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弁護士 岸上大起

「補助対象経費が重複していない場合でも、テーマが類似していれば対象外」と書かれていますが、交付規程が取消事由として挙げているのは「重複受給」です

このページの結論

ものづくり補助金で製造設備を導入し、別に事業再構築補助金で店舗を整備しました。二つの補助金の対象経費は一つも重なっていません。それなのに、公式の「よくあるご質問」には、補助対象経費が重複していない場合でも、テーマや事業内容が類似していれば対象外になると書かれています。重複受給に当たるのでしょうか。

中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程22条1項5号が取消事由として掲げている語は、「重複受給」です。重複受給とは、同一の経費について二重に給付を受けることをいいますので、経費が重なっていない別の補助事業は、これに当たらないと考えております。同じ交付規程の22条3項は、この5号を加算金の対象から外しており、5号が、受け取りすぎた分を元に戻すという性質の類型として組まれていることをうかがわせます。そして、中小機構が後に出した中小企業新事業進出促進補助金「公募要領(第4回)」21頁⑭は、補助金・助成金・委託費については「同一の補助対象経費を含む事業」と書き、「同一又は類似した内容の事業」という言い方を診療報酬・介護報酬・固定価格買取制度の側に残しています。

事業再構築補助金「よくあるご質問」その他のご質問No.11の答えは、前半で「内容が異なる別の事業であれば、同じ事業者が異なる補助金を受けることは可能です。」としながら、後半で「補助対象経費が重複していない場合でも……対象外となります」としており、一つの答えの中で線の引き方が変わっています。また、「対象外となります」は応募申請を審査する段階の話であって、既に交付決定を受けた補助事業の取消しの根拠は、補助金適正化法17条1項(中小機構法16条による準用)です。もっとも、応募の段階で、これまでに交付決定を受けた補助金等の実績を書かないままにしておくと、虚偽申請として不採択となるとされています。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明――「補助対象経費が重複していない場合でも……対象外となります」

事業再構築補助金の事務局が公表している「よくあるご質問」その他のご質問No.11は、次のとおりです(以下、公式資料の閲覧日はいずれも2026年10月23日です)。まず、問いと答えを、そのまま引きます。

引用(事業再構築補助金「よくあるご質問」その他のご質問No.11)「Q.ものづくり補助金などの他の補助事業との併用は可能か。/A.内容が異なる別の事業であれば、同じ事業者が異なる補助金を受けることは可能です。ただし、同一事業で複数の国の補助金を受けることはできません。なお、補助金に限らず、テーマや事業内容から判断し、間接直接を問わず(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が目的を指定して支出する他の制度(例:補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業は対象外となります。補助対象経費が重複していない場合でも、テーマや事業内容が国の支出する他の制度と同一又は類似内容の事業である場合は対象外となりますのでご注意ください。」(※原文は問いと答えが分かれています。引用に当たり「/」で区切りました。)

同じ向きの記述が、公募要領にもあります。事業再構築補助金「公募要領(第13回)」(1.0版。令和7年1月)の27頁(PDF28頁)です。補助対象外となる事業を①から⑰まで並べたうちの⑭です。

引用(事業再構築補助金「公募要領(第13回)」27頁⑭)「⑭ 国庫及び公的制度からの二重受給/・テーマや事業内容から判断し、間接直接を問わず(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が目的を指定して支出する他の制度(例:補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業/※補助対象経費が重複していない場合でも、テーマや事業内容が国が支出する他の制度と同一又は類似内容の事業である場合は対象外となります。」(※原文は改行で区切られています。引用に当たり「/」で区切りました。)

まず申し上げておきたいのは、この回答が、一つの答えの中で二つの別のことを言っている、という点です。前半は「内容が異なる別の事業であれば、同じ事業者が異なる補助金を受けることは可能です。ただし、同一事業で複数の国の補助金を受けることはできません。」としています。線は、同一の事業かどうかで引かれています。ところが後半は、「補助対象経費が重複していない場合でも」「テーマや事業内容が……同一又は類似内容の事業である場合は対象外」としています。線が、経費でも事業の同一性でもなく、テーマの類似に移っています。

