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弁護士 岸上大起

補助金で取得した財産の処分制限期間は何年か――「10年ルール」はあるのか

このページの結論

補助金で取得した財産の処分制限期間は、10年ですか。

補助金適正化法にも施行令にも、「10年」という期間の定めはありません。期間は、交付の目的と財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長等が定めることとされており、経済産業省の補助金では告示の別表が財産ごとに定めています。

その内容は減価償却資産の法定耐用年数に対応しており、設備は10年前後に収まるものが多い一方、鉄筋コンクリート造の建物は事務所用で50年、住宅用等で47年です。「10年たてば自由に処分できる」という理解の出どころは、処分制限期間そのものではなく、期間内に処分をする場合の承認・納付の条件が緩和され得る経済産業省の通達上の基準だと考えられます。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

補助金により取得した設備や建物には、処分制限期間が課せられます。この期間について、「補助金適正化法では10年と決まっている」「10年たてば自由に処分できる」という理解を目にすることがあります。

結論からいえば、「一律10年」というルールは、補助金適正化法にも、その施行令にも存在しません。処分制限期間は、財産ごとの法定耐用年数によって決まります。設備であれば10年前後のものが多い一方で、鉄筋コンクリート造の建物では50年に及ぶこともあり、財産の種類によって大きく異なります。――補助金紛争を扱う弁護士 岸上大起の整理です。

それでは、「10年」という数字はどこから来たのか。おそらくその出どころは、財産処分の承認基準を定める経済産業省の通達の中にある、経過年数10年以上の財産処分についての緩和ルールです。これは処分制限期間そのものではなく、期間内に処分をする場合の承認や国庫納付の条件が緩和され得る基準にすぎません。本稿では、処分制限期間の法的な仕組みを条文から確認した上で、「10年」という数字の正体を整理します。

1 「10年」という数字が独り歩きしている

補助金で取得した設備を売却したい、廃棄したい、あるいは事業をやめたい。そのようなご相談を受ける中で、「処分制限期間は10年と聞いた」「10年は事業を続けないといけないのですよね」というお話を伺うことがあります。

たしかに、結果として処分制限期間が10年になる財産は少なくありません。後述のとおり、多くの製造設備の法定耐用年数が10年前後だからです。しかし、「10年」という一律の期間が法律で定められているわけではありません。まずは、処分制限期間がどのような仕組みで決まるのかを、条文から確認します。

2 処分制限期間の法的な仕組み――適正化法22条と施行令14条1項2号

出発点は、補助金適正化法22条です。同条は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない旨を定めています(ただし書として「ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」)。

この条文だけを読むと、制限がいつまで続くのかは書かれていません。期間の定めは、ただし書が委任する政令、すなわち補助金適正化法施行令にあります。同施行令14条1項2号は、財産の処分の制限を適用しない場合として、次の場合を掲げています。

引用(補助金適正化法施行令14条1項2号)「補助金等の交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定める期間を経過した場合」

すなわち、法律の建付けはこうなっています。第一に、適正化法22条の財産処分制限は、無期限のものではありません。第二に、その期間は、法律自体が年数を定めているのではなく、「交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して」各省各庁の長等が定めることとされています。第三に、その期間を経過すれば、22条の制限は適用されなくなります。この「各省各庁の長等が定める期間」が、いわゆる処分制限期間です。

ここまでで、既に一つの結論が出ています。適正化法にも施行令にも、「10年」という数字は書かれていないのです。

3 何年なのか――財産ごとの法定耐用年数で決まる

では、処分制限期間は実際に何年と定められているのでしょうか。経済産業省の補助金についていえば、施行令14条1項2号に基づく告示(令和5年経済産業省告示第64号)が、補助金ごと・財産ごとの処分制限期間を別表で定めています。その内容は、減価償却資産の法定耐用年数に対応するものです。処分制限期間を定めるのは「各省各庁の長又は補助実施法人の代表者」ですので、経済産業省以外が所管する補助金については、その所管省庁等の定めを確認する必要があります。

具体的なイメージとしては、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)の別表において、たとえば次のように定められています。

