執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)
小規模事業者持続化補助金で店舗の看板を作り替えた、厨房機器を入れた、内装を直した。何年たてば自由に処分できるのか、というご質問です。事業再構築補助金については、処分制限期間は財産ごとの法定耐用年数で決まるとコラム「補助金で取得した財産の処分制限期間は何年か」で述べました。持続化補助金は、そこと建てつけが違います。交付規程が期間を「別に定める」とし、事務局の定めた取扱いが、その期間を原則5年としているからです。このページでは、その定めを原文で確かめ、何年になるのか、どの財産で年数が変わるのか、そして手元の補助金がどの定めによっているのかを確かめる順序を整理します。
1 交付規程は、期間を「別に定める」としています――25条1項・2項
処分制限の出発点は補助金適正化法22条です。同条は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないと定め、ただし書で政令に委ねています。その政令である補助金適正化法施行令14条1項2号は、「補助金等の交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定める期間を経過した場合」には処分の制限を適用しないとしています。期間は、法律が年数を書いているのではなく、交付の目的と耐用年数を勘案して「定める」ものです。この条文の読み方は、Q&A「処分制限期間は『省令のとおり』と書かれていますが」で述べています。
一つお断りしておきます。22条の宛先は「補助事業者等」です。持続化補助金は、中小機構から全国商工会連合会(商工会議所地区では商工会議所地区事務局)を経て小規模事業者に渡る補助金であり、受給事業者の財産処分を縛っているのは、適正化法22条そのものではなく、交付規程の条項が交付決定の条件として取り込まれた限りのものです。この構造は、Q&A「ものづくり補助金と間接補助事業者等――適正化法の宛先」で述べました。以下は、交付規程が22条と施行令14条1項2号の構造を借りて期間を定めている、という前提での整理です。
持続化補助金の交付規程は、この「定める」を、交付規程の中で年数を書くのではなく、別に定める形にしています。全国商工会連合会の交付規程(2023年3月3日制定)25条は、次のとおりです。
引用(小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程(2023年3月3日制定・全国商工会連合会)25条1項・2項。同規程PDF6頁)「第25条 取得財産等のうち、処分を制限する財産は、取得価格または効用の増加価格が単価50万円(消費税および地方消費税相当額を含まない。)以上の機械、器具、備品およびその他の財産とする。
2 適正化法第22条に定める財産の処分を制限する期間は、補助金交付の目的および減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を勘案して、全国連会長が別に定める期間とする。」
1項が、処分制限財産を単価50万円(税抜)以上の財産と定めています。この線の意味は、Q&A「50万円未満の設備や、工事一式で計上したものは、処分制限の対象になるのか」で述べたとおりです。2項が、期間を「補助金交付の目的および……省令……を勘案して、全国連会長が別に定める期間」としています。施行令14条1項2号の二つの考慮要素がそのまま書かれており、年数は交付規程の外に置かれています。商工会議所地区については、次に引く取扱いが対応する2024年3月28日制定の交付規程そのものを、当職は確認できていません。もっとも、その取扱い5条1項が「交付規程第25条第2項における「商工会議所地区事務局が別に定める期間」」と書いていますので、同項が同じ型の委任規定であることは、取扱いの文言から読み取れます。次に引く取扱いは、その「別に定める期間」の中身を定めたものです。
公募要領の側は、年数を書いていません。商工会議所地区の第20回公募要領は、機械装置等費の項で、年数については次のように述べるにとどまります(この公募要領は現在の第20回のもので、後記6(3)の2025年の交付規程の下にあるものです。後記2の2024年の取扱いが対応する回の公募要領ではありませんが、年数を書いていない点は同じです)。
引用(小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版・2026年7月21日)12頁(PDF13頁))「○単価50 万円(税抜き)以上の機械装置等の購入は「処分制限財産」に該当し、補助事業が終了し、補助金の支払を受けた後であっても、一定の期間において処分(補助事業目的外での使用、譲渡、担保提供、廃棄等)が制限されます。」
「一定の期間」です。何年かは、公募要領を読んでも分かりません。この引用の直後には、承認の申請、残存簿価等からの納付、承認を得ずに処分した場合の取消し・返還も書かれていますが(その書き方の当否は、Q&A「無承認の処分は当然に取消し・加算金なのか」で述べています)、年数はどこにもありません。年数を知るには、交付規程が「別に定める」とした定めそのものを読む必要があります。
