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弁護士 岸上大起

財産処分の納付について「通知日より30日以内に一括して納付いただく必要があります」と公式のよくあるご質問にありますが、そのとおりなのでしょうか

このページの結論

補助金で導入した設備を処分制限期間内に処分することになり、事務局から納付の案内を受けました。よくあるご質問には、納付通知の「通知日より30日以内に一括して納付いただく必要があります」と書かれています。30日以内に、分割ではなく一度に払わなければならないのでしょうか。払えないと延滞金がかかるのでしょうか。

交付規程には、納付の期限も、分割を禁ずる定めも置かれていません。「30日」の出所は、交付規程に付された様式第12-5だけです。その様式の文言は「本書発信日より30日以内」であって、「通知日より」ではありません。また、「一括して」という言葉は、交付規程にも様式第12-5にも出てきません。そして、年利10.95パーセントの延滞金を定める交付規程18条3項は、21条3項(消費税等仕入控除税額の返還)・22条4項(取消しに伴う返還)・27条5項(賃上げ要件等に係る返還)に準用されていますが、財産処分に伴う納付を定める24条6項には準用されていません。

補助金適正化法の側も同じです。19条1項の加算金は「補助金等の返還を命ぜられたとき」、2項の延滞金は「補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかつたとき」に生じます。財産処分に伴う納付は、18条の返還命令ではなく、承認に付された条件に基づく納付です。21条1項の国税滞納処分の例による徴収も、「返還を命じた補助金等又はこれに係る加算金若しくは延滞金」を対象としています。もっとも、期限までに払わなくてよいということではありません。払わないまま置くこと自体が、別に取消しや返還命令の材料にされる余地があります。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明――よくあるご質問Q16

財産処分の手続が終わると、納付の案内が来ます。そのとき、いつまでに、どういう形で払うことになるのか。事業再構築補助金の「よくあるご質問」は、「財産処分について」という欄に全24問を置いており、その16問目が、まさにこの点を扱っています。まず、書かれていることをそのまま引きます(以下、公式資料の閲覧日はいずれも2026年10月23日です)。

引用(事業再構築補助金「よくあるご質問」「財産処分について」Q16(faq0166)。https://jigyou-saikouchiku.go.jp/faq.html 、2026年10月23日閲覧)問 「納付金はいつまでに納付する必要がありますか。」
答 「財産処分に関する手続きの完了後、事務局より「中小企業等事業再構築促進補助金に係る財産処分に伴う納付について」(様式第12-5)を通知します。通知日より30日以内に一括して納付いただく必要があります。」

短い回答ですが、二つのことを言っています。一つは、期限が「通知日より30日以内」であること。もう一つは、「一括して」払うものだということです。どちらも、「必要があります」と書かれています。そこで、この二つが、どの条文・どの様式に書かれているのかを確かめます。

2 「30日」の出所は様式第12-5です――ただし「本書発信日より」

まず、納付の根拠として挙げられている条文を見ます。以下で引く交付規程は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。規程令3第34号から規程令7第5号までの改正後のもの。全91頁)です。

引用(同交付規程24条6項。同規程8頁・PDF9頁)「中小機構は、補助事業者が処分制限財産を処分するときは、様式第12-5による納付通知書により、当該処分制限財産に係る補助金額を限度として、納付させることができるものとし、補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない。なお、当該処分については、補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(平成16・6・10会課第5号)の各規定を踏まえ取り扱うものとする。」

この条項が定めているのは、様式第12-5による納付通知書で納付させることができること、その限度が当該処分制限財産に係る補助金額であること、納付命令にしたがって納付しなければならないこと、の三つです。期限は、書かれていません。分割の可否も、延滞金も、書かれていません。

