執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)
補助事業を続けられなくなったとき、事業者の方がまず知りたいのは、「何から手を付ければよいのか」と「いくら返すことになるのか」の2つです。ところが、この2つを最後まで書いた説明は多くありません。――補助金に関する紛争を扱う弁護士 岸上大起の整理です。
本稿では、はじめに事務局が公式に示している手続の順番と納付額の計算式を、原文とURLを添えて確認します。そのうえで、やめ方によって手続と返還の見込みがどう変わるかを並べ、最後に、廃業と財産の廃棄は別のことであるという当職の見解を、公式の運用とは分けて述べます。
なお、以下は中小機構が交付する事業再構築補助金を念頭に置いた整理です。交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なりますので、条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。
1 公式の手順――届出、承認申請、納付の順番
出発点は法律です。補助金適正化法7条1項4号は、補助金の交付の決定をする場合に附する条件として、「補助事業等を中止し、又は廃止する場合においては、各省各庁の長の承認を受けるべきこと」を掲げています。中止・廃止に承認が要るという運用は、ここから来ています。
これを受けて、補助事業の実施期間中(補助事業がまだ完了していない段階)に中止・廃止をしようとする場合について、交付規程は事前の承認申請の対象としています。
引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程12条1項)「補助事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、あらかじめ様式第3-1、様式第3-2又は様式第3-3のいずれかによる承認申請書を中小機構に提出し、その承認を受けなければならない。」
「(4)補助事業の全部若しくは一部を中止し、又は廃止しようとするとき。」
次に、補助事業が完了した後の事業計画期間において事業をやめる場合です。この場合の順番は、事務局が公式の「よくあるご質問」で明示しています。
引用(事業再構築補助金 よくあるご質問「補助金交付候補者の採択後の手続きについて」Q10)「事業を廃止しようとする場合には、『様式 第14-1 補助事業完了後の事業計画の廃止届出書』を提出してください。廃止の届出の受付完了後、処分制限期間内※の取得財産については、速やかに『様式第12-1 財産処分承認申請書』を事務局に提出し、『様式第12-2 財産処分承認通知書』による事務局の承認を受けてください。」
出典:事業再構築補助金「よくあるご質問」採択後の手続きQ10
まとめると、公式に示されている順番は次のとおりです。
- 事業廃止の届出(様式第14-1)――交付規程26条1項1号。事業計画の全部の廃止に係る届出を行った場合、その届出日に事業計画期間が終了したものとされ、以降の事業化状況報告は不要になります(同条2項)。
- 財産処分の承認申請(様式第12-1)――交付規程24条3項。処分制限期間内の取得財産について、処分の前に申請します。
- 承認(様式第12-2)、処分の実行、財産処分報告(様式第12-3)――交付規程24条4項。
- 納付通知(様式第12-5)を受けて納付――交付規程24条6項。
なお、承認を受けずに先に処分をしてしまった場合について、事務局は「事前の承認を得ずに財産を処分してしまった場合は交付決定が取り消される場合があります」と説明しています(公式「よくあるご質問」財産処分Q7)。順番を崩さないことが大切です。
2 返還額の計算式(公式の説明)
納付額の計算方法は、事務局が公式の「よくあるご質問」で示しています。
引用(事業再構築補助金 よくあるご質問「財産処分について」Q10)「納付金算出の計算式は、以下の金額から計算します。
D = A × C / B
A:
(有償譲渡又は有償貸付の場合は)譲渡額又は貸付額 ※1
(目的外使用、無償譲渡、無償貸付等の場合は)残存簿価相当額 ※2
B:
当該処分財産に係った補助対象経費
(様式第6の別紙2<経費明細表>のうち「実績額」(B)欄から求める。)
C:
Bに対する当該補助金の確定額
(様式第6の別紙2<経費明細表>のうち「実績額」(C)欄から求める。)
D:
補助金の納付金額
※1 当該譲渡額又は貸付額が残存簿価相当額又は鑑定評価を行った場合の鑑定評価額に比して著しく低価である場合において、その理由を合理的に説明することができないときは、残存簿価相当額又は鑑定評価額を適用する場合があります。
※2 ただし、鑑定評価を行う場合には、残存簿価相当額と鑑定評価額のいずれか高い額が適用されます。
※3 納付額は、処分制限財産に係る補助金額を上限とします。
※4 補助事業の手引き「Ⅱ.補助事業終了後の義務」「1 財産処分の承認申請(交付規程第24条)」に計算式と詳細な解説を掲載しています。各公募回により掲載ページが異なりますのでご注意ください。」
出典:事業再構築補助金「よくあるご質問」財産処分Q10
注記のうち、金額に直接効いてくるのは次の三つです。①譲渡額又は貸付額が残存簿価相当額等に比べて著しく低価であり、その理由を合理的に説明できないときは、残存簿価相当額又は鑑定評価額を適用する場合があること(※1)。②鑑定評価を行う場合には、残存簿価相当額と鑑定評価額のいずれか高い額が適用されること(※2)。③納付額は、処分制限財産に係る補助金額を上限とすること(※3)。②は、鑑定評価額が残存簿価相当額を上回れば納付額が増える方向に働く注記ですので、見落とさないでください。
計算の出発点になる「残存簿価相当額」の求め方も、公式に示されています。
引用(事業再構築補助金 よくあるご質問「財産処分について」Q11)「残存簿価相当額とは、資産(財産)の取得価格から、処分時点までの減価償却費(累計)を差し引いた金額です。
(計算式)残存簿価相当額 = 取得価額(税抜) - 減価償却費(累計金額)」
出典:事業再構築補助金「よくあるご質問」財産処分Q11
減価償却費の計算方法についても、次の説明があります。
引用(事業再構築補助金 よくあるご質問「財産処分について」Q14)「機械装置等は原則、圧縮記帳など独自に採用いただいている会計基準に関わらず定率法の償却率を用いて減価償却費が計算されます。」
出典:事業再構築補助金「よくあるご質問」財産処分Q14
なお、事務局は、正式な納付額は財産処分報告(様式第12-3)の審査後に通知するとしており、事前に具体的な金額を知らせることはできないとしています。あわせて、「補助事業の手引き」に計算式と詳細な解説が掲載されているとも案内しています(同Q9・Q10)。手引きは、事業再構築補助金の公式サイトから確認できます。
3 計算例(説明のための仮の数字)
例1 機械装置を無償で譲渡する場合
- 取得価額(税抜) 1,000万円
- その機械に係った補助対象経費(B) 1,000万円
- Bに対する補助金の確定額(C) 500万円(補助率2分の1)
- 法定耐用年数 10年(定率法の償却率0・200)
- 取得から処分までの経過 3年
定率法で3年分の減価償却費を計算すると、1年目が200万円(1,000万円×0・200)、2年目が160万円(残高800万円×0・200)、3年目が128万円(残高640万円×0・200)で、累計は488万円になります。
したがって、残存簿価相当額は、1,000万円-488万円=512万円です。無償譲渡ですのでA=512万円となり、
例1の計算D = A × C / B = 512万円 × 500万円 / 1,000万円 = 256万円
納付額は256万円という計算になります。処分制限財産に係る補助金額(この例では500万円)を超えていませんので、上限にはかかりません。
なお、同じ機械を500万円で有償譲渡した場合は、Aが譲渡額500万円となり、D=500万円×500万円/1,000万円=250万円になります。譲渡額が残存簿価相当額に比べて著しく低価で、その理由を合理的に説明できないときは、残存簿価相当額等が適用される場合があるとされています(前記Q10の注記)。
例2 ソフトウェアの場合