2 別に定めた期間は原則5年、耐用年数4年以下のものは省令の年数――取扱い5条1項
商工会議所地区事務局は、「「小規模事業者持続化補助金」<一般型>において補助事業者が補助対象経費により取得し、または効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(2024年3月28日制定。以下「取扱い」といいます)という全3頁の文書で、財産処分の定義、承認の基準、納付額、そして財産処分制限期間を定めています。この取扱いは、事務局のサイトには掲げられておらず、交付決定を受けた事業者に示される文書です。お手元にない場合は、事務局に対し、交付規程25条2項の「別に定める期間」を定めた文書の提示を求めてください。期間の定めは5条です。
引用(同取扱い5条1項。同取扱い2頁)「第5条 交付規程第25条第2項における「商工会議所地区事務局が別に定める期間」は、5年とする。ただし、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)において4年以下となっているものについては、同省令の定めに準じた期間とする。」
建てつけは二段です。本文が、処分制限期間を5年とする。ただし書が、耐用年数省令で4年以下となっている財産については、「同省令の定めに準じた期間」、すなわち原則として省令の年数にする。つまり、省令の年数が5年以上の財産は、省令の年数がいくつであっても5年で頭打ちになり、省令の年数が4年以下の財産は、その短い年数になります。
当てはめると、こうなります。飲食店業用設備の法定耐用年数は8年、食料品製造業用設備は10年ですが(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第二)、持続化補助金で入れた厨房機器や製造機械の処分制限期間は、この取扱いによれば5年です。他方、パーソナルコンピュータ(省令別表第一の器具及び備品。サーバー用のものを除く)の法定耐用年数は4年ですので、処分制限期間も4年です。耐用年数が10年の機械を5年で区切るのですから、処分制限期間が耐用年数より短く置かれているわけです。持続化補助金の交付の目的は、小規模事業者の販路開拓等です(同交付規程3条)。耐用年数のとおり10年、15年と縛ることが交付の目的に見合わないと判断されたから、5年で切られたものと読めます。
ここで、この5年の位置付けを正確にしておきます。施行令14条1項2号の期間を定めるのは「各省各庁の長又は補助実施法人の代表者」であり、中小機構についていえば理事長です。同条2項は、その場合に9条3項から5項までを準用し、所管大臣(経済産業大臣)の承認と財務大臣への協議を求めています。商工会議所地区事務局も、全国連会長も、この主体ではありません。したがって、取扱い5条1項の5年は、施行令14条1項2号の期間そのものではなく、交付規程25条2項と取扱いが、施行令の構造を借りて、交付決定の条件として置いた期間です。この手続の建てつけは、前掲のQ&A「処分制限期間は『省令のとおり』と書かれていますが」の3で述べました。
5年を過ぎれば、交付規程25条3項の承認を要しなくなります。承認を受けずに譲渡し、貸し付け、担保に供することができ、それを交付決定の条件違反として補助金の返還を求められることもない、というのが交付規程と取扱いの定めです。期間が過ぎた後の効果の考え方は、コラム「処分制限期間は何年か」の7で述べたとおりです。
一つ留保があります。交付規程24条4項は、「補助事業者が取得財産等を処分することにより収入があり、またはあると見込まれるときは、その収入の全部もしくは一部を全国連に納付させることがある」と、「取得財産等」の処分による収入の納付を、処分制限期間と結び付けずに定めています(2025年以降の商工会議所地区の版の24条4項も同じ型で、残存簿価相当額等を加えています)。5年を過ぎた後の譲渡についてこの条項を持ち出されることがあり得ます。もっとも、同項は25条4項(2025年以降の版では25条7項)により承認をする場合に準用されており、承認に付す納付の条件の根拠として働く規定と読むのが自然だと考えております。期間経過後の処分それ自体を納付義務にかからせるものと読むには、文言が足りないと考える余地があります。この点は、期間経過後に処分する前に、事務局の扱いを書面で確かめておくべき事項です。
3 看板・ネオンサイン、店用簡易装備、可動間仕切りは3年――参考1と省令の別表
取扱いは、3頁に「参考1」として、5条1項ただし書の適用例を三つ挙げています。
引用(同取扱い3頁「<参考1>第5条第1項「ただし書き」の適用例」)「・建物付属設備-店用簡易装備 3年
・ 同 -可動間仕切り 3年
・看板、ネオンサイン 3年」
三つとも、省令の別表第一に根拠があります。別表第一の建物附属設備の区分には「店用簡易装備」が3年、「可動間仕切り」のうち「簡易なもの」が3年(「その他のもの」は15年)と掲げられ、器具及び備品の「看板及び広告器具」の区分には「看板、ネオンサイン及び気球」が3年、「マネキン人形及び模型」が2年と掲げられています。持続化補助金では、店舗の看板の作り替え、内装の簡易な装備、間仕切りの設置が補助対象経費として多く出てきます。これらは、5年ではなく3年で処分制限が外れるということです。
