執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)
加算金そのものの仕組み(率、起算日、延滞金との違い、免除の手続)は、Q&A「補助金の返還を求められたら、加算金・延滞金は払うのか」で述べています。このページは、その先の問い、すなわち「同じ返還の求めでも、加算金が付くものと付かないものがあるのはなぜか」に絞ります。答えは一つで、どの条文による返還の命令なのかによって決まります。
1 加算金の根拠は19条1項で、義務違反による取消しに伴う返還に限られる
加算金を定めているのは、補助金適正化法19条1項です。中小機構が交付する補助金には、独立行政法人中小企業基盤整備機構法16条の準用によって及びます。
引用(補助金適正化法19条1項)「補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。」
加算金が結び付いているのは、「第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し」返還を命ぜられた場合だけです。17条1項は、補助事業者等が補助金等の他の用途への使用をし、その他交付決定の内容・条件・法令・処分に違反したときの取消しです。「これに準ずる他の法律の規定による処分」について、文献は「他の補助法令上相手方の義務違反を理由として交付決定を取り消す処分」を意味すると述べています(後掲の小滝・268頁)。どちらも、義務違反を理由とする取消しです。つまり、義務違反を理由とする取消しに伴う返還の命令(18条1項)が、加算金の前提です。中小機構が交付する補助金では、取消しの根拠は準用された適正化法そのもの(義務違反なら17条1項、事情変更なら10条)であり、交付規程はその運用を定めた行政規則です。ですから、交付規程に基づく取消しが「これに準ずる他の法律の規定による処分」に当たるかという問題は生じません。
ここから、法律の上で加算金が付かない返還が四つ出てきます。文献は、17条1項の取消しとこれに準ずる処分に伴う返還を挙げたうえで、次のように整理しています。
引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』268頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「したがって、それらの場合以外すなわち間接補助事業者等の義務違反に対する交付決定の取消し(第一七条第二項)、事情変更による交付決定の取消し(第一〇条)及び瑕疵ある交付決定の取消しによる場合は、加算金納付の義務を負わないこととなる。また、減額確定に伴い補助金等返還命令が出されたときも、加算金を納付すべきこととはならない。」
- 間接補助事業者等の義務違反による取消し(17条2項)。国の補助金を受けた者がさらに他の者に交付する間接補助の場面で、その間接補助事業者等(2条6項)の違反を理由に、補助事業者等に対してされる取消しです。19条1項が挙げているのは17条1項(とこれに準ずる他の法律の規定)で、17条2項は入っていませんので、対象外です。
- 事情変更による取消し(10条)。天災地変その他交付決定後に生じた事情の変更により補助事業を継続する必要がなくなった場合などの取消しです(同条2項)。義務違反ではありませんので、17条1項の処分ではありません。
- 瑕疵ある交付決定の取消し。交付決定そのものに初めから瑕疵があった場合に、行政庁がこれを職権で取り消すものです。17条1項の取消しとは別の筋道です。
- 額の確定に伴う返還の命令(18条2項)。15条の額の確定の結果、既に交付された額が確定額を超えるときの返還です。取消しを経ていませんので、19条1項の「第十七条第一項の規定……による処分に関し」には当たりません。
同書268頁は、この率が民法の法定利息に比べて高い理由を、その原因となった義務違反が公法上の事業遂行義務の違反として制裁に値すると観念されたからであろうとし、そこから、加算金は「制裁的賦課金としての意義を合わせもつ」と述べています。制裁である以上、どの場合に生じるかは法律で決まります。交付規程は行政規則で法律ではありませんので、19条1項が対象にしていない返還に、交付規程が加算金を付けることはできません。
では、交付規程が加算金の対象を19条1項より狭く書いている場合はどうか。以下は、適正化法が準用される中小機構交付の補助金についての話です(事務局が交付主体となる補助金では、交付規程の定めが契約の条件として働きます。後記4)。法律上の納付義務を交付規程が消すことはできませんから、交付規程の除外は、法律の義務を免除する定めではなく、除外された取消しがもともと義務違反による取消し(17条1項の処分)に当たらないことを確認した定めと読む余地があります。次の2で見る除外のうち、事情変更は10条型であり、申請内容の虚偽などは瑕疵ある交付決定の取消しに近づく類型だと見ることができます(後記2の私見)。少なくとも、交付主体が自ら「除く」と定めた範囲について加算金を命じてくることはない、という拘束は、交付規程の文言から直接に生じます。次の2以下は、実際の交付規程がどこで外しているか、どこで外していないかを見ていきます。
