。

根拠:中小機構法15条1項6号、16条

処分性の見分け方 →

公式の説明の出典:事業再構築補助金「よくあるご質問」(ページを開いてから中身が読み込まれます)

※ 各ページの内容は、執筆時点の法令・裁判例・公式の説明に基づく一般的な整理であり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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