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弁護士 岸上大起

補助金で取得した財産の処分の承認と一緒に届いた「納付命令」は、取消訴訟で争えるのか――裁判例紹介:大阪高判令和3年12月14日判時2545号27頁

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

補助金で取得した設備や内装を手放すことになり、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」といいます)22条の財産処分の承認を申請したところ、承認と一緒に、あるいは承認の通知もないまま、「補助金のうち○○円を、○日以内に納付してください」という書面が届く。財産処分の局面では、こうした形で納付を求められることが少なくありません。

その金額や理由に納得できないとき、事業者がまず考えるのは、「この納付の求めは、裁判で争えるのか」ということです。交付決定の取消しや返還命令であれば、取消訴訟の対象となる処分であることは、当サイトでも繰り返し整理してきました。しかし、承認に伴う納付の求めについては、「承認に付けた条件(附款)にすぎず、処分ではない」、「既に決まっている義務の額を知らせただけの書面である」という説明がされることがあります。処分でないとされれば、取消訴訟は入口で却下されます。

本稿で取り上げる大阪高判令和3年12月14日判例時報2545号27頁は、補助金の事件ではありません。高速道路の高架下にあるビルについて、道路の占用料の「納入告知」が争われた事件です。行政側は、占用料は占用許可の附款として課されているのだから、納入告知は額を知らせて納付を促す書面にすぎず、処分ではないと主張しました。裁判所は、納入告知が占用許可の附款とみることができることを認めたうえで、それでも処分に当たることは否定できない、と判断しました。

「附款であること」と「処分であること」は両立する。許可の時点では金額が確定しておらず、金額・期限を明記した書面によって初めて納付義務が発生するのであれば、その書面は処分である。――この判断の組み立ては、補助金の財産処分の承認と納付の求めという、構造のよく似た場面を考えるうえで、重要な材料になります。

本稿では、この判決の判示を原文で示しながら、「承認と一緒に届いた納付の求めは、取消訴訟で争えるのか」という一つの問いに答えます。本判決は高等裁判所の判決であり、上告の有無とその結果は、当職が確認した範囲の公刊物では確認できていません。また、道路法の事案であって補助金の事案ではありませんので、どこまでが判決の言葉で、どこからが当職の当てはめなのかは、分けて示します。

1 「附款だから処分ではない」と言われたら――問いの整理

(1)取消訴訟の入口――「処分」に当たるか

行政の行為を取消訴訟で争うには、その行為が行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」に当たる必要があります。最高裁判所は、処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう、としています(最一小判昭和39年10月29日民集18巻8号1809頁)。処分に当たらないとされれば、取消訴訟は本案に入る前に却下されます。補助金の取消し・返還が処分に当たるかという問題は、補助金の交付決定の取消しに処分性はあるのかで整理しています。

(2)「附款」とは何か

附款とは、許認可等の効果について、法律で規定された事項以外の内容を付け加えたものをいいます。その種類として、効力の発生・消滅を将来の不確実な事実にかからしめる「条件」、確実な事実にかからしめる「期限」、許認可等を行うに際して法令により課される義務とは別に作為又は不作為の義務を課す「負担」、撤回権の留保などが挙げられています(最高裁判所判例解説民事篇令和3年度79頁(荒谷謙介))。道路の占用許可に際して占用料を課すものは、この「負担」の典型例として教科書に挙げられています(曽和俊文「行政法を学ぶ 第12回 行政行為(4)行政裁量(その2)・附款」法学教室380号61頁)。

(3)本稿の問い

許可や承認そのものが処分であることに争いがなくても、それに付けられた金銭の納付の義務について、「附款だから、本体の許可とは別に処分として争うことはできない」、「納付の書面は既に決まった額を知らせただけで、処分ではない」という整理がされることがあります。本判決で行政側が主張したのは、まさにこの整理でした。本稿の問いは、この整理が通るのか、通らないとすればどのような条件の下でか、ということです。

