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弁護士 岸上大起

公募要領や交付規程に書いてあるだけの基準で、不採択や取消しにできるのか

このページの結論

不採択(不交付)や交付決定の取消しの理由として、公募要領の一節や交付規程の条項番号だけが挙げられていました。法律に書いていないことを理由に落とされた・取り消されたのですが、争えるのでしょうか。

争い方は二つに分かれます。自分の事実がその基準に当てはまらないという争い方と、その基準そのものが効力を持たないという争い方です。最高裁は、典型的な法規命令としての性質を有するとはいえない基準についても、その策定の基礎が法律の委任にあることなどから、法律の委任の範囲内で定められるべきものであるとし、委任の範囲を逸脱した部分は違法で無効であるとしています。公募要領・交付規程の定めが補助金適正化法の委任の範囲を超えていないかは、正面から争う余地があると考えております。

補助金適正化法4条の「特別の定」に当たるのは、法律又は法律の委任に基づく委任命令・執行命令の形式で定められたものに限られ、交付規程・交付要綱のような行政規則は含まれないとされています。したがって、交付規程や公募要領の定めによって、法律が定めるところより重い義務を事業者に課すことはできません。もっとも、この争い方は材料をそろえて出さなければ単なる不満として読まれますので、授権規定の文理、委任の趣旨、法律の仕組みとの整合性、制限される利益の性質の四つを条文と資料で埋めることになります。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 争い方は二つに分かれます

不採択の通知にも、交付決定の取消しの通知にも、根拠として公募要領の一節や交付規程の条項番号が書かれていることがあります。法律には書かれていないことを理由にされた、という場面です。このとき、争い方は二つに分かれます。

  • 一つは、自分の事実がその基準に当てはまらないという争い方です。基準そのものは前提にしたうえで、当てはめが誤っていると述べることになります。
  • もう一つは、その基準そのものが効力を持たないという争い方です。公募要領や交付規程に書いてあること自体が、法律が認めた範囲を超えているのではないか、という問題の立て方です。

実務では、前者だけで組み立てた書面が出されていることが多いように見受けられます。後者は、行政の側が示した基準の有効性を正面から問うものですから、言いにくい気がするかもしれません。しかし最高裁は、法規命令の形をとっていない基準についても、法律の委任の範囲を逸脱していれば効力を有しないという判断をしています。以下では、その判断の枠組みと、補助金の公募要領・交付規程に当てはめるときに見るべき点を整理します。

2 法規命令の形をとっていない基準でも、委任の範囲内でなければなりません

最三小判令和2年6月30日民集74巻4号800頁があります。ふるさと納税制度について、特例控除の対象となる寄附金の寄附先として総務大臣の指定を受けるための基準を定めた総務省告示の一部が争われた事件です。判決要旨は次のとおりです。

引用(最三小判令和2年6月30日民集74巻4号800頁・判決要旨)「ふるさと納税制度に係る平成31年総務省告示第179号2条3号の規定のうち,地方税法37条の2及び314条の7を改正する平成31年法律第2号の規定の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分は,上記規定による改正後の地方税法37条の2第2項及び314条の7第2項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である。」

この判決の組み立てで補助金の場面に効いてくるのは、争われた基準が、国民の権利・義務を直接規律する典型的な法規命令ではなかったという点です。調査官解説は、同告示について、その内容は指定を受けるための基準を定めるものであって、行政主体と国民(私人)の関係の権利・義務に関する規律を直接定めるものではないため、典型的な法規命令としての性質を有するとはいえないとし、そのため、法規命令についていわれる「国民の権利・義務に関する規律を定めるものであるため法律の授権(委任)が必要である」という準則は、直ちに当てはまらないものと解されると述べています(貝阿彌亮・最高裁判所判例解説民事篇令和2年度304頁)。

それでも委任の範囲が問題になった理由として、同解説は、法律の規定が基準の策定を大臣に委ねており、大臣はこの法律の規定の委任に基づいて当該基準を定めたものであることを挙げています。そして同解説は、本判決について、同告示の規定が法規命令としての性質を有するか否かという点を直接問題とすることなく、その策定の基礎が法律の委任にあること及びその内容において関与の法定主義の趣旨が及ぶものであることから、法律の委任の範囲内で定められるべき性質のものであるとの解釈を導いたものということができると整理しています(同304〜305頁)。

補助金の公募要領や交付規程も、法規命令ではありません。けれども、「法規命令ではないから委任の範囲という問題は生じない」とはいえない、ということがこの判決から読み取れます。私見としては、その定めの策定の基礎がどこにあるのかを押さえたうえで、委任の範囲の逸脱を主張する余地があると考えております。

