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弁護士 岸上大起

50万円未満の設備や、工事一式で計上したものは、処分制限の対象になるのか

このページの結論

補助金で入れた設備について、処分の承認が要ると言われています。手元の機器には1台20万円ほどのものも混じっており、内装は「内装工事一式」として台帳に一行で書いてあります。これも全部、処分制限の対象になるのでしょうか。

処分制限財産は、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産とされており(補助金適正化法22条、同法施行令13条、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程24条1項)、「単価」は、請求書1枚の金額でも工事契約1本の金額でもなく、財産ひとつあたりの価格です。同じ規格の機器を複数台入れた場合も、見るのは1台あたりの価格であって、台数分を合計した額ではありません。工事一式として台帳に一行で載っていても、別の機能をもち、単独で取り外して動かせる機器が含まれているのであれば、その機器は別の財産として単価を見る余地があると考えております。

もっとも、分ければよいという話でもありません。借りている建物に施した造作については、造作全部を一の資産として扱う考え方が示されており(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3(注))、内装工事を細かく割って一つずつ50万円未満だと述べることには無理があると考える余地があります。また、単価50万円未満の機器であっても、善良な管理者の注意をもって管理し、交付の目的に従ってその効率的運用を図る義務(同交付規程23条1項)は及び、その違反は交付決定の取消しの事由(同22条1項1号)になり得ます。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 処分制限財産かどうかは、財産ごとの単価で決まります

補助金で入れた設備について、処分の承認が要るのか、残存簿価相当額を納めることになるのか、という話は、まず、その財産が「処分制限財産」に当たるかどうかで分かれます。そして、当たるかどうかは、財産ごとの単価で決まります。

出発点は補助金適正化法22条です。同条は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないと定めています。制限の対象とされているのは、補助事業で取得した財産の全部ではなく、「政令で定める財産」です。

その政令が、補助金適正化法施行令13条です。同条は、処分を制限する財産として、1号に不動産、2号に船舶、航空機、浮標、浮さん橋及び浮ドツク、3号に前二号に掲げるものの従物、4号に機械及び重要な器具で、各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定めるもの、5号にその他各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が補助金等の交付の目的を達成するため特に必要があると認めて定めるものを掲げています。

ここで押さえておきたいのは、4号と5号が、範囲の確定を交付する側の定めに委ねていることです。金額の基準は、この委任を受けた定めの中に出てきます。法律にも政令にも、「50万円」という数字は書かれていません。なお、4号・5号にいう「補助実施法人の代表者」は、中小機構が交付主体となる補助金では、中小機構の理事長を指します。同施行令1条2項が「補助実施法人」を別表の法人の欄に掲げる法人としており、その別表に独立行政法人中小企業基盤整備機構法15条1項6号、16条と中小機構が掲げられているからです。事業再構築補助金に補助金適正化法が及ぶのも、この準用によるものです。

そして、事業再構築補助金についていえば、交付規程が金額の基準を定めています。以下の交付規程の条数・頁数と文言は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)のものです。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程24条1項)「取得財産等のうち、処分(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等をいう。)を制限する財産(以下「処分制限財産」という。)は、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産とする。」

単価50万円(税抜)以上であることが、処分制限財産に当たるための要件とされています。単価がこれに満たない機器は、処分制限財産ではありませんので、処分の承認の手続(同24条3項)の対象にもなりません。この整理が納付額の計算の場面でどう効くのかは、コラム「返還額はいくらになるのか」でも述べています。

もっとも、交付規程は、交付主体が自ら定めた内部的な規範(講学上の行政規則)であって、それ自体が国民を直接拘束する法規ではありません。この点は、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。ここで申し上げているのは、施行令13条4号・5号が範囲の確定を交付する側の定めに委ねているため、金額の基準を知るには交付規程を見るほかない、ということです。単価の基準に達しない財産について承認が要らないという結論そのものは、適正化法22条と施行令13条の仕組みから出てくるものと考えております。