2 事案――高架下のビルと、40年ぶりに求められた占用料

(1)当事者と争われた行為

原告(被控訴人)は、大阪市の中心部を通る高架道路の下に建てられた区分所有建物の管理者です。このビルは、昭和40年代に、道路の用地費・補償費を節減するために高架道路と一体の構造で建設されたもので、ビルの側が道路の占用許可を受け、占用料を納付する形がとられていました。被告(控訴人)は、高速道路の占用について占用料を徴収する権限を有する独立行政法人です。

ビルの開業当初の2年度分の占用料は納付されましたが、昭和46年度以降、占用料は40年以上にわたって免除されていました。ところが、大阪市が平成25年度から被告に対する固定資産税等の免除を取りやめたことを受け、被告は、固定資産税等と同額の占用料を毎年度徴収することとし、平成26年度から平成30年度まで、各年度の占用料について「納入告知」をしました。原告は、これらの納入告知が処分に当たることを前提にその取消しを求め(主位的請求)、処分に当たらないとされる場合に備えて、納付済みの占用料等合計7355万0253円の不当利得返還を予備的に請求しました。

(2)占用料の仕組み

道路の占用には許可が必要であり(道路法32条1項)、道路管理者は、占用について占用料を徴収することができます(同法39条1項本文)。本件の高速道路では、道路整備特別措置法によってこれらの規定が読み替えて適用され、占用料は「納付すべき金額、期限及び場所を記載した書面」により徴収するものとされていました(道路整備特別措置法施行令12条1項により読み替えて適用する道路法施行令19条の2第1項)。また、政令所定の額の占用料を徴収することが著しく不適当であると認められる占用物件については、特に必要があると認めるときは、別に額を定め、又は徴収しないことができるとされ(同施行令19条3項6号)、その基準は通達で定められていました。

(3)行政側の「附款」論

被告は、控訴審で、納入告知の処分性について次のように主張しました。

引用(大阪高判令和3年12月14日・第2の6【控訴人の主張】(1))

「道路占用許可の際に占用料を徴収するに当たっては、占用許可に附款を付する形で行うのが通例であり、控訴人もそのようにしている。」

「本件各納入告知は、既に課された占用料について、その額を通知し納付を促す書面にすぎず、処分ではない。」

占用料の徴収は、占用更新許可の附款として行われたものであり、納入告知は、その額を知らせて納付を促す書面にすぎない。――補助金の財産処分の局面で聞くことのある説明と、同じ形をしています。

(4)第一審の結論と控訴

第一審の大阪地判令和元年7月31日判例タイムズ1469号114頁は、各納入告知の処分性を認めたうえで、いずれも裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとして違法であるとし、5年度分すべてを取り消しました。被告が控訴したのが本件です。争点は、処分性(争点1)のほか、占用料徴収の適否、平等原則・租税法律主義違反、信義則違反、裁量権の逸脱・濫用、理由提示の不備と多岐にわたりますが、本稿の問いに関わるのは処分性の部分ですので、以下はそこを中心に見ていきます。

3 判示――附款であっても、納付義務を初めて発生させる書面は処分である

(1)第一審が示した枠組み――書面の交付によって初めて納付義務が発生する

控訴審は、処分性について第一審の判断を引用し、そのうえで附款論に対する判断を追加しています。まず、引用された第一審の判示です。第一審は、占用料の徴収に関する法令の定めを確認したうえで、次のように述べました。

引用(大阪地判令和元年7月31日・第3の1(1))

「これらの規定に照らすと,会社管理高速道路等に関する占用料を徴収するか否か及びこれを徴収する場合の額の決定は,被告の合理的な裁量に委ねられており,被告が占用の許可を受けた者に対して前記のとおりの納付すべき金額,期限及び場所を記載した書面を送付又は交付する行為によって初めて,具体的な占用料の納付義務が発生するものと解される。」

