執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)
1 加算金・延滞金とは――条文の定め
加算金と延滞金は、補助金適正化法が定める別々の金銭です。加算金は、交付決定の取消しに伴って補助金の返還を命ぜられたときに納付することとされているもので(補助金適正化法19条1項)、延滞金は、返還を命ぜられた補助金を納期日までに納付しなかったときに納付することとされているものです(同条2項)。率はどちらも年10・95パーセントで、同じ事案で重なって生じることがあります。
引用(補助金適正化法19条1項)「補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。」
引用(同条2項)「補助事業者等は、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかつたときは、政令で定めるところにより、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、その未納付額につき年十・九五パーセントの割合で計算した延滞金を国に納付しなければならない。」
条文の作りで、先に押さえておきたい点が3つあります。
- 加算金が結び付いている処分。19条1項が対象としているのは、「第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し」補助金等の返還を命ぜられた場合です。17条1項は交付決定の取消しの規定ですので、加算金は、17条1項による取消しに伴う返還の命令に結び付いた仕組みだということになります。
- 起算日。「補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ」と定められています。返還の命令を受けた日からではなく、補助金を受け取った日からの日数で計算する定めですので、返還の命令が届いた時点で、既に相当の日数が積み上がっていることになります。
- 納付する相手。19条1項・2項は「国に納付しなければならない」と定めています。中小機構が交付する補助金では、この「国」が「独立行政法人中小企業基盤整備機構」と読み替えられます(後記2)。
19条1項・2項は、いずれも補助事業者等が「納付しなければならない」という書き方になっています。他方で、やむを得ない事情があると認めるときに、その全部又は一部を免除する定めが置かれています(同条3項。後記6)。
2 どの補助金に及ぶのか
中小機構が交付する補助金
事業再構築補助金、新事業進出補助金、新事業進出・ものづくり補助金、中小企業省力化投資補助金は、中小機構が交付する助成金で、独立行政法人中小企業基盤整備機構法15条1項6号に基づく業務として交付されています。同法16条により補助金適正化法が全面的に準用され、同法中の「各省各庁の長」は「独立行政法人中小企業基盤整備機構の理事長」と、19条1項・2項の「国」は「独立行政法人中小企業基盤整備機構」と読み替えられます。加算金・延滞金の定めは、この準用によって及んでいます。
また、返還を命じた補助金と、これに係る加算金・延滞金は、国税滞納処分の例により徴収することができるとされています(同法21条1項)。「国税滞納処分の例により」とは、国税を滞納した場合に国がとる手続と同じ方法によるという意味です。この定めも、上の準用によって及んでいます。
引用(補助金適正化法21条1項)「各省各庁の長が返還を命じた補助金等又はこれに係る加算金若しくは延滞金は、国税滞納処分の例により、徴収することができる。」
事務局が交付主体となる補助金
これに対し、IT導入補助金(現:デジタル化・AI導入補助金)、従来のものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)、小規模事業者持続化補助金のように、事務局が交付主体となる補助金は、事務局との負担付贈与契約と解されます。補助金適正化法が適用・準用される類型ではありませんので、19条の加算金・延滞金や21条の徴収の定めがそのまま及ぶわけではありません。加算金に相当する定めがあるかどうかは、その補助金の交付規程・交付要領の定めによりますので、お手元の書面でご確認ください。どちらの類型に当たるかは、交付決定通知書の主語が「中小機構は」か「事務局は」かが最初の見分け方になります。
3 届いた書面はどちらか――返還の命令か、承認に伴う納付か
補助金に関してお金を求める書面には、性質の違う2つのものがあります。どちらなのかによって、加算金が付くかどうかが変わります。
- 取消しに伴う返還の命令。交付決定の取消し(補助金適正化法17条1項)がされると、既に交付された補助金について、期限を定めて返還を命じなければならないとされています(同法18条1項)。この場合は、加算金(19条1項)が生じ、納期日を過ぎれば延滞金(同条2項)が重なり、国税滞納処分の例による徴収(21条)の対象にもなり得ます。
- 財産処分の承認に伴う納付の求め。処分制限期間の内側で、補助金で取得した財産を処分しようとするときの承認(同法22条)に、「納付すること」という条件(承認に付け加えられた条件。講学上の附款といいます)が付される場合です。調査官解説は、この納付について、加算金・延滞金が付されず、強制徴収の対象ともならないものとして整理しています(荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)80〜81頁)。また、納付の求め(納付通知書)自体は行政処分ではなく、附款により発生した義務の履行請求にすぎないとされています(同83〜84頁)。