この線引きには、理由があります。文献は、補助目的達成上余り重要性をもたない財産についてまですべて処分制限の対象とする必要性は認められないとして、本条が処分を禁止する財産を政令で定める財産とし、比較的財産価値の高い一定の財産に限定しうることとしたと説明し、施行令13条4号・5号が交付行政庁の指定に委ねられていることを指摘しています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』299〜300頁(株式会社全国会計職員協会、2016))。単価50万円という線は、この流れの中にある数字です。もっとも、金額で切るかどうか、どこで切るかは、委ねられた部分ですので、見るべきは、お手元の補助金の交付規程が単価で平らに切っているかどうかです。

事務局の説明も、単価の線を示しています。

引用(事業再構築補助金 公式サイト「財産処分」)「取得又は効用の増加した単価50万円(税抜き)以上の建物、機械器具、備品及びその他財産が対象となり、これを「処分制限財産」と呼びます。」
出典:事業再構築補助金「財産処分」

単価の線は交付規程24条1項と同じですが、この説明は、同項が挙げていない「建物」と「備品」を並べています。建物についてこの線をそのまま当てはめてよいのかは、後記4で述べます。

また、基準は補助金ごとに違います。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の交付規程では、同じ趣旨の定めが21条1項に置かれ、処分を制限する財産を「取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜き)以上の機械、器具、備品及びその他の財産」としています(制定令和7年2月25日、最終改訂令和8年8月5日。全国中小企業団体中央会。同規程5頁)。条数も、挙げられている財産の種類も、同じではありません。納付の定めが何にかかっているかも違い、同規程20条3項は、補助事業者が「取得財産等」を処分する場合に残存簿価相当額等を納付させることができるものとしていて、処分制限財産に限った定め方をしていません(同規程5頁)。単価の基準だけでなく、納付の条項が何を要件としているかも併せてお確かめください。

2 「単価」は、請求書の金額でも契約の金額でもありません

「単価」は、請求書1枚の金額でも、工事契約1本の金額でも、補助事業全体の金額でもありません。財産ひとつあたりの価格です。

同じ規格の機器を複数台入れた場合も、見るのは1台あたりの価格です。台数分を合計した額が50万円を超えるかどうかではありません。1台20万円の機器を10台入れても、1台あたりの単価は20万円です。

このことは、交付規程が提出を求めている書類の作り方からも読み取れます。実績報告書(様式第6。同17条1項)に添える費目別支出明細書(同様式第6の別紙3)は、数量、単位、単価、補助対象経費を、支出の1件ごとに書かせる形です(同交付規程58〜59頁)。取得財産等管理台帳(様式第7。同23条2項)も、区分、財産名、数量、単価(円)(税抜き)、金額(円)(税抜き)、取得年月日、保管場所及び設置場所を、財産ごとに並べる形で、次の注記が付されています(同61頁)。

引用(同交付規程様式第7(取得財産等管理台帳)注1〜注3。同61頁)「(注1)対象となる取得財産等は、本交付規程第24条第1項に定める処分制限額(単価50万円(税抜き))以上の財産とします。
(注2)「区分」は、建物、機械・装置・工具・器具、無体財産権(知的財産権等)、とします。
(注3)「数量」は、同一規格等であれば一括して記入して差し支えありません。単価が異なる場合は、分割して記入してください。」

注3が述べているのは、数量をまとめて書いてよいのは同一規格等の場合に限られ、単価が異なる場合には分割して記入せよ、ということです。もっとも、注3は、財産の単位が定まっていることを前提に、数量欄の書き方を述べたものであって、「内装工事一式」が一の財産なのか複数の財産なのか、という、論理的に先にある問いそれ自体に答えたものではありません。様式の作り方が財産ごとの単価を前提にしていることの一つの現れとして読むのが正確だと考えております。

承認を求める段階でも、官側の様式は財産ごとの単価を書かせています。経済産業省の「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16・6・10会課第5号。最終改正令和元年5月7日)は、財産処分の承認申請書の記載要領として、「処分する財産名等」欄について、取得財産等管理台帳の区分に基づく(区分・財産名・規格・数量・単価・金額・取得年月日・耐用年数・保管場所・補助率)及び使用開始の日を記入するとしています(同取扱い8頁)。

