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弁護士 岸上大起

補助事業がうまくいって利益が出た――補助金を返さなければならないのか(収益納付)

このページの結論

補助金を受けた事業がうまくいって、利益が出ました。補助金の全部又は一部を納めるよう求められています。利益が出たら補助金は返さなければならないのでしょうか。

収益が生じれば当然に納付義務が生じる、という仕組みではありません。補助金適正化法7条2項は、補助事業等の完了により相当の収益が生ずると認められる場合において、交付の目的に反しない場合に限り、交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべき旨の「条件を附することができる」と定めるものです。収益納付は、交付の決定に附された条件(任意的補助条件)があって初めて生じます。まず、交付決定通知書と、そこに引用された交付規程に収益納付の条項があるかを確かめることになります。

条項がある場合でも、同項の文言から四つの限界があります。①交付の目的に反しない場合に限られること、②納付させうるのは「補助事業等の完了により」生じた収益であり、補助金の交付と相当因果関係のない収益(寄附金・受益者負担金等の特定収入を含む)は対象にならないこと、③「相当の収益」に限られ、極めて些少な収益は対象にならないこと、④交付した補助金等の額が上限であることです。収益納付金は、取消しに伴う返還(18条)とは性格が異なり、21条の強制徴収の対象とはされていません。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 収益納付は、交付の決定に附された「条件」から生じるものです

補助事業がうまくいって利益が出たときに、受け取った補助金の全部又は一部を納めるよう求められることがあります。これを収益納付といいます。もとになっているのは、補助金適正化法7条2項です。

引用(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律7条2項)「各省各庁の長は、補助事業等の完了により当該補助事業者等に相当の収益が生ずると認められる場合においては、当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り、その交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべき旨の条件を附することができる。」

読み落としてはならないのは、条文が「条件を附することができる」と書いていることです。収益が生じれば当然に納付義務が生まれる、という定め方ではありません。収益納付は、交付の決定に附された条件(任意的補助条件)があって初めて生じるものです。文献も、本条2項を任意的補助条件の一つとして位置づけています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』161頁(株式会社全国会計職員協会、2016))。

そうすると、まず確かめることになるのは、お手元の交付決定通知書と、そこに引用されている交付規程です。補助金適正化法8条は、交付の決定をしたときは、すみやかにその決定の内容及びこれに条件を附した場合にはその条件を申請者に通知しなければならないと定めています。条件として収益納付が附されていないのに納付を求められているのであれば、その点から確かめることになります。交付規程の条項が補助条件に取り込まれているかどうかという見方そのものは、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。

2 どの補助金に収益納付の定めがあるのかは、交付規程ごとに違います

「補助金は儲かったら返すもの」という説明も、「いまの補助金に収益納付はない」という説明も、どちらも一般化しすぎです。収益納付の条項があるかどうかは、補助金ごと、交付規程ごとに違います。原本で確かめた範囲で、次のとおりです。

収益納付の条項が置かれているもの

中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)27条1項は、見出しを「(収益納付及び補助金返還)」として、次のとおり定めています。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程27条1項)「中小機構は、第25条第1項の規定に基づき提出された事業化状況・知的財産権報告書により、補助事業者が補助事業の事業化、知的財産権の譲渡又は実施権の設定及びその他補助事業の実施結果の他への供与による収益が生じたことを確認したときは、補助事業者に対し、補助金額を上限とする金額の納付を命ずることができるものとし、補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない。ただし、当該事業化状況・知的財産権報告書の決算が赤字の場合は、納付を免除するものとする。」

小規模事業者持続化補助金交付規程(2025年4月25日施行。2026年3月6日施行の一部改正までのもの)27条も、見出しを「(収益納付)」として、事業実施期間内に補助事業の実施結果の事業化等により収益が生じたと認めたときは、交付した補助金の全部又は一部に相当する金額を納付させることができる旨を定めています。

中小企業省力化投資補助金交付規程(令和6年6月24日規程令6第4号。規程令7第34号による改正までのもの)29条1項も収益納付の条項ですが、対象が二重に絞られています。カタログ注文型の補助事業者であること、しかも「令和8年3月16日以前に交付申請を行い、交付決定を受けた事業者に限る。」とされていることです。