気を付けていただきたいのは、可動間仕切りの区分です。省令は「簡易なもの」を3年、「その他のもの」を15年としています。参考1が3年と書いているのは「簡易なもの」を前提にしたものと読めますが、固定式に近い間仕切りを施工したのであれば、「その他のもの」として省令の年数が15年となり、取扱い5条1項の本文に戻って5年になります。どの区分に当たるかは、工事の内容と見積書の記載で確かめることになります。
単価50万円(税抜)未満の看板や備品は、そもそも処分制限財産ではありません(交付規程25条1項)。3年という年数を数える前に、その財産が単価50万円以上かどうかを先に見てください。
4 中古資産は経過年数から計算し、2年未満は2年。財産ごとに期間を分けられる――5条2項・3項
取扱い5条には、2項と3項があります。
引用(同取扱い5条2項・3項。同取扱い2頁)「2 中古資産については、同省令第3条第1項第2号の規定を準用し、次に掲げる年数とする。ただし、その年数が2年に満たないときは、これを2年とする。
(1)前項で定める期間の全部を経過した資産
当該資産に係る前項で定める年数の20%に相当する年数(1年未満の端数切捨て)
(2)前項で定める期間の一部を経過した資産
当該資産に係る前項で定める年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の20%に相当する年数を加算した年数(1年未満の端数切捨て)
3 処分制限財産の中で耐用年数が異なる財産を切り分けることが可能な場合は、それぞれの財産ごとに財産処分制限期間を設定できるものとする。」
中古資産の計算
2項が準用している省令3条1項2号は、中古資産の耐用年数を見積もることが困難なときの簡便法で、法定耐用年数の全部を経過した資産は「当該資産の法定耐用年数の百分の二十に相当する年数」、一部を経過した資産は「当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の百分の二十に相当する年数を加算した年数」とし、「その年数が二年に満たないときは、これを二年とする」ものです。取扱いは、この計算の「法定耐用年数」の位置に、5条1項で定めた期間(原則5年)を置き換えて使っています。
取扱い3頁の「参考2」が計算例を置いています。新品なら5年の資産を、使用開始から1年経過した中古で取得した場合は、5-1=4に、1×20%=0.2を足して4.2、端数を切り捨てて4年。3年経過なら、5-3=2に0.6を足して2.6、切り捨てて2年。5年以上経過していれば5×20%=1年ですが、2年未満は2年とされるので2年です。新品なら3年の資産(前記3の看板など)は、1年経過で2年、2年経過以上はすべて2年です。処分制限期間が2年を下回ることはない、というのがこの定めの下限です。
もっとも、この定めが働く場面は限られます。商工会議所地区の第20回公募要領は、中古品の購入を補助対象経費として認める条件の一つに「購入単価が50 万円(税抜き)未満のものであること」を掲げています(同公募要領12頁)。処分制限財産は単価50万円以上の財産ですから、この条件の下では、中古で取得した処分制限財産は原則として生じません。ただし、引用した公募要領は現在の第20回のものであり、2024年の取扱いが対応する回の公募要領で中古品の条件が同じであったかは、当職は確認できていません。5条2項が意味を持つのは、公募回によって中古品の条件が違う場合や、既存の設備に補助対象経費で手を加えて効用を増加させた場合などに限られると考えております。
財産ごとに期間を分ける
3項は、耐用年数の異なる財産を切り分けられるときは、財産ごとに処分制限期間を設定できるとしています。店舗改装の工事を一式で発注し、その中に看板(3年)、店用簡易装備(3年)、給排水設備(省令では15年。取扱いでは5年)が混じっている場合、一式として5年で縛るのではなく、看板と簡易装備は3年、給排水設備は5年と分けてよい、ということです。実績報告の際に提出する取得財産等管理明細表(交付規程24条3項・様式第11-2)に、財産ごとに区分と耐用年数を分けて記載しておくと、この切り分けが後から争いになりません。工事一式を財産単位に戻す考え方は、前掲のQ&A「50万円未満の設備や、工事一式で計上したものは」で述べています。
5 事業再構築補助金の「省令を準用」とは建てつけが違います
中小機構が交付する事業再構築補助金の交付規程は、同じ論点を次のように定めています。
引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)24条2項。同規程7頁)「処分制限財産の処分を制限する期間は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用する。なお、中小機構が別に定める場合には、その期間とする。」
並べると、違いがはっきりします。事業再構築補助金は、省令そのものを準用します。食料品製造業用設備なら10年、鉄筋コンクリート造の店舗用建物なら39年と、財産ごとの法定耐用年数がそのまま処分制限期間になります。「中小機構が別に定める場合」という留保はありますが、期間についてこの留保が実際に用いられた例は、当職は確認できていません。持続化補助金は、交付規程が「補助金交付の目的および」省令を「勘案して」「別に定める期間」とし、別に定めた取扱いが原則5年で頭打ちにしています。同じ機械を入れても、事業再構築補助金なら10年、持続化補助金なら5年です。
