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弁護士 岸上大起

「承認を得ずに処分を行うと、交付規程違反により補助金交付取消・返還命令(加算金付き)の対象となります」と書かれていますが、そのとおりなのでしょうか

このページの結論

補助金で導入した設備について、事務局の承認を受けないまま処分したと指摘されています。公募要領には「承認を得ずに処分を行うと、交付規程違反により補助金交付取消・返還命令(加算金付き)の対象となります」と書かれていました。交付決定は当然に取り消され、加算金も付くのでしょうか。

補助金適正化法17条1項が定める取消事由は、①補助金等の他の用途への使用、②交付の決定の内容又はこれに附した条件への違反、③法令又はこれに基く各省各庁の長の処分への違反の三つです。「交付規程違反」という取消事由は置かれていません。交付規程は交付主体が自ら定めた内部的な規範ですから、交付規程に違反したという指摘は、②の補助条件への違反に当たるかどうかという形で検討されることになります。もっとも、承認を受けずにした譲渡・交換・貸付け・担保提供・目的外使用は、同法22条という法律に違反しますので、③に当たります。

取消しは「取り消すことができる」であり、「全部又は一部」です。返還を命じられるのも「当該取消に係る部分」に限られます(18条1項)。加算金は、17条1項(又はこれに準ずる他の法律)の規定による処分に関して返還を命ぜられたときに生じるもので(19条1項)、やむを得ない事情があると認めるときの免除も定められています(同条3項)。承認に際して付された条件に基づく納付は、返還の命令ではありませんので、加算金の対象ではありません。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明――持続化補助金の公募要領に、同じ一文が四回出てきます

小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の公募要領(第20回公募。第8版:2026年7月21日)には、処分制限財産について次の記述が置かれています。同じ文が、12頁(PDF13頁)、14頁(PDF15頁)、17頁(PDF18頁)、25頁(PDF26頁)の四箇所に出てきます(以下、公式資料の閲覧日はいずれも2026年10月23日です)。

引用(公募要領25頁「(8)所定の取得財産等の目的外使用、譲渡、担保提供、廃棄等の処分には制限があります。」)「処分制限期間内に当該財産を処分する場合には、必ず補助金事務局へ承認を申請し、承認を受けた後でなければ処分できません。補助金事務局は、財産処分を承認した補助事業者に対し、当該承認に際し、残存簿価等から算出される金額の返還のため、交付した補助金の全部または一部に相当する金額を納付させることがあります。承認を得ずに処分を行うと、交付規程違反により補助金交付取消・返還命令(加算金付き)の対象となります。」

問題にしたいのは、最後の一文です。「承認を得ずに処分を行うと、交付規程違反により補助金交付取消・返還命令(加算金付き)の対象となります。」。短い一文ですが、四つのことを同時に言っています。①取消しの根拠は交付規程違反である、②承認を得ない処分があれば取消しの対象になる、③取消しには返還命令が伴う、④返還命令には加算金が付く、の四つです。

そして、同じ公募要領の中でも、書き方が揃っていません。41頁(PDF42頁)の「(5)」は、次のとおりです。

引用(公募要領41頁(5))「補助事業者が「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30 年法律第179 号)」等に違反する行為等(例:他の用途への無断流用、虚偽報告など)をした場合には、補助金の交付決定の取消・返還命令(加算金の徴収を含む)、不正の内容の公表等を行うことがあります。」

こちらは「行うことがあります」です。続く文も「処分を受ける可能性があります」としています。同じ公募要領が、一方では「行うことがあります」と書き、他方では「対象となります」と書き切っているわけです。以下、この一文を条文に突き合わせていきます。

2 「交付規程違反により」取り消せるのか――取消事由は三つです

まず、法律の文言を確かめます。

引用(補助金適正化法17条1項)「各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」

取消事由は三つです。①補助金等の他の用途への使用、②交付の決定の内容又はこれに附した条件(補助条件)への違反、③法令又はこれに基く各省各庁の長の処分への違反。この三つのどれにも当たらなければ、取消しはできません。「交付規程違反」という第四の取消事由は、17条1項に書かれていません。

では、交付規程違反は③の「法令」違反に当たるのか。文献は、この「法令」の意味をこう述べています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』245頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「ここに「法令」とは、本法及び本法施行令を含む各種補助法令を、「これに基く各省各庁の長の処分」とは、当該補助法令に基づく交付行政庁の個別行政処分を意味するが、いずれも第一一条第一項において遵守すべきものとされている内容と同一である。」

交付規程は、交付主体が自ら定めた内部的な規範です。法律でも政令でも省令でもありません。ですから、交付規程に違反したという指摘は、③に直接乗るものではなく、②の補助条件への違反に当たるかどうかという形で検討されることになります。交付決定通知書に「交付規程で定めるところに従う」との記載があることのみによって交付規程の全部が補助条件になったと解することは難しいと考えておりますが、この点はQ&A「交付規程に違反したと言われたら――交付規程を守ることは『補助条件』なのか」で述べていますので、ここでは繰り返しません。

