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弁護士 岸上大起

賃上げ要件は、どの年度と比べて判断するのか――基準年度と公募の回次による違い

このページの結論

事業再構築補助金の成長枠で補助率の引上げを受けています。事業化状況報告の準備で、直近の年度どうしの給与支給総額を比べると、賃上げ要件の一部を満たしていないように見えます。要件は、どの年度の数字と比べて判断されるのでしょうか。

比べる年度(基準年度)は、交付規程が定めています。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程27条3項では、給与支給総額の年平均6パーセントの基準は、採択発表日から補助事業完了期限日のいずれかの時点が含まれる事業年度の「直前の事業年度」で、比べる期間は補助事業実施期間です。年平均2パーセントの基準は、「補助事業完了期限日が含まれる事業年度」で、比べる期間は補助事業後の事業計画期間です。二つの基準年度は一つずれています。

第1回〜第11回と第12回・第13回とで号が分かれ、算式の書き方(年平均と年平均成長率)も違います。大規模賃金引上枠(27条2項)は、応募申請時点と補助事業終了年度の前年度の終了月のうち高い方が基準です。交付規程は、中小機構が返還を命ずる場合を、提出された報告書により「正当な理由なく」条件を満たしていないと認められる場合に、範囲を補助金額及び補助率引上げ分(大規模賃金引上枠は通常枠の補助上限額との差額分)に限っています。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

賃上げ要件の未達が問題になる場面で、まず確かめていただきたいのは、「どの年度の数字と比べることになっているのか」です。比べる年度(このページでは「基準年度」と呼びます)は、交付規程が定めています。そして、その定め方は、要件の種類ごとに、また公募の回次ごとに違います。手元の決算書を並べて、最近の年度どうしを比べただけでは、未達でないものを未達と思い込むことがあります。

このページで引く条文は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(独立行政法人中小企業基盤整備機構。令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の規程令7第5号までの改正後のもの)です。以下「交付規程」といい、頁は同規程の印刷頁です。賃上げ要件の基準年度を定めているのは27条2項・3項(9頁)です。ほかの補助金の交付規程には、別の定めがあります。

1 二つの基準と、それぞれの基準年度

交付規程27条3項は、成長枠、グリーン成長枠、成長分野進出枠(通常類型)又は成長分野進出枠(GX進出類型)において、補助金額又は補助率の引上げを受けている補助事業者について、三つの号を置いています。1号が給与支給総額の年平均6パーセントと事業場内最低賃金の年額45円、2号と3号が給与支給総額の年平均2パーセントです。基準年度は、号ごとに違います。

年平均6パーセント――「直前の事業年度」が基準

引用(交付規程27条3項1号。9頁)「(1)採択発表日から補助事業完了期限日のいずれかの時点が含まれる事業年度の直前の事業年度における給与支給総額及び事業場内最低賃金を基準として、補助事業実施期間内に給与支給総額を年平均6%以上引き上げるとともに事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること。」

基準になるのは、採択発表日から補助事業完了期限日までのいずれかの時点が含まれる事業年度の、さらに「直前の事業年度」です。採択の年度でも、補助事業を完了した年度でもありません。その一つ前の事業年度の給与支給総額と事業場内最低賃金が出発点で、そこから「補助事業実施期間内に」どれだけ引き上げたかを見ます。補助事業実施期間は交付決定日から始まり、その最終日が補助事業完了期限日です。成長枠では、交付決定日から12か月以内(採択発表日から14か月後の日を越えない)とされています(交付規程5条1項本文・1号。2頁)。枠によって長さが違い、交付決定で別に定められることもあります。

一つ注意があります。「採択発表日から補助事業完了期限日のいずれかの時点が含まれる事業年度」という文言は、採択発表日を含む事業年度と、補助事業完了期限日を含む事業年度とが別の事業年度になるときに、どちらの直前を採るのかを一つに決めていないと読む余地があります。両者が同じ事業年度に入っていれば問題は生じませんが、採択の直後に決算期をまたいだ場合には、候補が二つあり得ます。この点は、該当する回次の公募要領と、交付申請のときに提出した事業計画で、どの年度を基準年度として申告したのかを確かめることになります。