裁判例に現れた交付決定の条件も、財産ひとつあたりで書かれていました。承認を受けずに担保を設定した事案で、裁判所は、交付決定に附された条件として、補助事業等により取得した機械及び重要な器具のうち一個あたりの取得価格が五〇万円以上のものは、防衛施設局長の承認を受けないで、交付の目的に反して担保に供するなどしてはならないこと、等が定められていたと認定しています(名古屋高判平成5年2月23日訟月39巻11号2247頁、判タ859号260頁。名古屋地判平成4年4月23日訟月39巻11号2262頁、判タ799号243頁の控訴審です。上告がされていますが(判タ882号282頁)、上告審の裁判は公刊物に見当たりません)。条件の文言は「一個あたりの取得価格」です。

もっとも、この裁判例を、一式の行を分けるという議論の支えとして引くことはできません。同判決は、この条件について、補助事業により取得した園舎がこれに含まれることはいうまでもないとも述べています。建物一棟が「一個」として数えられた例ですので、何を一個と数えるかは、条件の文言だけでは決まらない、ということになります。しかも、これは別の制度の補助金(防衛施設局長が交付したもの)の条件ですので、中小機構が交付する補助金の条件が同じ文言であるとはいえません。審理されたのも、取消し後の補助金返還請求権が破産手続上の財団債権に当たるかどうかであって、単価の数え方が争われた事件ではありません。全文は、コラム「裁判例紹介:名古屋地判平成4年4月23日・名古屋高判平成5年2月23日」で紹介しています。

なお、担保権の設定については、交付規程に別の定めが置かれています。この点は後記4で述べます。

3 工事一式で計上したものを、財産単位に戻す

実際の台帳には、「内装工事一式」「設備工事一式」といった行が入っていることがあります。見積書と請求書が工事一式で出てきて、実績報告の際にその金額をそのまま書き写すと、こうなります。悪意があって一式にしているわけではなく、手元の書類がそうなっているだけ、という場合も少なくないと考えております。

ところが、一式のまま置いておくと、その行の金額全体が一つの処分制限財産として扱われていきます。処分の承認が要るかどうかも、残存簿価相当額をいくら納めるかも、その一行を前提に進みます。前記2のとおり、交付規程の様式が予定しているのは財産ごとの単価の記載ですので、一式の行は、内訳に戻して単価を見る余地があると考えております。一式のままの計上を官側が認めていないことを、正面から書いている資料もあります。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の「補助事業の手引き(23次締切)」は、交付申請に添える見積書について、「※内容が不明確なものは認められません。見積金額に複数の項目が含まれる場合は、その内訳を示すこと。「〇〇一式」のみは不可。」としています(同手引き3頁。同15頁にも同じ求めがあります)。これは別の制度の手引きですが、見積りの段階から内訳を求める考え方は共通していると考えております。

一式の行を戻すときに見ていただきたいのは、次のものです。

  • 見積書の内訳書・明細(機器名、型式、数量、単価が出ているもの)
  • 請求書の内訳。一式の裏付けとして別紙が付いていることがあります
  • 納品書・検収書。同様式第7注4は、取得年月日について検収年月日を記入することとしています(同61頁)
  • 仕様書、機器リスト、配置図・施工図
  • 実績報告書に添えた費目別支出明細書(同様式第6の別紙3)の控え
  • 施工業者の手元にある機器表。発注時の内訳が残っていることがあります

分け方の考え方としては、取引の単位ではなく、財産としてのまとまりで見ることになると考えております。機械の据付けのように、その機械を使える状態にするために一体として要した費用は、その機械の取得価格に含めて単価を見ることになると考えております(もっとも、前記の手引きは、機械装置の据付に要する費用とはならない設置場所の整備工事や基礎工事を補助対象外としています。同15頁)。他方、別の機能をもち、単独で取引され、単独で取り外して動かせる機器は、別の財産として単価を見る余地があると考えております。一行を恣意的に割って単価を下げるのではなく、現にどういう財産が何台あるのかに即して戻す、ということです。