「そうすると,被告の前記行為は,道路整備特別措置法により読み替えて適用する道路法及び道路整備特別措置法施行令により読み替えて適用する道路法施行令を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり,占用の許可を受けた者の占用料の納付義務の有無及びその額に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから,行政事件訴訟法3条2項にいう処分に当たるものと解するのが相当である。」

要素は三つです。第一に、徴収するか否か、額をいくらにするかが行政の裁量に委ねられていること。第二に、金額・期限・場所を記載した書面によって初めて具体的な納付義務が発生すること。第三に、その行為が法律(読み替え後の道路法・同施行令)を根拠とする優越的地位に基づく一方的な公権力の行使であること。

第一審では、被告は、占用更新許可において占用料を「別途発行する納入告知書の額とする」と定めた時点で納付義務が成立している、とも主張しました。これに対する第一審の応答です。

引用(大阪地判令和元年7月31日・第3の1(2)ア)

「しかしながら,前記①の定めは額についての記載を欠き(零となる可能性もある。),額の確定を別個の行為である納入告知に委ねるものであって,具体的な占用料の納付義務の発生を根拠付けるものとはいえない。」

(2)控訴審の追加判断――納入告知は「占用許可の附款とみることができる」

控訴審は、被告の附款論を正面から受け止めました。まず、納入告知を附款と位置づけること自体は認めています。

引用(大阪高判令和3年12月14日・第3の1(2))

「占用料の徴収は占用の許可を前提にするが、法律上、占用の許可がされれば当然に占用料が徴収される仕組みになっていない(占用の許可をした上で、占用料の徴収をしないこともできる。)。そのため、控訴人は、占用料を徴収するためには、占用許可を受けた者に「納付すべき金額、期限及び場所を記載した書面」を交付しなければならないとされており(道路整備特別措置法施行令12条1項、道路法施行令19条の2第1項)、この書面の交付が、本件で納入告知といわれているものである。この納入告知は、占用の許可を前提にするが、占用の許可に当然には結びついていない占用料納付義務という法効果を発生させるためのものであるから、占用許可の附款とみることができる。」

ここで押さえておきたいのは、「許可がされれば当然に占用料が徴収される仕組みになっていない」という認定です。許可と納付義務が法律上当然に結びついていないからこそ、納付義務を発生させる行為は、許可に付け加えられた附款として位置づけられる。附款である、という被告の主張の前半は、そのまま認められています。

(3)それでも処分性は否定されない

問題はその先です。本判決のいちばん大切な部分です。

引用(大阪高判令和3年12月14日・第3の1(2))

「しかし、本件各納入告知を占用許可の附款と位置付けることができるからといって、直ちにその処分性が否定されることになるわけではない。本件各占用更新許可(このうち平成26年3月31日付けでされた占用更新許可は占用期間を同年4月1日から平成29年3月31日までとし、平成29年3月31日付けでされた占用更新許可は占用期間を同年4月1日から平成32年3月31日までとする。)において、控訴人は、占用料について、「別途発行する納入告知書の額」としているのみであり、金額すら確定していないのであるから、将来占用料を徴収することを予告しているにすぎないとみるほかなく、これによって占用料納付義務が発生することはないし、その許可の書面が占用料の「納付すべき金額、期限及び場所を記載した書面」に当たらないことは明らかである。被控訴人の占用料納付義務は、「納付すべき金額、期限及び場所」を明記した本件各納入告知の書面によって初めて発生するといわなければならない。そうである以上、本件各納入告知の性質が附款であるとしても、これが処分に当たることを否定することはできない。」

附款と位置づけられることと、処分に当たることとは、両立する。許可の書面に「別途発行する納入告知書の額」としか書かれていなければ、それは将来の徴収の予告にすぎず、納付義務を発生させない。納付義務は、金額・期限・場所を明記した納入告知の書面によって初めて発生する。だから、納入告知は処分である。――これが本判決の論法です。「既に課された占用料の額を通知し納付を促す書面にすぎない」という被告の主張の後半は、退けられました。