2 新市場進出交付規程22条3項が加算金から除いている取消し
新市場進出交付規程は、取消しの定め(22条1項)に続けて、返還命令(同条2項)と加算金(同条3項)を置いています。
引用(新市場進出交付規程22条3項。同規程7頁)「中小機構は、前項の返還を命ずる場合には、第12条第1項第4号の補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請を承認した場合、並びに第1項第4号、第5号及び第6号に規定する場合を除き、その命令に係る補助金の受領の日から納付の日までの期間に応じて、年利10.95パーセントの割合で計算した加算金の納付を併せて命ずるものとする。」
加算金の対象から除かれているのは、次の四つの場合です。「」内は、同規程22条1項各号の文言です(4号は同規程6頁、5号・6号は7頁。最初の一つだけは12条1項4号の承認を指します)。
- 補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請を承認した場合(12条1項4号の承認)。自ら手続を踏んでやめた場合です。この場合の進め方は、Q&A「補助事業を途中でやめたい・縮小したいとき、補助金はどうなるのか」で述べています。
- 1項4号「補助事業者が、交付の決定後生じた事情の変更等により、補助事業の全部又は一部を継続する必要がなくなった場合」。これは適正化法10条の事情変更による取消しに対応するもので、法律の上でも加算金の対象外です(前記1)。もっとも、文献は、事情変更による取消しではそもそも既交付分の返還の問題が生じないとしています(小滝・前掲268頁注(1))。10条1項ただし書が、「補助事業等のうちすでに経過した期間に係る部分については、この限りでない」として、済んだ部分の取消しを認めていないからです。交付規程22条2項が4号の取消しにも返還を命ずる建てにしていること自体に、法律との差があります。
- 1項5号「補助事業者が、申請内容の虚偽、本補助金を活用して取り組む事業に対する国(独立行政法人等を含む)が助成するほかの制度(補助金、委託金等)との重複受給等が判明した場合」。
- 1項6号「補助事業者が、大規模賃金引上枠の応募申請時点で、応募申請要件を満たす賃金引上げ計画を従業員に表明していないことが判明した場合」。
5号と6号が加算金の対象から外されていることは、意外に受け取られるかもしれません。申請内容の虚偽や重複受給は、取消事由の中でも非難の程度が重いものだからです。しかし、附則を見ると、これは書き間違いではありません。令和3年11月30日施行の改正(規程令3第34号)は、「第22条第3項に「及び第5号」を加える規定」を令和3年3月26日から適用すると定めています(同規程10頁)。また、令和5年4月6日施行の改正(規程令4第43号)も、「第22条第3項及び第26条第2項の改正規定は、令和3年3月26日から適用する」としています(同規程14頁)。5号の除外は、制度の最初の日にさかのぼって適用させる形で、わざわざ加えられたものです。
なぜ虚偽や重複受給が加算金の対象外なのか、交付規程は理由を書いていません。私見としては、前記1の文献の整理と重ねると、説明がつく余地があります。申請内容に虚偽があった場合、交付決定は誤った申請を前提にされたものですから、取消しの筋道は、義務違反に対する17条1項の取消しというより、瑕疵ある交付決定の職権取消しに近づきます。瑕疵ある交付決定の取消しは、文献のいうとおり加算金納付の義務を生じさせません。交付規程22条3項が5号を除外しているのは、この建て方と整合すると考える余地があります。二つ、断っておきます。第一に、虚偽の申請は、交付決定の内容・条件への違反として17条1項の取消事由に当たるという見方も成り立ちますので、ここで述べたのは一つの説明にとどまります。第二に、瑕疵ある交付決定の取消しという筋道を採ると、交付決定は初めからなかったことになり、既に受け取った補助金は不当利得になります。受益者の認識によっては、民法704条の利息を求められる余地があります。加算金が付かないことと、利息を一切負わないこととは別です。そのうえで、虚偽や重複受給と言われている場合に、そもそもその認定が正しいのかは別の問題です。重複受給の意義は、コラム「事業再構築補助金とものづくり補助金の『重複受給』を理由に交付決定を取り消すと言われたら」で述べています。
3 額の確定・賃上げ未達の返還には、延滞金の定めしかない
交付規程の中には、取消しを経ない返還の定めもあります。これらには、加算金の定めが置かれていません。置かれているのは、返還期限と延滞金だけです。
引用(新市場進出交付規程18条2項・3項。同規程6頁)「2 中小機構は、補助事業者に交付すべき補助金の額を確定した場合において、既にその額を超える補助金が交付されているときは、その超える部分の補助金の返還を命ずる。