借りている建物に施した造作については、この分け方が通りにくい

正直に申し上げておきたい限界があります。借りている建物に施した造作については、この分け方が通りにくい場面があります。国税庁の耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3は、その(注)で、同一の建物(一の区画ごとに用途を異にしている場合には、同一の用途に属する部分)についてした造作は、その全てを一の資産として償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積ることに留意するとしています。通達の引用と当てはめは、コラム「処分制限期間は何年か」の後半で述べています。

同24条2項が準用しているのは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令であって、国税庁の通達ではありません。もっとも、省令にこの場面の定めが置かれていないのですから、省令の適用について国税庁が示している取扱いを参照することには理由があると考えております。そうすると、造作を一の資産として扱うこの考え方が、処分制限の場面にも持ち込まれると考える余地があります。内装工事を細かく割って、一つずつ50万円未満だと述べることには、無理があると考える余地があります。

もとより、反対の見方も成り立ちます。この通達が処分制限の場面をどこまで拘束するのかについては、前記コラムの後半で、拘束しないという見方も併せて述べています。加えて、同通達は償却の単位と耐用年数の見積りについての取扱いであって、「単価」の数え方を直接定めたものではありません。

逆に、内装工事の請求に、建物と別に据え付けられ、取り外して動かせる機器が紛れ込んでいることがあります。そこは造作ではなく、機械・器具として単価を見ることになると考えております。一式の行を戻す作業の値打ちは、このページの場面では、むしろこちらにあると考えております。

4 50万円未満だと、何が要らなくなり、何が残るのか

以下は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程の定めについてです。単価が50万円(税抜)に満たない財産は、処分制限財産ではありません。その結果として、要らなくなるものがあります。

  • 処分制限期間内の処分についての事前の承認申請(同24条3項)。同項が承認を受けなければならないとしているのは、「処分制限財産を処分しようとするとき」です。
  • 処分に伴う納付(同24条6項)。同項が納付通知書により納付させることができるとしているのは、「補助事業者が処分制限財産を処分するとき」であり、納付の限度も「当該処分制限財産に係る補助金額」とされています。処分制限財産に当たらず、かつ、交付決定に附された条件にも同様の定めがなければ、同項による納付の前提を欠くことになると考えております。
  • 残存簿価相当額の計算の基礎。同様式第7注6は、台帳に記載する耐用年数について、「(財産処分する場合の残存簿価相当額の算定根拠となります。)」としています(同61頁)。台帳に載らない財産は、この計算の基礎にも入りません。

もっとも、納付の根拠は交付規程だけではありません。交付決定に附された条件(補助金適正化法7条1項、同条3項)がどう書かれているかが先で、条件の文言は交付規程と一致しないことがあります。前記2の裁判例の交付決定も、「一個あたりの取得価格が五〇万円以上のもの」という独自の文言でした。まず、交付決定通知書に附された条件の文言を確かめることになります。

他方で、残るものがあります。「50万円未満だから、もう何の義務もない」ということではありません。

  • 善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を図る義務(同23条1項)。同項が義務の対象としているのは「取得財産等」、すなわち補助対象経費により取得し、又は効用の増加した財産であって、処分制限財産に限られていません。単価50万円未満の機器も、補助対象経費で取得した財産である以上、この義務の対象です。
  • 補助事業により建設した施設等の財産に担保権を設定するときの事前の承認(同23条4項)。同項は、抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に、様式第11による承認申請書を中小機構に提出し、その承認を受けるものとしており、処分制限財産に限った定め方をしていません。あわせて、本事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められないとされています。
  • 事業化状況・知的財産権報告書の提出(同25条1項)。財産の単価とは関係がありません。
  • 事業計画の全部又は一部の廃止・承継の届出(同26条1項)。これは財産についてではなく事業計画についての定めですので、やはり単価とは関係がありません。

そして、同23条1項の義務に反したという評価がされると、交付決定の取消しの入口が残ります。同22条1項1号は、補助事業者が法令、本規程又は本規程に基づく中小機構の処分若しくは指示に違反した場合を、交付決定を取り消すことができる場合として挙げています(同6〜7頁)。取消しとなれば、補助金の全部又は一部の返還(同条2項)と、年利10.95パーセントの割合で計算した加算金(同条3項)の問題になります。処分制限財産に当たらないから承認を得ずに動かしてよい、ということにはならないと考えております。取消事由は、交付決定の取消し・返還請求のページで扱っています。