年平均2パーセント――「補助事業完了期限日が含まれる事業年度」が基準

引用(交付規程27条3項2号・3号。9頁)「(2)第1回~第11回公募の補助事業者においては、補助事業完了期限日が含まれる事業年度の給与支給総額を基準として、事業計画期間中の給与支給総額の増加率の年平均を2%以上にすること。/(3)第12回及び第13回公募の補助事業者においては、補助事業完了期限日が含まれる事業年度の給与支給総額を基準として、事業計画期間中の給与支給総額の増加率を年平均成長率2%以上にすること。ただし、市場縮小要件を満たして成長分野進出枠(通常類型)に申請した場合は除く。」(※原文は号ごとに改行されています。引用に当たり「/」で区切りました。)

こちらの基準は、「補助事業完了期限日が含まれる事業年度」です。1号より一つ後ろの年度になります。そして、比べる期間は、補助事業実施期間ではなく、「事業計画期間中」、すなわち補助事業が完了した後の事業計画期間です(交付規程26条1項も「補助事業完了後の事業計画期間」と呼んでいます。8頁)。その長さと起算は、交付規程ではなく、該当する回次の公募要領と、提出した事業計画で定まります。交付規程は「事業計画期間」を定義しておらず、「3年~5年の事業計画期間」という語が規程に現れるのは、別紙2の卒業枠の概要欄だけです(11頁)。

つまり、同じ補助事業者に二つの基準が同時にかかっている場合、6パーセントの基準年度と2パーセントの基準年度は、一つずれています。6パーセントは補助事業の前の年度から補助事業の期間中の伸びを見るもの、2パーセントは補助事業を終えた年度からその後の伸びを見るものです。「賃上げ要件が未達」と言われたときは、どちらの号のことを言われているのか、そしてその号の基準年度がどの年度なのかを、先に分けてください。

2 回次による違い――第1回〜第11回と、第12回・第13回

前記の2号と3号を並べると、基準年度は同じ(補助事業完了期限日が含まれる事業年度)ですが、目標の書き方が違います。2号は「増加率の年平均を2%以上」、3号は「増加率を年平均成長率2%以上」です。年平均と年平均成長率は、同じ数字にならないことがあり得ます。年ごとの増加率を単純に平均するのか、複利で平均するのかで、同じ給与の推移でも達成の判定が変わり得ます。どちらの算式が当たるのかは、自分の公募の回次で決まります。

3号にはただし書もあります。市場縮小要件を満たして成長分野進出枠(通常類型)に申請した場合は、3号の対象から除かれています。第12回・第13回の採択で、どの要件で枠に入ったのかによって、2パーセントの基準そのものがかからないことがあります。

交付規程は、このように号の中で公募の回次を名指ししています。採択通知や交付決定通知書に書かれている回次を確かめれば、どの号が自分に当たるのかは文言のうえで決まります。計算式の中身(年平均成長率の求め方など)は交付規程には書かれていませんので、該当する回次の公募要領で確かめることになります。

3 大規模賃金引上枠――「いずれか高い方」が基準

27条2項は、大規模賃金引上枠、卒業枠及びグローバルV字回復枠の補助事業者を対象としており、そのうち大規模賃金引上枠の基準は1号と2号です(3号が卒業枠、4号がグローバルV字回復枠の条件です)。こちらは、基準の取り方が前記1・2と違います。

引用(交付規程27条2項1号・2号。9頁)「(1)大規模賃金引上枠の補助事業者が、応募申請時点の事業場内最低賃金又は補助事業終了年度の前年度の終了月の事業場内最低賃金のうちいずれか高い金額を基準として、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること。/(2)大規模賃金引上枠の補助事業者が、応募申請時点の常勤従業員数又は補助事業終了年度の前年度の終了時点の常勤従業員数のうちいずれか多い人数を基準として、従業員数の増加率を年平均1.5%以上(補助事業終了年度は1.0%以上)にすること。」(※原文は号ごとに改行されています。引用に当たり「/」で区切りました。)

基準は、応募申請時点の数字と、補助事業終了年度の前年度の終了月(従業員数は終了時点)の数字のうち、高い方・多い方です。「補助事業終了年度」は、補助事業の完了の日の属する年度です(交付規程25条1項。8頁)。応募から補助事業の完了までの間に賃金を上げていた場合、上げた後の数字が基準になりますので、そこからさらに年額45円の引上げが求められることになります。応募申請時点の数字を基準に数えていると、達成しているつもりで未達ということが起こり得ます。逆に、応募申請時点の後に事業場内最低賃金が下がっていた場合は、応募申請時点の数字が基準です。

