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弁護士 岸上大起

補助金で建てた建物に抵当権を設定することは「原則認められません」と書かれていますが、22条は「承認を受けないで」と定めています

このページの結論

補助金で建てた工場を担保に入れて、運転資金を借りたいと考えています。事務局の手引きには、担保権を設定することは「原則認められません」、「申請が必ずしも承認されるとは限りません」と書かれていました。担保権の設定はできないのでしょうか。

補助金適正化法22条は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の「承認を受けないで」、交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないと定めています。承認を受ければできる、という建てつけです。交付規程も、補助事業により建設した施設等の財産に担保権を設定する場合は、設定前に様式第11による承認申請書を提出して承認を受けるものとしているだけで、原則として認めない旨を定めてはいません(中小企業新事業進出促進補助金交付規程23条4項)。同じ事務局が出した公募要領40頁は、「原則認められません」に続けて「ただし、補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に納付をすることを条件に認められます。」と書いており、手引き38頁は、このただし書を落としています。

国の取扱基準(平成16・06・10会課第5号)3.(3)は、担保に供する処分を承認する場合を二つ挙げていますが、手引きも公募要領も①しか書いておらず、②(資金繰りの悪化等により補助目的たる事業の継続が困難であると認められる場合)が落ちています。もっとも、承認を受けないまま設定してしまうと、争うことは難しくなります。名古屋高判平成5年2月23日(訟月39巻11号2247頁、判タ859号260頁)は、承認を受けずに園舎に根抵当権を設定した行為について、17条1項所定の取消事由が生じるに至ったとしています(もっとも、そのすぐ後に「(直ちに取消権を行使し得る状態であったかはともかくとして)」という括弧書きを置いています)。順序を誤らないことが要になります。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明――新事業進出補助金「補助事業の手引き」38頁

中小企業新事業進出補助金の事務局が公表している「補助事業の手引き」(2026年8月17日・第1.8版)は、38頁(PDF39頁)に「3-3-3. 担保権の設定を行う際の手続き」という項目を置き、根拠規定として「交付規程第23 条、第24 条」を挙げています(以下、公式資料の閲覧日はいずれも2026年10月23日です)。まず、書かれていることをそのまま引きます。

引用(補助事業の手引き38頁「手続時のルール」)「処分制限財産である建物等に対して、抵当権などの担保権を設定することは、「担保に供する処分」に該当するため、原則認められません。」
引用(同38頁「概要」)「申請が必ずしも承認されるとは限りません。」
引用(同38頁「補助事業者としての義務」)「補助事業により建設した施設等の財産に抵当権等の担保権を設定する場合、担保権設定前に承認申請を行い、必ず事前に承認を得てください。補助事業実施に必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に納付をすることを条件に認める場合があります(事後承認はできません)。原則、売却額の納付となりますが、売却額が「残存簿価」や「鑑定評価額」より著しく低い場合は、「残存簿価」「鑑定評価額」のいずれか高い方となります。」

同じ頁には、次の記述も並んでいます。

  • 「手続きを行った場合でも、本事業により整備した施設等の財産に対して新規に根抵当権の設定を行うことは認められません。」
  • 「補助事業により建設した施設等の財産に対して、譲渡担保権及び根抵当権を設定することはできません。建物の建築予定地に根抵当権が設定され、「追加担保差入条項」が設定されている場合については、本手引き「5-2. 建物費」を参照してください。」(※原文では「譲渡担保権」「根抵当権」に脚注番号が付されています。引用に当たり、番号は省略しました。)
  • 「工事着工後、根抵当権の極度額の増額は認められません。」
  • 「店舗兼住宅の住宅部分など、補助事業で使用しない部分を取得するための費用が含まれる資金調達については、補助事業実施に必要な資金調達とはみなさないため、担保権の設定が認められません。」
  • 「補助事業により建設した施設等の財産が50 万円未満(税抜き)の物件については、担保権設定承認申請は不要とします。」

別の補助金の資料にも、同じ向きの記述があります。事業再構築補助金「補助事業により取得した資産について『財産処分』となる参考例」(令和8年5月)の5頁は、「『目的外使用』となる参考例」「『財産処分』となる参考例③」という見出しのもとに、補助事業により取得した工場に担保権を設定した場合を挙げ、次のように注記しています。