(4)不利益処分としての理由提示

処分性を認めた帰結として、本判決は、納入告知を行政手続法上の不利益処分と位置づけました。

引用(大阪高判令和3年12月14日・第3の2(1))

「前記1で判断したとおり、本件各納入告知は、控訴人が被控訴人に直接、本件ビルに係る本件高速道路の占用料の納付義務を課する処分であるから、行政手続法2条4号所定の不利益処分に該当する。」

そのうえで、平成26年度の納入告知については、通達の名称を引用するだけで、長年免除されていた占用料を免除しないこととした理由も、減額率を決めた理由も書かれていないとして、理由の提示を欠く違法な処分であると判断しました。もっとも、この理由提示の部分は、補助金の事件にはそのまま当てはまりません。この点は後記6(3)で述べます。

(5)本案の結論と、判決の帰趨

本案については、本判決は、占用料の徴収に関する裁量判断について、通達に違反した場合に裁量権の逸脱・濫用として違法となるとしたうえで、判断過程の審査をするという枠組みを示しました。

引用(大阪高判令和3年12月14日・第3の5(1)ア)

「占用料を徴収するために控訴人がした納入告知は、昭和42年局長通達又は昭和54年課長通達に違反した場合に、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法とすべきである。」

「裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合にも、裁量権の逸脱又は濫用として違法とすべきものと解するのが相当である。」

結論として、平成26年度の納入告知は理由提示を欠くものとして、平成27年度の納入告知は、40年以上にわたる免除によって形成された信頼を裏切るものとして信義則に反し、裁量権の逸脱・濫用があるとして、いずれも取り消されました。他方、平成28年度から平成30年度までの納入告知は、徴収再開から年数が経ち、納付の準備や協議の時間があったことなどから信義則違反とまではいえず、適法とされました。第一審が5年度分すべてを取り消したのに対し、控訴審は2年度分の取消しにとどめ、3年度分については原判決を取り消して請求を棄却しています。

本判決は高等裁判所の判決です。判例時報2545号27頁に掲載され、評釈として自治研究101巻8号130頁が挙げられていますが、当職は未読です。上告・上告受理の申立ての有無とその結果は、当職が確認した範囲の公刊物では確認できていません。したがって、本判決は確定した最高裁判例として引けるものではなく、高等裁判所の一つの判断として扱うべきものです。

4 この判決の決め手はどこにあったのか

補助金の場面に持ち込む前に、本判決が処分性を認めた決め手を分解しておきます。以下は判決の説示から当職が抽出したもので、判決自身がこの順序で整理しているわけではありません。

(1)本体の許可には法律上の根拠があり、納付義務を課す権限もその法律から出ている

占用許可は道路法32条1項に基づく処分であり、占用料の徴収は同法39条1項本文が授権しています。第一審は、納入告知を「道路法及び……道路法施行令を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使」と述べました。附款であっても、その根拠は本体の処分の根拠法に求められています。通達は、裁量権の範囲を定めたものとして位置づけられています(第3の5(1)ア)。

(2)許可がされれば当然に納付義務が生じる仕組みにはなっていない

「占用の許可をした上で、占用料の徴収をしないこともできる」(第3の1(2))。徴収するか否か、額をいくらにするかは、法令と通達の枠の中で行政の判断に委ねられています。だから、許可と納付義務は法律上当然には結びつかず、納付義務を発生させる別の行為が必要になります。

(3)許可の時点で金額が確定しておらず、金額・期限を明記した書面で初めて義務が発生する

許可の書面には「別途発行する納入告知書の額」としか書かれていませんでした。これは「将来占用料を徴収することを予告しているにすぎない」。納付義務は、金額・期限・場所を明記した納入告知の書面によって「初めて発生する」。この事実認定が、「既に課された占用料の額を知らせただけ」という主張を切りました。

