本文へ移動
弁護士 岸上大起

申請を認定支援機関に手伝ってもらった――「制度を知っていたはずだから悪質だ」と言われたら

このページの結論

補助金の申請を認定経営革新等支援機関(中小企業診断士の先生など)に手伝ってもらいました。交付する側からは、専門家が関与していたのだから制度の内容を知っていたはずで、違反は故意であって悪質だと言われています。そういうものなのでしょうか。

支援を受けて申請することは、制度が予定している進め方です。事業再構築補助金の公募要領でも、事業計画について金融機関等又は認定経営革新等支援機関の確認を受けていることが、主な事業類型の補助対象事業の要件の一つに挙げられています。支援を受けて申請したことが、補助金適正化法17条1項が定める三つの取消事由のいずれかに当たるという定め方は、されていません。

また、「知っていたはずだ」「故意だ」「悪質だ」という評価は、取消事由に当たる事実があることを前提として、取り消すかどうか・どこまで取り消すかを決める場面で持ち出されるものです。まず取消事由に当たる事実があるのかが問われますので、支援機関が関与していたかどうかという一事で結論が決まるものではないと考えております。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 どういう言われ方をされるのか

補助金の申請に当たって、認定経営革新等支援機関(認定支援機関と呼ばれることもあります)や、中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方の支援を受けることは、よくあることです。ところが、交付決定の取消しが問題になる場面で、支援を受けていたこと自体を挙げて、専門家が関与していたのだから制度の内容を知っていたはずであり、したがって違反は故意であって重大かつ悪質である、という形の指摘を受けることがあります。

この言い方は、本来は別の二つの問題を、一つにまとめています。一つは、そもそも取消しの対象となる違反に当たる事実があるのかという問題です。もう一つは、違反があるとした場合に、取り消すかどうか、どこまで取り消すかという問題です。以下では、支援を受けることが制度の中でどう位置づけられているかを確かめたうえで、この二つを分けて整理します。

2 支援を受けて申請することは、制度が予定している進め方です

認定経営革新等支援機関は、法律に基づく認定を受けた者です。中小企業等経営強化法31条1項は、主務大臣が、同条2項に規定する業務(経営革新等支援業務)を行う者であって基本方針に適合すると認められるものを、その申請により認定することができると定めています。そして同条2項は、その業務として、経営革新又は経営力向上を行おうとする中小企業等の経営資源の内容、財務内容その他経営の状況の分析(1号)と、経営革新のための事業又は経営力向上に係る事業の計画の策定に係る指導及び助言並びに当該計画に従って行われる事業の実施に関し必要な指導及び助言(2号)を挙げています。計画をつくる段階と、計画に従って事業を実施する段階の両方について、指導と助言を受けることが、法律の側で想定されているということです。

補助金の側でも、同じことが要件として組まれています。事業再構築補助金の公募要領は、事業類型(A)〜(D)の補助対象事業の要件として、事業計画について金融機関等又は認定経営革新等支援機関の確認を受けていることを挙げ(事業再構築補助金公募要領(第12回・1.3版)16〜17頁。公募要領では【金融機関要件】と呼ばれています)、事業計画は金融機関等又は認定経営革新等支援機関と相談の上で作成し、確認を受けてくださいとしています(同19頁)。どちらの確認によるのかは、補助事業の実施に当たって金融機関等から資金提供を受けるかどうかによって決まるものとされています(同頁)。

もっとも、同じ公募要領は、支援を受けることと、申請者自身の責任とを、次のように書き分けています。

引用(事業再構築補助金公募要領(第12回・1.3版)5頁)「本事業は、中小企業等の事業再構築への挑戦を後押しし、新たに取り組む事業の付加価値額を高めることを支援するものであり、申請者は事業計画の作成、実行及び成果目標の達成に責任を持って取り組んでいただく必要があります。検討やブラッシュアップのために認定経営革新等支援機関を含む外部機関の助言を受けることは差し支えございませんが、必ず申請者自身で作成してください。作成自体を外部機関が行うことは認められません。」

助言を受けることは差し支えないとされ、他方で、計画の作成と実行の責任は申請者にあるとされています。支援を受けることと、申請者自身が内容を理解して申請することとは、両立するものとして組まれているということです。

交付規程が定める様式にも、支援機関の関与を書く欄が置かれています。以下の様式の番号と文言は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)のものです。補助事業実績報告書の別紙(様式第6の別紙1)には「7.認定経営革新等支援機関による関与・支援等の状況」の欄があり、事業化状況の報告の別紙(様式第13の別紙「事業化状況等の実態把握調査票」)にも「(3)認定経営革新等支援機関の関与・支援等の状況」の欄があります。関与があったことは、報告すべき事柄として制度の中に置かれているものです。