引用(同参考例5頁)「※ 補助事業実施期間中に担保権を設定する場合、補助事業遂行のため必要な資金調達をする場合に限り、「担保権設定」の手続きを行うことで担保権の設定が可能です。ただし、根抵当権や譲渡担保権の設定はできません。」

この頁は、本文で「事業計画実施期間中に」としながら、注では「補助事業実施期間中に」としており、指している期間の語が揃っていません。また、担保権の設定それ自体が「目的外使用」の参考例として分類されています。補助金適正化法22条が承認にかからせているのは、「補助金等の交付の目的に反して」する担保提供です。設定それ自体が当然に目的外使用になるわけではありません。

2 同じ事務局の公募要領は、「ただし……認められます」と書いています

先に、法律の文言を確かめます。

引用(補助金適正化法22条)「補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」

「承認を受けないで……してはならない」という形です。承認を受ければできる、という建てつけです。本補助金について同法が及ぶのは、中小機構法16条による準用です。そして、交付規程も同じ建てつけになっています。以下で引く交付規程は、中小企業新事業進出促進補助金交付規程(令和7年4月21日規程令7第1号。規程令7第17号及び規程令8第2号による改正後のもの)です。補助金の名称は「中小企業新事業進出補助金」ですが、交付規程の名称には「促進」が入ります。原文のとおりです。

引用(同交付規程23条4項。同規程6頁)「補助事業者は、補助事業により建設した施設等の財産に対し、抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に、様式第11による承認申請書を中小機構に提出し、その承認を受けるものとする。なお、本事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められない。」

定めているのは二つです。設定の前に様式第11による承認申請書を出して承認を受けること。根抵当権の設定は認められないこと。「原則として認めない」とは書かれていません。

そして、同じ補助金について同じ事務局が出している公募要領(第4回。1.0版。令和8年3月)の40頁(PDF41頁)には、こう書かれています。

引用(公募要領(第4回)40頁)「処分制限財産である建物等に対して、抵当権などの担保権を設定することは、「担保に供する処分」に該当するため、原則認められません。ただし、補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に納付をすることを条件に認められます。必ず、事前に事務局の承認を受ける必要があります。なお、処分制限財産である建物等に対して、根抵当権の設定を行うことは認められません。また、根抵当権が設定されている土地に、補助事業により建物を新築する場合は、根抵当権設定契約において、処分制限財産となる建物等に対する追加担保差入条項を定めることは認められません。」

手引き38頁と読み比べていただくと分かります。「原則認められません」までは、同じ文です。違うのは、そのすぐ後に置かれた「ただし、補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に納付をすることを条件に認められます。」という一文の有無です。公募要領は「認められます」と言い切っています。手引き38頁の「手続時のルール」は、このただし書を落として前段だけを掲げ、認める場合があることを別の欄に移したうえで、「認める場合があります」「申請が必ずしも承認されるとは限りません」と弱めています。

同じ手引きの中にも、食い違いがあります。手引き5頁(PDF6頁)「2-2. 重要:注意事項」の「担保権設定の制限」は、次のとおりです。

引用(補助事業の手引き5頁「担保権設定の制限」)「処分制限財産である建物等に対して、以下の行為は制限されます。/抵当権などの担保権を設定することには条件が付されます。/根抵当権を新たに設定することは認められません。」(※原文は箇条書きです。引用に当たり「/」で区切りました。)

「条件が付されます」と「原則認められません」とでは、読む人に伝わるものが違います。前者は、条件付きで認められるという説明です。後者は、認められないのが原則だという説明です。同じ文書の5頁と38頁とで、言っていることが違います。

私見としては、手引き38頁のこの書き方は、22条が承認制を定めた趣旨を裏返しており、公募要領40頁のただし書とも、手引き5頁の「条件が付されます」とも整合しないと言わざるを得ません。処分制限は、補助事業者の所有に属する財産についての制約です。第一審の名古屋地判平成4年4月23日(訟月39巻11号2262頁、判タ799号243頁)も、「補助金等によって取得した財産の処分制限は、補助事業者の所有権の行使に対する重大な制約である」と判示しています。制約は、法律が置いた限度にとどめなければならないものです。

3 国の取扱基準が認める二つ目の場合が落ちています

手引き38頁は「補助事業実施に必要な資金調達をする場合に限り」とし、公募要領40頁は「補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り」としています。この「限り」の中身は、どこから出てくるのか。交付規程が、国の定めた取扱いを挙げています。

