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弁護士 岸上大起

ものづくり補助金の手引きは「補助金等適正化法第11条第2項に従い」と書いていますが、同法の取消し・返還・財産処分の条文は、当社に向けられたものなのでしょうか

このページの結論

ものづくり補助金で設備を導入しました。事務局から、補助金等適正化法に違反するとして交付決定の取消しと返還を通告されています。公式の説明にも「補助金等適正化法第11条第2項に従い」と書かれていますが、同法の取消しや財産処分の条文は、当社に向けられたものなのでしょうか。

公式の説明が善管注意義務の根拠として引く補助金等適正化法11条2項は、間接補助事業者等についての規定であり、「交付の決定の内容及びこれに附した条件」に従う義務を書いていません。これに対し、交付決定の取消し(17条1項)、返還命令(18条1項)、年10.95パーセントの加算金(19条1項)、財産処分の制限(22条)は、いずれも「補助事業者等」を宛先としています。ものづくり補助金の受給事業者を縛っているのは、適正化法の条文そのものではなく、交付規程の条項が交付決定に附された条件として取り込まれた限りのものであると考えております。

もっとも、宛先が違うからといって、報告を出さない、検査に協力しないという対応をお採りになるべきではありません。11条2項の善管注意義務、23条1項の報告・検査、29条1項・30条の罰則は、受給事業者に直接届きます。条件の問題として組み直すと、その条件が公正なものか、交付の目的を達成するため必要な限度をこえていないかという7条4項の枠がかかります。なお、受給事業者を「間接補助事業者等」とみる整理は、交付決定・その取消しを取消訴訟で争えるかという入口の問題と結びついており、そちらでは不利に働く余地もありますので、どちらの土俵で争うかは事案ごとに選ぶことになります。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明――手引き8頁・公募要領44頁が引いた「11条2項」

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下「ものづくり補助金」といいます)の事務局は、全国中小企業団体中央会(以下「全国中央会」といいます)です。その全国中央会が公表している「補助事業の手引き」(23次締切。掲載日 令和8年8月7日)の8頁(PDF9頁)には、「(4)善管注意義務」という項目があります。以下、公式資料の閲覧日はいずれも2026年10月23日です。

引用(補助事業の手引き8頁「(4)善管注意義務」)「補助事業者は、補助金等適正化法第11 条第2項に従い、善良な管理者の注意をもって補助事業を行わなければなりません。例えば、補助事業者の不注意によって機械装置等を焼失・紛失し事業の継続が困難になる場合は、故意・重過失がなくても、善管注意義務違反として交付決定の取消や補助金の返還に至る場合があります。」

同じ記述は、公募要領(第23次締切。掲載日 令和8年2月6日)の44頁(PDF49頁)「(9) 善管注意義務」にもあります。

引用(公募要領(第23次締切)44頁「(9) 善管注意義務」)「補助事業者は、「補助金等適正化法」第11 条第2項に従い、善良な管理者の注意をもって補助事業を行わなければなりません。」

ここで引かれているのは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「適正化法」といいます)の11条2項です。11条には、1項と2項があります。そして、1項と2項は、宛先が違います。2項は、間接補助事業者等についての規定です。つまり公式の説明は、ものづくり補助金の受給事業者が適正化法上「補助事業者等」ではなく「間接補助事業者等」であることを、自ら前提にしているわけです。

2 11条は、1項と2項で宛先も義務の内容も違います

まず、条文を並べます。

引用(適正化法11条1項)「補助事業者等は、法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用(略)をしてはならない。」(※括弧書きは引用に当たり「(略)」としました。)
引用(適正化法11条2項)「間接補助事業者等は、法令の定及び間接補助金等の交付又は融通の目的に従い、善良な管理者の注意をもつて間接補助事業等を行わなければならず、いやしくも間接補助金等の他の用途への使用(略)をしてはならない。」(※括弧書きは引用に当たり「(略)」としました。)

違いは二つです。宛先が、1項は「補助事業者等」、2項は「間接補助事業者等」であること。そして、従うべきものが、1項は「法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分」、2項は「法令の定及び間接補助金等の交付又は融通の目的」であること。2項には、「交付の決定の内容及びこれに附した条件」に従う義務が書かれていません。

これは書き落としではありません。解説書は、次のように述べています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』209頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「ただ間接補助事業者等は、直接的には補助事業者等と補助金行政上の法律関係を結ぶにすぎず、交付行政庁と直接的な補助関係に立つわけではないから、当然のことながら、交付決定の内容に従うべきこと及び交付行政庁の処分に従うべきことは、義務内容としては課されていない。」

