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弁護士 岸上大起

共同申請した対象リース会社に、補助金の返還を命じられるのか――公式のよくあるご質問は「リース会社からの返還を求めます」と答えていますが、目標未達の返還命令は「補助事業者」の未達を要件として書かれています

このページの結論

中小企業省力化投資補助金の一般型で、当社(リース会社)は中小企業と共同申請し、設備を購入してファイナンス・リースで供給しています。補助金相当分はリース料から減額して還元済みです。その中小企業が賃上げの目標に届かなかった場合、事務局のよくあるご質問には「リース会社に交付されている補助金については、リース会社からの返還を求めます」と書かれています。当社が返還を命じられるのでしょうか。

中小企業省力化投資補助金交付規程は、「補助事業者」(交付決定の通知を受けた補助対象者=中小企業等。2条2号)、「対象リース会社」(2条5号)、両者を指す「補助事業者等」(2条6号)を書き分けており、目標未達による返還命令を定める29条2項・3項は、いずれも「補助事業者」の未達を要件として書かれています。「補助事業者等」とも「対象リース会社」とも書かれていません。同じ29条の1項(収益納付)は「補助事業者に対し」と相手方を明示していますが、2項・3項は相手方を書かず、23条5項のような負担割合の定めもありません。中小企業の目標未達は対象リース会社の違反ではありませんので、補助金適正化法17条1項の取消しの要件を欠き、18条1項の返還命令も立たないと考える余地があります。

交付決定の取消し(23条)の場面は別で、取消事由の多くは「補助事業者等」を主語とし、23条5項は負担割合を中小機構が定めることができるとしています。カタログ注文型では別紙4の宣誓により、取消しに伴う返還は対象リース会社が行うものとされていますが、一般型には別紙4は適用されず、目標未達による返還を対象リース会社が負うという定めは別紙4にもありません。対象リース会社は補助金相当分をリース料から減額して還元していますので、返還を命じれば補助金相当分を二度失うことになり、交付決定に附する条件の公正と必要な限度を定める適正化法7条4項の問題になると考える余地があります。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明――「よくあるご質問」9頁 No.13 と公募要領3-3⑩

中小企業省力化投資補助金の一般型では、中小企業等が対象リース会社と共同で申請し、リース会社が設備を購入して中小企業にファイナンス・リースで供給する、という仕組みが用意されています。このとき補助金を受け取るのはリース会社です。中小企業には、補助金相当分がリース料の減額という形で届きます。事務局が公表している「よくあるご質問(第5回〜第8回)」(PDF1頁に「2026/10/01 更新」。以下、公式資料の閲覧日はいずれも2026年10月31日です)は、PDF通し8頁、分類「申請要件(ファイナンス・リース)」No.1・No.2で、この仕組みを次のように説明しています。

引用(よくあるご質問(第5回〜第8回)PDF8頁・分類「申請要件(ファイナンス・リース)」No.1 の回答)「【公募要領 3-3.対象リース会社との共同申請 】/中小企業等と対象リース会社が共同申請をする場合には、機械装置・システム構築費について、中小企業等が対象リース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されることなどを条件に、その購入費用について、対象リース会社を対象に補助金を交付することが可能です。」(※原文は改行で区切られています。引用に当たり「/」で区切りました。)
引用(同 No.2 の回答の後段)「中小企業等が対象リース会社に支払うリース料そのものについては補助対象外となりますが、対象リース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されます。」

そのうえで、同じ分類の No.13(PDF通し9頁)が、返還の相手方について答えています。

引用(同PDF9頁・分類「申請要件(ファイナンス・リース)」No.13)「質問内容 対象リース会社との共同申請において/共同申請をした中小企業等が、交付決定取消や補助対象要件の未達成により、補助金返還の対象となった場合、/補助金の返還はリース会社から返還となるのでしょうか。/現回答 リース会社に交付されている補助金については、リース会社からの返還を求めます。」(※原文は質問内容欄と現回答欄に分かれ、欄の中でも改行されています。引用に当たり文の切れ目を「/」で示しました。原文の改行位置と完全には一致しません。)

同じことは、一般型の公募要領(第8回公募)24〜25頁「3-3.対象リース会社との共同申請」の⑩にも書かれています。

引用(一般型 公募要領(第8回公募)24〜25頁・3-3⑩)「⑩ 共同申請をした中小企業等が、交付決定取消や補助対象要件の未達成により、補助金返還の対象となった場合、対象リース会社に対して対象リース会社に対する補助金交付額を上限に返還が求められます。」