(4)同じ構造の裁判例――東京高判平成31年3月7日

本判決と同じ考え方を示した裁判例として、東京高判平成31年3月7日訟務月報65巻8号1155頁があります。国有財産法18条6項に基づく行政財産の使用許可において、使用料が「別途通知する額」とされ、後日、納入告知書が送付された事案です。同判決は、使用料は「国の行政処分(附款たる負担)により決定されることを踏まえた手続がとられていた」とし、使用料は「使用許可に付される付随的な条件ともいうべきものであるから,これが使用許可と同時に確定額が決定され相手方に告知された場合はもとより,本件のように使用許可の際には別途通知するとされ,同許可に後れて決定され告知された場合においても」、使用許可と性質を異にするものではないとして、納入告知書の送付による告知に当たって「本件使用許可の附款として別途定めるとされていた使用料を確定する行政処分がされたものと解することが相当である」と判示しました。判例タイムズ1470号138頁の解説も、同判決を、使用許可の付款として別途定めるとされていた使用料を確定する行政処分が納入告知書の送付によってされたものと解した判決として整理しています。

許可の時点では額が決まっておらず、後から届いた金額の通知が、附款の内容を確定する処分である。――本判決と東京高判平成31年3月7日は、附款たる負担の金額が許可に後れて通知される場面について、同じ方向の判断を示しています。

5 補助金の財産処分の承認と納付の求めに当てはめると

ここからは、前記の判決・文献を踏まえた当職の当てはめです。本判決は補助金の事件ではなく、以下は当職の見解であることを先に申し上げておきます。

(1)22条の承認は、法律に基づく処分である

補助金適正化法22条は、補助事業者等は、補助事業等により取得した財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない、と定めています。この承認について、最高裁判所判例解説民事篇令和3年度79頁は、「同条における各省各庁の長の承認は,禁止の解除の効果を持つ独立の行政行為であり,講学上の許可に相当する」と述べています。承認は、法律(22条)に根拠を持つ処分です。独立行政法人が交付する補助金のうち、独立行政法人中小企業基盤整備機構法16条のように補助金適正化法を丸ごと準用する定めがあるものについては、理事長の承認も同じ位置づけになります。準用の有無で何が変わるかは、独立行政法人や事務局から交付された補助金の取消し・返還は、取消訴訟で争えないのかで扱っています。

(2)納付の義務は、承認に付された附款(負担)である

承認に伴う納付の義務は、法律の条文から直接出てくるものではありません。最三小判令和3年3月2日民集75巻3号317頁は、「法22条に基づく承認に際しては,補助事業者等において補助金等の全部又は一部に相当する金額を納付する旨の条件を附すことができると解される」と述べました。調査官解説は、この「条件」を、講学上の附款のうち「負担」に分類されると考えられるとし、負担を付すには法律の根拠が必要と解されているところ、その根拠は補助金適正化法の仕組みにあるとしています(最高裁判所判例解説民事篇令和3年度80頁)。この最高裁判決と、納付義務の根拠が附款であることについては、財産処分の承認を受けたら、補助金を返さなければならないのかで詳しく扱っています。

つまり、構造は本判決と同じです。本体(承認)は法律に基づく処分であり、納付義務は本体に付け加えられた負担であり、その根拠は本体の根拠法の仕組みに求められている。本判決で、占用許可が道路法に基づく処分であり、占用料の納入告知が道路法を根拠とする附款であったのと、対応しています。

(3)承認がされれば当然に納付義務が生じる仕組みにはなっていない

22条は、承認を受けないで処分してはならないと定めるだけで、承認を受けたら補助金を返せとは書いていません。調査官解説も、同条に明文で規定されたところに基づく対応としては「(無条件での)承認又は不承認」になるところ、行政の弾力的対応のため、国庫補助金相当額の返納を条件として承認することが禁止されているとは解し難い、という筋で納付条件の根拠を説明しています(最高裁判所判例解説民事篇令和3年度80頁)。納付条件を付すか否か、付すとして額をいくらにするかは、法の仕組みの下で交付行政庁の判断に委ねられています。本判決の言い方になぞらえれば、承認をした上で納付を求めないこともできる仕組みです。