引用(同交付規程24条6項。同規程7頁)「中小機構は、補助事業者が処分制限財産を処分するときは、様式第12-5による納付通知書により、当該処分制限財産に係る補助金額を限度として、納付させることができるものとし、補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない。なお、当該処分については、補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(平成16・6・10会課第5号)の各規定を踏まえ取り扱うものとする。」

ここで挙げられている「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16・06・10会課第5号。経済産業省大臣官房会計課。最終改正令和元年5月7日)は、担保に供する処分を承認する場合を、二つ定めています。

引用(同取扱い3.(3)。同PDF3頁)「(3)担保に供する処分の申請については、次のいずれかに該当する場合に限り、担保権実行時に国庫納付する旨の条件を付して承認することとする。/① 申請に係る処分制限財産を取得し、又はその効用を増加させるために必要な資金を調達する場合(補助金等の交付の決定(又は計画変更の承認)において個別に認めるものに限る。)。/② 資金繰りの悪化等により補助目的たる事業の継続が困難であると認められる場合。」(※原文は改行で区切られています。引用に当たり「/」で区切りました。)

手引き38頁が書いているのは、「補助事業実施に必要な資金調達をする場合に限り」という部分だけです。これは①に当たります。②は落ちています。公募要領40頁も、事業再構築補助金の参考例5頁も、やはり①しか書いていません。

②は、資金繰りの悪化等により補助目的たる事業の継続が困難であると認められる場合です。経営が苦しくなって、補助金で建てた工場を担保に運転資金を借りたい――担保を必要とする場面そのものが、ここに当たります。その場面が、公式の説明からは消えています。「限り」という限定だけが残り、限定の中身が一つ減っているわけです。

しかも、残された①には括弧書きが付いています。「補助金等の交付の決定(又は計画変更の承認)において個別に認めるものに限る。」というものです。交付決定や計画変更の段階で手当てをしていない事業者は、①には乗れません。そうすると、残るのは②だけです。公式の説明は、その②を書いていないことになります。

申請の様式も、同じ向きに作られています。交付規程の様式第11(中小企業新事業進出促進補助金に係る担保権設定承認申請書。同規程49頁)が理由を書かせる欄は、一つだけです。

引用(同交付規程様式第11)「3.補助事業の遂行のために担保権の設定が必要となる理由等」

補助事業の遂行のために必要となる理由、という聞き方です。①を想定した欄であって、②(資金繰りの悪化等により補助目的たる事業の継続が困難であると認められる場合)を書く欄は置かれていません。手引きが書いていないという消極の事実にとどまらず、申請の様式そのものが①しか想定していない、ということになります。

もっとも、会課第5号は、経済産業省の大臣官房会計課が定めた通達です。行政の内部を規律するために作られた定めであって、事業者を直接拘束する法規ではありません。交付規程24条6項も、「各規定を踏まえ取り扱うものとする」としているだけで、この基準の適用を命じているわけではありません。ですから、①②のいずれにも当たらないから当然に承認されない、ということにはならないと考えております。

他方で、中小機構の側は、この基準に自ら拠ると述べています。手引き5頁の「各種法令の適用」は、次のとおりです。

引用(補助事業の手引き5頁「各種法令の適用」)「本補助金の交付については、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和 30 年法律第 179 号)」、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和 30 年政令第 255 号)」、「独立行政法人中小企業基盤整備機構法(平成 14 年法律第 147 号)」、「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(平成 16・06・10 会課第5号)」、「中小企業新事業進出促進補助金交付規程」(以下「交付規程」という。)及びその他の法令の定めによります。」

補助金適正化法・同施行令・中小機構法と並べて、会課第5号を挙げています。自ら拠るとした基準が二つの場合を定めているのに、その一方だけを示し、②に当たるかどうかを考えないまま不承認とするのであれば、考慮すべき事項を考慮していないことになると考えております。私見としては、手引き38頁のこの書き方は、22条の承認の仕組みと、交付規程自身が踏まえるものとして挙げた取扱いの理解が浅いと言わざるを得ません。

4 「追加担保差入条項を定めることは認められません」――融資契約の中身への介入

先に、問題にしていないことを書いておきます。根抵当権の設定を認めないこと自体は、手引きが独自に付け加えたものではありません。交付規程23条4項が、「なお、本事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められない。」と定めています。この点について、手引きが交付規程を超えているという指摘は当たりません。交付規程の条項が補助条件に取り込まれているかどうかという、別の見方があるにとどまります。この見方は、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。