3 委任の範囲の逸脱は、どの材料で判断されるのか

委任の範囲を逸脱しているかどうかは、感覚で決まるものではありません。調査官解説は、この論点を扱った一連の最高裁判決から、判断の材料を四つに整理しています。

引用(貝阿彌亮・最高裁判所判例解説民事篇令和2年度306頁)「これらの最高裁判決においては,委任命令の授権法適合性の判断要素として,①授権規定の文理,②授権規定が下位法令に委任した趣旨,③授権法の趣旨,目的及び仕組みとの整合性,④委任命令によって制限される権利ないし利益の性質等が考慮されており,必要に応じて授権規定の立法過程における議論等も検討の対象とされている(岡田幸人・最高裁判所判例解説民事篇平成25年度20頁以下参照)。そして,これらの諸要素を総合的に考慮した結果,当該委任命令の規定が授権法の委任の範囲を逸脱するといえる場合には,当該規定は違法であり無効と判断されている。」

同解説は、これらの最高裁判決がいずれも法規命令としての性質を有する委任命令について判断したものであることを確認したうえで、その基本的な考え方は本件告示の規定が授権法の委任の範囲を逸脱するものか否かの判断にも妥当し得るものであり、本判決の判断もこのような判例上の判断枠組みを前提とするものと解されると述べています(同306頁)。

もう一つ、書面の組み立てに直接使えるのが、制約される利益の性質によって、委任の範囲の読み方の厳しさが変わるという点です。同解説は、これまでに授権法の委任の範囲を比較的厳格に解した最高裁判決は、国民の憲法上の権利等の重要な権利利益を制約する委任命令に係るものであったといえるとし、その例として、一定の医薬品の郵便等販売を一律に禁止する内容の委任命令について、授権法の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、授権法中の諸規定から、「郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が,上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである」とした判決(最二小判平成25年1月11日民集67巻1号1頁)を挙げています(同308〜309頁)。

つまり、制約されるものが重い利益であるほど、「そういう基準を作ってよい」という授権の趣旨が法律の側から明確に読み取れることが求められる、という組み立てです。交付決定の取消しと返還命令は、既に交付を受けた補助金の返還を命じ、加算金・延滞金を伴い得るものです。私見としては、取消し・返還という結果を生じさせる基準については、この「明確に読み取れることを要する」という求め方を当てはめる余地があると考えております。

4 補助金の公募要領・交付規程に当てはめるときに見る点

ここで、補助金についての出発点を確かめます。補助金適正化法4条は、「補助金等に関しては、他の法律又はこれに基く命令若しくはこれを実施するための命令に特別の定のあるものを除くほか、この法律の定めるところによる」と定めています(中小機構が交付する補助金について同法が及ぶのは、中小機構法16条による準用です)。

この「特別の定」に何が当たるのかについて、文献は、形式的要件として、法律又は法律(又はこれに基づく命令)の委任に基づく委任命令若しくは執行命令の形式で定められたものであることを要するとし、次のように述べています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』57頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「委任命令及び執行命令は、法形式としては政令(憲法第七三条第六号、内閣法第一一条)の場合もあり、省令(国家行政組織法第一二条第一項)の場合もあるが、単なる行政規則にすぎない告示(国家行政組織法第一四条第一項)や訓令又は通達(同条第二項)の法形式はこれには含まれない。したがって、補助金等交付規程あるいは補助金等交付要綱等の行政規則に特別の規定をしても、それによって「特別の定」となることはありえない。」

交付規程・公募要領は行政規則であって、同法4条の「特別の定」には当たりません。そうすると、交付規程や公募要領の定めによって、補助金適正化法が定めるところより重い義務を事業者に課すことはできない、という線が引けます。この線の引き方は、コラム「補助金で取得した設備を廃棄することは「処分」か――裁判例紹介:東京地判平成2年1月30日判タ736号151頁」でも述べているところです。

そのうえで、公募要領・交付規程の定めを見るときの順序は、次のようになると考えております。

  • その定めが、法律のどの規定を受けたものなのか。交付の条件であれば補助金適正化法7条1項・同条3項、財産の処分であれば同法22条、取消しであれば同法17条1項です。受ける規定が見当たらないのであれば、そもそも法律上の根拠を欠いた基準ではないかという問題になります。
  • 受ける規定があるとして、その規定の文理と、その規定が下位の定めに委ねた趣旨から、当該基準を作ってよいという授権の趣旨が読み取れるか(前記3の①②)。
  • 法律の趣旨・目的・仕組みと整合するか(同③)。補助金適正化法の仕組みは、交付の条件(7条)、実績報告(14条)、額の確定(15条)、取消し(17条)、返還(18条)という順で組まれています。この順序と噛み合わない定めは、整合性の点で問題になります。
  • その定めによって制限される利益がどれだけ重いか(同④)。取消し・返還命令に直結する定めであれば、授権の趣旨がより明確であることが求められるという組み立てになります。

なお、公募要領・交付規程の条番号と文言は、補助金ごと、版ごとに異なります。書面に書くときは、どの補助金のどの版のものかを明示しておいてください(例えば、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号)であれば、改正のどの時点のものかまで特定します)。