読む側は、前半を読んで「別の事業なら使える」と理解し、後半を読んで「テーマが似ていれば使えない」と理解します。どちらが答えなのかが、この回答からは分かりません。

2 交付規程が取消事由として書いている語は「重複受給」です

交付決定を取り消す根拠として実際に持ち出されるのは、交付規程の条項です。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程22条1項5号は、次のとおりです。

引用(同交付規程22条1項5号。同規程6頁)「(5)補助事業者が、申請内容の虚偽、本補助金を活用して取り組む事業に対する国(独立行政法人等を含む)が助成するほかの制度(補助金、委託金等)との重複受給等が判明した場合」

書かれている語は「重複受給」です。「類似」でも「テーマ」でもありません。重複受給とは、同一の経費について二重に給付を受けることをいいます。経費が重ならなければ、二重に受け取っているものがありません。この点は、コラム「重複受給を理由とする交付決定の取消し」で詳しく述べていますので、ここでは繰り返しません。

ここで申し上げたいのは、同じ交付規程が、この5号について特別の扱いを置いている、ということです。22条3項です。

引用(同交付規程22条3項。同規程6頁)「中小機構は、前項の返還を命ずる場合には、第12条第1項第4号の補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請を承認した場合、並びに第1項第4号、第5号及び第6号に規定する場合を除き、その命令に係る補助金の受領の日から納付の日までの期間に応じて、年利10.95パーセントの割合で計算した加算金の納付を併せて命ずるものとする。」

加算金を命じない場合として、5号が名指しで除かれています。他方、実績報告書の提出遅れ(9号)や事業化状況報告の未提出(10号)には、加算金がかかります。私見としては、これは、5号が、受け取りすぎた分を元に戻すという性質の類型として組まれていることを示していると読む余地があります。制裁ではなく、二重になった分の清算です。そうであれば、二重になっていないところまでこの号を伸ばすことは、号の作りに合いません。

3 同じ機構の新しい公募要領は、「同一の補助対象経費」と書いています

ここが、本稿の中心です。中小機構は、同じ「国庫及び公的制度からの二重受給」という見出しのもとで、新しい補助金では違う書き方をしています。中小企業新事業進出促進補助金「公募要領(第4回)」(1.0版。令和8年3月。独立行政法人中小企業基盤整備機構)の21頁(PDF22頁)です。

引用(中小企業新事業進出促進補助金「公募要領(第4回)」21頁⑭)「⑭ 国庫及び公的制度からの二重受給となる事業/・間接直接を問わず国(独立行政法人等を含む)が目的を指定して支出する過去又は現在の他の補助金、助成金、委託費等(以下「補助金等」という。)と同一の補助対象経費を含む事業/・公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等との重複を含む事業、及び同一又は類似した内容の事業」(※原文の箇条書きの記号は「●」です。引用に当たり「・」に改め、改行を「/」で区切りました。)

二つに分かれています。補助金・助成金・委託費については、「同一の補助対象経費を含む事業」。診療報酬・介護報酬・固定価格買取制度については、「同一又は類似した内容の事業」。補助金どうしの重複については、テーマの類似という言葉が外れ、経費で線が引かれています。

続く⑮も、同じ書き方です。

引用(同公募要領21頁⑮)「⑮ 中小企業庁が所管する補助金(中小企業生産性革命推進事業、中小企業等事業再構築促進事業、中小企業省力化投資補助事業等)と同一の補助対象経費を含む事業」

事業再構築補助金の公募要領(第13回)28頁の⑮も、「中小企業生産性革命推進事業(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、小規模事業者持続化補助金等)等と同一の補助対象を含む事業」としています。ものづくり補助金との関係に限っていえば、事業再構築補助金の公募要領自身が、テーマではなく補助対象で線を引いているわけです。

つまり、補助金どうしの重複を経費で切り分けるという考え方は、事業者の側が持ち出しているものではありません。同じ補助金の公募要領の中にあり、同じ機構の新しい補助金の公募要領では、それが前面に出ています。私見としては、「補助対象経費が重複していない場合でも……対象外」という一文は、交付規程22条1項5号の「重複受給」という語とも、同じ機構が後に書いた公募要領の書き方とも、そろっていないと考えております。