(4)金額・期限を明記した書面によって初めて納付義務が発生するのであれば、その書面は処分である

ここが本判決の当てはめの核心です。承認の通知書に金額が書かれていない、あるいは承認の通知書そのものが交付されず、後から「○○円を○日以内に納付せよ」という書面だけが届く。この場合、事業者の納付義務は、その書面によって初めて金額と期限を与えられ、発生しています。本判決の組み立てに従えば、その書面は、承認に伴う負担の内容を確定して相手方に告知した行為であり、「附款であるとしても、これが処分に当たることを否定することはできない」ということになります。東京高判平成31年3月7日が、使用許可に後れて届いた使用料の納入告知書を「使用許可の附款として別途定めるとされていた使用料を確定する行政処分」としたのと、同じ位置づけです。

反対に、承認通知書に納付条件の金額・期限まで明記されているのであれば、納付義務はその承認(に付された負担)によって発生しており、その後の納付書は、本判決で被告が主張したような「額を通知し納付を促す書面」に近づきます。その場合に争うべき対象は、負担の付された承認そのもの、ということになります。どちらの形で届いたかによって、取消しを求める対象が変わります。

(5)附款(負担)は、本体とは別に取消訴訟の対象となり得る

附款そのものを本体の処分と切り離して争えるかについては、学説上、「附款が独立して抗告訴訟の対象となりうるかについては,少なくとも負担については一般に積極に解されており」(見上崇洋「行政行為の附款(2)」行政判例百選Ⅰ〔第6版〕194頁)とされています。曽和・前掲61頁も、「附款もそれ自体相手方の権利義務を左右する法効果を持つので行政行為である」としたうえで、本体と附款が分離可能である場合には「附款(だけ)の取消訴訟を提起して附款の違法を争うことになる」と説明しています。承認の効力を残したまま納付の負担だけを争う、という形が、理論上は想定されています。

そして、調査官解説は、最三小判令和3年3月2日の事案に即して、次のように述べています。

引用(最高裁判所判例解説民事篇令和3年度93頁・注8)

「仮に,補助金等の交付決定を受けた者において,承認に付された「条件」に不服があれば,承認自体又は附款である「条件」について,地方公共団体にあっては法25条による不服の申出,それ以外の者にあっては行政不服審査法による審査請求や,取消訴訟を提起することが考えられる。」

承認に付された納付の条件に不服があるときに、承認自体又は附款である条件について取消訴訟を提起することが考えられる。――最高裁判所の調査官が、注においてではありますが、この争い方を明示しています。本判決は、この争い方が、附款論によって入口で閉ざされるものではないことを、別の法分野で裏づけたものと位置づけることができます。

6 この判決はどこまで使えるか――射程と限界

正直に書いておかなければならない部分です。

(1)高等裁判所の判決であり、上告の帰趨は確認できていません

前記3(5)のとおり、本判決は高等裁判所の判決であり、上告・上告受理の申立ての有無とその結果は、当職が確認した範囲の公刊物では確認できていません。処分性の判断は第一審と控訴審で一致していますが、確立した判例として引けるものではなく、他の裁判所が別の結論を採る可能性は残ります。

(2)道路法の事案であり、補助金の事案ではありません

本判決は、占用料の徴収を道路法39条1項本文が授権し、徴収の方法を政令が「納付すべき金額、期限及び場所を記載した書面」と定めている仕組みを前提に判断しています。補助金適正化法には、納付条件の徴収方法をこのように定めた条文はなく、納付の様式や上限は交付行政庁の規程で定められているのが通例です。前記5の当てはめは、本判決の論法を補助金の仕組みに移したものであって、裁判所がその当てはめを認めた例があるわけではありません。承認に伴う納付の求めが処分に当たるかについて正面から判断した裁判例は、当職の知る限り公刊物に見当たりません。

