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弁護士 岸上大起

事業化状況報告のシステムに「本年度納付額」が出ました――これは納付命令なのでしょうか

このページの結論

事業化状況報告のシステムに入力をしたところ、「G.本年度納付額」に金額が表示されました。かんたんマニュアルには、表示された金額の納付が必要だと書かれています。これは納付命令なのでしょうか。当期は純損失だったのですが、免除されないのでしょうか。

システムが入力情報から自動で計算して表示した金額は、納付命令ではありません。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程27条1項は、中小機構が収益の発生を確認したときは「補助金額を上限とする金額の納付を命ずることができる」とし、補助事業者は「当該納付命令にしたがって」納付しなければならないとしています。同じ事務局が作った操作マニュアルも、審査の完了後に納付命令書が送信されるとしていますので、まず、納付を命ずる書面が出ているのかどうかを確かめることになります。

免除についても、同項ただし書の文言は「当該事業化状況・知的財産権報告書の決算が赤字の場合」です。これに対し、補助事業の手引きとよくあるご質問は、「決算時の会社全体の経常利益」を基準とし、その経常利益には営業外収益を含めないとしています。減損損失や固定資産除却損という特別損失によって当期純損失になった年度は、この二つで結論が分かれますので、お手元の決算書の当期純損益で確かめてください。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

以下で引用する交付規程の条数と文言は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。最終改正 規程令7第5号・令和7年6月30日施行)のものです。交付規程の条番号は補助金ごと・版ごとに違いますので、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

1 公式の説明――表示と、納付命令書と

事業化状況報告のシステムに数字を入れていくと、「G.本年度納付額」という欄に金額が表示されます。この表示について、事務局の「かんたんマニュアル」は、次のように書いています。

引用(事業再構築補助金「事業化状況報告「かんたんマニュアル」」2頁)「入力情報から算出された本年度納付額の確認」「※1円以上の場合、表示された金額の納付が必要です」
引用(同4頁)「補助事業で導入した設備等を活用した結果、一定以上の利益が生じた場合、補助金の額を上限として、収益納付しなければなりません(事業化状況等報告の該当年度の決算が赤字の場合は免除されます)」「本年度納付額が1円以上であれば納付が必要」

資料の表示は「2026.6.29. Ver.1.0」、掲載ページ(事業再構築補助金ポータルサイト「事業化状況報告」の「申請方法」欄)の更新日は2026.06.29、閲覧日は2026年10月23日です(出典:事業化状況報告「かんたんマニュアル」)。

同じことが、よくあるご質問と補助事業の手引きにも書かれています。

引用(事業再構築補助金「よくあるご質問」事業化状況報告についてQ27)「報告対象期間において、収益納付(※)の発生を確認する項目です。「G.本年度納付額」に記載されている金額を収益納付として納付いただきます。」「※収益納付については交付規程第27条をご確認ください」
引用(同「補助事業の手引き」<第12・13回>37頁「3 収益納付(交付規程第27条)」)「事業化状況報告書の内容により、収益があると認められる場合は、収益の一部を納付することになります。納付額は、補助金確定額を上限とします。交付規程第27条に基づく収益納付による納付金の算出は、以下の方法によるものとします。事業化状況等報告の該当年度における決算時の会社全体の経常利益が赤字の場合は該当年度分の収益納付は免除されます。なお、事業化状況報告における経常利益には、営業外収益を含めません。そのため、決算書の数値と異なる場合があります。」
引用(同「よくあるご質問」事業化状況報告についてQ19)「問題ありません。本報告における「経常利益」には、営業外収益を含めません。そのため決算書の数値と異なる場合があります。」

手引きは1.2版(令和8年3月、事業再構築補助金事務局。掲載ページの更新日は2026.03.30)です(出典:補助事業の手引き<第12・13回>/出典:よくあるご質問)。いずれも閲覧日は2026年10月23日です。手引きは公募回ごとに別のファイルになっていますので、お手元の公募回のものでご確認ください。