法定耐用年数の例(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一・別表第二より。同じ区分について、令和5年経済産業省告示第64号の別表も同じ年数を掲げています。ただし、別表に掲げられている区分の範囲は補助金ごとに異なります)
区分年数
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の建物(事務所用)50年
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の建物(住宅用等)47年
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の建物(店舗用)39年
木造又は合成樹脂造の建物(店舗用・住宅用等)22年
建物附属設備の電気設備(照明設備を含む。蓄電池電源設備を除く。)15年
建物附属設備の給排水又は衛生設備及びガス設備15年
建物附属設備の冷暖房設備(冷凍機の出力が22キロワット以下のもの)13年
建物附属設備の店用簡易装備3年
食料品製造業用設備10年
飲食店業用設備8年
宿泊業用設備10年
金属製品製造業用設備(その他の設備)10年
洗濯業、理容業、美容業又は浴場業用設備13年
倉庫業用設備12年
農業用設備7年
印刷業又は印刷関連業用設備(デジタル印刷システム設備)4年
器具及び備品の電子計算機(パーソナルコンピュータ。サーバー用のものを除く。)4年
器具及び備品の冷房用又は暖房用機器6年

設備であれば10年前後に収まるものが多い一方、建物は数十年に及びます。「処分制限期間=10年」という理解は、設備についてはたまたま当てはまることが多いものの、正確ではありません。財産ごとに異なる、というのが正しい理解です。

なお、所管省庁や地方公共団体の補助金では、処分制限期間が交付規則・要綱などで別に定められていることがありますので、お手元の交付決定通知書に記載された規程でご確認ください。

次のような場合は、ご相談ください

  • 返還や、設備の残存簿価相当額の納付を求められている
  • 廃業や設備の売却などで、承認が必要か分からない
  • 設備の処分制限期間が過ぎたか、書類で確かめたい
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 廃棄処分・廃業(対応ページ)/交付決定の取消し・返還請求(対応ページ)

4 事業再構築補助金などの場合――交付規程の定め

中小企業基盤整備機構が交付する事業再構築補助金についても、仕組みは同様です。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程24条は、次のように定めています。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)24条1項・2項)「取得財産等のうち、処分(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等をいう。)を制限する財産(以下「処分制限財産」という。)は、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産とする。
2 処分制限財産の処分を制限する期間は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用する。なお、中小機構が別に定める場合には、その期間とする。」

すなわち、対象は単価50万円(税抜)以上の財産、期間は法定耐用年数の準用です。事業再構築補助金の事務局ホームページにも、処分制限期間について、耐用年数省令に定める耐用年数を準用する旨(税務申告上実際に使用している耐用年数ではない旨)が明記されています。ここでも、「10年」という一律の定めは存在しません。補助金で導入した機械の処分制限期間が何年かは、その機械が耐用年数省令のどの区分に当たるかによって決まります。

この準用が、借りている建物に施した造作についてどう働くのかは、別に考える必要があります。この点は後記9で取り上げます。

5 「10年ルール」の正体――財産処分の承認基準に出てくる10年

それでは、「10年」という数字は、どこから来たのでしょうか。考えられる出どころの一つが、経済産業省の「補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16年6月10日、最終改正令和元年5月7日)という通達です。

この通達は、処分制限期間内に財産処分をする場合の承認の基準や、承認に付す国庫納付の条件を定めるものですが、その中に、処分制限財産の使用開始の日からの経過年数が10年以上であるかどうかで取扱いを分ける定めが置かれています。たとえば、地方公共団体が行う一定の財産処分については、経過年数が10年以上であれば、報告書の提出をもって承認とみなす包括承認の扱いがされています。また、経過年数が10年以上である財産処分のうち、国や地方公共団体の事業その他公益性の高い事業に使用するためのものや、国・地方公共団体に対する無償譲渡・無償貸付けについては、国庫納付の条件を付さないことができるとされています。

つまり、この通達における「10年」は、処分制限期間そのものではありません。処分制限期間の内側で財産処分をする場合に、承認手続や納付条件が緩和され得る経過年数の基準です。しかも、その緩和類型の多くは地方公共団体向けであり、民間事業者に適用されるものは公益目的の転用や国等への無償譲渡といった限定的な場面にとどまります。

「10年たてば自由に処分できる」という理解は、おそらくこの緩和基準の「10年」と、設備の耐用年数がたまたま10年前後であることとが混ざり合って生まれたものではないかと思われます。正確に整理すると、処分制限期間そのものは財産ごとの法定耐用年数で決まり、10年より短いことも、はるかに長いこともあります。通達上の「10年」は、期間内の財産処分について承認・納付の条件が緩和され得る基準であって、制限が消滅する年数ではありません。