建物・土地について、単価の線をそのまま持ち込むことはできません

金額の基準は、施行令13条4号・5号が交付する側の定めに委ねた部分について置かれたものです。同条1号の不動産、2号の船舶・航空機等、3号のこれらの従物は、金額の定めを待たずに、同条がそのまま掲げています。

他方、前記1のとおり、事務局の説明は、単価50万円(税抜き)以上の「建物」も処分制限財産に当たるとしており、取得財産等管理台帳の様式も、注2で区分に建物を挙げたうえで、注1で単価の基準をかけています。そうしますと、単価50万円未満の建物は台帳に載らないことになりますが、そのことと、適正化法22条の制限が及ばないこととは別だと考えております。単価50万円という線引きを、建物や土地についてそのまま持ち込んで「対象外だ」と整理することはできないと考える余地があります。この仕分けが効くのは、まず機械・器具についてです。なお、台帳の注2が挙げる区分は、建物、機械・装置・工具・器具、無体財産権(知的財産権等)の三つで、「建物附属設備」という区分は置かれていませんので、台帳の区分と、耐用年数省令の別表の当てはめとは、別に考えることになります。

次のような場合は、書面をお出しになる前にご相談ください

  • 台帳に「一式」で載っている財産について、財産処分の承認申請を求められている
  • 単価が50万円に満たない機器を含めて、残存簿価相当額の計算書を出すよう言われている
  • 台帳の記載を訂正すべきかどうか、判断がつかない
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 返還額はいくらになるのか(計算式と計算例)(コラム)/設備を取り外して保管している――管理義務に反すると言われたら(Q&A)

5 分解すると、処分制限期間も財産ごとに分かれます

一式の行を財産単位に戻すと、もう一つ変わるものがあります。処分制限期間です。

引用(同交付規程24条2項)「処分制限財産の処分を制限する期間は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用する。なお、中小機構が別に定める場合には、その期間とする。」

準用されるのは減価償却資産の耐用年数等に関する省令の年数です。同様式第7注6も、処分制限期間について、税務申告上実際に使用している耐用年数ではなく、同省令に定める耐用年数を記載するものとしています(同61頁)。

期間は、省令のどの区分に当たるかで決まります。したがって、財産ごとに区分が違えば、期間も違います。一式のまま一つの年数で数えていると、本来はもっと短い年数で数えるべき財産まで、長い年数に引きずられていることがあります。逆に、機器として数える部分の期間が満了していても、建物附属設備として数える部分の期間は残っている、という形になることもあります。一つの工事から生まれた財産について、期間が一斉に終わるとは限りません。

期間が経過した財産については、施行令14条1項2号が、財産の処分の制限を適用しない場合として掲げています。同24条3項の承認も、「前項の規定により定められた期間内において」処分しようとするときに求められているものですので、期間が経過していれば要りません。期間の数え方そのもの、起算日の考え方、「10年」という数字がどこから来ているのかは、コラム「処分制限期間は何年か――「10年ルール」の正体」と、Q&A「事業再構築補助金は5年たてば自由に処分できるのか」で述べています。

6 お手元で確かめていただく順番

一式で計上したものについて何か言われているときは、次の順番で確かめていただくのがよいと考えております。

1 交付決定通知書で、どの補助金の、どの交付規程・要綱が適用されるのかと、交付決定に附された条件の文言を確かめる。金額の基準も、条数も、条件の書き方も、補助金ごとに違います。改正がある場合は、交付決定の時点の版を見ます。

2 交付規程の処分制限財産の条項を読み、単価の基準額と、税抜・税込のどちらで見るのか、挙げられている財産の種類を確かめる。あわせて、納付の条項が、処分制限財産の処分を要件としているのか、取得財産等の処分を要件としているのかも見ます。

3 取得財産等管理台帳(様式第7)を開き、「一式」「その他」などの形で単価が出ていない行を拾い出す。

4 その行について、見積書の内訳、請求書の内訳、納品書・検収書、仕様書・機器リスト、実績報告書に添えた費目別支出明細書の控えを並べ、現にどの財産が何台あるのかに戻す。機械の据付けのように、その機械と一体の費用は、その機械の取得価格に含めて数えます。