問題は、その先です。公募要領40頁は、根抵当権そのものではなく、金融機関との契約の条項について、次のように定めています。

引用(公募要領(第4回)40頁)「また、根抵当権が設定されている土地に、補助事業により建物を新築する場合は、根抵当権設定契約において、処分制限財産となる建物等に対する追加担保差入条項を定めることは認められません。」

認められないとされているのは、金融機関と事業者との間の契約に、ある条項を置くことです。そして、公募要領で定めた事項に該当した場合は、交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することができるとされています(同交付規程22条1項13号)。契約の条項の書き方が、そのまま取消事由につながる建て方になっています。

手引きは、既に条項が置かれている場合の対応を求めています。88頁(PDF89頁)「5-2. 建物費」の【留意事項】です。

引用(補助事業の手引き88頁「5-2. 建物費」【留意事項】)「本補助金では、補助事業により整備した施設等の財産に対して、根抵当権の設定を行うことは認められません。建物の建設予定地に根抵当権が設定され「追加担保差入条項」が設定されている場合には、補助事業により新築、改修等を行う建物に対して新たに根抵当権が設定されることとなり、補助事業として遵守すべき事項に違反が生じます。このため、補助事業の遂行に当たっては、権利者である金融機関等により建物部分に係る根抵当権を設定する義務の免除についての同意を得た上で、実績報告時に「報告書_根抵当権設定義務の免除について」<参考様式20-1>の提出が必要です。財産処分の制限期間中は、上記の対応が必要となります。」

ここで求められているのは、事業者が、既に取引のある金融機関から、契約上の権利を行使しない旨の同意を取り付けてくることです。根抵当権は中小企業の融資実務の標準的な担保であり、追加担保差入条項も珍しいものではありません。土地に根抵当権が設定されている事業者が補助事業で建物を建てるのであれば、この対応を求められることになります。しかも、免除に応じるかどうかは金融機関の判断であって、事業者が決められるものではありません。

補助金適正化法は、交付決定に附する条件について、限界を定めています。

引用(補助金適正化法7条4項)「補助金等の交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、いやしくも補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであつてはならない。」

条件という形をとっていない場合についても、同法24条(不当干渉等の防止)に関して、文献は次のように述べています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』320頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「補助条件の形式をとらなくとも、実質的に補助金交付の前提条件として相手方に不当な干渉を加えるものは、すべて本条に違反する行為とみるべきであろう。」

もっとも、24条を正面から持ち出すことには、二つの難しさがあります。一つは、同条の名宛人が「補助金等の交付に関する事務……に従事する国又は都道府県の職員」とされていることです。中小機構法16条による読替えの後は「独立行政法人中小企業基盤整備機構又は都道府県の職員」となりますが、手引きや公募要領を出しているのは事務局です。もう一つは、同書320頁が、同条について「本条はいわゆる訓示的規定である」とも述べていることです。

そうしますと、実務で持ち出すことになるのは、7条4項の限界のほうです。私見としては、民間の融資契約にどの条項を置くかという点にまで交付の条件が及んでいることについては、交付の目的を達成するため必要な限度との関係で、検討の余地があると考えております。

5 公式の説明は、一方当事者の見解です

中小機構・中小企業庁・各事務局の説明は、公正な第三者による解説ではなく、補助金をめぐる紛争の一方当事者の見解です。通説が説いていない立場を強く主張しているものもあります。公式の説明だからと鵜呑みにするのは非常に危険です。

本件について申し上げれば、次のとおりです。補助金適正化法22条は「承認を受けないで」と定めており、承認を受ければできるという建てつけです。交付規程23条4項も、設定前に承認申請書を提出してその承認を受けるものとしているだけです。同じ事務局が出した公募要領40頁は「ただし……認められます」と書き、同じ手引きの5頁は「条件が付されます」と書いています。それにもかかわらず、手引き38頁は「原則認められません」と宣言し、「申請が必ずしも承認されるとは限りません」と付け加えています。

もっとも、ここで申し上げているのは、公式の説明に従わなくてよい、ということではありません。承認を受けないまま設定すれば、前記2のとおり取消事由が生じうるという裁判例があります。申し上げているのは、公式の説明に書かれていない道が、条文と取扱いの側にあるということです。書かれていないことは、ないことと同じではありません。