6 いつから数えるか――取得日(検収日)から、暦どおりに

処分制限期間は、財産の取得日から数えると考えております。年度単位で数えるのではなく、たとえば法定耐用年数が5年の設備であれば、取得日から数えて5年です。

事業再構築補助金の「補助事業の手引き」も、補助事業で購入した物件については「検収年月日」をもって取得年月日とし、納品年月日ではないとしています。検収年月日が明確になるよう、納品書に検収印と年月日を残しておくことが大切です。

なお、期間内に財産処分をして納付額(残存簿価相当額を基にした額)を計算する場面では、同じ手引きが、取得年月日から処分の年月日までを月単位(1か月未満は切上げ)で数え、決算期をまたぐときは事業年度ごとに端数を1か月として扱う計算方法を示しています。処分制限期間の長さの数え方と、納付額の計算の仕方は、別の話として整理しておく必要があります。

7 処分制限期間が経過したらどうなるか

処分制限期間が経過した場合の効果は、明確です。前記のとおり、施行令14条1項2号は、処分制限期間を経過した場合には財産の処分の制限を「適用しない」と定めています。したがって、処分制限期間の経過後は、適正化法22条の承認を受けることなく、財産を譲渡し、貸し付け、担保に供することができます。当然、それを理由に補助金の返還を求められることもありません。

逆にいえば、返還を求められている財産について、処分制限期間が既に経過していないかは、最初に確認すべき事項の一つです。耐用年数の区分の当てはめや期間の起算によっては、既に期間が満了している場合もあり得ます。

8 期間内であっても、直ちに「返還」ではない

それでは、処分制限期間の内側であれば、財産に手を付けることは一切できず、事業をやめれば直ちに補助金を返還しなければならないのでしょうか。私は、そうではないと考えております。

第一に、適正化法22条が承認を必要とするのは、「交付の目的に反して」する使用・譲渡・交換・貸付け・担保供与です。交付の目的に沿った使用である限り、同条には抵触しません。

第二に、同条が列挙する行為に「廃棄」は含まれていません。交付目的どおりに使用した後の廃棄処分について、同条の規制対象に含まれないと判断した裁判例もあります(東京地判平成2年1月30日判タ736号151頁。同判決に対しては控訴がされており、控訴審判決は公刊物に見当たりません。)。もっとも、最高裁第三小法廷令和3年3月2日判決の調査官解説の整理を踏まえると、廃棄も規制対象に含まれると解する余地も否定し切れず、ここは難しい問題です。この点は、別稿「事業再構築補助金で導入した設備を廃棄したら『残存簿価を返納せよ』――本当に応じる必要があるのか」で詳しく述べています。

第三に、取得財産を補助事業に使用しつつ既存事業にも用いること(既存事業との併用)が、原則として22条の規制対象にならないことも、別稿「事業再構築補助金により取得した財産を既存事業と併用することについて」で述べたとおりです。

第四に、修繕も、22条の規制対象ではありません。22条が承認を必要とする「交付の目的に反して」する使用・譲渡・交換・貸付け・担保供与のいずれにも、修繕は形式的に当たらないからです。交付規程24条1項が定める「処分」の定義(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等)にも、修繕は含まれていません。典型的なのは、事業を続けるために、故障した取得財産を修理し、修理後も補助事業に使い続ける場合です。これは補助金の目的に沿って財産を管理し続けている状態そのものであり、財産処分の制限に抵触するはずがないと考えております。前記の調査官解説のように、22条の対象を「補助目的に沿って管理しなくなること」と広く捉える立場に立っても、修理はむしろ管理を続けるための行為です。もっとも、修繕を名目にして、実際には補助事業とは別の用途に作り替えるような場合は、目的外使用として別に検討が必要になります。

処分制限期間という言葉の響きから、「期間内は何もできない」「途中でやめたら全額返還」と考えてしまう事業者の方が少なくありません。しかし、期間内であっても、何が制限され、何が制限されていないのかは、条文に即して個別に検討する必要があります。