ところが、操作マニュアルは納付命令書を前提にしています

他方で、同じ事務局が作り、かんたんマニュアルと同じ掲載ページに並んでいる操作マニュアルは、納付の求め方について、次のように書いています。

引用(事業再構築補助金「事業化状況報告システム(事業化状況・知的財産権報告)操作マニュアル」3.5版・36頁)「!収益納付額の返納が必要です!」「審査完了後に納付命令書が送信されます」「※ 当該命令書にしたがって期限内に納付の義務があります ※」
引用(同45頁)「収益納付が発生している場合は、納付命令書が届き次第、当該命令書にしたがって期限内に納付しなければなりません。」

同45頁には、報告を完了する手前で表示されるポップアップの承諾文言も載っています。

引用(同45頁。ポップアップの承諾文言)「1. 事業化状況報告で補助事業による収益が生じたことが確認された場合は、補助事業者は納付命令に従って納付(収益納付)の義務があることを理解しています。」「3. 「G本年度納付額」が1円以上の際は、納付命令書が届き次第、当該命令書にしたがって期限内に納付いたします。」

同7頁の手続の流れも、表示のあとに事務局の確認と通知を置いています。

引用(同7頁「事業化状況・知的財産権報告書」(様式第13)作成の主な流れ)「(5)収益納付・補助金返還のあり・なしの確認(事務局)……収益納付や補助金返還が必要な補助事業者にはその旨通知します。」「(6)納付・返還の実施(補助事業者)事務局からの通知を受けた補助事業者は、システムで金額、振込先等を確認し、速やかに事務局が指定した口座に納付してください。」

版は3.5版(2026年10月19日、事業再構築補助金事務局)、掲載ページの更新日は2026.10.19、閲覧日は2026年10月23日です(出典:事業化状況報告システム操作マニュアル)。

2 どこが食い違っているのか

あなたが言われていること

「G.本年度納付額」に記載されている金額を収益納付として納付いただきます。1円以上の場合、表示された金額の納付が必要です。

しかし、法律のルールは

中小機構は、収益が生じたことを確認したときは、補助金額を上限とする金額の納付を命ずることができるものとし、補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない。

よくあるご質問Q27・かんたんマニュアル2頁/中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程27条1項

同じ事務局の操作マニュアルは、審査の完了後に納付命令書が送信され、その命令書にしたがって納付するものとしています。交付規程の条文も、納付命令を前提にしています。それにもかかわらず、概要をまとめたかんたんマニュアルとよくあるご質問は、画面に表示された金額をそのまま納付するように読める書き方をしています。公式の説明の中で、言っていることが食い違っています。

条文と並べると、ずれは三つにまとめられます。

  • システムの出力が、義務そのものとして示されています。交付規程27条1項は、中小機構が収益の発生を確認したときに「納付を命ずることができる」と定め、補助事業者は「当該納付命令にしたがって」納付しなければならないとしています。システムが入力情報から自動で計算して表示した金額は、納付命令ではありません(後記3)。
  • 免除の範囲が、三段で狭められています。交付規程27条1項ただし書の文言は「決算が赤字の場合」です。手引きはこれを「決算時の会社全体の経常利益」が赤字の場合と書き、よくあるご質問はさらに、その経常利益には営業外収益を含めないとしています(後記4)。
  • 法律の側の制約が落ちています。収益納付は、補助金適正化法7条2項が定める任意的な補助条件です。同項は「当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り」という制約を置いており、計算式が回れば当然に義務が生ずるという仕組みではありません(後記5)。

3 義務は、納付命令を受けて生じます

はじめに、根拠の順序を確かめます。収益納付は、補助金適正化法7条2項が定める補助条件(交付決定に附される条件)です。本補助金について同法が及ぶのは、中小機構法16条による準用によります。これに対し、交付規程は、交付主体が自ら定めた内部的な規範であって、法令ではありません。交付規程27条1項の定めが補助事業者を拘束するのは、それが補助条件として交付決定に附されている場合です。この見方そのものは、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。

そのうえで、交付規程27条1項が、補助条件の中身としてどのような定め方をしているのかを見ます。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程27条1項)「中小機構は、第25条第1項の規定に基づき提出された事業化状況・知的財産権報告書により、補助事業者が補助事業の事業化、知的財産権の譲渡又は実施権の設定及びその他補助事業の実施結果の他への供与による収益が生じたことを確認したときは、補助事業者に対し、補助金額を上限とする金額の納付を命ずることができるものとし、補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない。ただし、当該事業化状況・知的財産権報告書の決算が赤字の場合は、納付を免除するものとする。」