4 「(過去又は現在の)」と、診療報酬・介護報酬を並べていること

引用した一文には、もう二つ、気になるところがあります。

一つ目は、「(過去又は現在の)」です。過去に国の制度から支出を受けたテーマは、その後も類似というだけで対象外になる、と読めます。いつまでさかのぼるのかは書かれていません。申請する側は、何年前のどの制度まで数えればよいのかが分かりません。一度支援を受けた分野には二度と申請できないということであれば、新しい事業への挑戦を支援するという目的とも、向きが逆になります。

二つ目は、「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等」を、「国が目的を指定して支出する他の制度」として補助金・委託費と一列に並べていることです。診療報酬・介護報酬は、保険者が、現に提供された医療・介護の対価として支払うものです。再生可能エネルギーの買取りも、電気の対価です。いずれも、特定の事業の費用の一部を国が負担するという補助金の仕組みとは、性質が違います。

この並べ方が何を想定しているのかは、別の補助金の公募要領を見ると分かります。小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募の公募要領7頁(PDF8頁)「5.補助対象外となる事業」は、同じ趣旨の記述に例を付けています。

引用(小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領7頁)「○国が助成(国以外の機関が、国から受けた補助金等により実施する場合を含む)する他の制度(補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業/例)デイサービス・介護タクシー等の居宅介護サービス事業者で介護報酬が適用されるサービス、薬局・整骨院等の保険診療報酬が適用されるサービス/※持続化補助金では、同一の補助事業(取組)について、重複して国の他の補助金を受け取ることはできません。」(※原文は改行で区切られています。引用に当たり「/」で区切りました。)

挙げられている例は、事業の収入そのものが診療報酬・介護報酬で賄われるサービスです。つまり、この類型が本来向けられているのは、補助しようとしている事業の費用が公的な制度から既に出ている場合です。そして、同じ頁の注記は、補助金どうしについては「同一の補助事業(取組)について」と書いています。ここでも、線は取組の同一性で引かれています。

私見としては、診療報酬型の類型に置かれた「同一又は類似内容」という言葉を、補助金どうしの関係にそのまま持ち込み、経費が重ならない別の補助事業まで対象外とする読み方には、無理があると考えております。

5 「対象外」と「交付決定の取消し」は、別の段階のことです

もう一つ、分けて考えなければならないことがあります。引用した一文が書いているのは、「対象外となります」ということです。これは、応募申請を審査して採択するかどうかの段階の話です。既に交付決定を受けた補助事業について、その決定を取り消せるかどうかは、別の問題です。

取消しの根拠は、補助金適正化法17条1項です。本補助金について同法が及ぶのは、中小機構法16条による準用です。

引用(補助金適正化法17条1項)「各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」

挙げられているのは、他の用途への使用、交付決定の内容又はこれに附した条件への違反、法令又は処分への違反です。公募要領に「対象外」と書かれている事業に当たる、というだけでは、このどれにも当たりません。公募要領や「よくあるご質問」の記載がそのまま補助条件になるわけではないことは、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。最高裁判所の調査官解説も、補助金の交付要綱について、交付主体の「内部的な規範(講学上の行政規則)にすぎず、国民に対して直接の法的効力を有するものではない」と述べています(最高裁判所判例解説民事篇令和5年度551頁。最二小判令和5年11月17日民集77巻8号2070頁の解説)。

申請の段階についても、文献が同じ向きのことを述べています。補助金適正化法29条1項は、偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者を処罰する規定ですが、その「不正」の範囲について、次の指摘があります。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』394頁注(10)(株式会社全国会計職員協会、2016))「碓井教授は、「二重申請のみで『不正』の評価を受けるとはいえないように思われる。内定通知が交付申請に先行している場合は別として、補助金交付要綱等に、『同一事業について他の省庁又は団体の補助金交付申請と重ねて本事業として交付申請することはできない』旨の定めがあっても、それは、単に手続上の自主規制を加えているにすぎない。二重に交付を受けうる状態になったときに辞退しないという不作為が『不正の手段』と評価されるべきものと思われる。」と指摘されている(碓井光明『公的資金助成法精義』二〇〇七年、二三二ページ)。まことに的確な指摘である。」