9 借りている建物に施した造作は、何年で数えるのか

補助金を使って行った工事が、自社の建物ではなく、借りている建物に対するものであることがあります。この場合、処分制限期間を建物の法定耐用年数――前記のとおり、構造と用途によっては数十年に及びます――で数えるのか、それより短い年数で数えるのかが問題になります。以下は、交付規程が減価償却資産の耐用年数等に関する省令を準用する型の補助金(前記4)についての整理です。告示の別表が財産ごとの期間を直接定めている補助金に、同じ理屈がそのまま及ぶわけではありません。また、交付規程24条2項のなお書きは、中小機構が別に定める場合にはその期間とするとしていますので、別に定めがあるときは、その期間が先に立ちます。以下の交付規程の条数と文言は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)のものです。お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でお確かめください。

通達が示している取扱い

省令の本文には、借りている建物に施した造作についての定めは置かれていません。別表のうち、内部造作を区分として掲げているのは、開発研究の用に供されている資産についての別表第六だけです。省令は、減価償却資産の耐用年数を資産の区分に応じ別表の定めるところによるとしており(同省令1条1項)、借りた建物に施した造作をどの区分で数えるかは、別表の当てはめの問題として残ります。この当てはめについて、国税庁は、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3で次の取扱いを示しています。

引用(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3)「法人が建物を賃借し自己の用に供するため造作した場合(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)の造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却する。ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができる。(昭46年直法4-11「1」、平23年課法2-17「一」により改正)
(注) 同一の建物(一の区画ごとに用途を異にしている場合には、同一の用途に属する部分)についてした造作は、その全てを一の資産として償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積ることに留意する。」

押さえておきたいのは、建物に対する造作について、建物本体の法定耐用年数がそのまま出てくるとはされていないことです。通達は、当該建物の耐用年数を勘案要素の一つに挙げながら、その造作の種類、用途、使用材質等も勘案して合理的に見積った耐用年数によるとしています。他方、造作が建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数によるとされています。別表第一の建物附属設備の年数は3年のものから18年のものまでありますので、この区分で数えると、賃借期間より長くなることもあります。

ただし書の三つの要件

そのうえで、通達はただし書で、賃借期間を耐用年数として償却することができる場合を定めています。挙げられているのは、①当該建物について賃借期間の定めがあること、②その賃借期間の更新ができないこと、③有益費の請求又は買取請求をすることができないこと、です。いずれも賃貸借契約書の定めから確かめることになります。見るのは、期間の定め、更新又は再契約についての定め、そして造作について費用の償還や買取りを請求することができるかどうかについての定めです。

通達の(注)は、同一の建物についてした造作は、その全てを一の資産として償却するのであるから、耐用年数も造作全部を総合して見積るとしています。工事の内容ごとに別々の年数を当てはめるのではなく、同じ建物に施した造作をまとめて一つの資産として見るという整理です。もっとも、建物に固定して設置された設備のように造作の一部とみるべきものがある一方、別表第一には建物附属設備や器具及び備品の区分が置かれていますので、造作としてまとめて見るのか、その設備に固有の区分で数えるのかは、工事と設備の実際に即して検討することになります。

法人税の通達を処分制限期間に持ち込めるのか

もっとも、この通達は、法人税の取扱いを定めたものです。国税庁のタックスアンサーNo.5406(他人の建物に対する造作の耐用年数)も、対象税目を法人税としています。そして、交付規程24条2項が準用しているのは減価償却資産の耐用年数等に関する省令であって、国税庁の通達ではありません。交付規程の様式第7(取得財産等管理台帳)の注6も、処分制限期間は税務申告上実際に使用している耐用年数ではなく、省令に定める耐用年数を記載するものとしています(前記4のとおり、事務局も同じ説明をしています)。

もっとも、処分制限期間が省令の準用で決まるのであれば、借りた建物に施した造作をどの区分で数えるかは、省令の別表の当てはめの問題です。省令にこの場面の定めが置かれていないのですから、省令の適用について国税庁が示している取扱いを参照することには理由があると考えております。そうすると、更新のできない賃借期間の定めがあり、有益費の請求も買取請求もできない契約であれば、処分制限期間も当該賃借期間にとどまると考える余地があると考えております。これは、税務申告で実際に使っている耐用年数をそのまま持ち込むという話ではなく、省令の区分の当てはめとして申し上げているものです。