もっとも、承認を受けない処分については、別の道があります。

引用(補助金適正化法22条)「補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」

22条は法律ですから、これに違反すれば、交付規程を持ち出すまでもなく③の「法令」違反に当たります。ただし、22条が承認にかからせているのは、交付の目的に反する「使用」「譲渡」「交換」「貸付け」「担保提供」の五つです。公募要領が「処分」の例として並べている「廃棄」は、条文にありません。「廃棄」や「転用」について公式の説明がどう組み立てられているかは、Q&A「『財産処分を行った場合、補助金を納付する必要があります』は、そのとおりなのか」と、コラム「廃棄処分と残存簿価相当額の納付」で扱っています。

整理しますと、こうなります。承認を受けずにした譲渡・交換・貸付け・担保提供・目的外使用は、22条違反として17条1項③に乗ります。これに対し、交付規程が定めた手続(承認申請書の様式や提出先)に従わなかったというだけの指摘は、②の補助条件への違反に当たるかどうかを一つずつ見なければ、取消事由になりません。公募要領の「交付規程違反により」という書き方は、この区別を飛ばしています。私見としては、この一文は、17条1項が取消事由を三つに限っていることを踏まえていないと言わざるを得ません。

3 「処分」に当たらない場合が、交付規程自身に書かれています

公募要領は「承認を得ずに処分を行うと」と書いています。しかし、何が「処分」に当たるのかは、公募要領が援用している小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>交付規程(2025年4月25日制定、2026年3月6日改定)自身が、除外を置いています。

引用(同交付規程25条2項。同規程PDF6〜7頁)「次に掲げる場合その他これらに準ずる場合には、補助金の交付目的に反しない使用として「処分」には該当しないものとする。/一 業務時間外や休日等を利用して補助金交付の目的たる事業の遂行に支障をきたさない範囲で一時的に転用する場合/二 処分制限財産(施設に限る)の一部について付帯設備の設置を行う場合、その他当該転用が極めて軽微であると認められる場合/三 補助金交付の目的たる事業を遂行するために必要な、処分制限財産の機能の維持、回復又は強化を図るための改造を行う場合」(※原文は改行で区切られています。引用に当たり「/」で区切りました。)

この三つに当たる場合は、そもそも「処分」ではありません。「処分」でない以上、承認を受ける必要もなく、「承認を得ずに処分を行う」という場面にもなりません。しかも、「その他これらに準ずる場合」という受け皿まで置かれています。公募要領の一文を読んだ方が、設備の一時的な転用や軽微な付帯設備の設置を「無断の処分」だと考えて身構えるのであれば、それは交付規程自身の定めと食い違います。一時的な転用の扱いは、Q&A「補助金で入れた設備・施設を別の用途にも使いたい――手続が要らないのはどこまでか」で述べています。

加えて、処分制限の対象になる財産にも線があります。同交付規程25条1項は、処分を制限する財産を「取得価格または効用の増加価格が単価50万円(消費税および地方消費税相当額を含まない。)以上の機械、器具、備品およびその他の財産」としています。単価がこれに満たない物は、そもそも処分制限財産ではありません。この線の読み方は、Q&A「50万円未満の設備や、工事一式で計上したものは、処分制限の対象になるのか」で述べています。

4 「対象となります」なのか――取消しは「できる」、しかも全部又は一部です

17条1項は「取り消すことができる」と定めています。「取り消さなければならない」ではありません。そして、取り消せるのは「補助金等の交付の決定の全部又は一部」です。取り消すかどうか、全部を取り消すか一部にとどめるかは、交付する側の裁量に委ねられています。文献も、こう述べています。

引用(小滝・前掲245頁)「なお、取消権の行使は交付行政庁の裁量事項に属するものというべきであるが、個別的行政処分違反の中でも、補助事業者等が交付行政庁の一時停止命令(第一三条第二項)及び是正措置命令(第一六条第一項)に違反した場合には、もはやこれ以上補助関係を存続させておく必要性は認められないから、直ちに取消権を発動して当該補助関係を消滅させざるをえないものと解される。」

裁量事項であることは、交付規程自身の文言にも表れています。同交付規程23条1項は、各号の一に該当する場合には交付の決定の「全部もしくは一部を取り消し、または変更することができる」としています。「変更することができる」という選択肢まで並んでいます。

返還の範囲も、取消しの範囲に従います。18条1項は、交付決定を取り消した場合において「補助事業等の当該取消に係る部分に関し」すでに補助金等が交付されているときに、その返還を命じなければならないと定めています。一部の取消しにとどまれば、返還を命じられるのもその部分です。取消しの裁量とその限界については、Q&A「補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか」で述べています。

私見としては、「対象となります」という書き方は、17条1項が裁量を認めた仕組みを読者に伝えておらず、同じ公募要領41頁の「行うことがあります」という書き方とも揃っていないと考えております。