(3)理由提示の部分は、補助金の処分には使えません

本判決は、納入告知を行政手続法2条4号の不利益処分と位置づけ、理由提示の不備を理由に平成26年度の納入告知を取り消しました。しかし、補助金適正化法24条の2は、補助金等の交付に関する各省各庁の長の処分については、行政手続法第2章及び第3章の規定は適用しないと定めています。同法を準用する独立行政法人の補助金でも同じです。補助金適正化法が自ら理由提示を求めているのは、交付決定の取消し等の一定の処分に限られます(同法21条の2)。したがって、承認に伴う納付の求めについて、本判決の理由提示の部分をそのまま持ち込むことはできません。算定根拠が示されていないという事情は、手続違反としてではなく、考慮すべき事情を考慮したかという裁量審査の中で使うことになります。

(4)交付規程や要綱だけに根拠がある補助金には、当てはまりません

本判決の論法は、本体の許可が法律に基づく処分であることを前提にしています。補助金適正化法の適用も準用もなく、事務局の交付規程や自治体の要綱だけに根拠がある補助金では、承認そのものが処分に当たらないとされる可能性があり、その場合には、納付の求めも契約上の請求として扱われます。処分性が裁判所でも割れている類型については、従来のものづくり補助金の交付決定の取消し・返還請求は、取消訴訟で争えるのかで扱っています。

(5)処分であることは、取消訴訟の入口が開くということであって、勝てるということではありません

本判決自身、処分性を認めたうえで、5年度分のうち3年度分の納入告知を適法としています。処分性が認められても、納付条件の内容が附款として許される範囲にあるか、裁量権の逸脱・濫用があるかは、別に主張し立証しなければなりません。附款の許容性と限界の考え方は、補助金の納付命令とは何かで整理しています。

(6)処分であることの裏側――出訴期間

処分であれば、取消訴訟は、処分があったことを知った日から6か月以内に提起しなければなりません(行政事件訴訟法14条1項)。納付の求めが処分だと考えるのであれば、その書面が届いた日から期間が進みます。交渉や照会を続けているうちに期間が過ぎることは、避けなければなりません。出訴期間の考え方は、交付決定の取消しから6か月を過ぎたら、取消訴訟は起こせないのかで扱っています。

7 承認に伴う納付の求めが届いたときに確かめること

ここからは、前記の判決・文献を踏まえた当職の整理です。承認に伴って納付を求める書面が届いたときに、確かめる順序を示します。

(1)承認の通知と納付の求めが、どのような形で届いたか

最初に確かめるのは、書面の形です。承認通知書は交付されているか。交付されているなら、そこに納付の条件(金額・期限・算定方法)が書かれているか。それとも、承認通知書はなく、納付を求める書面だけが届いているか。本判決の論法に従えば、金額・期限を明記した書面によって初めて納付義務が発生したのであれば、その書面が取消しを求める対象になります。承認通知書に条件が明記されているのであれば、負担の付された承認が対象になります。

(2)納付を求める根拠が、どこに置かれているか

書面に記載された根拠条文を確かめます。補助金適正化法22条の承認に伴う条件として求めているのか。交付規程の条項だけを挙げているのか。交付規程の定めが法律上の根拠に代わるものではないことは、交付規程違反は補助条件違反に当たるのかで扱っています。また、そもそも承認の対象となる行為だったのか――処分制限期間を過ぎていないか、「目的外使用」に当たる行為だったのか――は、納付条件の前提に関わります。補助金の「目的外使用」とは何かも併せてご覧ください。

(3)金額の算定根拠が示されているか

残存簿価相当額か譲渡額か、補助率をどう乗じたか、どの財産を対象にしたかが分かる記載があるか。前記6(3)のとおり、行政手続法の理由提示の規定は使えませんが、算定根拠が示されないまま納付を求められているという事情は、交付行政庁が何を考慮して額を決めたのかを問う材料になります。納付額の算定の考え方は、補助金の返還額はどう計算するのかにまとめています。

(4)期限と出訴期間

納付の期限と、書面が届いた日を記録します。取消訴訟の出訴期間は、処分を知った日から6か月です。照会や交渉を続ける場合も、この日付を起点に逆算して進める必要があります。