条文は、三つのことを順に書いています。一つ目は、中小機構が報告書により収益が生じたことを「確認したとき」という要件です。二つ目は、そのときに中小機構が「納付を命ずることができる」という定めです。三つ目は、補助事業者は「当該納付命令にしたがって納付しなければならない」という義務です。補助事業者の義務は三つ目に置かれており、その前提として「納付命令」が置かれています。

システムの計算は、一つ目の「確認」のための作業にあたるものです。報告書に入力した数値から機械的に算出された金額が画面に出ているという状態は、中小機構が納付を命じたという状態とは違います。そして「命ずることができる」という定め方ですから、収益が確認されたからといって、当然に命じなければならないものでもありません。前記1で引いた操作マニュアル36頁・45頁が、審査の完了後に納付命令書が送信されるとしているのも、同じ組み立てによるものと読めます。

交付規程の作り方も、これを裏づけています。財産の処分に伴う納付については、同交付規程24条6項が「様式第12-5による納付通知書により」と書面の様式まで指定し、その様式第12-5は納付期限を「本書発信日より30日以内」と定めています。これに対し、27条1項には、様式の定めも納付期限の定めもありません。収益納付の納付期限は、納付を命ずる書面を見なければ分からないということです。

この違いは、言葉の上の問題ではありません。納付の期限をいつから数えるのか、納付をしなかったことがどういう意味をもつのかは、いずれも納付命令が出ているかどうかを前提にしなければ決まりません。「表示された金額の納付が必要です」という説明は、交付規程27条1項の「納付を命ずることができる」「当該納付命令にしたがって」という文言を、システムの表示に置き換えていると言わざるを得ません。

「システムで通知できる」という定めとの関係

交付規程には、通知等の方法について次の定めがあります。

引用(同交付規程8条。抜粋)「中小機構は、……第24条第3項の規定に基づく財産の処分の承認、同条第6項の規定に基づく財産の処分による収入の納付命令、第27条第1項の規定に基づく収益の納付命令、又は同条第2項及び第3項の規定に基づく補助金の返還命令について、当該通知等を補助金申請システム又は電子メールにより行うことができる。」

システムが通知のルートになっている以上、画面に出たものが命令だ、という言い方もあり得ます。もっとも、8条は、命令を通知する方法を定めたものであって、入力画面に計算結果が表示されることを命令とするものではないと考えております。8条が27条1項の行為を「収益の納付命令」と呼び、通知を要する行為として並べていること自体が、計算結果の表示と命令とが別のものであることを示していると考えております。

なお、納付の求めそれ自体の法的性質については、財産の処分に伴う納付について、納付の求めは行政処分ではなく、附款により発生した義務の履行を求めるにすぎないとする整理があります(最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)83〜84頁)。この整理と、その実務上の意味は、コラム「残存簿価相当額の納付を求められたら」で述べています。

また、報告そのものの義務は同交付規程25条1項が定めるもので、「速やかに提出しなければならない」とされているだけで、期限日の定めは置かれていません。報告を出していなかった場合の整理は、Q&A「事業化状況報告を出していなかったとき」で述べています。

4 免除の基準が、交付規程の文言より狭く置き換えられています

免除について、四つの記述を並べると、次のようになります。

  • 交付規程27条1項ただし書――「当該事業化状況・知的財産権報告書の決算が赤字の場合」
  • かんたんマニュアル4頁――「事業化状況等報告の該当年度の決算が赤字の場合は免除されます」
  • 補助事業の手引き37頁――「事業化状況等報告の該当年度における決算時の会社全体の経常利益が赤字の場合」
  • よくあるご質問Q19――「本報告における「経常利益」には、営業外収益を含めません」

同じ事務局が作った資料の中でも、かんたんマニュアル4頁は交付規程と同じ「決算が赤字」と書いています。言葉が置き換わっているのは、手引き37頁とよくあるご質問です。

「決算が赤字」という言葉の通常の意味は、当期純損失が生じていることです。これに対し、経常利益は、損益計算書の途中の段に置かれた利益です。損益計算書は、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益と段を追って計算していくものですから、「決算が赤字」と「経常利益が赤字」とは、別の段の話です。