5 「(加算金付き)」――19条1項の要件と、19条3項の免除

最後の括弧書きです。加算金の条文は、次のとおりです。

引用(補助金適正化法19条1項)「補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。」

加算金が生じるのは、19条1項が挙げる場合に限られます。文献は、その範囲を具体的に述べています。

引用(小滝・前掲268頁)「ここで第一七条第一項の規定による処分とは、補助事業者等の義務違反に対する交付決定の取消し処分をいい、これに準ずる他の法律の規定による処分とは、他の補助法令上相手方の義務違反を理由として交付決定を取り消す処分を意味することはいうまでもない。したがって、それらの場合以外すなわち間接補助事業者等の義務違反に対する交付決定の取消し(第一七条第二項)、事情変更による交付決定の取消し(第一〇条)及び瑕疵ある交付決定の取消しによる場合は、加算金納付の義務を負わないこととなる。また、減額確定に伴い補助金等返還命令が出されたときも、加算金を納付すべきこととはならない。」

同書268頁は、この率が民法の法定利息に比べて高い理由を説明したうえで、「加算金は単に原状回復に伴う利息返還債務としての性格をもつだけでなく、制裁的賦課金としての意義を合わせもつものということができると思われる。」と述べています。制裁としての性格をもつ賦課金である以上、どの場合に生じるのかは、条文の定めたところで決まります。

交付規程も、同じ構造を置いています。同交付規程23条3項は、加算金の納付を併せて命ずる場合を、23条1項1号から3号まで又は5号から8号の規定による取消しをした場合に限っています。4号(交付の決定後生じた事情の変更等により、補助事業の全部または一部を継続する必要がなくなった場合)による取消しは、ここから外れています。「返還命令(加算金付き)」という括弧書きは、この書き分けを示していません。

さらに、法律は免除を置いています。

引用(補助金適正化法19条3項)「各省各庁の長は、前二項の場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、加算金又は延滞金の全部又は一部を免除することができる。」

「加算金付き」としか書かれていなければ、この申出を思いつくことはありません。加算金・延滞金の率の計算、免除の手続、承認に伴う納付との違いは、Q&A「補助金の返還を求められたら、加算金・延滞金は払うのか」で述べています。

次のような通知が届いている場合は、納付に応じられる前にご相談ください

  • 承認を受けずに設備を処分したとして、交付決定の取消しと返還を通知された
  • 返還の通知に「加算金」が計上されているが、どの取消しに伴うものか書かれていない
  • 設備の置き場所や使い方を変えたことを「無断の処分」と指摘されている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 交付規程に違反したと言われたら(Q&A)/加算金・延滞金は払うのか(Q&A)

6 「対象となります」と言われたときに、確かめていただきたいこと

公式の説明に従わなくてよい、という趣旨ではありません。承認を受けられる場面で受けずに処分すれば、22条違反という取消事由が現に生じます。順序を誤らないことが要です。そのうえで、取消しや返還を通知されたときには、次の三つを分けて確かめていただくのがよいと考えております。

  • (1)そもそも「処分」に当たるのかを、交付規程の条文で確かめる。前記3のとおり、交付規程自身が、一時的な転用、極めて軽微な付帯設備の設置、機能の維持・回復・強化のための改造を「処分」に該当しないものとしています(同交付規程25条2項)。単価の線(同条1項)も確かめてください。「処分」でなければ、承認の要否の問題も、取消しの問題も生じません。
  • (2)どの取消事由に当たると言われているのかを、書面で特定させる。補助金適正化法21条の2は、交付決定の取消しをするときに理由を示さなければならないと定めています。「交付規程違反」とだけ書かれた通知では、前記2の①②③のどれに当たるという主張なのかが分かりません。交付規程の条項番号が挙げられている場合は、その条項が補助事業者に義務を課す定めになっているか、交付決定の条件として取り込まれているかを一つずつ見ることになります。
  • (3)加算金は、返還命令の帰結として生じているのかを確かめる。加算金は、17条1項(又はこれに準ずる他の法律)の処分に関して返還を命じられたときに生じるものです(19条1項)。承認に伴う納付であれば加算金の対象ではありませんし、取消しの根拠が事情変更であれば、交付規程自身が加算金を併せて命ずる場合から外しています(同交付規程23条3項)。そのうえで、やむを得ない事情があると認められる場合の免除も定められています(19条3項)。計上されている金額の内訳と根拠条項を、書面で示してもらってください。

取消しそのものを争うのであれば、期限があります。処分の取消しの訴えは、原則として処分があったことを知った日から六か月以内に提起しなければなりません(行政事件訴訟法14条1項)。通知が届いた日を控えたうえで、取消しの理由と加算金の根拠を分けて検討されることをお勧めしております。取消しの通知が届く前の段階でできることは、コラム「取消し前にすべきこと」で述べています。

承認を受けずに処分したとして交付決定の取消しや返還を通知された事業者の方、返還の通知に加算金が計上されている方、設備の置き場所や使い方を変えたことを「無断の処分」と指摘されている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、納付に応じられる前にご相談ください。交付決定通知書、交付規程、公募要領の該当頁、届いた通知の写しがあれば、具体的な検討ができます。取消しを裁判で争うには、原則として処分を知った日から6か月の期限があります(行政事件訴訟法14条1項)。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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