質問は、「交付決定取消」と「補助対象要件の未達成」という二つの場面をまとめて聞いています。回答も、二つを区別せずに「リース会社からの返還を求めます」と答えています。しかし、交付規程の上では、この二つは条も、要件も、相手方も違います。以下で引く交付規程は、中小企業省力化投資補助金交付規程(令和6年6月24日規程令6第4号。規程令8第9号による改正後のもの)です。交付規程の条番号は補助金ごと・版ごとに違いますので、お手元の交付決定通知書に書かれている版をお確かめください。

2 交付規程は「補助事業者」「対象リース会社」「補助事業者等」を書き分けています

この交付規程は、2条で、立場ごとに言葉を定めています。定義の読み方と、取消しの場面でこの書き分けがどう働くかは、Q&A「顧客の交付決定が取り消されたとき、販売事業者である当社にも返還が命じられるのでしょうか」の1・4でも述べています。ここでは、目標未達の場面を読むのに必要な範囲で引きます。

引用(交付規程2条2号・5号・6号。同規程1頁)「(2)補助事業者 第10条の規定に基づく交付決定の通知を受けた補助対象者をいう。」/「(5)対象リース会社 独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という。)が認定するリース会社の共同申請スキームにおける第三者機関の確認を受けて、補助対象者と共同で交付申請を行うリース会社をいう(ファイナンス・リース取引を行うものに限る。)。」/「(6)補助事業者等 中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)(以下「カタログ注文型」という。)においては、補助事業者、販売事業者及び対象リース会社をいい、中小企業省力化投資補助事業(一般型)(以下「一般型」という。)においては、補助事業者及び対象リース会社と読み替えるものとする。」

「補助事業者」は、交付決定の通知を受けた「補助対象者」です。補助対象者は2条1号により別紙1に記載した者、すなわち中小企業等をいいます(同規程10頁)。対象リース会社は、その補助対象者と「共同で交付申請を行うリース会社」であって、補助対象者そのものではありません。10条1項が交付決定通知書を「交付申請者(販売事業者及び対象リース会社を含む。)」に送付するとしていますので、リース会社も通知は受け取ります。しかし、通知を受けた「補助対象者」ではありませんので、2条2号の「補助事業者」には当たらない、というのが定義の文言です。そして、両方を指すときの言葉が、6号の「補助事業者等」です。

この三つの言葉は、条ごとに使い分けられています。並べると、次のようになります。

  • 「補助事業者等」を主語とする条――経理(12条)、計画変更の承認(13条1項)、債権譲渡の禁止(15条)、事故の報告(16条)、状況報告(17条)、実績報告(18条1項)、是正措置(22条)、情報管理(26条)。
  • 交付決定の取消事由(23条1項)も、その多くが「補助事業者等が」を主語としています(1号〜3号・5号・6号・9号・11号・12号)。
  • 「補助事業者及び対象リース会社」「補助事業者又は対象リース会社」と二者を並べて書く条――財産の管理(24条1項〜3項)、財産処分の承認申請と処分後の報告(25条3項・4項)、災害等による処分のみなし承認(25条5項)、財産処分に伴う納付(25条6項)。
  • 「補助事業者」だけを主語とする条――契約・外注(14条1項。一般型に限る)、事業実施効果報告(27条1項)、事業計画期間における廃止・承継の届出(28条)、収益納付(29条1項)、そして目標未達による返還命令(29条2項・3項)。

義務を両者に課したいところでは「補助事業者等」が使われ、財産を現に持つリース会社に向けたいところでは「対象リース会社」が明示されています。もっとも、この書き分けが規程の隅々まで徹底しているわけではありません。23条1項12号は「補助事業者等が」効果報告を行わなかった場合を取消事由としますが、27条1項の報告義務者は「補助事業者」だけです。25条6項は「補助事業者又は対象リース会社が」処分するときに納付させるとしながら、続けて「補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない」と書いています。9条が挙げる「第28条第1項の規定に基づく納付命令又は同条第2項若しくは第3項の規定に基づく返還命令」は、改正前の条番号(旧28条=現29条)のまま残ったものと読めます。改正の際の整理が行き届いていない箇所があることは、認めざるを得ません。そのうえで、以下で重みを置くのは、2条が三つの言葉を定義し分けていること、そして29条の中で1項だけが相手方を書いていることです。