では、「30日」はどこから来るのか。交付規程に付された様式第12-5です。同規程76頁(PDF77頁)に置かれている様式の「記」の部分を、そのまま引きます。

引用(同交付規程様式第12-5「中小企業等事業再構築促進補助金に係る財産処分に伴う納付について」。同規程76頁・PDF77頁。https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/documents/koufu_kitei.pdf 、2026年10月23日閲覧)「1.納付の理由」
「2.納付金額          円」
「3.納付金振込先」(口座名義(フリガナ)・金融機関名・支店名・口座種類・口座番号。「※ 振込手数料は、補助事業者に負担していただきます。」)
「4.納付期限  本書発信日より30日以内」

「30日」は、ここにあります。ただし、様式の文言は「本書発信日より30日以内」です。よくあるご質問Q16が書いているのは、「通知日より30日以内」です。

「通知日」という言い方は、発信の日とも、手元に届いた日とも読めます。届いた日から数えてよいのだと読んだ事業者は、日数を多く見積もることになります。郵送であれば、発信から到達までに数日かかります。様式の文言は「本書発信日より」ですから、その数日は、事業者が使える日数から差し引かれます。私見としては、起算点を「通知日」と言い換えることは、様式の文言より不正確であり、かつ、その不正確さが事業者に不利な向きに働くと言わざるを得ません。実際に納付通知書を受け取られたときは、本文に記載された発信の日付を起算点として数えていただくのが安全です。

もう一つ、申し上げておきます。期限を定めているのは、条文ではなく様式です。交付規程は、期限を定めるときには条文で定めています。額の確定に伴う返還について、補助金適正化法18条に対応する交付規程18条3項は、次のとおりです。

引用(同交付規程18条3項。同規程6頁・PDF7頁)「前項の補助金の返還期限は、当該命令のなされた日から20日以内とし、期限内に納付がない場合は、未納に係る金額に対して、その未納に係る期間に応じて年利10.95パーセントの割合で計算した延滞金を徴するものとする。」

期限を「20日以内」と条文で定め、期限を過ぎた場合の延滞金も条文で定めています。24条6項は、そのどちらもしていません。同じ規程の中での、この書き分けは意識的なものと読むのが自然です。

3 「一括して」は、どこにも書かれていません

次に、「一括して」です。前記2で引いた交付規程24条6項に、「一括」の文言はありません。様式第12-5にもありません。様式が納付期限の欄に書いているのは「本書発信日より30日以内」だけで、分割を禁ずる文言は置かれていません。

交付規程24条6項が「各規定を踏まえ取り扱うものとする」として挙げている「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16・06・10会課第5号。経済産業省大臣官房会計課。最終改正令和元年5月7日)も、同じです。同取扱い3.(1)は、補助金適正化法22条の承認をする場合には4.で定める金額を国庫に納付する旨の条件を付さなければならないとし、4.は納付額の算定を定めていますが、納付の期限や分割の可否についての定めは置かれていません。

つまり、「一括して納付いただく必要があります」という説明は、条文にも、様式にも、取扱基準にも対応するものがありません。私見としては、分割を禁ずる定めが置かれていない以上、分割による納付の申出をすることが交付規程に反するとは言えないと考えております。もっとも、申出を認めるかどうかは交付主体の判断に属しますので、認められることが決まっているという趣旨ではありません。申し上げているのは、「一括でなければならない」という前提から出発する必要はない、ということです。

4 延滞金の準用の地図――24条6項には準用がありません

ここが、実務では効くところです。前記2で引いた交付規程18条3項は、年利10.95パーセントの延滞金を定めています。問題は、この項が、どの返還・納付に準用されているかです。交付規程を順に追うと、次のようになっています。

  • 準用がある場合(三つ)。21条3項「第18条第3項の規定は、前項の返還の規定について準用する。」(消費税等仕入控除税額の確定に伴う補助金の返還。同規程6頁・PDF7頁)。22条4項「第2項に基づく補助金の返還については、第18条第3項の規定を準用する。」(交付の決定の取消しに伴う返還。同規程7頁・PDF8頁)。27条5項「第2項及び第3項に基づく補助金の返還については、第18条第3項の規定を準用する。」(賃上げ要件等に係る返還。同規程9頁・PDF10頁)。
  • 準用がない場合(二つ)。24条6項(財産処分に伴う納付。同規程8頁・PDF9頁)。27条1項(収益納付。同規程8〜9頁・PDF9〜10頁)。いずれも「補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない」としていますが、18条3項の準用は置かれていません。