この違いは、施行令14条1項2号の読み方に関わります。同号は「交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して」定めるとしています。持続化補助金の取扱いは、前記2で述べたとおり施行令14条1項2号の期間そのものではありませんが、事務局が交付条件として、交付の目的を勘案して耐用年数より短い期間を置いた例であり、交付の目的の勘案が実際にどう働き得るのかを示しています。事業再構築補助金の「省令を準用する」という書き方が、交付の目的の勘案を落としていることは、前掲のQ&A「処分制限期間は『省令のとおり』と書かれていますが」で述べました。同じ中小機構が関与する持続化補助金(交付規程1条は中小機構の定める交付要綱によるとしています)で5年という期間が置かれていることは、処分制限期間が耐用年数のとおりでなければならないわけではないことを示す一つの材料になると考える余地があります。
もっとも、逆の方向にも注意が要ります。持続化補助金の5年を、事業再構築補助金やものづくり補助金に持ち込むことはできません。それぞれの交付規程が別の定め方をしているからです。「持続化は5年だったから、こちらも5年だろう」という推測は、通りません。
次のような場合は、処分の手続に入られる前にご相談ください
- 持続化補助金で入れた設備や看板を、店舗の改装や移転、閉店で処分したい
- 処分制限期間が5年なのか、省令の耐用年数なのか、交付規程の版によって分からない
- 財産処分の承認申請をしたところ、残存簿価相当額の納付を求められている
関連ページ: 処分制限期間は何年か――「10年ルール」はあるのか(コラム)/処分制限期間は「省令のとおり」なのか(Q&A)
6 手元の補助金がどちらか、どの版かを確かめる
ここまでの年数は、どの定めによっているかで変わります。確かめる順序は、次のとおりです。
- (1)商工会地区か、商工会議所地区か。持続化補助金は、事業所の所在地によって、商工会地区(全国商工会連合会)と商工会議所地区(商工会議所地区事務局)とに分かれ、交付規程も事務局も別です。交付決定通知書と交付規程の表紙で、どちらの名で交付されたものかを見てください。前記2の取扱いは、商工会議所地区事務局が定めたものです。全国商工会連合会の交付規程25条2項も「全国連会長が別に定める期間」としていますが、その別の定めの現物は、当職は確認できていません。商工会地区の方は、事務局に、25条2項の「別に定める期間」を定めた文書の提示を求めてください。
- (2)交付規程の版は何年のものか。交付規程は公募回ごとに版が改まり、条番号も文言も動きます。前記2の取扱い1条は、「小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程(2024 年 3 月 28 日制定……)第25条第1項」を引いていますので、この取扱いが対応しているのは2024年3月28日制定の交付規程です。これより前の版、後の版については、同じ取扱いが適用されるのかどうかを、交付決定通知書に書かれた交付規程の制定日で確かめてください。
- (3)2025年以降の版は、文言が変わっています。商工会議所地区事務局の現在の交付規程(2025年4月25日制定・2026年3月6日改定)は、財産処分の定義、中古資産の計算、財産ごとの切り分け、納付額の定めを交付規程の本体に取り込んでいます(25条2項・4項・5項・8項〜11項。同規程PDF6〜7頁)。そのうえで、期間については次のように定めています。
引用(小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>交付規程(2025年4月25日制定・2026年3月6日改定。商工会議所地区事務局)25条3項。同規程PDF7頁)「3 適正化法第22条に定める財産の処分を制限する期間は、補助金交付の目的および減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)の定めに従い管理しなければならない。」
5年という数字が、文言から消えています。2024年の取扱いは「別に定める期間」を5年と定めていましたが、2025年の交付規程は「別に定める」という受け皿そのものを置かず、「補助金交付の目的および……省令……の定めに従い管理しなければならない」としています。2026年10月31日の時点で、商工会議所地区事務局のサイトに、この版について財産処分の取扱いを別に定めた文書は掲げられていません。そうすると、2025年以降の版では、省令の年数がそのまま処分制限期間になるという読み方が出てきます。