3 目標未達による返還命令(29条2項・3項)は、「補助事業者」の未達を要件として書かれています

「補助対象要件の未達成」による返還を定めているのは、29条2項と3項です。

引用(交付規程29条2項柱書。同規程7〜8頁)「中小機構は、第27条第1項に基づき報告された事業実施効果報告により、補助事業者が事業計画終了時点を含む年度までの間に、予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく、次の各号のいずれかに該当する場合は、交付した補助金の全部又は一部に相当する金額について補助金の返還を命じることができるものとする。」
引用(同条3項。同規程8頁)「中小機構は、第27条第1項に基づき報告された事業実施効果報告により、一般型における大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例措置を受けた補助事業者が事業計画終了時点を含む年度までの間に、予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく、別紙2に定める当該特例措置の要件を満たしていないと認められる場合には、第20条第1項の規定により支払を受けた補助金の額と従業員規模区分別の補助上限額との差額分について補助金の返還を命じることができるものとする。」

どちらも要件の主語は「補助事業者が」です。「補助事業者等が」ではありません。2項3号が一般型の基準として挙げているのは、1人当たり給与支給総額の年平均成長率と、事業場内最低賃金の水準です。これは中小企業の賃金の話であって、リース会社の賃金の話ではありません。目標を立てるのも、効果報告をするのも(27条1項)、条文の上では「補助事業者」である中小企業です。10条5項のなお書きは、対象リース会社に、実績報告と効果報告について「補助事業の適正な遂行のために補助事業者へ必要な支援を行わなければならない」としていますが、これは支援の義務であって、リース会社を報告の義務者にするものでも、返還命令の相手方にするものでもありません。

ここで注意が要るのは、2項・3項は、返還を命じる相手方を明示していないことです。「補助事業者が…該当する場合」は要件であって、相手方の指定ではありません。同じ29条の1項(収益納付)は、「補助事業者に対し、…納付させることができるものとし、補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない」と、相手方を書いています。同じ条の中で、1項だけが相手方を書き、2項・3項は書いていないということです。取消しの場面の23条も、2項の返還命令は相手方を書いていませんが、5項で「補助事業者等の負担割合」を中小機構が定めることができるとして、複数の者に返還が向かうことを前提にした定めを置いています。29条には、負担割合の定めがありません。

前記2のとおり、この交付規程は、両者に及ぼしたいところでは「補助事業者等」と書き、リース会社に向けたいところでは「対象リース会社」と書いています。29条2項・3項がそのどちらも使わず、「補助事業者」の未達だけを要件として書き、相手方の指定も負担割合の定めも置いていないことは、目標未達による返還命令を対象リース会社に向けることを、交付規程自身が予定していないことを示していると考える余地があります。2項柱書の「交付した補助金」にリース会社へ交付した分も含まれる、という読み方は、要件を満たす者を補助事業者に限りながら、効果だけを要件に関わらない者に及ぼすことになり、1項が相手方を書いていることとの均衡を欠くと考える余地があります。「リース会社に交付されている補助金については、リース会社からの返還を求めます」という回答は、「補助対象要件の未達成」の場面について、交付規程のどの条に基づくものなのかが示されていません。

なお、一般型の労働生産性の目標未達は、そもそも29条2項の号に挙げられていません。この点は、Q&A「一般型で労働生産性の目標が未達だと『交付決定の取消・補助金の返還』と書かれていますが」で述べています。

4 取消しの場面(23条)は別です――カタログ注文型の別紙4と、一般型に適用されないこと

FAQがまとめて聞いているもう一つの場面、「交付決定取消」は、23条の問題です。23条1項の取消事由の多くは「補助事業者等が」を主語としており、一般型ではこの「補助事業者等」に対象リース会社が含まれます(2条6号)。23条2項の返還命令は相手方を明示しておらず、23条5項は、返還にあたり「補助事業者等の負担割合」を中小機構が「第1項の該当する事由に基づき定めることができる」としています。取消しの場面で返還命令が販売事業者や対象リース会社にも向けられ得る建て付けになっていることは、Q&A「顧客の交付決定が取り消されたとき、販売事業者である当社にも返還が命じられるのでしょうか」で述べています。取消しの場面と目標未達の場面とで、要件の主語の書き方も、負担割合の定めの有無も違うということです。