つまり、同じように見える書面でも、加算金が付く筋道と付かない筋道があります。「返納」と「返還」はこの点で別のもので、承認に伴う納付についてはコラム「残存簿価相当額の納付を求められたら」と自主返納の求めのページで詳しく述べています。
実際には、どちらに基づく求めなのかが書面から読み取れないことがあります。根拠となる条文が書かれていない書面が届くことがあるためです。その場合は、根拠となる条文を示していただくよう求めるところから始まります。交付決定の取消しをするときに理由を示すことは法律上の義務ですので(同法21条の2)、取消しに伴う返還であれば、取消しの理由が示されているはずです。
4 返還の命令が届いてからの時間の流れ
条文に沿って並べると、次の順序になります。日付の意味を取り違えないために、お手元の書面と照らし合わせてご確認ください。
- 交付決定の取消し(補助金適正化法17条1項)。取消しをするときは、その理由を示さなければならないとされています(同法21条の2)。
- 返還の命令(同法18条1項)。既に交付された補助金について、期限を定めて返還を命じなければならないとされています。ここで定められた期限が、19条2項にいう「納期日」です。
- 加算金(同法19条1項)。補助金の受領の日から納付の日までの日数に応じて計算されます。補助金が2回以上に分けて交付されていた場合は、返還を命ぜられた額に相当する補助金を最後の受領の日に受領したものとし、返還を命ぜられた額が最後の受領の日に受領した額を超えるときは、返還を命ぜられた額に達するまで順次さかのぼって、それぞれの受領の日に受領したものとして計算するものとされています(同法施行令10条1項)。
- 納期日を過ぎた場合の延滞金(同法19条2項)。納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、未納付額について計算されます。未納付額の一部を納付したときは、その納付の日の翌日以後の期間に係る延滞金の計算の基礎となるべき未納付額は、納付した金額を控除した額によるものとされています(同法施行令11条)。なお、加算金を納付しなければならない場合において、納付した金額が返還を命ぜられた補助金の額に達するまでは、その納付金額は、まず返還を命ぜられた補助金の額に充てられたものとされます(同令10条2項)。
- 他の補助金等の一時停止・相殺(同法20条)。返還を命ぜられた補助金・加算金・延滞金の全部又は一部を納付しない場合に、その者に対して同種の事務又は事業について交付すべき補助金等があるときは、相当の限度でその交付を一時停止し、又は未納付額と相殺することができるとされています。
- 徴収(同法21条1項)。返還を命じた補助金と、これに係る加算金・延滞金は、国税滞納処分の例により徴収することができるとされています。
- 出訴期間(行政事件訴訟法14条1項)。取消しを取消訴訟で争うには、原則として、処分があったことを知った日から6か月以内に提起する必要があります(ただし、正当な理由があるときはこの限りでないとされています)。また、取消訴訟を提起することができる処分をする場合には、被告とすべき者と出訴期間を書面で教示しなければならないとされていますが(同法46条1項)、これがされていない事案も見受けられます。
次のような場合は、納期日が来る前にご相談ください
- 交付決定の取消しと補助金の返還を命じられ、加算金の納付も求められている
- 返還・納付を求める書面が届いたが、何に基づく求めなのかが書かれていない
- 納期日が迫っている
加算金・延滞金については、こちらもご覧ください: 交付決定の取消し・返還請求(対応ページ)/返還額はいくらになるのか(計算式と計算例)(コラム)
5 加算金の前提は、取消しと返還の命令にある
19条1項は、17条1項の規定による処分に関し補助金等の返還を命ぜられたことを、加算金が生ずる前提としています。そして、その返還の命令は、交付決定の取消しがされた場合にされるものです(18条1項)。並べると、取消し→返還の命令→加算金という連なりになっています。
したがって、取消処分が取消訴訟で取り消されれば、交付決定が存在する状態に戻り、再度の取消処分がない限り返還の必要はなくなります。そうであれば、返還の命令を前提とする加算金も生じないことになると考えております。全部の取消しが一部にとどまるべきであったとされる場合も、返還を命ぜられる額が減りますので、加算金の計算の基礎となる額も減ります。
そこで、加算金の額に目を奪われる前に、取消しそのものが補助金適正化法17条1項所定の3つの取消事由――①補助金の他の用途への使用、②交付決定の内容又はこれに附した条件(補助条件)への違反、③法令又はこれに基づく処分への違反――のどれに当たるとされているのかを確かめることになります。この点は「補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか」で、取消しの前の段階でできることは「交付決定取消しの事前通知が届いたら」で述べています。
もっとも、取消訴訟には原則として6か月の出訴期間があり(行政事件訴訟法14条1項)、加算金は日数に応じて増える定めですので、時間の経過は二重に不利に働きます。
6 免除の定め(19条3項)
加算金・延滞金には、免除の定めが置かれています。
引用(補助金適正化法19条3項)「各省各庁の長は、前二項の場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、加算金又は延滞金の全部又は一部を免除することができる。」
要件は「やむを得ない事情があると認めるとき」で、全部又は一部を免除することが「できる」という定めですので、免除をするかどうかは交付する側の判断に委ねられています。政令の定めは、次のようになっています。