具体的には、減損損失や固定資産除却損のように特別損失に区分される損失によって当期純損失になった会社は、交付規程の文言によれば免除されるのに、経常利益を基準にすると免除されないことになります。処分制限財産を処分して除却損を計上した年度は、まさにこの場面に当たります。さらに、営業外収益を含めないという扱いによって、報告上の経常利益は決算書の経常利益より小さく出ますので、免除される範囲はもう一段狭くなります。

手引きは、その9頁で、適正化法・同施行令・中小機構法・交付規程を挙げたうえで、「補助事業者のみなさまが事業を適正に遂行されますよう、これら規程等を補助事業者用に編集し、「手引き」としてまとめました。」と自ら述べています。編集したものが元の文言より狭くなっているのであれば、拠るべきは元の文言であると考えております。交付規程に「決算が赤字の場合は、納付を免除するものとする」と書かれている以上、免除の要件は、まずこの文言によって判断されることになると考える余地があります。この説明は、交付規程27条1項ただし書の文言を置き換えていると言わざるを得ません。

もっとも、収益の認定それ自体については、別に申し上げておかなければならないことがあります。文献は、納付を命じうる収益について、次のように述べています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』164頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「他方、「生ずると認められる」収益であればよいから、必ずしも損益計算書(P/L)上に計上された利益ではなくとも差し支えないものと解される。」

ですから、報告上の数値が決算書の数値と一致しないこと自体を、一律に違法ということはできません。本稿で申し上げているのは、収益をどう計算するかではなく、免除の要件が交付規程の文言より狭く置き換えられている、という一点です。

5 収益納付は、7条2項の任意的補助条件です

以下は、交付決定の主語が中小機構である補助金についてです。事務局が交付主体となる補助金では、補助金適正化法の定めがそのまま及ぶわけではありません(Q&A「加算金・延滞金は払うのか」の2で述べています)。

引用(補助金適正化法7条2項)「各省各庁の長は、補助事業等の完了により当該補助事業者等に相当の収益が生ずると認められる場合においては、当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り、その交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべき旨の条件を附することができる。」

中小機構法16条は、補助金適正化法を罰則を含めて準用したうえで、「各省各庁の長」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構の理事長」と、7条2項の「国」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構」と読み替えるものとしています。本補助金では、機構に納付すべき旨の条件ということになります。

この条項の読み方について、文献は次のように述べています。

引用(小滝・前掲162頁)「任意的補助条件として、収益納付条件を付す場合においては、「当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り」という制約のあることに注意すべきである。すなわち、補助事業等の完了により当該補助事業者等に相当の収益が生ずると認められる場合においても、当然にその収益を国庫に納付させうるわけではなく、「交付の目的に反しない場合」に限り認められている。」

納付させうる収益の範囲にも限りがあります。文献は、寄附金・受益者負担金等の特定収入を収益納付させうるかという議論の中で、一般に次のように述べています。

引用(小滝・前掲163〜164頁)「しかし、収益納付条件において納付を命じうる収益は、「補助事業等の完了により」生ずる収益であるから、補助金等の交付と収益発生との間に相当因果関係のないものは、収益納付させえないものと解すべきである。」
引用(同164頁)「収益納付条件を付しうるのは、「相当の収益」が生ずると認められる場合に限られるから、極めて些少な収益についてまで納付させることとすべきではない。」「なお、納付を命じうるのは「交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額」であるから、補助金等の金額を上回る収益が生じた場合においても、交付した補助金等の金額を超える額を納付させることができないことはいうまでもない。」

整理すると、収益納付には、①交付の目的に反しない場合に限られること、②「相当の収益」であり、かつ補助金の交付と収益の発生との間に相当因果関係があるものに限られること、③補助金の額が上限となること、という三つの制約があることになります。システムの計算式は、手引き37頁の算定方法が挙げる項目、すなわち補助事業に要した経費、補助金確定額、補助事業の事業化に係る本年度売上額・本年度収益額、控除額、累計支出額といったものから機械的に金額を出すものですので、②の相当因果関係が画面の上で検証されているわけではありません。補助事業として申請した事業以外の収入が計算に入っていないかどうかは、入力内容に戻って確かめることになります。