また、中小企業等経営強化法38条は、中小企業基盤整備機構が、認定経営革新等支援機関の依頼に応じて、専門家の派遣その他経営革新等支援業務の実施に関し必要な協力の業務を行う旨を定めています(同法12条が、独立行政法人中小企業基盤整備機構を「中小企業基盤整備機構」と定義しています)。中小機構の業務の範囲を定める中小機構法15条1項9号も、中小企業等経営強化法38条の規定による協力を行うことを、機構の業務として挙げています。

このように、支援機関の関与は、制度の外から持ち込まれたものではなく、制度の中に置かれている仕組みです。支援を受けて申請したこと自体が、事業者にとって不利に働くものではないと考えております。

3 支援を受けたこと自体は、取消事由ではありません

交付決定を取り消すことができる場合は、補助金適正化法17条1項が定めています(中小機構が交付する補助金では、中小機構法16条による準用です)。同項が定める取消事由は、補助金等の他の用途への使用、交付の決定の内容又はこれに附した条件(補助条件)への違反、法令又はこれに基く処分への違反の三つです。

支援を受けて申請したことが、このいずれかに当たるという定め方は、されていません。ですから、支援機関の関与は、それ自体が取消事由となるものではないと考えております。取消しが問題になっている場面で先に確かめるべきことは、指摘されている事実が、三つの取消事由のどれに当たるとされているのかです。交付規程の条項番号が挙げられている場合の見方は、交付規程に違反したと言われたらで述べています。

4 「悪質」「故意」は、どこまで取り消すかを決める場面の評価です

17条1項は、「取り消すことができる」という定め方です。取り消すかどうか、全部を取り消すか一部にとどめるかについては、判断の余地があるものとされています。知っていたはずだ、故意である、悪質である、という評価は、取消事由に当たる事実があることを前提に、取り消すかどうか・どこまで取り消すかを決める場面で持ち出されるものです。

そうすると、順序があります。まず、取消事由に当たる事実があるのかどうかが問われ、それが認められない限り、故意であるとか、重大かつ悪質であるとかいう評価は、その前提を欠くことになると考えております。支援機関が関与していたかどうかという一事で、結論が決まるものではありません。

取り消すかどうかの裁量にも限度があることは、補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのかで述べています。取消通知・返還命令が届いた場合の進み方は、交付決定の取消し・返還請求をご覧ください。

次のような場合は、手続が進む前にご相談ください

  • 取消しの事前通知や交付主体の書面に、専門家が関与していたから故意である・悪質であるという指摘がある
  • 申請を支援機関に手伝ってもらったことを挙げて、全部の取消しを告げられている
  • 申請の際に受けた支援の内容について、説明や資料の提出を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 取消しに裁量はあるのか(Q&A)/交付決定の取消し・返還請求(対応ページ)

5 残しておいていただきたいやり取りの記録

支援を受けた経過があることは、それだけで故意や悪質性を示すものではないと考えております。他方で、どのような助言を受けて、どう手続を進めたのかという経過は、評価の前提となる事実ですので、記録が残っているかどうかが効いてきます。

  • いつ、何について相談し、どのような助言を受けたのか。日付の分かる形(メール、チャット、打合せのメモ)で残してください。
  • その助言に従って、どの書類を、いつ、どこへ提出したのか。提出したものは控えを残してください。
  • 交付主体・事務局からの照会に対して、誰が、どの資料に基づいて回答したのか。
  • 指摘を受けた後に、何を、いつまでに行ったのか。

どの事情が、どこまで考慮されるかは、事案ごとの事実によります。記録は後から作れるものではありませんので、指摘を受けた段階で、お手元にあるものをそろえておいていただければと思います。

顧問先・支援先についてこのような指摘を受けている士業・支援機関の先生方は、士業・支援機関・お取引先企業の方へをご覧ください(連携の形は顧問先の補助金トラブルと弁護士との連携で述べています)。

支援を受けて申請したことを理由に、故意であるとか悪質であるとか指摘されている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、返還に応じる前にご相談ください。支援機関とのやり取りの記録が残っている場合は、あわせてご用意いただけますと、経過を確かめやすくなります。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

Contact

補助金トラブル・中小企業法務・一般民事ご相談を承ります

ご相談はお問い合わせフォーム、メール、お電話、または LINE よりお願いいたします。法律相談料は30分 5,000円(税別・税込5,500円)です。ご相談はオンラインでも承っています。

お電話の受付は平日10:00〜18:00です(出られないときは折り返します)。

士業・支援機関・お取引先企業の方からのご相談・ご紹介も受け付けています。連携のご案内 →