3 前項の補助金の返還期限は、当該命令のなされた日から20日以内とし、期限内に納付がない場合は、未納に係る金額に対して、その未納に係る期間に応じて年利10.95パーセントの割合で計算した延滞金を徴するものとする。」
18条3項は、額の確定に伴う返還(適正化法18条2項に当たるもの)について、命令の日から20日以内という期限と、期限を過ぎた場合の延滞金を定めています。受領の日にさかのぼる加算金はありません。そして、この18条3項は、次の二つの返還にも準用されています。
- 消費税等仕入控除税額の確定に伴う返還。「第18条第3項の規定は、前項の返還の規定について準用する。」(新市場進出交付規程21条3項。同規程6頁)
- 大規模賃金引上枠・卒業枠等の要件の未達による返還(27条2項)と、成長枠等で受けた補助率引上げ分等の返還(同条3項)。「第2項及び第3項に基づく補助金の返還については、第18条第3項の規定を準用する。」(同規程27条5項。同規程9頁)
これに対し、取消しに伴う返還には、加算金(22条3項)に加えて、同じ18条3項が準用されます(「第2項に基づく補助金の返還については、第18条第3項の規定を準用する。」同規程22条4項。7頁)。新事業進出交付規程(22条4項・27条5項)も成長投資交付規程(20条3項・21条4項。こちらは17条3項の準用)も、同じ建てです。整理すると、次のようになります。
- 取消しに伴う返還(22条2項)。受領の日からの加算金と、20日の期限を過ぎてからの延滞金の両方。ただし前記2の除外あり。
- 額の確定に伴う返還(18条2項)、消費税等仕入控除税額の返還(21条2項)、枠の要件未達・補助率引上げ分等の返還(27条2項・3項)。20日の期限を過ぎてからの延滞金だけ。
賃上げ未達の返還については、そもそも適正化法18条のどこに根拠があるのかという問題が別にあり、Q&A「賃上げ要件が未達だと……返還を求めます」と書かれていますが、その返還命令の根拠条文はどこにあるのですかと、Q&A「賃上げできなかったら、交付決定の取消し・補助金の返還になるのか」で述べています。額の確定による減額は、コラム「額の確定(補助金適正化法15条)とは何か」で扱っています。ここで述べたいのは、交付規程自身が、これらの返還を取消しに伴う返還とは別物として扱い、加算金を付けていないという事実です。届いた書面に加算金が計上されていれば、その返還が22条2項の返還であることが前提になっているはずで、そうでなければ計上の根拠がありません。
4 三つの交付規程を並べると、除外の範囲が違う
加算金の除外の範囲は、補助金ごとに違います。同じ中小機構が交付主体の新事業進出補助金と、事務局が交付主体の中堅・中小成長投資補助金を、新市場進出交付規程と並べてみます。
新事業進出交付規程22条3項
引用(新事業進出交付規程22条3項。同規程6頁)「中小機構は、前項の返還を命ずる場合には、第12条第1項第4号の補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請を承認した場合、並びに第1項第4号及び第5号に規定する場合を除き、その命令に係る補助金の受領の日から納付の日までの期間に応じて、年利10.95パーセントの割合で計算した加算金の納付を併せて命ずるものとする。」
除外は、中止・廃止の承認、1項4号(事情変更)、1項5号(申請内容の虚偽・重複受給等)の三つです。新市場進出交付規程にあった6号の除外がありません。新事業進出交付規程の6号は「補助事業者が、応募申請時点で、応募申請要件を満たす賃上げ計画を従業員に表明していないことが判明した場合」で、号の中身は新市場進出交付規程の6号とほとんど同じであるのに、新市場進出では加算金の対象外、新事業進出では対象です。同じ賃上げ計画の未表明が、補助金によって加算金の有無を分けることになります。また、9号(実績報告書の期限徒過)、10号(事業化状況の報告の不提出)、13号「その他公募要領で定める事項に該当した場合」は、除外に入っていません(同規程6頁)。
成長投資交付規程21条3項
引用(成長投資交付規程21条3項。同規程7頁)「事務局は、前項の返還を命ずる場合には、第1項第4号及び第5号に規定する場合を除き、その命令に係る補助金の受領の日から納付の日までの期間に応じて、年利10.95パーセントの割合で計算した加算金の納付を併せて命ずるものとする。」
ここでは、除外は1項4号「補助事業者が、交付の決定後生じた事情の変更等により、補助事業の全部又は一部を継続する必要がなくなった場合」と5号「補助事業者が、申請内容の虚偽(補助事業の採択に係る公募の申請内容を含む)が判明した場合」の二つだけです(同規程6〜7頁)。中止・廃止の申請を承認した場合が除外に入っていません。同規程21条1項は、11条1項3号の中止・廃止の申請があった場合も取消しの対象にしていますので(同規程3頁・6頁)、文面どおりなら、自ら手続を踏んで事業をやめた場合にも加算金が付くことになります。もっとも、同規程は額の確定後の支払を原則としていますので(18条1項。同規程6頁)、受領の日からの加算金が実際に問題になるのは、概算払を受けていた場合です。また、7号「補助事業者が、第16条第1項に定める期限内に実績報告書を提出しなかった場合」、8号「補助事業者が、第27条第1項に定める事業化及び賃金引上げ等状況の報告を行わなかった場合」は、除外に入っていません(同規程7頁)。