交付規程24条1項が処分制限財産として挙げているのは、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産です。補助金で導入したソフトウェアも、単価50万円(税抜)以上であれば、ここでいう「その他の財産」として処分制限財産に当たり得ます。ここでは、取得価額600万円、そのソフトウェアに係った補助対象経費(B)600万円、補助金の確定額(C)300万円、耐用年数5年、経過3年として計算します。
公式の「よくあるご質問」は、無形の資産の償却方法については触れていません。ここでは、税務上、無形固定資産の償却が定額法によるものとされていることを前提に、定額法で計算します。減価償却費の累計は600万円×3年/5年=360万円、残存簿価相当額は600万円-360万円=240万円です。
例2の計算D = A × C / B = 240万円 × 300万円 / 600万円 = 120万円
納付額は120万円という計算になります。もっとも、無形の資産についてどの償却方法で計算されるかは、公式の説明からは確認できませんでした。実際の取扱いは、財産処分の承認申請の際に事務局にご確認ください。
既に納付額の通知を受け取っている方、承認申請を促されている方は、こちらもご覧ください:
4 やめ方による違い
同じ「事業をやめる」でも、取得した財産をどうするかによって、必要な手続も返還の見込みも変わります。事務局の運用と、当職の見解を分けて並べます。
そのまま保管する(事業はやめるが、設備は手元に残す)
- 必要とされる手続
- 事業計画期間中に事業計画の全部を廃止するのであれば、廃止の届出(様式第14-1)。取得財産は、処分制限期間が終わるまで管理する義務が残ります(交付規程23条2項)。
- 返還・納付の見込み
- 財産の「処分」がされていない以上、財産処分に伴う納付は生じないと考えられます。
廃棄する(撤去・解体してしまう)
- 必要とされる手続
- 事務局の運用では、事前に財産処分の承認申請(様式第12-1)が必要とされています。災害・火災による場合や、立地上・構造上危険な状態にある場合の取壊し・廃棄は、報告(様式第12-4)で承認を受けたものとみなすことができるとされています(交付規程24条5項)。
- 返還・納付の見込み
- 事務局の運用では、残存簿価相当額を基に計算した金額の納付を求められます。もっとも、廃棄が補助金適正化法22条の規制対象に当たるかどうかには、争う余地があると考えております。
設備だけを第三者に売る・無償で渡す
- 必要とされる手続
- 事前に財産処分の承認申請(様式第12-1)。
- 返還・納付の見込み
- 有償譲渡なら譲渡額を、無償譲渡なら残存簿価相当額を出発点として、後記の計算式で納付額が決まります。
補助事業ごと引き継いでもらう(事業譲渡)
- 必要とされる手続
- 補助事業の実施期間中は承認申請(交付規程12条1項6号)、完了後の事業計画期間中は届出(様式第14-2。交付規程26条1項2号)。
- 返還・納付の見込み
- 譲受人が補助事業を続け、財産が補助目的に沿って使われ続けるのであれば、交付の目的に反する譲渡には当たらず、返還は生じないと考えております。
5 納付の期限と上限
引用(事業再構築補助金 よくあるご質問「財産処分について」Q16)「財産処分に関する手続きの完了後、事務局より『中小企業等事業再構築促進補助金に係る財産処分に伴う納付について』(様式第12-5)を通知します。通知日より30日以内に一括して納付いただく必要があります。」
出典:事業再構築補助金「よくあるご質問」財産処分Q16
上限については、「財産処分に伴う納付額は、処分制限財産に係る補助金額が上限となります」とされています(同Q15)。交付規程24条6項も、「当該処分制限財産に係る補助金額を限度として、納付させることができる」と定めています。処分した財産に対応する補助金の額を超える納付を求められている場合は、その点自体を確認する必要があります。
6 収益納付との違い
「納付」と呼ばれるものには、もう一つ、収益納付があります。これは財産処分に伴う納付とは別の仕組みです。