カタログ注文型では、宣誓書でリース会社が返還を引き受けています

カタログ注文型には、交付規程の別紙4として「共同事業実施規約及び宣誓書」が置かれています(同規程20〜21頁)。10条5項は、補助事業者等が「前項で付された条件及び別紙4(カタログ注文型に限る。)で宣誓した事項等に従い、補助事業を遂行するものとする」としています。その別紙4の5条は、交付決定の取消しによって返還を命じられた場合の負担を、違反をした側が負う形で定め、7条が、ファイナンス・リース取引を伴う場合の読替えを置いています。

引用(交付規程 別紙4 7条4項。同規程21頁)「第5条に規定する交付決定の取消しに伴う補助金の返還については、第5条の規定にかかわらず、対象リース会社が補助金の返還を行うものとする。」

つまりカタログ注文型では、リース会社が返還を行うことが、取消しの場面について、当事者の宣誓という形で交付規程の中に書き込まれています。別紙4は、2条1項で甲(補助事業者)の労働生産性が向上する見込みの計画を策定し「その計画履行に最大限努めるものとする」とし、7条2項がこの2条の「甲及び乙」を「補助事業者等」と読み替えて対象リース会社を含めていますので、カタログ注文型のリース会社は、目標の計画履行に努める立場には置かれています。しかし、返還の負担を定めているのは5条だけで、7条4項はその場面を「交付決定の取消しに伴う補助金の返還」に限っています。目標未達による返還(29条2項)をリース会社が負うという定めは、別紙4にはありません。

そして、一般型には、この別紙4は適用されません。10条5項が「カタログ注文型に限る」と明記しているとおりです。一般型のFAQが答えている場面について、交付規程の本文にも別紙にも、対象リース会社を目標未達による返還の相手方とする定めは見当たりません。

5 法律の側――17条1項の「違反」がなければ、18条1項の返還命令は立つのか

本補助金に補助金適正化法が及ぶのは、中小機構法16条による準用です。法律が返還命令を定めているのは18条で、1項は「補助金等の交付の決定を取り消した場合において」の返還命令、2項は額の確定で超過がある場合の返還命令です。29条2項のような、取消しを経ない返還命令が、このどちらにも乗らないことは、Q&A「賃上げ要件が未達だと『補助金額を事業計画年数で除した額の返還を求めます』と書かれていますが、その返還命令の根拠条文はどこにあるのですか」で述べています。

仮に、取消しを経たうえで返還を命じる形をとるとしても、取消しには要件があります。

引用(補助金適正化法17条1項)「各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」

取消しの要件は「違反したとき」です。中小企業の1人当たり給与支給総額が目標に届かなかったことは、リース会社の行為ではありません。リース会社は、省力化製品の供給と、共同して行う交付申請等の手続という交付規程上の義務(交付規程7条4項)を果たし、公募要領3-3(24頁)が交付の条件とするリース料からの補助金相当分の減額も終えています。目標未達を理由にリース会社の交付決定を取り消すというのは、自らに違反のない者について17条1項の取消しをすることになり、取消しがなければ18条1項の返還命令も立たないと考える余地があります。目標の未達が「違反」に当たるのかという、中小企業の側の問題は、Q&A「賃上げできなかったら、交付決定の取消し・補助金の返還になるのか」で述べています。

6 公募要領⑩は補助条件か――7条4項の限度と、二重の負担

事務局の側からは、公募要領3-3⑩に書いてあり、リース会社はそれを承知で共同申請し、宣誓書(同⑥)も出している、という説明が予想されます。交付規程23条1項14号も「その他応募申請時点における公募要領で定める事項に該当した場合」を取消事由として挙げています。加えて、10条4項は中小機構が交付決定の通知に際して「必要な条件を付することができる」とし、5項は補助事業者等が「前項で付された条件」に従うものとしています。交付決定通知書に⑩と同じ内容が条件として記載されているかどうかを、まず確かめる必要があります。

しかし、公募要領の記載がそれだけで交付決定に附された条件(附款)になるわけではないことは、Q&A「交付規程に違反したと言われたら――交付規程を守ることは『補助条件』なのか」と、Q&A「事業計画の目標(付加価値額等)に届かなかった」の6で述べています。14号を経由して目標未達を取消事由に取り込めるかどうかも、公募要領の記載が条件になるのかという同じ問題に帰着します。そして、条件として附されたとみる場合には、法律の枠がかかります。