(5)記録に残しておくこと

承認申請の経緯、事務局とのやり取り(メールの文面、指示された記載例)、届いた書面の全部と封筒の消印、電話での説明の日時と内容。処分性が争いになる場面では、「どの書面によって初めて金額と期限が示されたか」が決め手になりますので、書面の順序と日付が分かる形で保存しておくことが重要です。

8 まとめ

財産処分の承認に伴って納付を求められたとき、「附款にすぎないから処分ではない」、「既に決まった額を知らせただけの書面である」という説明は、当然に通るものではありません。

大阪高判令和3年12月14日は、道路の占用料の納入告知について、許可がされれば当然に占用料が徴収される仕組みにはなっておらず、納入告知は占用許可の附款とみることができるとしたうえで、附款と位置づけることができるからといって直ちに処分性が否定されるわけではないとし、許可の書面が「別途発行する納入告知書の額」としか定めていない以上、納付義務は金額・期限・場所を明記した納入告知の書面によって初めて発生するから、附款であるとしても処分に当たることを否定することはできない、と判断しました。東京高判平成31年3月7日も、使用許可に後れて届いた使用料の納入告知を、附款として別途定めるとされていた使用料を確定する行政処分としています。

補助金適正化法22条の承認は、法律に基づく処分であり(最高裁判所判例解説民事篇令和3年度79頁)、承認に伴う納付の条件は、承認に付された附款(負担)であって、その根拠は同法の仕組みにあるとされています(同80頁、最三小判令和3年3月2日)。承認がされれば当然に納付義務が生じる仕組みにはなっておらず、金額・期限を明記した書面によって初めて納付義務が発生するのであれば、本判決の組み立てに従う限り、その書面は取消訴訟の対象となる処分であると考えられます。調査官解説も、承認に付された条件に不服があれば、承認自体又は附款である条件について取消訴訟を提起することが考えられる、としています(同93頁注8)。

他方で、本判決は高等裁判所の判決であって上告の帰趨は確認できておらず、道路法の事案であって補助金の事案ではありません。理由提示の部分は補助金適正化法24条の2により補助金の処分には使えず、交付規程や要綱だけに根拠がある補助金には当てはまりません。処分であることは取消訴訟の入口が開くということであって、納付条件の内容の当否は別に争わなければならず、処分であれば出訴期間は6か月です。

ご相談をお考えの事業者の方へ

承認に伴う納付の求めが届いた段階で、「附款だから争えない」とも「承認を受けたのだから払うしかない」とも決めてしまう前に、確かめていただきたいことがあります。承認の通知と納付の求めがどのような形で届いたのか、金額と期限を初めて示した書面はどれか、根拠がどこに置かれているのか、算定根拠が示されているのか、そして、そもそも承認を要する行為だったのか。

承認申請書と添付書類、事務局とのやり取り、届いている通知書類、交付決定通知書と交付規程があれば、具体的な検討ができます。納付を求める書面には期限が付されていることが多く、処分であれば出訴期間も進みますので、書面が届いたら早い段階でご相談ください。

士業の先生方へ

顧問先から「財産処分の承認を申請したら、納付を求める書面が届いた」というご相談を受けることがあろうかと存じます。承認と納付の求めが処分に当たるかは、争い方の入口を決める問題であり、書面の形と届いた順序によって答えが変わります。出訴期間の管理も含め、行政訴訟の側からの検討が必要な場面では、その部分だけを分担してお引き受けすることもできます。中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方からのご相談も承っております。連携の形は士業の先生方へにまとめております。

※ 本稿は一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。本稿の第4節、第5節、第6節(2)から(6)まで及び第7節は、当職の見解を含みます。具体的な対応は、承認通知書・納付を求める書面・交付規程等の資料に基づく個別の検討が必要です。

※ 本稿は、執筆時点の法令・公表資料に基づく一般的な整理であり、当職の私見を含みます。個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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