私見としては、この文言でも、「補助金交付の目的および」が残っていることに意味があると考えております。施行令14条1項2号が交付の目的の勘案を求めていること、同じ事務局が前年まで交付の目的を勘案して5年と定めていたこと、事業再構築補助金のような「省令を準用する」という書き方を採らなかったことからすると、省令の年数を機械的に当てはめる定めではなく、交付の目的を勘案した期間を事務局が示すべき定めだと読む余地があります。もっとも、「管理しなければならない」という書き方は、期間を定める規定というより、補助事業者の管理義務を定める規定の体裁であり、何年なのかを規程から読み取ることはできません。この版によっている方は、承認申請の前に、事務局に対し、当該財産の処分制限期間を何年と扱うのか、その根拠となる定めは何かを、書面で確かめておくことをお勧めします。
- (4)財産ごとに、区分・単価・取得日を台帳で押さえる。取得財産等管理台帳(様式第11-1)と、実績報告に添付した取得財産等管理明細表(様式第11-2)で、財産ごとに、単価50万円(税抜)以上か、省令のどの区分か(看板・簡易装備・間仕切りなら3年の区分か)、取得日(検収日)はいつか、を一つずつ確かめてください。取扱い5条3項により、財産ごとに期間を分けられますので、一式で「まだ5年たっていない」と言われても、財産ごとに結論が違うことがあります。
- (5)期間内に処分するなら、承認を先に。期間内に処分制限財産を処分しようとするときは、あらかじめ取得財産の処分承認申請書(様式第12)を提出して承認を受けなければなりません。承認を要することは、適正化法22条の仕組みを交付規程が交付決定の条件として取り込んだもので、その申請の様式と手続は、2023年の全国商工会連合会の交付規程では25条3項、2025年以降の商工会議所地区の交付規程では25条6項に置かれています。承認には原則として納付の条件が付きますが、取扱い3条3項は「事情を勘案して、納付の条件を付さないことができる」としています(2025年以降の版では、同じ定めが交付規程25条8項・10項に移っています)。期間の読み方に疑いがあるときは、処分の前に、その疑いを申請の側から出してください。承認を受けずに処分してしまうと、事務局は公募要領の記載を根拠に交付決定の取消しと返還を先に持ち出してきますので、期間の読み方を争うことが難しくなります。承認に付される納付の条件と、条件を付さない場合については、Q&A「財産処分の承認を申請したら、残存簿価相当額を納めることになるのか」で述べています。
最後に一つ申し上げます。持続化補助金は補助額が小さく、処分制限期間の問題も小さく見えがちです。しかし、閉店や移転の場面で、看板や内装の撤去について承認が要るのか、納付が要るのか、そもそも期間が過ぎていないのかは、交付規程の版と取扱いの有無で答えが変わります。交付決定通知書、交付規程、取得財産等管理台帳をお手元に、処分の前に一度ご確認ください。
持続化補助金で入れた設備や看板の処分、閉店・移転に伴う撤去について、承認や納付が要るのか、処分制限期間が過ぎていないのかをお考えの事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、交付決定通知書と交付規程をお手元に、ご相談ください。
根拠(条文・公式資料・裁判例)
- 補助金適正化法22条(補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない)
- 補助金適正化法施行令14条1項2号(補助金等の交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定める期間を経過した場合は、財産の処分の制限を適用しない)、同条2項(9条3項から5項までを14条1項2号の期間を定める場合に準用。補助実施法人の代表者は所管大臣の承認を受け、所管大臣は財務大臣に協議する)、1条2項・別表(補助実施法人=独立行政法人中小企業基盤整備機構、代表者=同機構の理事長、所管大臣=経済産業大臣)
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程(2023年3月3日制定・全国商工会連合会)1条(中小機構の定める小規模事業者持続的発展支援事業費補助金(小規模事業者持続化補助金事業)交付要綱によるほか、この規程の定めるところによる)、3条(交付の目的=販路開拓等を行う事業への補助により小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図る)=同規程PDF1頁、24条1項(補助事業の完了後においても善良な管理者の注意をもって管理)、24条2項・3項(様式第11-1による取得財産等管理台帳、様式第11-2による取得財産等管理明細表)、24条4項(「全国連会長は、補助事業者が取得財産等を処分することにより収入があり、またはあると見込まれるときは、その収入の全部もしくは一部を全国連に納付させることがある。」)、25条1項(処分制限財産=取得価格または効用の増加価格が単価50万円(消費税および地方消費税相当額を含まない。)以上の機械、器具、備品およびその他の財産)、25条2項(「適正化法第22条に定める財産の処分を制限する期間は、補助金交付の目的および減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を勘案して、全国連会長が別に定める期間とする。」)、25条3項(期間内に処分しようとするときは、あらかじめ様式第12による「取得財産の処分承認申請書」を提出して承認を受けなければならない)、25条4項(「前条第4項の規定は、前項の承認をする場合において準用する。」)=同規程PDF6頁