なお、成長投資補助金は交付主体が事務局ですので、適正化法19条が準用によって直接及ぶ類型ではなく、加算金は交付規程の定めそのものによることになります(この見分け方は、前掲のQ&A「加算金・延滞金は払うのか」の2で述べています)。この補助金で加算金が付くかどうかは、21条3項の文言がすべてです。
並べて分かること
- 三つとも、「申請内容の虚偽」を加算金から除いています。他方、実績報告や事業化状況報告の遅れ・不提出は、三つとも除いていません。非難の程度と加算金の有無が、逆になっています。
- 中止・廃止の承認を受けた場合の扱いは、中小機構の二つの規程では除外、成長投資交付規程では除外なしです。同じ「手続を踏んでやめる」行為に対する扱いが、補助金によって違います。
- 賃上げ計画を従業員に表明していなかったことによる取消しは、新市場進出では加算金の対象外、新事業進出では対象です。同じ事由でも、補助金によって結論が変わります。
- 三つとも、加算金を「併せて命ずるものとする」と書いています。除外に当たらない限り、交付主体の側に加算金を命じない判断の余地があるようには書かれていません。
私見としては、報告の遅れを理由とする取消しに受領の日からの加算金を付けることは、適正化法19条1項の文言には収まるとしても、文献が、加算金の高い率の理由を義務違反が制裁に値すると観念されたことに求めている趣旨(前記1)からは、重いのではないかと考える余地があります。報告の遅れに対して法律が用意している制裁は、別にあります(Q&A「同じ不作為に法律が定めた制裁は三万円以下の罰金です」)。そのうえ、取消し自体が「取り消すことができる」という裁量処分ですので(適正化法17条1項、各交付規程の取消条項)、報告の遅れだけで全部を取り消すことができるかという前の段階の問題があります。この点は、Q&A「補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか」で述べています。
次のような場合は、納付に応じられる前にご相談ください
- 返還の求めに加算金が計上されているが、どの条文による取消しなのかが書かれていない
- 額の確定や賃上げ未達による返還なのに、受領の日からの加算金が付いている
- 中止・廃止の承認を受けてやめたのに、加算金の納付を求められている
関連ページ: 加算金・延滞金は払うのか(Q&A)/「返還命令(加算金付き)の対象となります」は、そのとおりなのか(Q&A)
5 計算の始期は、受領の日
加算金の始期が返還の命令の日ではなく受領の日であることは、前掲のQ&A「加算金・延滞金は払うのか」の1で述べています。ここで押さえておきたいのは、三つの交付規程がいずれも法律と同じ「その命令に係る補助金の受領の日から納付の日までの期間に応じて」という文言で始期を定めていることです(新市場進出交付規程22条3項、新事業進出交付規程22条3項、成長投資交付規程21条3項)。交付規程の上でも、始期を後ろにずらす余地は書かれていません。延滞金の方は、命令の日から20日の期限を過ぎた翌日からです(新市場進出交付規程18条3項)。補助金が2回以上に分けて交付されていた場合の受領の日の数え方(適正化法施行令10条1項)、一部を納付したときの充当の順序(同令10条2項)、延滞金の計算の基礎となる未納付額(同令11条)は、前掲のQ&Aの4で述べています。
ここで押さえておきたいのは、加算金の額は、取消しの時期ではなく受領からの経過期間で決まるため、額の確定から何年も経ってから取消しを受けると、元本に対する加算金の割合が大きくなるということです。適正化法17条3項は、17条1項の取消しが額の確定の後にもできることを定めています。取消しに期間の制限があるかは、Q&A「交付決定の取消しに期間の制限はあるのか」で述べています。
6 19条3項の免除に、交付規程は触れていない
新市場進出交付規程22条3項も、新事業進出交付規程22条3項も、成長投資交付規程21条3項も、免除について一言も書いていません。書かれているのは、除外に当たらない限り加算金を「併せて命ずるものとする」ということだけです。交付規程だけを読むと、免除という選択肢があること自体が分かりません。