では、ものづくり補助金の受給事業者は、どちらなのか。公式の説明自身が、補助金の流れを書いています。手引き6頁(PDF7頁)です。

引用(補助事業の手引き6頁)「本事業は、全国中小企業団体中央会が、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)で定めた「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金交付要綱」第3条に基づき、中小機構からの補助金を受け、設備投資等の支援を行うものです。」

中小機構が交付する助成金について適正化法を準用するのが、独立行政法人中小企業基盤整備機構法16条です。「各省各庁の長」は「独立行政法人中小企業基盤整備機構の理事長」と読み替えられます。そうすると、適正化法の用語に当てはめたときの構造は、次のようになります。中小機構が全国中央会に交付する補助金が「補助金等」、全国中央会が「補助事業者等」(適正化法2条3項)、全国中央会が受給事業者に交付する補助金が「間接補助金等」(同条4項1号)、受給事業者が「間接補助事業者等」(同条6項)です。公式の説明が11条2項を引いているのは、この構造のとおりです。

3 取消し・返還・加算金・財産処分の制限は、誰に向けられた条文か

適正化法は、条文ごとに宛先を書き分けています。問題になる条文を、順に引きます。

引用(適正化法17条1項)「各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」
引用(適正化法17条2項)「各省各庁の長は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」

2項をお読みください。間接補助事業者等に違反があった場合に取り消されるのは、「補助事業者等に対し」する「当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定」です。すなわち、全国中央会に対する交付決定です。受給事業者に対する交付決定の取消しは、ここには書かれていません。解説書も、同じことを述べています。

引用(小滝・前掲書247頁)「しかしながら、本法は補助事業者等と間接補助事業者等との間接補助関係を直接規律することを目的としていないため、本条においても、間接補助金等の交付決定の取消し(又は交付契約の解除)には、直接言及していないのである。」

返還命令と加算金も、同じです。

引用(適正化法18条1項)「各省各庁の長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。」
引用(適正化法19条1項)「補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。」

年10.95パーセントの加算金の主語は「補助事業者等」です。しかも、「第十七条第一項の規定……による処分に関し」返還を命ぜられたときの規定です。17条2項による取消しは、ここに入っていません。解説書は、この書き分けが意図的なものであることを明らかにしています。

引用(小滝・前掲書248頁)「このため本法は、後述するように、第一八条第三項で補助金等の返還に関し両者の場合を別個に取り扱いうることとするとともに、第一九条の加算金の付加に関しても別個に取り扱うこととして、両者の均衡を実質的に図ることとしているのである。」

財産処分の制限も、同じです。

引用(適正化法22条)「補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」

宛先は「補助事業者等」です。「又は間接補助事業者等」とは書かれていません。他方で、適正化法は、間接補助金等を含めたいところでは、明文で「又は間接補助金等」「及び間接補助事業者等」と書いています。

  • 3条2項――「補助事業者等及び間接補助事業者等は、……誠実に補助事業等又は間接補助事業等を行うように努めなければならない。」
  • 23条1項――「補助事業者等若しくは間接補助事業者等に対して報告をさせ、又は当該職員にその事務所、事業場等に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」
  • 29条1項――「偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、又は間接補助金等の交付若しくは融通を受けた者は、五年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」
  • 30条――「第十一条の規定に違反して補助金等の他の用途への使用又は間接補助金等の他の用途への使用をした者は、三年以下の拘禁刑若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

義務(3条2項・11条2項)、検査(23条1項)、罰則(29条1項・30条)は、末端の事業者に直接届きます。これに対し、17条1項、18条1項、19条1項、22条には、その文言がありません。解説書が引く杉村章三郎博士の指摘も、17条2項の構成が通常のものではないことを前提にしています。

引用(小滝・前掲書249頁注(9)。杉村章三郎『財政法(新版)』325〜6頁の引用部分)「国が直接の関係をもたない間接補助事業者等の義務違反を取り上げて、補助事業者等の責めの有無にかかわらず、補助事業者等との関係を打ち切るもので、国の資金の最終消費者の段階における不正不当な支出をも許さないとするこの法律の強い決意を示す特異な規定であることに留意する必要がある。」

4 手引き18頁「国の補助制度は補助金等適正化法に則って財産の処分……が制限されており」

手引き18頁(PDF19頁)には、次の記述があります。

引用(補助事業の手引き18頁「4.補助対象物件の転用・試作品の無償譲渡について」)「そもそも、国の補助制度は補助金等適正化法に則って財産の処分(①補助金の交付の目的に反する使用、転用、譲渡、交換、貸付け、②担保に供する処分、廃棄等をいう)を行うことが制限されており、承認を受けずに処分(生産転用を含む)を行ってはならないと定めています。さらに、処分を行うことで得た収入に関しては、補助金の交付額を限度とした国庫納付を義務づけていました。」