交付規程27条1項は、事業化状況・知的財産権報告書により、補助事業の事業化などによる収益が生じたことを確認したときは、補助金額を上限とする金額の納付を命ずることができると定めています。ただし、その報告書の決算が赤字の場合は、納付を免除するものとされています。
つまり、収益納付は「補助事業がうまくいったとき」に問題になるもの、財産処分に伴う納付は「補助事業をやめる・財産を処分するとき」に問題になるものです。事業がうまくいかずに廃業される場面で問題になるのは、通常は後者です。
7 当職の見解――廃業と廃棄は別のことです
事務局の運用・法令上の根拠・当職の見解
事務局が公式に説明している運用、その運用が拠って立つ法令、そして当職の見解を、順に分けて示します。
- よくあるご質問「財産処分について」Q19
- 補助事業を廃止される場合には、事業廃止の届出や財産処分の承認申請が必要となるとされています。
- よくあるご質問「補助金交付候補者の採択後の手続きについて」Q3
- 補助事業終了後の事業計画期間内に事業を継続できなくなった場合について、残存簿価相当額等により、補助金交付額を上限として返還を求めるとされています。
出典:事業再構築補助金「よくあるご質問」(ページを開いてから中身が読み込まれます)/同「財産処分」
第一に、廃業と、財産の廃棄は別のことです。事業をやめても、設備や内装がそのまま手元に残っているのであれば、財産は何も「処分」されていません。処分がなければ、財産処分に伴う納付の前提を欠くと考えております。取得財産を処分制限期間の終了まで管理する義務(交付規程23条2項)は残りますが、それは保管を続けるということであって、納付とは別の話です。
第二に、仮に廃棄をした場合でも、それが補助金適正化法22条の規制対象に当たるかどうかは、争う余地があると考えております。目的どおりに使用した後の解体について、同条の規制対象に含まれないと判断した裁判例もあります(東京地判平成2年1月30日判タ736号151頁)。もっとも、最三小判令和3年3月2日民集75巻3号317頁の調査官解説の整理を踏まえると、廃棄も含まれると解する余地も否定し切れず、ここは難しい問題です。
第三に、納付を求める根拠そのものにも限界があります。この納付は、財産処分の承認に付された条件(講学上の負担)であり、附款の許容性と限界は根拠法の解釈によって決まります。やむを得ない廃棄について納付を命じることの限界は、別稿「処分制限期間中に補助金で取得した設備を廃棄したら、残存簿価相当額を納付しなければならないのか」で詳しく述べています。
そして、返還が生じない出口として、補助事業ごと第三者に引き継ぐ事業譲渡という方法が考えられます。譲受人が補助事業を続け、財産が補助目的に沿って使われ続けるのであれば、交付の目的に反する譲渡には当たらないと考えております。
以上は当職の見解であり、廃業に伴う返還の可否について正面から判断した裁判例は、現在のところ見当たりません。結論を保証するものではありません。
8 返還を求められる典型的な場面
実際にご相談をいただく場面は、おおむね次の類型に分かれます。いずれも、個別の事件の内容ではなく、問題の型としての整理です。
- 事業をやめた後に、事業化状況報告が出されていないことをきっかけに、事務局から連絡が来る。
- 設備を先に処分してしまい、後から「事前の承認が必要だった」と指摘される。
- 賃借していた店舗を退去し、内装を残したことが「無償譲渡」に当たるのではないかと指摘される。
- 「本来は全額返還だが、財産処分の承認申請をすれば残存簿価相当額の返納で済む」と打診される。
- 補助事業に使いながら既存事業にも使っていたことが、目的外使用に当たるとして納付を求められる。
いずれの場面でも、最初に確かめるべきことは同じです。その財産の処分制限期間は何年で、既に経過していないか。何をもって「処分」があったとされているのか。納付額の計算の前提となる取得価額・補助対象経費・補助金確定額は、様式第6の別紙2の数字と合っているか。この3点を確認するだけで、見通しが変わることがあります。
9 納付額の算定根拠が示されていないとき