この枠の返還の範囲は、3項とも違います。2項柱書は、「第19条第1項の規定により支払を受けた補助金の額と通常枠の補助上限額(補助対象者の応募申請時点で通常枠の補助上限額が従業員規模毎に設定されているときは当該補助上限額)との差額分について補助金の返還を命ずる」としています。この点は後記6で述べます。

4 何の数字を比べるのか――交付規程は定義を置いていません

交付規程が基準として挙げている数字は、「給与支給総額」「事業場内最低賃金」「常勤従業員数」です。交付規程は、これらの語を定義していません。交付規程2条は、用語の意義について、経済産業省が策定する事業再構築指針において定めるもののほかは同条各号によるとしていますが、同条各号に挙げられているのは補助対象者と補助事業者の二語だけです(1頁)。給与支給総額に何を含めるのか(役員の報酬を含むのか、賞与を含むのか、法定福利費を含むのか)は、交付規程の文言からは出てきません。公募要領の定義を確かめることになります。

交付規程の様式の側にも、気になる点があります。事業化状況・知的財産権報告書(様式第13)の別紙「事業化状況等の実態把握調査票」は、「(5)給与総支給額」を、「補助金交付申請時」「補助事業完了年度末」「現在」の三つの時点で記入させる欄になっています(79頁)。そして、補助率引上げを受けることを希望した補助事業者が1回目の報告のときだけ記入する「(7)特記事項1」に、「基準年度の終了月の事業場内最低賃金」「基準年度の給与総支給額」と「報告年度」のそれぞれの欄があります(80頁)。大規模賃金引上枠の補助事業者は、「(8)特記事項2」に、基準年度の終了月の事業場内最低賃金と基準年度の終了時点の常勤従業員数を書く欄があります(同頁)。

ここで二つのことが分かります。一つは、条文は「給与支給総額」、様式は「給与総支給額」と、語が揃っていないことです。もう一つは、調査票の本体の三つの時点(交付申請時・補助事業完了年度末・現在)には、1号の基準年度である「直前の事業年度」が入っていないことです。基準年度の数字は、特記事項の欄に書くことになっています。報告書を作るときに、調査票の本体の数字どうしを比べて達成・未達を判断してしまうと、1号の基準年度とは違う年度で比べていることになり得ます。

もう一つ、年度の語も揃っていません。27条3項は「事業年度」、同条2項と柱書は「年度」、25条1項は「補助事業の完了の日の属する年度」です。交付規程には「事業年度」の定義もありません。会社の決算期(事業年度)を指すものと読むのが自然ですが、4月から3月までの年度と会社の事業年度とがずれている会社では、どちらの区切りで数えるのかが結論に響きます。この点も、公募要領と、交付申請のときに提出した事業計画で確かめてください。

5 返還を命ずる場合の限定――「正当な理由なく」

基準年度を正しく特定して、それでも数字が届かない場合でも、直ちに返還にはなりません。27条3項の柱書は、中小機構が返還を命ずる場合を次のように限定しています。

引用(交付規程27条3項柱書。9頁)「3 中小機構は、第25条第1項の規定に基づき提出された事業化状況・知的財産権報告書により、成長枠、グリーン成長枠、成長分野進出枠(通常類型)又は成長分野進出枠(GX進出類型)において、補助金額又は補助率引上げを受けている補助事業者が事業計画終了時点を含む年度までの間に、予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく、次の各号の条件を満たしていないと認められる場合には、第19条第1項の規定により支払を受けた補助金の額のうち補助金額及び補助率引上げ分について補助金の返還を命ずる。」

限定は二つあります。一つは、判断の資料です。柱書は、「第25条第1項の規定に基づき提出された事業化状況・知的財産権報告書により」条件を満たしていないと「認められる場合」としています。判断の資料を、提出された報告書に限っているということです。報告書に現れていない事情で未達と認定することは、文言に沿いません。基準年度の数字を特記事項の欄に書くことになっているのは(前記4)、この報告書が判断の資料になるからです。