引用(補助金適正化法7条4項)「補助金等の交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、いやしくも補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであつてはならない。」

ここで、前記1の仕組みに戻ります。リース会社が受け取った補助金相当分は、リース料の減額という形で中小企業に渡っています。公募要領は、それを「リース料軽減計算書」で確かめさせています(3-3)。還元を終えたリース会社に、中小企業の目標未達を理由に返還を命じれば、リース会社は、減額したリース料の分と返還する補助金の分とで、補助金相当分を二度失うことになります。中小企業の側は、減額されたリース料の利益を受けたまま、返還の名宛人にならないことになります。交付の目的(交付規程3条=中小企業等の労働生産性向上や賃上げの促進)を達成するために、自らに帰責事由のないリース会社に二重の負担を負わせることが「必要な限度」の内にあるのか、「公正」といえるのかは、7条4項に照らして検討を要すると考える余地があります。

公募要領⑩が「対象リース会社に対する補助金交付額を上限に」と書いていることも、この二重の負担をそのまま前提にしています。制度の側がこの点をどう整理しているのかは、公式の資料からは読み取れません。

次のような場合は、回答を出される前にご相談ください

  • 共同申請した中小企業の効果報告の後に、対象リース会社である自社に返還を求める連絡が届いた
  • 中小企業の交付決定の取消しの通知に、対象リース会社である自社の名が記載され、負担割合を定める旨の記載がある
  • 中小企業として、リース会社から目標未達分の補償を求める特約の締結を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 販売事業者にも返還が命じられるのか(Q&A)/賃上げ未達の返還の根拠条文はどこにあるのか(Q&A)

7 対象リース会社・中小企業それぞれが確かめること

この場面では、届いた書面がどの条に基づくものかで、答え方が変わります。順序は、次のとおりだと考えております。

  • (1)取消し(23条)なのか、目標未達による返還命令(29条2項・3項)なのかを分ける。通知の表題ではなく、本文に書かれた根拠条項を見てください。23条による取消しであれば、1項の何号によるものか、3項の加算金(年利10.95パーセント)が付いているか、5項の負担割合が定められているかを確かめます。29条2項・3項であれば、要件の主語が「補助事業者」であり、相手方の指定も負担割合の定めもないことが出発点になります。根拠条項が書かれていない通知であれば、どの条文によるものかをお尋ねになってよいと考えております。
  • (2)カタログ注文型か一般型か。カタログ注文型であれば別紙4の宣誓があり、取消しの場面の返還は対象リース会社が行うものとされています(別紙4 7条4項)。一般型には別紙4は適用されません。お手元の交付決定通知書(10条4項により附された条件の記載を含みます)と、応募した公募の回を確かめてください。
  • (3)リース料軽減計算書と、減額の実績を手元にそろえる。補助金相当分を中小企業に還元したことを示す資料です。公募要領3-3は、(公社)リース事業協会が確認した「リース料軽減計算書」の提出を求めています。その計算書と、実際のリース料の請求・入金の記録が、二重の負担を示す材料になります。
  • (4)中小企業の側は、29条2項柱書の「正当な理由」に当たる事情を資料で固める。「予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由」があれば、返還命令はできません。公募要領1-6(1)(13頁。1人当たり給与支給総額の増加目標が未達の場合)も、「付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合などや天災など、事業者の責めに帰さない理由がある場合は、上記の補助金返還を求めません」としています(事業場内最低賃金の引き上げ要件が未達の場合の1-6(2)は、「企業全体として当該事業年度の営業利益赤字の場合など」と、文言が異なります)。これが認められれば、リース会社への返還の話も前提を失います。
  • (5)中小企業とリース会社の間の負担の取り決めを確かめる。リース契約や共同申請に際しての覚書に、返還が生じた場合の負担の条項が置かれていることがあります。交付規程上の名宛人の問題と、当事者間の契約上の負担の問題は別ですので、両方を見る必要があります。

中小企業省力化投資補助金の共同申請スキームで、中小企業の目標未達を理由に返還を求める連絡を受けた対象リース会社の方、リース会社から目標未達時の補償を求められている中小企業の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、回答を出される前にご相談ください。交付決定通知書、応募した公募の回、リース料軽減計算書、事業実施効果報告の控え、事務局から届いた通知があれば、どの条文によるものかを踏まえた具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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