納付の通知や命令に金額だけが書かれていて、その金額がどのように計算されたのかが分からない、ということが起こります。前記2の計算式は、処分をした財産ごとに、A(譲渡額又は残存簿価相当額)、B(その財産に係った補助対象経費)、C(Bに対する補助金の確定額)を当てはめるものですので、どの財産について、いくらを基礎として、何年経過したものとして計算したのかが示されなければ、金額の当否を確かめることができません。
算定の枠組み自体は、公にされています。交付規程24条6項は、納付通知(様式第12-5)により処分制限財産に係る補助金額を限度として納付させることができると定めたうえで、「当該処分については、補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(平成16・6・10会課第5号)の各規定を踏まえ取り扱うものとする」としています。この通達(大臣官房会計課。最終改正令和元年5月7日)の「4.国庫納付額の算定について」が、納付額の算定方法を定めた部分です。
引用(平成16・06・10会課第5号「4.国庫納付額の算定について」)「(1)有償譲渡又は有償貸付けに係る国庫納付額は、処分制限財産に係る補助金額を上限として、譲渡額又は貸付額(ただし、当該譲渡額又は貸付額が残存簿価相当額又は鑑定評価を行った場合の鑑定評価額に比して著しく低価である場合において、その理由を合理的に説明することができないときは、残存簿価相当額又は鑑定評価額)に補助率(補助金交付額が事業額に占める割合その他の適切な比率。以下同じ。)を乗じて得た額とする。」
「(2)転用、無償譲渡、無償貸付け、交換、取壊し又は廃棄の場合の国庫納付額は、残存簿価相当額に補助率を乗じて得た額とする。ただし、鑑定評価を行う場合には、鑑定評価額に補助率を乗じた金額と前記の金額で高い方とする。」
出典:経済産業省「補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産に関する通達等」(大臣官房会計課)
この通達は、財産処分の承認の基準と、承認に付す国庫納付の条件を定める行政内部の取扱いです。廃棄が補助金適正化法22条の規制対象に当たるかどうかという前記7の問題は、ここでは別の話として置きます。算定の場面で読み取れるのは、納付額が、処分をした財産ごとに、処分の態様に応じて、譲渡額・貸付額又は残存簿価相当額に補助率を乗じて求めるものとされているということです。納付額が処分制限財産に係る補助金額を限度とされることは、前記5に述べた交付規程24条6項の定めるところです。
鑑定評価額が用いられる場面は、限られています。有償譲渡又は有償貸付けでは、譲渡額又は貸付額が残存簿価相当額等に比して著しく低価で、その理由を合理的に説明することができないときに用いられます。無償譲渡、取壊し、廃棄などでは、残存簿価相当額と鑑定評価額のいずれか高い額が用いられます。いずれも、前記2の※1・※2に掲げた注記と同じ内容です。
算定根拠を示すよう求める
補助金適正化法21条の2が理由を示さなければならない場面として挙げているのは、交付の決定の取消し、補助事業等の遂行若しくは一時停止の命令又は補助事業等の是正のための措置の命令であり、財産処分に伴う納付はここに挙げられていません(事業再構築補助金については、中小機構法16条により補助金適正化法が準用されます)。補助金等の交付に関する処分には、行政手続法2章・3章の規定も適用されません(補助金適正化法24条の2)。他方、交付規程は、納付通知の様式である様式第12-5の記載事項として、「1.納付の理由」「2.納付金額」「3.納付金振込先」「4.納付期限 本書発信日より30日以内」を掲げています。算定の内訳まで示すことを義務づけた規定は、そこには見当たりません。
もっとも、それは算定根拠を確かめなくてよいということではありません。金額の当否を確かめ、協議や訴訟の前提を整えるために、交付の主体に対し、書面で算定根拠を明らかにするよう求めておくことが大切であると考えております。求める事項としては、たとえば次のようなものが考えられます。
- 求められている納付が、交付決定の取消しに伴う補助金の返還なのか、財産処分に伴う納付なのか。その別と根拠規定。
- 算定の対象とした財産の区分・財産名ごとの内訳(取得価額、その財産に係った補助対象経費、これに対する補助金の確定額、補助率)。