- 免除は、補助事業者等の申請により行うものとされています(補助金適正化法施行令12条により同令9条1項を準用)。こちらから申請しなければ始まらない仕組みです。
- 申請は、申請の内容を記載した書面に、当該補助金等の返還を遅延させないためとった措置及び当該補助金等の返還を困難とする理由その他参考となるべき事項を記載した書類を添えて提出するものとされています(同令12条による読み替え後の同令9条2項)。提出先は各省各庁の長又は補助実施法人の代表者で、中小機構が交付する補助金では機構の理事長です。
- 中小機構が交付する補助金では、機構の理事長が免除をしようとする場合に、所管大臣(中小機構については経済産業大臣)の承認を受けることとされ、その大臣は財務大臣に協議することとされています(同令12条により準用される同令9条4項・5項、同令別表)。機構の中だけで決まる手続ではないということです。
なお、返還の期限の延長や、返還の命令の全部若しくは一部の取消しについての定め(同法18条3項)は、17条2項(間接補助金等に関する取消し)に係る返還の命令についてのものです。17条1項による取消しに係る返還の命令については、法律上、これに対応する定めは置かれていません。納期日と納付の方法は、お手元の返還の命令の書面と、交付する側の案内の記載によります。
7 加算金・延滞金の定めがない納付命令で、何を負担することになるのか
加算金は、17条1項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し補助金等の返還を命ぜられたことを前提とする仕組みです(前記1・5)。他方、財産処分の承認(補助金適正化法22条)に付された条件に基づく納付については、加算金・延滞金が付されないものとして整理されています(前記3)。届いた書面の題名は「納付命令」「納付通知書」などさまざまですので、題名ではなく、根拠となる条文と書面の記載から見分けることになります。
そこで、まず、その書面が補助金等の返還を命ずるものなのかどうかを確かめ、次に、加算金・延滞金についての定めが置かれているかどうかを見ることになります。延滞金については、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかったことが要件とされており、取消しに伴う返還の命令に限られていません(前記1)。そのため、返還を命ずるものであれば、取消しに伴うものでなくても、文言上は延滞金の定めによることになります。
これに対し、同法18条による返還の命令ではなく、財産処分の承認に付された条件に基づく納付のように、返還の命令そのものではない納付の求めであって、かつ、その書面に加算金・延滞金の定めも置かれていない場合には、納付までの期間に応じた金銭の負担が問題となるとしても、法定利率による遅延損害金にとどまると考える余地があります。
法定利率は、民法が年3パーセントと定めています(民法404条2項)。もっとも、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに変動するものとされていますので(同条3項)、実際に適用される率は、この見直しによって動くことがあります。どの時点の率によるのかを含めて確かめることになりますが、いずれにしても、19条1項・2項の年10・95パーセントとは開きがあります。
もっとも、以上は書面と交付規程の記載によって変わります。事業再構築補助金の交付規程のように、加算金・延滞金についての定めが交付規程に置かれていることがあります(前記1)。また、事務局が交付主体となる補助金では、補助金適正化法19条ではなく、その補助金の交付規程・交付要領の定めによることになりますので(前記2)、この点もあわせてご確認ください。
交付決定の取消しと補助金の返還を命じられ、加算金の納付も求められている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、納期日が来る前にご相談ください。取消通知書、返還の命令の書面、交付決定通知書があれば、具体的な検討ができます。取消しを裁判で争うには、原則として処分を知った日から6か月の期限があります(行政事件訴訟法14条1項)。
根拠(条文・公式資料・裁判例)
- 補助金適正化法18条1項・3項、19条1項〜3項、20条、21条
- 補助金適正化法17条1項・2項、21条の2、22条
- 補助金適正化法施行令9条、10条(加算金の計算)、11条(延滞金の計算)、12条(加算金又は延滞金の免除)、別表
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構法15条1項6号、16条
- 行政事件訴訟法14条1項、46条1項
- 中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程22条3項
- 荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)80〜81頁(承認の附款による納付は加算金・延滞金が付されず強制徴収の対象ともならないこと)、83〜84頁(納付の求めは行政処分ではなく附款により発生した義務の履行請求にすぎないこと)
- 民法404条2項・3項(法定利率と3年ごとの変動)
※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。
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※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。