もう一つは、「予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく」条件を満たしていないと認められる場合に限られていることです。2項の柱書も同じ限定を置いています。「予見できない大きな事業環境の変化」は「など」で受けられていますので、正当な理由の一例であり、正当な理由はそれに限られないと読むのが文言に沿うと考えております。賃上げができなかった事情(取引先の倒産、原材料の高騰、災害、従業員の退職と採用の難航など)は、この柱書の「正当な理由」として主張できるものです。

なお、2項の柱書は「次の各号のいずれかの条件を満たしていない」、3項の柱書は「次の各号の条件を満たしていない」と書き分けられています。3項については、「いずれか」と書かれていない以上、適用のある号の条件を全部満たしていない場合に限ると読む余地があります。

賃上げ要件の定めがそもそも補助事業者に義務を課す補助条件になっているのか、中小機構が返還を命ずることができるのかという前提の問題は、冒頭で挙げた各ページのとおりです。それとは別に、実務の備えとしては、この限定の主語が中小機構であり、中小機構が「正当な理由なく」と「認められる」かどうかを判断する形になっていることを踏まえて、正当な理由に当たる事情は、事業者の側から、事業化状況報告の段階で、事情と裏付けの資料を添えて示しておくことになります。報告書を出した後で言っても、「報告書には何も書かれていなかった」と返されるおそれがあります。報告書の控えと、事務局とのやり取りの記録の残し方は、Q&A「事務局とのやり取りが申請システムの中にしかない――記録はどう残すのか」で述べています。

6 返還の範囲――全額ではありません

27条3項が、中小機構が返還を命ずる範囲として挙げているのは、「第19条第1項の規定により支払を受けた補助金の額のうち補助金額及び補助率引上げ分」です。補助金の全額ではなく、賃上げを前提として上乗せされた分だけです。成長枠などの補助率は、中小企業者等であれば原則2分の1、大規模な賃上げ(事業終了時点で事業場内最低賃金45円と給与支給総額6パーセントを達成すること)を行う場合に3分の2とされています(交付規程別紙2。23頁)。この2分の1と3分の2の差に当たる部分が、「補助率引上げ分」です。成長分野進出枠では、同じ達成を条件に、補助率だけでなく補助金額の上限そのものが引き上げられています(別紙2。27頁)。この上限の差に当たる部分が、「補助金額……引上げ」分です。返還の範囲が引上げ分に限られること自体は、冒頭で挙げた各ページでも触れていますので、ここでは基準年度との関係で要る限度で述べます。

大規模賃金引上枠(2項)の範囲は、「第19条第1項の規定により支払を受けた補助金の額と通常枠の補助上限額……との差額分」です。こちらも、通常枠で受けられたはずの上限額を超える部分だけが対象で、通常枠の範囲内の補助金は返還の対象になっていません。

賃上げ要件の未達を理由に、補助金の全額の返還や、交付決定の全部の取消しを告げられた場合、交付規程の文言とは合っていません。交付規程自身が、賃上げ未達の返還の範囲を上乗せ分に限っているからです。

ここで、交付規程の中のもう一つの条文に触れておきます。22条1項1号は、補助事業者が「法令、本規程又は本規程に基づく中小機構の処分若しくは指示に違反した場合」を交付決定の取消事由に挙げ、同条2項は取り消した部分の補助金の返還、同条3項は年利10.95パーセントの加算金を定めています(7頁)。賃上げ要件の不充足は本規程違反に当たるとして、この条文により全部の取消し・全額の返還・加算金を告げてくることは考えられます。しかし、27条2項・3項は、賃上げ要件の不充足について、返還を命ずる場合(正当な理由なく条件を満たしていないと認められる場合)と範囲(上乗せ分)を特に定めた規定です。同じ事由について22条1項1号により全部の取消し・全額の返還・加算金を課すことは、27条2項・3項を置いた意味を失わせます。交付規程の中では、賃上げ未達については27条2項・3項が特則として働くと考える余地があります。

なお、賃上げ要件の未達が交付決定の取消事由(適正化法17条1項)に当たるのかという問題と、取消しを経ない返還命令の根拠条文が法律のどこにあるのかという問題は、冒頭で挙げた各ページで述べています。このページで述べたいのは、仮に交付規程どおりに返還が命じられるとしても、その範囲は上乗せ分までだ、ということです。