加算金・延滞金・強制徴収についての整理

同交付規程18条3項は、返還期限を命令の日から20日以内とし、期限内に納付がないときは年利10.95パーセントの延滞金を徴するとしており、同交付規程は、これを同21条3項・同22条4項・同27条5項で準用しています。もっとも、同27条5項が準用しているのは「第2項及び第3項に基づく補助金の返還について」であり、同条1項の収益納付は入っていません。財産の処分に伴う納付(同24条6項)にも、同18条3項の準用は置かれていません。

法律の側の加算金も、補助金適正化法19条1項が「第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたとき」としており、交付決定の取消しに伴う返還を前提としています。延滞金についても、同条2項は「補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかつたとき」を前提にしています。収益納付は、交付決定が取り消されたことに伴うものではなく、返還を命じられたものでもありません。

引用(小滝・前掲164頁)「収益納付が「納付」と観念されているのは、後述する第一八条の「返還」とはその性格を異にするからである。交付決定の取消しに伴い返還を命じられた補助金等については、強制徴収の対象とされているが(第二一条)、収益納付金は強制徴収の対象とされていない。ただし、既述した法定附款に基づく納付金については、国税滞納処分の例により強制徴収しうることとされている(石油及び可燃性天然ガス資源開発法第一九条等)。」

ただし書の対象は、法律の明文で納付が義務づけられている納付金(法定附款)です。本補助金の収益納付は、法律の明文ではなく、7条2項による任意的補助条件として付されるものですので、ただし書の場合には当たりません。

補助金適正化法21条1項は、「各省各庁の長が返還を命じた補助金等又はこれに係る加算金若しくは延滞金」を国税滞納処分の例により徴収することができるとするものです。収益納付金は、返還を命じられた補助金等ではありませんので、本補助金についても、同項による強制徴収の対象とはならないと考える余地があります。ただし、この点は条文の文言と右の文献からの帰結であり、機構の内部規程や運用において別の扱いがされていないかまでは確かめられておりません。断定はいたしかねますが、納付命令書の内容を検討する時間を確保する余地があると考えております。加算金・延滞金そのものについては、Q&A「加算金・延滞金は払うのか」で述べています。

全部に相当する金額を納付したときの効果

補助金適正化法施行令14条1項は、補助金適正化法22条ただし書の政令で定める場合を定めるもので、その1号は「補助事業者等が法第七条第二項の規定による条件に基き補助金等の全部に相当する金額を国又は補助実施法人に納付した場合」を挙げています。この場合には、財産の処分の制限が及びません。「補助実施法人」は同令1条2項の定義により別表に掲げる法人をいい、同別表は中小機構法16条とともに独立行政法人中小企業基盤整備機構を掲げています。文献は、この号について「第一号の補助金等相当額の国庫納付があった場合は、結果的に取得財産は補助事業者等の自己負担において取得したものとみなされるので、処分制限は解除することとされ」ると説明しています(小滝・前掲305頁)。納付に応じるかどうかを考えるときの材料の一つになります。

なお、収益納付と、財産の処分に伴う納付とは別の仕組みです。文献も、財産の処分の承認に付される納付の条件について、「本法施行令第一四条第一項第一号において処分制限解除原因とされている収益納付条件と酷似するが、事業完了により相当の収益発生の認められない場合について付される点で、その性格を異にする」としています(小滝・前掲304頁注(13))。二つの違いは、コラム「補助事業を続けられないとき」の「収益納付との違い」で述べています。

次のような場合は、お支払いになる前にご相談ください

  • システムに表示された「本年度納付額」について、納付を求める連絡が来ている
  • 当期は純損失なのに、経常利益を基準に免除されないと言われている
  • 納付額の計算に、補助事業と関係のない収入が入っているように見える
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 加算金・延滞金は払うのか(Q&A)/残存簿価相当額の納付を求められたら(コラム)

6 公式の説明は、紛争の一方当事者の見解です

冒頭で述べた位置づけを、収益納付について具体的に見ます。このシリーズで扱っているのは、公式の資料の記述が交付規程・法律の文言とずれている箇所です。本稿では、免除の要件が交付規程27条1項ただし書の「決算が赤字」から「決算時の会社全体の経常利益」に置き換えられている点(前記4)が、それに当たります。