5 財産ごとの単価(税抜)を出し、処分制限財産に当たるものと当たらないものに仕分ける。建物・土地については、前記4のとおり、単価の線で対象外と整理することはできません。

6 当たるものについて、省令のどの区分で数えるかを確かめ、取得年月日(検収年月日)から処分制限期間を数える。既に満了しているものがないかを見ます。

7 以上を一覧にして、交付主体に書面で示す。どの財産がなぜ処分制限財産に当たらないのか、どの財産の期間が既に満了しているのかを、内訳の書類と対応させて書きます。

最後に、一つだけ申し添えます。既に提出した台帳や実績報告書を、ご自身で書き換えてしまうことは避けてください。訂正が必要な場合でも、元の記載と、何を根拠にどう訂正するのかが分かる形で、経緯を残したまま出していただく必要があります。承認申請書や残存簿価相当額の計算書は、一度出してしまうと、その内容を前提に手続が進んでいきます。一式の行をそのまま前提にしてお出しになる前に、内訳に戻す作業をしていただく価値があると考えております。

財産処分の承認申請書や残存簿価相当額の計算書をお出しになる前の段階で、どの財産が処分制限財産に当たるのかを仕分けておきたい事業者の方、顧問先・支援先から台帳の書き方についてご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、お出しになる前にご相談ください。交付決定通知書、交付規程、取得財産等管理台帳、見積書・請求書の内訳、納品書があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