次のような場合は、ご回答になる前にご相談ください

  • 不採択・不交付・取消しの理由として、公募要領の一節だけが挙げられている
  • 交付規程の条項番号は書かれているが、法律のどの条文を受けたものかが書かれていない
  • 申請の時点では示されていなかった基準で、後から判断されたように見える
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 交付規程に違反したと言われたら(Q&A)/補助金の交付申請が却下された。争うことはできるのか(Q&A)

5 基準ができる前の行為を理由にされたとき

前記の令和2年の最高裁判決が無効としたのは、基準のうち、改正法の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分でした。調査官解説は、本判決がこの部分の内容について、改正規定の施行前の一定期間において同号に定める寄附金の募集及び受領をした地方団体について、一律に指定の基準を満たさないこととするものであるとしたこと、そしてその趣旨を言い換えれば、そのような地方団体については、改正規定の施行前における募集実績自体を理由に、指定対象期間において寄附金の募集を適正に行う見込みがあるか否かにかかわらず、指定を受けられないこととするものといえるとしたことを説明しています(同307〜308頁)。

また同解説は、本判決が、改正規定の施行前においては返礼品の提供について特に定める法令上の規制は存在せず、技術的な助言である通知が発せられていたにとどまることを指摘したうえ、当該基準は実質的には大臣による技術的な助言に従わなかったことを理由とする不利益な取扱いを定める側面があることは否定し難いとしたことを述べています(同309〜310頁)。

補助金の場面でこれに重なるのは、申請の時点では示されていなかった取扱い、あるいは法令ではなくQ&Aや事務連絡で示されていたにとどまる取扱いを、後から不利益の理由として持ち出される場合です。私見としては、そのような取扱いを理由とする不利益については、①その取扱いが示された時期と、問題とされている行為の時期の前後、②その取扱いが法令に根拠を持つものか、助言・情報提供にとどまるものか、を分けて示すことで、委任の範囲の逸脱という組み立てにつなげる余地があると考えております。

行為の前後関係は、書面の上で特定しておきます

この争い方は、時期の前後が書面の上で特定できていないと立ちません。公募要領・交付規程のどの版がいつ公表されたのか、問題とされている行為がいつのことなのか、その間に版の改訂があったのかを、先に一覧にしておいてください。改訂があった場合、申請の時点の版と、取消しの判断に使われた版が同じかどうかが、まず確かめる点になります。

6 どう動くか

この論点は、不採択・不交付・取消しの理由が書面でどう書かれているかを出発点にします。補助金適正化法21条の2は、「各省各庁の長は、補助金等の交付の決定の取消し、補助事業等の遂行若しくは一時停止の命令又は補助事業等の是正のための措置の命令をするときは、当該補助事業者等に対してその理由を示さなければならない」と定めています。示された理由の中で、どの基準が使われているのかを特定することが最初の作業になります。

  • 通知書の写しを時系列で並べ、挙げられている根拠を、法律の条文・交付規程の条項・公募要領の記載の三つに分けて書き出します。法律の条文が挙げられていない場合は、その点自体を記録しておきます。
  • 公募要領・交付規程について、申請の時点の版と、処分の時点の版をそれぞれ保存します。公表されている版が差し替えられることがありますので、入手した日付が分かる形(印刷日付、保存日時、取得時の画面)で残してください。
  • 事務局・交付主体から口頭で説明された取扱いは、その場でメモを作り、書面又はメールで照会して回答を得る形に置き換えます。口頭の説明は、後から確かめることができません。事務局の指示の扱いは、Q&A「事務局の指示に従う義務があるのか」で述べています。
  • 当てはめの争い(前記1の前者)と、基準の有効性の争い(同後者)は、どちらか一方に絞る必要はありません。順序としては、当てはめを先に置き、基準の有効性を後に置く組み立てが読みやすいと考えております。
  • 取消訴訟には出訴期間があります(行政事件訴訟法14条1項)。期間の数え方と、期間を過ぎた場合の考え方は、Q&A「出訴期間を過ぎてしまったら、もう争えないのか」で述べています。

基準そのものの有効性を問う主張は、材料をそろえずに書くと、単なる不満として読まれてしまいます。逆に、授権規定の文理、委任の趣旨、法律の仕組みとの整合性、制限される利益の性質という四つの点を、条文と資料で埋めて出せば、正面から判断してもらえる主張になると考えております。通知書を受け取られた段階で、まずは挙げられている根拠を分けて書き出すところから始めていただくのがよいと考えております。

不採択・不交付・取消しの理由として公募要領の一節や交付規程の条項番号だけが挙げられている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご回答や不服の申立てをお出しになる前にご相談ください。通知書、申請の時点の公募要領・交付規程、処分の時点の公募要領・交付規程があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

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※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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