交付規程は、2項・3項の返還について、18条3項を準用しています(27条5項。9頁)。返還期限は命令の日から20日以内、期限内に納付がない場合は年利10.95パーセントの割合で計算した延滞金です(6頁)。22条3項の加算金の定めは準用されていません。この違いは、Q&A「加算金が付く場合と付かない場合がある」で述べています。

次のような場合は、ご相談ください

  • 事業化状況報告を出す前で、どの年度の給与支給総額と比べるのか分からない
  • 報告書を出す前に直近の年度どうしを比べたところ未達に見えるが、交付規程の基準年度では達成している可能性がある
  • 賃上げ要件の未達を理由に、補助金の全額の返還や交付決定の取消しを告げられた
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 賃上げ未達の返還命令の根拠条文はどこにあるのか(Q&A)/賃上げできなかったら、取消し・返還になるのか(Q&A)

7 自分の回次の規程をどう特定するか

ここまで述べたことは、すべて「自分に当たる交付規程の、自分に当たる号」を読むところから始まります。次の順で確かめてください。

  • 補助金の名称と枠。事業再構築補助金の交付規程は、新市場進出のものと、それ以外のものとで分かれています。中小企業新事業進出促進補助金、中小企業省力化投資補助金、ものづくり補助金は、それぞれ別の交付規程で、賃上げ要件の基準と返還の範囲の定め方が違います。採択通知と交付決定通知書で、補助金の名称と枠(成長枠、大規模賃金引上枠など)を確かめます。
  • 公募の回次。27条3項2号・3号は、第1回〜第11回と第12回・第13回とで号を分けています。回次は採択通知に書かれています。
  • 補助金額又は補助率の引上げ(大規模な賃上げ)を受けているか。3項は「補助金額又は補助率引上げを受けている補助事業者」にだけかかります。交付決定通知書に記載された補助金額・補助率と、交付申請のときに希望した補助金額・補助率を確かめます。1号の6パーセントの基準は、この引上げを受けている場合のものです。
  • 交付規程の版。交付規程は改正を重ねており、このページで引いた版は規程令7第5号(令和7年6月30日施行)までの改正後のものです。現行の27条2項に当たる規定は、当初は26条2項に置かれ、規程令3第34号の附則(10頁)では卒業枠とグローバルV字回復枠だけを対象にしていました。同じ附則(12頁)で大規模賃金引上枠が加えられています(令和3年11月30日施行・同年7月30日適用)。手元の規程の表紙にある改正の履歴と、附則の施行日・適用日を見て、自分の採択時点にどの版が当たるのかを確かめます。
  • 基準年度の数字の出どころ。1号なら直前の事業年度、2号・3号なら補助事業完了期限日が含まれる事業年度、2項なら応募申請時点と補助事業終了年度の前年度の高い方です。それぞれの年度の給与支給総額・事業場内最低賃金を、賃金台帳と決算書から拾い、交付申請のときに提出した事業計画に書いた基準年度の数字と突き合わせます。
  • 公募要領の定義。給与支給総額に何を含めるのか、年平均成長率をどう計算するのか、事業年度をどの区切りで数えるのかは、交付規程ではなく、該当する回次の公募要領に書かれています。交付規程と公募要領の該当頁を並べて、算式を一つずつ当てはめてください。

この順で確かめると、「未達」と言われたものの多くが、どの号のどの基準年度の話なのかが整理できます。基準年度を取り違えたまま出された未達の認定は、交付規程27条2項・3項の「条件を満たしていないと認められる場合」の前提を欠くものと考える余地があります。報告書を出す前であれば、基準年度を正しく置いた数字で報告することができますし、正当な理由があればその事情を添えることができます。すでに返還を求められている場合は、どの号を根拠に、どの年度を基準年度として、どの数字で計算したのかを、書面で示すよう求めるところから始めてください。

事業化状況報告の準備で、どの年度の給与支給総額と比べるのか迷っている事業者の方、賃上げ要件の未達を理由に返還や取消しを告げられた方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご相談ください。報告書を出す前であれば、基準年度を正しく置いた数字で報告する余地があります。採択通知、交付決定通知書、交付申請のときの事業計画、該当する回次の公募要領と交付規程、賃金台帳と決算書があれば、どの号のどの基準年度で判定されるのかを具体的に検討できます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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