  • 補助金適正化法22条(補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない)
  • 補助金適正化法施行令13条(処分を制限する財産。1号=不動産、2号=船舶、航空機、浮標、浮さん橋及び浮ドツク、3号=前二号に掲げるものの従物、4号=機械及び重要な器具で、各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定めるもの、5号=その他各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が補助金等の交付の目的を達成するため特に必要があると認めて定めるもの)、同施行令1条2項及び別表(「補助実施法人」及び「補助実施法人の代表者」の定義。別表に独立行政法人中小企業基盤整備機構法16条と同機構が掲げられています)
  • 補助金適正化法施行令14条1項2号(補助金等の交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定める期間を経過した場合は、財産の処分の制限を適用しない)
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構法15条1項6号、16条(補助金適正化法の準用)
  • 中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)24条1項(処分制限財産=取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産)、24条2項(処分を制限する期間は減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用する。なお、中小機構が別に定める場合には、その期間とする)、24条3項(前項の規定により定められた期間内において処分制限財産を処分しようとするときは、あらかじめ様式第12-1による承認申請書を提出し、その承認を受けなければならない)、24条6項(中小機構は、補助事業者が処分制限財産を処分するときは、様式第12-5による納付通知書により、当該処分制限財産に係る補助金額を限度として、納付させることができる)=同交付規程7〜8頁
  • 同交付規程23条1項(取得財産等については、補助事業の完了後においても、善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従って、その効率的運用を図らなければならない)、23条2項(様式第7による取得財産等管理台帳を備える)、23条4項(補助事業により建設した施設等の財産に抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に様式第11による承認申請書を提出し、その承認を受けるものとする。本事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められない)、17条1項(様式第6による実績報告書)、25条1項(事業化状況・知的財産権報告書)、26条1項(事業計画期間における廃止等の届出)=同交付規程7頁・8頁
  • 同交付規程22条1項1号(補助事業者が、法令、本規程又は本規程に基づく中小機構の処分若しくは指示に違反した場合は、交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することができる)、同条2項(取消しに係る部分の補助金の全部又は一部の返還命令)、同条3項(年利10.95パーセントの割合で計算した加算金)=同交付規程6〜7頁
  • 同交付規程様式第7(取得財産等管理台帳)注1(対象となる取得財産等は、本交付規程第24条第1項に定める処分制限額(単価50万円(税抜き))以上の財産とします)、注2(「区分」は、建物、機械・装置・工具・器具、無体財産権(知的財産権等)、とします)、注3(「数量」は、同一規格等であれば一括して記入して差し支えありません。単価が異なる場合は、分割して記入してください)、注4(「取得年月日」は、検収年月日を記入してください)、注6(本交付規程第24条第2項より、処分制限期間は税務申告上実際に使用している耐用年数ではなく、減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める耐用年数を記載してください。(財産処分する場合の残存簿価相当額の算定根拠となります。))=同交付規程61頁
  • 同交付規程様式第6の別紙3(費目別支出明細書。支払年月日・支払先・内容および仕様等詳細・数量・単位・単価・補助事業に要する経費・補助対象経費を支出の1件ごとに記載する様式)=同交付規程58〜59頁
  • 事業再構築補助金「財産処分」(取得又は効用の増加した単価50万円(税抜き)以上の建物、機械器具、備品及びその他財産が対象となり、これを「処分制限財産」と呼ぶとする事務局の説明)
  • 補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(平成16・6・10会課第5号。最終改正令和元年5月7日)1.(1)(補助金等により取得した財産のうち補助金適正化法施行令13条に定める財産を「処分制限財産」とするもの)=同取扱い1頁、同〈記載要領〉1(「処分する財産名等」欄は、取得財産等管理台帳の区分に基づく(区分・財産名・規格・数量・単価・金額・取得年月日・耐用年数・保管場所・補助率)及び使用開始の日を記入する)=同取扱い8頁
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金交付規程(制定令和7年2月25日、最終改訂令和8年8月5日。全国中小企業団体中央会)21条1項(処分を制限する財産は、取得財産等のうち、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜き)以上の機械、器具、備品及びその他の財産とし、第15条第1項に定める補助事業実績報告書に様式第7による取得財産等管理台帳を添付して管理しなければならない)、20条3項(全国中央会は、補助事業者が取得財産等を処分する場合、残存簿価相当額又は鑑定評価額若しくは処分により得られた収入額又は見込まれる収入額の全部若しくは一部を指定する口座に納付させることができる。「処分制限財産」に限った定め方をしていません)=同規程5頁
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金「補助事業の手引き(23次締切)」(※内容が不明確なものは認められません。見積金額に複数の項目が含まれる場合は、その内訳を示すこと。「〇〇一式」のみは不可)=同手引き3頁、同(機械装置の据付に要する費用とはならない設置場所の整備工事や基礎工事は補助対象外であり、見積金額に複数の項目が含まれる場合は内訳を明示すること。「〇〇一式」のみは不可)=同手引き15頁
  • 小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』299頁(株式会社全国会計職員協会、2016)(補助目的達成上余り重要性をもたない財産についてまですべて処分制限の対象とする必要性は認められないとするもの)、同300頁(本条が処分を禁止する財産を政令で定める財産とし、比較的財産価値の高い一定の財産に限定しうることとしたこと、施行令13条4号・5号が交付行政庁の指定に委ねられていることを述べるもの)
  • 名古屋高判平成5年2月23日訟月39巻11号2247頁、判タ859号260頁(名古屋地判平成4年4月23日訟月39巻11号2262頁、判タ799号243頁の控訴審。上告がされているが(判タ882号282頁)、上告審の裁判は公刊物に見当たらない。交付決定に附された条件が「補助事業等により取得した機械及び重要な器具のうち一個あたりの取得価格が五〇万円以上のもの」と定められ、補助事業により取得した園舎がこれに含まれることはいうまでもないとされた事案。別の制度の補助金であり、審理されたのは取消し後の補助金返還請求権が破産手続上の財団債権に当たるかどうかであって、単価の数え方が争われた事件ではない)
  • 耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3及び同(注)(国税庁。同一の建物(一の区画ごとに用途を異にしている場合には、同一の用途に属する部分)についてした造作は、その全てを一の資産として償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積ることに留意する)
  • 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)
  • 補助金適正化法7条1項(交付の決定をする場合において、法令及び予算で定める補助金等の交付の目的を達成するため必要があるときは、同項が掲げる事項につき条件を附するものとする)、同条3項(前二項の規定に定める条件のほか、交付の目的を達成するため必要な条件を附することを妨げるものではない)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

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