反対の見方も成り立ちます。通達は法人税の課税所得の計算についての取扱いであって、処分制限期間の算定を拘束するものではなく、交付規程が準用しているのは省令の別表そのものであるから、造作であっても、別表にその設備に固有の区分が置かれているのであれば、その年数によるべきである、という整理です。この点を正面から判断した裁判例は見当たりません。賃貸借契約書と実績報告の控えを手元に置いて、個別に検討する必要があると考えております。

10 確認の順序――交付規程、賃貸借契約書、帳簿

確認の順序は、次のようになります。はじめに、お手元の交付決定通知書に記載された規程で、処分制限期間の定め方を確かめます。省令を準用しているのか、告示の別表によるのか、交付主体が別に定めているのかで、出発点が変わります。次に、対象の財産が、借りている建物に施した造作に当たるかどうかを見ます。当たるのであれば、賃貸借契約書で、期間、更新の可否、有益費の請求と買取請求の可否を確かめます。

あわせて、帳簿の計上区分――建物附属設備として計上されているか、器具及び備品として計上されているか――を見ておくと、別表のどの区分で数えることになるかの手がかりになります。実績報告の際に提出した取得財産等管理台帳(様式第7)に何年と記載したかも、手がかりの一つです。控えは保管しておいてください。

当てはめによっては、既に処分制限期間が満了していることもあり得ます(前記7)。借りている店舗や土地から退去する場面で、内装・設備を撤去するのか、残すのか、事業ごと引き継ぐのかという問題は、Q&A「借りている土地・店舗に補助金で設備や内装を付けた。退去するときどうなるのか」で別に整理しています。期間内に財産処分をする場合の手続の順番と納付額の計算は、別稿「補助事業を続けられないとき――手続の順番、返還額の計算、返還が生じない選択肢」で取り上げています。

補助金で取得した財産の処分や事業の見直しを検討されている事業者の方、処分制限期間を理由に補助金の返還を求められている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ぜひご相談ください。

よくある質問

処分制限期間の内側で廃業したら、補助金は全額返還になりますか。

廃業と、財産の廃棄は別のことです。廃業しても設備や内装がそのまま残っているなら、財産は何も「処分」されていません。仮に廃棄していたとしても、補助金適正化法22条が承認を必要としている行為は、交付の目的に反する使用・譲渡・交換・貸付け・担保供与の5つで、「廃棄」は列挙されておらず、目的どおり使用した後の解体は同条の規制対象に含まれないと判断した裁判例もあります(東京地判平成2年1月30日判タ736号151頁)。もっとも、廃棄も規制対象に含まれると解する余地は残りますので、実行される前にご相談ください。

廃棄処分・廃業(対応ページ) →

出典:補助金適正化法22条(e-Gov法令検索)

処分制限期間が過ぎていれば、売っても貸しても返還を求められませんか。

補助金適正化法施行令14条1項2号は、交付の目的と財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長等が定める期間を経過した場合には、財産の処分の制限を適用しないと定めています。したがって、処分制限期間の経過後は、同法22条の承認を受けることなく財産を譲渡し、貸し付け、担保に供することができ、それを理由に補助金の返還を求められることもありません。返還を求められている財産について、期間が既に経過していないかは、最初に確認すべき事項の一つです。

廃棄処分・廃業(対応ページ) →

出典:補助金適正化法施行令14条1項2号(e-Gov法令検索)

うちの設備の処分制限期間が何年か、どう確認すればよいですか。

まず、その補助金の交付規程に処分制限期間の定めがあるかを確認してください。事業再構築補助金の交付規程24条2項は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用すると定めています。経済産業省の補助金については、施行令14条1項2号に基づく告示(令和5年経済産業省告示第64号)の別表が、補助金ごと・財産ごとの年数を定めています。あとは、その設備が別表・耐用年数省令のどの区分に当たるかの当てはめの問題です。区分の当てはめに迷う場合や、期間が既に経過している可能性がある場合は、交付決定通知書と取得財産等の管理台帳をお手元にご相談ください。

処分制限期間について相談する →

出典:令和5年経済産業省告示第64号「補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分を制限する期間」

この論点で実際にお困りの方向けに、状況別の対応をまとめたページがあります:

※ 本稿は一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。処分制限期間の具体的な年数は補助金ごとの定めによりますので、交付規程等の資料に基づく個別の検討が必要です。

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