しかし、法律は、「やむを得ない事情があると認めるとき」に加算金又は延滞金の全部又は一部を免除することができると定めています(適正化法19条3項)。交付規程が書いていないからといって、この定めが消えるわけではありません。中小機構が交付する補助金では、19条3項は機構法16条の準用によって及んでおり、免除をするのは機構の理事長です。免除は補助事業者等の申請によって始まる手続です(同法施行令12条により準用される同令9条1項)。ただし、機構の一存で決まるものでもなく、財務大臣への協議などを含む同令9条3項以下の手続が準用される中で検討されます。申請の書類と手続の詳細は、前掲のQ&A「加算金・延滞金は払うのか」の6で述べています。
私見としては、前記2で見たとおり報告の遅れや資本構成の変動のような事由が加算金の対象に残っている以上、「やむを得ない事情」の有無を個別に検討する免除の手続は、交付規程の文面以上に大きな意味を持つと考えております。交付規程に書かれていないため申請されないままになっている免除は、申請して初めて検討の対象になります。
7 届いた書面で、三つを確かめる
以上をまとめると、加算金の有無は、届いた書面がどの条文による返還の命令なのかで決まります。書面が届いたら、次の三つを順に確かめてください。
- (1)取消しに伴う返還か、取消しを経ない返還か。交付決定の取消しの通知があるかどうかです。取消しを経ない返還(額の確定、消費税等仕入控除税額、賃上げ未達等)であれば、交付規程の上でも加算金の定めはなく、延滞金の定めがあるだけです(前記3)。加算金が計上されていれば、その計上には根拠がありません。
- (2)取消しであれば、どの号による取消しか。交付決定の取消しをするときは、理由を示すことが法律上の義務です(適正化法21条の2)。取消しの理由が、中止・廃止の承認、事情変更、申請内容の虚偽・重複受給など、交付規程が加算金から除いている場合に当たるなら、加算金は付きません(前記2・4)。どの号によるかが書かれていなければ、示すよう求めることになります。
- (3)除外に当たらない取消しなら、免除の申請を検討する。報告の遅れなど、交付規程が加算金から除いていない事由による取消しであれば、取消しそのものの当否(裁量の逸脱・濫用)と、19条3項の免除の申請を、分けて検討します(前記6)。
なお、財産処分の承認に伴う残存簿価相当額の納付は、ここで述べた返還の命令のどれでもなく、承認に付された条件に基づく納付です。加算金・延滞金が付されないものとして整理されていることは、前掲のQ&A「加算金・延滞金は払うのか」の3と、コラム「残存簿価相当額の納付を求められたら」で述べています。
取消しそのものを争うのであれば、処分があったことを知った日から六か月という出訴期間があります(行政事件訴訟法14条1項)。加算金は受領の日から日数で増えていきますので、取消しの理由と加算金の根拠を分けて、早い段階で確かめておかれることをお勧めしております。
加算金の額を見て諦める前に、届いた書面がどの条文による返還の命令なのかを確かめます。取消しの理由、加算金の根拠、免除の申請を分けてご説明します。
根拠(条文・公式資料・裁判例)
- 補助金適正化法2条6項、10条1項・2項、17条1項〜3項、18条1項〜3項、19条1項〜3項、21条の2
- 補助金適正化法施行令9条、10条、11条、12条(加算金又は延滞金の免除)
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構法15条1項6号、16条
- 中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和7年6月30日施行の改正まで)18条2項・3項(6頁)、21条3項(6頁)、22条1項4号(6頁)、同項5号・6号・8号〜10号・12号、2項〜4項(7頁)、27条2項・3項・5項(9頁)、附則(規程令3第34号。10頁)、附則(規程令4第43号。14頁)
- 中小企業新事業進出促進補助金交付規程(令和8年6月15日施行の改正まで)18条3項(5頁)、22条1項4号〜6号・9号・10号・13号、3項・4項(6頁)、27条5項(8頁)
- 中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金交付規程(令和7年10月14日最終改定)11条1項3号(3頁)、17条3項・18条1項・20条3項(6頁)、21条1項柱書・4号(6頁)、同項5号・7号・8号、2項〜4項(7頁)
- 民法703条・704条(不当利得の返還義務・悪意の受益者の返還義務)
- 小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』268頁(株式会社全国会計職員協会、2016)(17条2項・10条・瑕疵ある交付決定の取消し・減額確定による返還には加算金が付かないこと、加算金の制裁的賦課金としての意義)
- 行政事件訴訟法14条1項
※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。
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※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。