交付要綱に二重申請を禁じる定めが置かれていても、それは手続上の自主規制を加えているにすぎない、という指摘です。同書は、これを「まことに的確な指摘である。」と述べています。二重の申請そのものについてすらこう言われているのですから、経費が重ならない別の補助事業について、公募要領に対象外と書かれていることだけを根拠に交付決定を取り消すことには、なおさら距離があると考えております。

6 公式の説明は、一方当事者の見解です

中小機構・中小企業庁・各事務局の説明は、公正な第三者による解説ではなく、補助金をめぐる紛争の一方当事者の見解です。通説が説いていない立場を強く主張しているものもあります。公式の説明だからと鵜呑みにするのは非常に危険です。

本件について申し上げれば、次のとおりです。交付規程22条1項5号が取消事由として掲げる語は「重複受給」です。同じ交付規程の22条3項は、この5号を加算金の対象から外しています。同じ機構が後に出した新事業進出補助金の公募要領は、補助金どうしの二重受給を「同一の補助対象経費を含む事業」と書いています。事業再構築補助金の公募要領自身も、ものづくり補助金等との関係では「同一の補助対象を含む事業」としています。それにもかかわらず、「よくあるご質問」は「補助対象経費が重複していない場合でも……対象外となります」と書き、しかも同じ答えの前半では「内容が異なる別の事業であれば……可能です」と書いています。

この回答は、「重複受給」という語が何を禁じているのかを示さないまま、申請を審査する段階の基準と、交付決定を取り消す処分の根拠とを一つにしていると言わざるを得ません。

もっとも、ここで申し上げているのは、公式の説明を無視してよいということではありません。応募の段階で、これまでに交付決定を受けた補助金等の実績を書かないままにしておくと、新事業進出補助金の公募要領21頁が書いているとおり、「虚偽申請として不採択となります」。書かないという選択は、別の問題を作ります。

次のような場合は、回答を出される前にご相談ください

  • 経費は重なっていないのに、「テーマが類似しているから重複受給に当たる」と指摘されている
  • 二つの補助金を使った事業について、交付決定を取り消す予定である旨の事前通知が届いた
  • 過去に別の制度で支援を受けた分野について、新たに補助金を申請してよいか迷っている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 重複受給を理由とする交付決定の取消し(コラム)/取消しに裁量はあるのか(Q&A)

7 指摘を受けたとき、何から手を付けるか

重複受給の指摘は、事前の通知や照会の形で来ることが多く、回答までの期間が短く切られています。次の三つを、順に整えていただくのがよいと考えております。

  • (1)経費を一件ずつ突き合わせる。二つの補助事業の実績報告書と、その裏付けとなる見積書・契約書・請求書・領収書を並べ、同じ支出が両方に計上されていないかを、品目ごとに確かめてください。重なっていないのであれば、その一覧を作ることが、反論の土台になります。重なっているものが出てきた場合は、早い段階で把握しておくほうが、取り得る手が残ります。
  • (2)指摘の根拠として何が挙げられているかを、条番号で確かめる。交付規程22条1項5号なのか、同項1号(法令・規程・処分・指示への違反)なのか、公募要領の⑭なのか、「よくあるご質問」なのかで、反論の組み方が変わります。通知書に条番号が書かれていない場合は、どの条項によるものかを文書で照会してください。
  • (3)二つの事業が別個であることを、計画の中身で示す。事業計画書と実績報告書に書かれた取組の内容、成果物、実施時期を並べて比較します。この示し方は、コラム「重複受給を理由とする交付決定の取消し」で具体的に述べています。

なお、取消事由があるとされた場合でも、そのことから当然に取消しがされるわけではありません。取消しをするかどうかの判断については、Q&A「取消しに裁量はあるのか」で述べています。不交付や差し戻しの理由を争う場面については、Q&A「交付申請が不交付・差し戻しになったとき」をご覧ください。

経費は重なっていないのに「テーマが類似しているから重複受給に当たる」と指摘された事業者の方、二つの補助金を使った事業について交付決定を取り消す予定である旨の事前通知が届いた方、過去に別の制度で支援を受けた分野に新たに申請してよいか迷っている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、回答を出される前にご相談ください。二つの補助事業の事業計画書・実績報告書と、指摘の通知書があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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