次のような場合は、手続に入られる前にご相談ください

  • 補助金で建てた建物を担保に資金調達をしたいが、「原則認められない」と言われている
  • 資金繰りが厳しく、補助金で取得した財産を担保に入れたいと考えている
  • 金融機関から、根抵当権・追加担保差入条項の扱いについて説明を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 補助金で買った設備・建物を担保に入れられるか(Q&A)/補助事業を続けられないとき――手続の順番、返還額の計算、返還が生じない選択肢(コラム)

6 担保権設定承認申請(様式第11)を出される前に

手引き38頁は「事後承認はできません」としています。順序を誤ると、取り返しがつきません。申請を出される前に、次の三つを整理しておいていただくのがよいと考えております。

  • (1)どちらの場合に当たる資金調達なのかを分ける。会課第5号3.(3)が挙げているのは、①その財産を取得し、又はその効用を増加させるために必要な資金を調達する場合と、②資金繰りの悪化等により補助目的たる事業の継続が困難であると認められる場合の二つです。ただし、①は「補助金等の交付の決定(又は計画変更の承認)において個別に認めるものに限る。」とされていますので、交付決定や計画変更の段階で手当てをしていない場合には、①には乗れません。その場合は、②によることになります。
  • (2)②によるのであれば、その事実を資料で固め、条項を明示して申請する。資金繰りの悪化等により補助目的たる事業の継続が困難であることは、言葉だけでは残りません。直近の試算表・資金繰り表、金融機関とのやり取り、売上の推移など、事実を示せるものをそろえてください。そのうえで、様式第11の「3.補助事業の遂行のために担保権の設定が必要となる理由等」の欄は①を想定した聞き方になっていますので、別紙を付けて、会課第5号3.(3)②に該当することを明示してください。公式の説明に書かれていないからといって、申請の側から挙げないままにしておく理由はありません。
  • (3)根抵当権と追加担保差入条項の扱いを、申請の前に金融機関と詰める。交付規程23条4項は根抵当権の設定を認めないとし、公募要領40頁は追加担保差入条項を定めることを認めないとしています。手引き88頁は、既に条項がある場合に、権利者である金融機関等から建物部分に係る根抵当権を設定する義務の免除についての同意を得たうえ、実績報告時に参考様式20-1 を提出することを求めています。同意が得られるかどうかは金融機関の判断ですので、契約を結んでしまってからでは動かせません。被担保債権を特定した抵当権で組めるのか、極度額の増額を伴わない形にできるのか、免除の同意を書面で取れるのかを、融資の条件を詰める段階で確かめてください。

なお、承認を要するのは補助事業の実施期間中に限られません。手引き75頁(PDF76頁)は、「事業計画期間終了後であっても、法定耐用年数を経過するまでは処分に制限が課されますので、ご注意ください。」としたうえで、「当該期間中に、取得財産に担保権等を設定する事象が判明した際は、補助事業実施期間中と同様に、担保権等を設定する前に、担保権設定承認申請書を提出の上、事務局の承認を得る必要があります。」としています。交付規程24条3項の承認は、処分制限期間内の処分についてのものです。これに対し、23条4項には期間の限定が置かれていません。期間が経過していることを理由にご自身で判断なさる前に、交付主体にお確かめください。期間の数え方は、コラム「処分制限期間は何年か」で述べています。

最後に一つ申し上げます。手引き38頁は、「補助事業により建設した施設等の財産が50 万円未満(税抜き)の物件については、担保権設定承認申請は不要とします。」ともしています。これは事業者に有利な取扱いですが、交付規程23条4項の文言には金額の限定が置かれていませんので、この取扱いが何に基づくのかは、別に確かめる余地があります。単価50万円という線がどの条文から出てくるのかは、Q&A「50万円未満の設備や、工事一式で計上したものは、処分制限の対象になるのか」で述べています。

補助金で建てた建物を担保に資金調達をお考えの事業者の方、担保権設定承認申請を出したところ「原則認められない」と言われた方、金融機関から根抵当権・追加担保差入条項の扱いについて説明を求められている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、設定の手続に入られる前にご相談ください。交付決定通知書、交付規程、手引きの該当頁、金融機関から示されている契約書案があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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