- 商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局(運営:株式会社日本経営データ・センター。いずれも同取扱い1頁の表紙記載)「「小規模事業者持続化補助金」<一般型>において補助事業者が補助対象経費により取得し、または効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(2024年3月28日制定)1条(小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程(2024 年 3 月 28 日制定)第25条第1項を参照する)=同取扱い1頁、3条3項(「前2項の規定に関わらず、事情を勘案して、納付の条件を付さないことができる。」)、5条1項(「交付規程第25条第2項における「商工会議所地区事務局が別に定める期間」は、5年とする。ただし、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)において4年以下となっているものについては、同省令の定めに準じた期間とする。」)、5条2項(中古資産は同省令3条1項2号を準用し、2年未満は2年)、5条3項(耐用年数が異なる財産を切り分けることが可能な場合は、財産ごとに財産処分制限期間を設定できる)=同取扱い2頁、参考1(建物付属設備-店用簡易装備3年、同-可動間仕切り3年、看板、ネオンサイン3年)、参考2(中古資産の計算例)=同取扱い3頁
- 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>交付規程(2025年4月25日制定・2026年3月6日改定。商工会議所地区事務局)24条4項(補助事業者が取得財産等を処分する場合、残存簿価相当額又は鑑定評価額若しくは処分により得られた収入額又は見込まれる収入額の全部もしくは一部を納付させることがある)、25条1項・2項=同規程PDF6頁、25条3項(「適正化法第22条に定める財産の処分を制限する期間は、補助金交付の目的および減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)の定めに従い管理しなければならない。」)、4項(中古資産)、5項(財産ごとの切り分け)、6項(様式第12による承認申請)、7項(前条4項を承認の場合に準用)、8項(承認には原則として納付の条件を付す)、10項(事情を勘案して納付の条件を付さないことができる)、11項(納付額)=同規程PDF7頁、附則(2025年4月25日施行、一部改正は2026年3月6日施行)=同規程PDF9頁。2025年4月25日制定版の25条3項〜5項も同文
- 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版・2026年7月21日。商工会議所地区)12頁(PDF13頁)(「○単価50 万円(税抜き)以上の機械装置等の購入は「処分制限財産」に該当し、補助事業が終了し、補助金の支払を受けた後であっても、一定の期間において処分(補助事業目的外での使用、譲渡、担保提供、廃棄等)が制限されます。」、中古品の購入を補助対象経費として認める条件(ア)「購入単価が50 万円(税抜き)未満のものであること」)
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)3条1項2号(中古資産の耐用年数の簡便法。法定耐用年数の全部を経過した資産は法定耐用年数の百分の二十に相当する年数、一部を経過した資産は法定耐用年数から経過年数を控除した年数に経過年数の百分の二十に相当する年数を加算した年数。二年に満たないときは二年)、別表第一(建物附属設備:店用簡易装備3年、可動間仕切り(簡易なもの)3年・(その他のもの)15年、給排水又は衛生設備及びガス設備15年。器具及び備品:看板、ネオンサイン及び気球3年、マネキン人形及び模型2年、電子計算機(パーソナルコンピュータ。サーバー用のものを除く)4年)、別表第二(飲食店業用設備8年、食料品製造業用設備10年)
- 中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)1条(適正化法・施行令・中小機構法その他の法令の定めによるほか、この規程の定めるところによる。交付要綱は引いていない)=同規程1頁、24条2項(「処分制限財産の処分を制限する期間は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用する。なお、中小機構が別に定める場合には、その期間とする。」)=同規程7頁、24条6項(処分については「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(平成16・6・10会課第5号)の各規定を踏まえ取り扱う」)=同規程8頁
※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。
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