「国の補助制度は」という一般的な説明としては、そのとおりです。もっとも、ものづくり補助金の受給事業者について、そのまま当てはまるものではありません。前記3のとおり、22条の宛先は「補助事業者等」です。受給事業者の財産処分を縛っているのは、適正化法22条そのものではなく、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金交付規程(制定 令和7年2月25日、最終改訂 令和8年8月5日。全国中小企業団体中央会。以下「交付規程」といいます)20条・21条です。交付規程の条項がどの資格で事業者を縛るのかは、交付決定に附された条件(補助条件)として取り込まれた限りであると考えております(Q&A「交付規程に違反したと言われたら」、Q&A「『適正化法だけで決まるものではない』と言われたら」)。

交付規程の文言も、適正化法22条とは別の建てつけになっています。承認をする者が違うのです。

引用(交付規程21条3項・4項)「3 補助事業者は、前項の規定により定められた期間内において、処分を制限された取得財産等を処分しようとするときは、あらかじめ様式第10-1による申請書を全国中央会に提出しなければならない。/4 全国中央会は、前項の規定による取得財産処分申請書の提出があった場合には、当該申請書の内容を審査し、処分内容が適性と認めたときは財産処分承認を行い、様式第10-2による取得財産処分承認通知書を申請者に送付するものとする。」(※原文は項ごとに改行されています。引用に当たり「/」で区切りました。原文の「適性」はそのままです。)

適正化法22条の承認権者は「各省各庁の長」、中小機構法16条の読替え後は中小機構の理事長です。交付規程が承認権者としているのは「全国中央会」です。手引き13頁(PDF14頁)も、処分の承認について「様式第10-2 財産処分承認通知書」による「全国中央会の承認を受けなければなりません」と書いています。公式の説明は、承認をする者が適正化法22条の「各省各庁の長」ではないことを、自ら書いているわけです。

加算金についても同じ構造があります。交付規程は、次のように定めています。

引用(交付規程19条3項)「全国中央会は、第1項第1号から第3号まで又は第6号の規定による取消しをした場合において、前項の返還を命ずる場合には、その命令に係る補助金の受領の日から納付の日までの期間に応じて、年利10.95パーセントの割合で計算した加算金の納付を併せて命ずるものとする。」

率は、適正化法19条1項と同じ年10.95パーセントです。もっとも、同項は「補助事業者等」が「第十七条第一項の規定……による処分に関し」返還を命ぜられたときの規定ですから、交付規程19条3項は、同項の適用そのものではなく、同じ率を交付の条件として定めたものと読むほかないと考えております。加算金の争い方は、Q&A「補助金の返還を求められたら、加算金・延滞金は払うのか」で述べています。

そして、交付規程1条は、適正化法を筆頭に掲げています。「適正化法に則って」という説明の出どころは、ここです。

引用(交付規程1条)「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下「補助金」という。)の交付については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「適正化法」という。)、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和30年政令第255号。以下「施行令」という。)及びその他の法令の定めによるほか、この規程で定めるところによる。」

交付規程の本文で「適正化法」の語が出てくるのは、この1条だけです。20条・21条の財産処分、19条の取消しと加算金は、いずれも適正化法の条数を引かずに、交付規程自身の条項として書かれています。

同じ手引きの中にも、宛先の揺れがあります。27頁(PDF28頁)「7.不正、不当な行為に対する処分」です。

引用(補助事業の手引き27頁)「【補助金等適正化法第17条など】/・ 補助金の他の用途への流用/・ 補助金交付決定の内容又は補助金交付条件に対する違反/・ 法令又は全国中央会及び事務局の処分に対する違反/・ 定められた必要な事項の報告をせず又は虚偽の報告をしたもの」(※原文は箇条書きです。引用に当たり「/」で区切りました。)

並んでいるのは、17条1項の要素、すなわち「補助事業者等」についての取消事由です。「交付決定の内容又はこれに附した条件」への違反は、11条1項の義務であって、2項の義務ではありません。公式の説明は、善管注意義務のところでは受給事業者を間接補助事業者等として扱い(手引き8頁)、取消しのところでは補助事業者等として扱っている(同27頁)ことになります。なお、同じ頁が引く29条の法定刑は「5年以下の懲役」とされていますが、現行法は「五年以下の拘禁刑」です。この点は、Q&A「取消しを受けると刑罰を受けるのですか」で述べています。

5 公式の説明は、一方当事者の見解です

中小機構・中小企業庁・全国中央会・各事務局の説明は、公正な第三者による解説ではなく、補助金をめぐる紛争の一方当事者の見解です。通説が説いていない立場を強く主張しているものもあります。公式の説明だからと鵜呑みにするのは非常に危険です。