収益納付については、学説の側から、判断のしかたが交付主体に委ねられすぎているという指摘が早くからされています。

引用(碓井光明『公的資金助成法精義』202頁(信山社、2007)。小滝・前掲163頁注(10)の引用による)「このような(公益と私益の)調整の趣旨は理解できるが、調整の必要性の判断権が省庁の長に委ねられている点は、大いに疑問である」「少なくとも、省庁の長は、収益納付の基準設定と公表義務を負っていると解すべきである」

この指摘について、小滝・前掲163頁注(10)は「傾聴すべき見解であり、各省各庁の長は収益納付の実態の情報公開に努めるべきであろう。」としています。碓井教授は公表する義務を負うと解すべきだとし、小滝は情報公開に努めるべきであろうとしていますので、強さには違いがあります。もっとも、基準が示されるべきだという方向は共通しています。そうであればこそ、公表された資料に書かれていることが交付規程の文言と合っているかどうかは、一つひとつ確かめる必要があると考えております。

実務の上でも、公式の資料は、交付主体が自らの運用を説明するために作っているものです。裁判所がその説明に従わなければならないわけではありません。条文がどう書かれているかを先に確かめ、公式の説明がその条文のどこまでを言い換えたものなのかを見る、という順序で読んでいただくのがよいと考えております。

7 「本年度納付額」が表示されたとき、どう動くか

お手元で確かめられることを、順に挙げます。

  • 納付命令が出ているかどうかを確かめる。システムに金額が表示されただけの段階では、納付命令は出ていません。事務局の操作マニュアルも、審査の完了後に納付命令書が送信されるとしています。届いた書面があるのであれば、その書面が納付を命ずるものなのか、金額の確認を求めるものなのか、根拠として挙げられている条項は何かを確かめてください。根拠となる条項が書かれていないときは、示していただくよう求めるところから始まります。
  • 免除に当たるかどうかを、決算書の当期純損益で確かめる。交付規程27条1項ただし書の文言は「決算が赤字の場合」です。経常利益を基準に免除されないと言われているのであれば、規程の文言との違いを指摘することになります。特別損失によって当期純損失になっている年度は、この点を先に整理しておいてください。
  • 収益の計算に、補助事業と関係のない収入が入っていないかを確かめる。納付を命じうる収益は、補助事業等の完了により生ずる収益に限られ、補助金の交付と収益の発生との間に相当因果関係のないものは対象になりません(前記5)。システムに入力した売上が、事業計画書に記載した事業の売上に限られているかどうかを、入力内容に戻って確かめてください。かんたんマニュアルも、本報告における補助事業とは新たに取り組む事業として事業計画書に記載されている事業のことであり、既存事業や事業計画に記載のない新規事業の事業化等の状況は含まないとしています(同2頁・3頁)。
  • 納付額が補助金額を上限としているかを確かめる。交付規程27条1項は「補助金額を上限とする金額」としており、手引き37頁も「納付額は、補助金確定額を上限とします。」としています。基礎となる補助金確定額が、額の確定の通知(様式第8)の金額と合っているかを確かめてください。

報告を完了する手前では、納付命令に従って納付する義務があることを理解している旨のチェックを求められます(前記1の操作マニュアル45頁)。このチェックは、報告の手続の中で求められているものであって、計算結果を納付命令に変えるものではなく、後に納付命令の内容を検討することを妨げるものでもないと考えております。

そのうえで、残しておいていただきたいものがあります。システムに入力した内容と表示された金額の画面、該当年度の損益計算書と貸借対照表、交付決定通知書と額の確定の通知、交付主体とのやり取りの控えです。やり取りは、書面又はメールで行い、送ったものと送った日が分かる形で残してください。口頭でのやり取りは、後から確かめることができません。

報告の期限を過ぎていることを指摘されている場合や、事業計画の目標に届かなかったことをあわせて言われている場合は、問題の立て方が別になります。それぞれQ&A「事業化状況報告を出していなかったとき」とQ&A「事業計画の目標(付加価値額等)に届かなかったとき」で述べています。

事業化状況報告のシステムに「本年度納付額」が表示されて納付を求められている事業者の方、決算は純損失なのに免除されないと言われている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、納付に応じられる前にご相談ください。交付決定通知書、お手元の交付規程、報告したシステムの入力内容、該当年度の損益計算書、交付主体から受け取った書面があれば、どの条文の問題として言われているのかという形で、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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