- 財産ごとの処分制限期間(制限年数)と、何年経過したものとして計算したのかの当てはめ。
- 残存簿価相当額の計算に用いた償却方法と償却率。鑑定評価を用いたのであれば、その評価額と、残存簿価相当額のいずれを採ったのか。
- 加算金・延滞金の適用の有無。
算定に何が入っているかを確かめる
算定根拠が示されたら、先に見るのは計算の正確さではなく、何がその算定に入っているかです。納付額の算定は処分制限財産を対象とするものですので、そこに当たらない財産に係る額が混ざっていれば、計算の手前で前提が崩れます。
まず、処分制限期間が既に経過した財産です。補助金適正化法22条の処分の制限は、処分制限期間を経過した場合には適用されません(同法施行令14条1項2号)。期間の経過後にその財産をどう取り扱うかは、そもそも財産処分の制限の対象ではありません。期間が何年かは財産ごとに決まりますので、この点を先に確かめることになります(処分制限期間は何年かで詳しく述べています)。
次に、処分制限財産に当たらない財産です。補助金適正化法22条の制限が及ぶのは政令で定める財産に限られ(同法施行令13条)、交付規程24条1項は、処分制限財産を、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産としています。単価がこの基準に達しない財産は、ここでいう処分制限財産ではありません。
これらの財産に係る額が納付額に含まれているとみられる場合には、算定自体に誤りがあるものとして、金額の計算の当否とは別に、算定の見直しを求める余地があると考えております。
突き合わせる資料は、取得財産等管理台帳(様式第7)と、前記8に挙げた様式第6の別紙2(経費明細表)、それに交付決定通知書です。台帳には、財産の区分・財産名・単価・金額・取得年月日と、耐用年数(処分制限期間)が財産ごとに記載されます。期間は、交付規程24条2項により減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用して定まり、中小機構が別に定める場合にはその期間とされています。様式第7の注6も、処分制限期間として「税務申告上実際に使用している耐用年数ではなく」省令に定める耐用年数を記載すべきものとし、これが財産処分する場合の残存簿価相当額の算定根拠となる旨を注記しています。確かめるのは、その財産が省令のどの区分に当てはめられ、何年とされたのかです。
なお、ここで述べているのは算定の内容、つまり「いくらか」の問題です。やむを得ない廃棄について納付を命じること自体に限界があるのではないか、という「払う義務があるか」の問題は、別稿「処分制限期間中に補助金で取得した設備を廃棄したら、残存簿価相当額を納付しなければならないのか」で述べています。
よくある質問
- 廃業したら、補助金は全額返さなければならないのですか。
廃業と、財産の廃棄は別のことです。設備や内装がそのまま残っているのであれば、財産は何も処分されていません。公式の説明でも、返還は「残存簿価相当額等により、補助金交付額を上限として」求めるとされており、廃業したことだけを理由に全額の返還が当然に生じるものではありません。
- 返還額はどのように計算されるのですか。
公式の「よくあるご質問」は、納付額をD=A×C/Bで計算すると説明しています。Aは譲渡額又は貸付額(目的外使用・無償譲渡等の場合は残存簿価相当額)、Bは処分する財産に係った補助対象経費、Cはこれに対する補助金の確定額です。残存簿価相当額は、取得価額(税抜)から処分時点までの減価償却費の累計額を差し引いた金額で、機械装置等は圧縮記帳をしていても原則として定率法の償却率で計算されるとされています。
- 納付はいつまでにするのですか。
財産処分に関する手続の完了後、事務局から納付についての通知(様式第12-5)が届き、通知日より30日以内に一括して納付することとされています。納付額は、処分制限財産に係る補助金額が上限です。
※ 本稿は、執筆時点の法令・公式の説明・裁判例に基づく一般的な整理であり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。計算例の数字は、計算式の使い方を示すための仮のものです。