本件について申し上げれば、次のとおりです。公式の説明が善管注意義務の根拠として引いた適正化法11条2項は、間接補助事業者等についての規定であり、「交付の決定の内容及びこれに附した条件」に従う義務を書いていません。交付決定の取消し(17条1項)、返還命令(18条1項)、年10.95パーセントの加算金(19条1項)、財産処分の制限(22条)は、いずれも「補助事業者等」を宛先としています。法が間接補助金等を含めたいところでは、3条2項・11条2項・23条1項・29条1項・30条のように明文を置いています。それにもかかわらず、手引き18頁は「国の補助制度は補助金等適正化法に則って財産の処分……が制限されており」と書き、受給事業者を縛っているのが法律そのものであるかのように説明しています。

私見としては、適正化法の条文が宛先を書き分けていることを前提にしないまま「法律で制限されている」と説明することは、同法の理解が浅いと言わざるを得ません。

もっとも、ここで申し上げているのは、公式の説明に従わなくてよい、ということではありません。11条2項の善管注意義務、23条1項の報告・検査、29条1項・30条の罰則は、受給事業者に直接届きます。交付規程の条項も、交付決定に附された条件として取り込まれた限りで事業者を縛ります。申し上げているのは、「適正化法○条違反」と言われたときに、その条文が誰に向けられたものかを確かめると、争える土俵が一段増えるということです。条件には、7条4項という枠がかかっているからです。

引用(適正化法7条4項)「補助金等の交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、いやしくも補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであつてはならない。」

次のような場合は、回答をお出しになる前にご相談ください

  • 事務局から「補助金等適正化法○条に違反する」として取消し・返還を通告されている
  • 財産処分や転用について、「法律で制限されている」という説明を受けている
  • 返還命令とあわせて年10.95%の加算金を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 交付規程に違反したと言われたら(Q&A)/ものづくり補助金の取消しは取消訴訟で争えるか――福岡地判平成25年2月4日(コラム)

6 通告を受けられたら、どう動くか

  • (1)交付決定通知書の主語を確かめる。「全国中央会は」「事務局は」となっているのか、「中小機構は」となっているのか。前者であれば、本稿で述べた構造に当たります。中小機構が自ら交付主体となる補助金(新事業進出補助金など)は、これには当たりません。交付決定通知書、交付規程、公募要領、手引きの版を手元にそろえてください。交付規程は補助金ごと・版ごとに条番号が違いますので、採択の回次に対応する版を確かめる必要があります。
  • (2)挙げられた条文の宛先を、条文で確かめる。「適正化法22条に違反する」「適正化法17条により取り消す」と書かれていたら、その条文の主語が「補助事業者等」か「間接補助事業者等」かを確かめてください。宛先が「補助事業者等」であるなら、受給事業者を縛っている根拠は、交付規程の条項が交付決定に附された条件として取り込まれた限りのものです。
  • (3)条件の問題として組み直し、7条4項の枠で検討する。法律の直接の適用であれば、条文の文言との当てはめだけの争いになります。交付の条件であれば、その条件が公正なものか、交付の目的を達成するため必要な限度をこえていないかという枠がかかります。手引きや公募要領にしか書かれていない取扱いであれば、そもそも交付決定に附された条件に取り込まれているのかという点から検討することになります。
  • (4)義務・検査・罰則は直接届くことを前提に動く。宛先が違うからといって、報告を出さない、検査に協力しない、という対応をお採りになるべきではありません。23条1項の報告・検査は間接補助事業者等にも及びますし、31条は報告をせず、虚偽の報告をし、検査を拒んだ者に罰金を定めています。争うべき点と、守るべき手続とを分けることが要になります。

最後に一つ申し上げます。本稿は、受給事業者が「間接補助事業者等」に当たるという整理が、事業者にとって常に有利だと申し上げるものではありません。この整理は、交付決定・その取消しに処分性があるか(取消訴訟で争えるか)という入口の問題と結びついており、そちらでは不利に働く余地もあります。下級審の判断が分かれている論点であって、どちらの土俵で争うかは、事案ごとに選ぶほかありません。この点は、コラム「従来のものづくり補助金の交付決定の取消し・返還請求は、取消訴訟で争えるのか」で、当方に不利な点も含めて書いています。通告書の文面を見ないまま方針を決めることは、お避けください。

事務局から「補助金等適正化法○条に違反する」として取消し・返還を通告されている事業者の方、財産処分や転用について「法律で制限されている」という説明を受けている方、返還命令とあわせて年10.95パーセントの加算金を求められている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、回答をお出しになる前にご相談ください。交付決定通知書、採択の回次に対応する交付規程・公募要領・手引き、事務局からの通告書があれば、挙げられた条文の宛先から具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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