三か所には準用を置き、二か所には置いていません。そして、準用が置かれていない二つは、いずれも「返還」ではなく「納付」と書かれている条項です。18条3項を準用している三つは、いずれも「返還」の条項です。言葉の使い分けと準用の有無が、きれいに対応しています。

私見としては、この書き分けがある以上、交付規程24条6項による納付について年利10.95パーセントの延滞金を徴する根拠は、交付規程の中には見当たらないと考えております。

5 法律の側――加算金・延滞金・強制徴収の対象

法律の側も、同じ向きになっています。本補助金について補助金適正化法が及ぶのは、中小機構法16条による準用です。同条は、同法15条1項6号の規定により機構が交付する助成金について適正化法の規定を準用し、「各省各庁の長」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構の理事長」と、適正化法7条2項、19条1項・2項及び24条中の「国」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構」と読み替えています。そのうえで、適正化法19条は、次のとおりです。

引用(補助金適正化法19条1項・2項)「1 補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。」
「2 補助事業者等は、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかつたときは、政令で定めるところにより、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、その未納付額につき年十・九五パーセントの割合で計算した延滞金を国に納付しなければならない。」

加算金は「補助金等の返還を命ぜられたとき」、延滞金は「補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかつたとき」に生じます。いずれも、「返還を命ぜられ」たことが前提です。これに対し、財産処分に伴う納付は、18条の返還命令ではありません。22条の承認に付された条件(会課第5号3.(1)が付すこととしている国庫納付の条件)に基づく納付です。この建てつけは、Q&A「『財産処分を行った場合、補助金を納付する必要があります』と書かれているが」で詳しく述べています。

徴収の方法についても、条文は対象を限っています。

引用(補助金適正化法21条1項)「各省各庁の長が返還を命じた補助金等又はこれに係る加算金若しくは延滞金は、国税滞納処分の例により、徴収することができる。」

21条1項の対象は、「返還を命じた補助金等又はこれに係る加算金若しくは延滞金」です。承認の条件に基づく納付金は、文言の上では、ここに入っていません。同じ構造について、文献は、7条2項の収益納付を例に、次のように述べています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』164頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「収益納付が「納付」と観念されているのは、後述する第一八条の「返還」とはその性格を異にするからである。交付決定の取消しに伴い返還を命じられた補助金等については、強制徴収の対象とされているが(第二一条)、収益納付金は強制徴収の対象とされていない。」

この箇所が直接論じているのは、7条2項の収益納付です。財産処分に伴う納付を正面から論じたものではありません。もっとも、ここで示されている理由――「納付」は18条の「返還」とその性格を異にするから、21条の強制徴収の対象にならない――は、22条の承認に付された条件に基づく納付についても、同じく当たると考える余地があります。交付規程が、「返還」の条項には18条3項を準用し、「納付」の条項には準用していないこと(前記4)とも、揃っています。

6 公式の説明は、一方当事者の見解です

中小機構・中小企業庁・各事務局の説明は、公正な第三者による解説ではなく、補助金をめぐる紛争の一方当事者の見解です。通説が説いていない立場を強く主張しているものもあります。公式の説明だからと鵜呑みにするのは非常に危険です。

本件について申し上げれば、次のとおりです。交付規程24条6項には、納付の期限も、分割を禁ずる定めも、延滞金の定めも置かれていません。「30日」の出所は様式第12-5だけであり、その文言は「本書発信日より30日以内」です。よくあるご質問Q16の「通知日より」は、これと違います。「一括して」は、条文にも様式にも取扱基準にもありません。延滞金を定める18条3項は、「返還」の三つの条項には準用されていますが、「納付」の24条6項には準用されていません。法律の側も、加算金・延滞金・強制徴収のいずれについても、「返還を命ぜられた」ことを前提にしています。

短い一文の中に、根拠のある部分と、根拠の見当たらない部分が混ざっています。読む人には、その区別がつきません。私見としては、「30日以内に一括して納付いただく必要があります」という書き方は、交付規程の準用の書き分けと適正化法19条・21条の文言の理解が浅いと言わざるを得ません。

次のような場合は、お振り込みの前にご相談ください

  • 財産処分に伴う納付通知書(様式第12-5)が届いたが、金額の算定根拠が示されていない
  • 手元の資金では期限内に払いきれず、分割や期限の延長を申し出たい
  • 払わなければ延滞金がかかると告げられている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 「財産処分を行った場合、補助金を納付する必要があります」と書かれているが(Q&A)/加算金・延滞金は払うのか(Q&A)

7 納付通知書(様式第12-5)が届いたら

納付通知書が届いてから期限までは、様式の文言どおりに数えれば、発信の日から30日です。郵送に要した日数を引けば、手元にある時間はそれより短くなります。その短い間に、次の四つを整理しておいていただくのがよいと考えております。

  • (1)通知書の文言を、そのまま写し取る。発信の日付、到達した日、納付期限の書き方(「本書発信日より30日以内」となっているか)、納付金額、根拠として挙げられている条項、金額の算定根拠が書かれているかどうか。封筒の消印も残してください。後で起算点を争うことになったとき、手元にこれがあるかどうかで、話の進み方が変わります。
  • (2)期限内に払えないときは、放置せず、書面で申し出る。交付規程24条6項にも様式第12-5にも、分割を禁ずる定めはありません。分割による納付、又は期限の延長を、理由と資金繰りの見通しを添えて書面で申し出てください。電話でのやり取りは残りません。申出をした事実と、それに対する回答を、書面かメールの形で残してください。
  • (3)延滞金・加算金を告げられたら、根拠規定を文書で尋ねる。交付規程18条3項は、21条3項・22条4項・27条5項には準用されていますが、24条6項には準用されていません。適正化法19条1項・2項は、いずれも「補助金等の返還を命ぜられ」たことを前提にしています。どの条項に基づいて延滞金が生じるのかを、条項を特定して回答していただくよう、書面で求めてください。
  • (4)払う前に、金額そのものを確かめる。期限に目を奪われて、金額の検討をしないまま振り込んでしまうことがあります。残存簿価によったのか、鑑定評価額によったのか、処分価格によったのかで、額は変わります。この点は、Q&A「3者から見積りを取ると、いちばん高い金額で納付額が決まるのでしょうか」と、コラム「補助事業を続けられないとき――手続の順番、返還額の計算、返還が生じない選択肢」で述べています。一度振り込んでしまうと、その後は、こちらから取り戻す側に回ることになります。順序が逆になると、同じ主張をしても通しにくくなります。

不服の申立てをどこに、いつまでにするのかという問題は、これとは別に走ります。納付通知書が行政処分に当たるのかどうかという論点を含みますので、Q&A「不服があるとき、どこに言えばよいのか」をご覧ください。期限の計算と、不服申立ての期間の計算は、別のものです。納付の期限に気を取られて、争う期間を過ごしてしまわれないようにしてください。

なお、事業化状況報告のシステムに表示される「本年度納付額」は、ここで述べた財産処分に伴う納付(交付規程24条6項)ではなく、収益納付(同27条1項)です。こちらも18条3項の準用がない条項ですが、免除の定めの置き方が違います。その点は、Q&A「事業化状況報告システムに出た『本年度納付額』は納付命令か」で述べています。

財産処分に伴う納付通知書(様式第12-5)が届いた方、納付金額の計算根拠を示されないまま期限だけを告げられている方、手元の資金では期限内に払いきれない方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、振り込まれる前にご相談ください。納付通知書、交付決定通知書、交付規程、財産処分の承認通知書(様式第12-2)、事務局とのやり取りの記録があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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