収益納付の条項が置かれていないもの

中小企業新事業進出促進補助金交付規程(令和7年4月21日規程令7第1号。規程令8第2号による改正までのもの)には、収益納付の条項が置かれていません。27条の見出しは「(補助金返還)」であり、賃上げに関わる目標の未達についての返還を定めるものです。この点は、Q&A「事業計画の目標(付加価値額等)に届かなかった」でも触れています。

つまり、同じ中小企業向けの補助金でも、収益納付の条項があるもの、対象を絞って残しているもの、置いていないものが並んでいます。ご相談の場面で最初に確かめるのは、交付決定通知書に書かれた補助金の名称と公募回、そしてその交付規程の版です。

3 公式の「よくあるご質問」の書き方には、改めていただきたい点があります

事務局が公表している「よくあるご質問」には、収益納付についての問答が置かれています。中小企業省力化投資補助金(一般型)のものを、一字一句そのまま引用します。

引用(中小企業省力化投資補助金 一般型 よくあるご質問(第1回〜第4回公募・2026/03/26更新)No.17)「収益納付が必要となるのはどのようなケースですか。」/「収益納付は求めません。」

同じ問答は、第5回〜第8回公募のもの(2026/10/01更新)のNo.20にも、「共通」の分類で置かれています。出典は次のとおりです。

この回答は、一般型についてのものとしては、交付規程と食い違っていません。前記2のとおり、同補助金の交付規程29条1項の収益納付はカタログ注文型だけを対象としているからです。問題は、どちらの類型についての答えなのかが、回答の文面に書かれていないことです。「収益納付は求めません」という一文だけを読んだカタログ注文型の事業者は、自分にも収益納付がないと受け取ることになります。しかし同補助金の交付規程29条1項は、カタログ注文型について、令和8年3月16日以前に交付申請を行って交付決定を受けた事業者を対象とする収益納付の条項を現に置いています。

収益納付は、前記1のとおり、交付の決定に附された条件から生じるものです。条件の有無によって結論が逆になる事柄について、対象を書かずに「求めません」と言い切る書き方は、読む側に誤解を生じさせるものであり、類型と交付申請の時期を明記する形に改めていただきたいと考えております。

もう一つ、小規模事業者持続化補助金のQ&Aを引用します。

引用(小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 Q&A 15頁 Q8-9・A8-9)「賃金引上げ特例・加点を選択しています。2028 年3 月31 日より前に補助事業を終了する予定ですが、補助事業により直接生じる収益は、いつまでの期間を対象に算定すればよいですか。」/「賃金引上げ特例・加点を選択している場合、実際に補助事業を終了する時期にかかわらず、補助事業終了日は一律に補助事業実施期限日(2028 年3 月31 日)となります。そのため、補助事業により直接収益が生じる場合は、実際の補助事業終了日ではなく、2028 年3 月31 日までに生じた収益を対象として算定してください。」

出典はhttps://r6.jizokukahojokin.info/doc/r6_qa_ip20.pdfです。「実際に補助事業を終了する時期にかかわらず」という部分は、法律の文言と並べて読むべきところだと考えております。補助金適正化法7条2項が収益納付の条件を附しうるものとしているのは、「補助事業等の完了により」相当の収益が生ずると認められる場合です。文献も、収益納付条件において納付を命じうる収益は「補助事業等の完了により」生ずる収益であるから、補助金等の交付と収益発生との間に相当因果関係のないものは収益納付させえないものと解すべきであるとしています(小滝・前掲163〜164頁)。

実際に事業を終えた日ではなく暦の上の一律の期日までを算定の対象とする扱いは、補助金の交付と相当因果関係のない収益まで算定に取り込むことになりかねず、同項の文言と整合しないと考える余地があります。事業を早く終えた事業者が、その後に別の原因で得た収益まで算定の対象とされるのであれば、なおさらです。算定の対象期間をこのように一律に定める扱いは、法律の文言に沿って、交付と相当因果関係のある収益に限る形に改めていただきたいと考えております。

なお、公募要領やよくあるご質問の記載は、それだけで補助条件になるものではないと考えております。この点は、Q&A「事業計画の目標(付加価値額等)に届かなかった」で述べています。もっとも、小規模事業者持続化補助金公募要領(一般型 通常枠・第20回・ver.8)41頁は、その他の欄で「本制度は補助事業であり、収益納付による補助金の減額交付や補助事業終了後の処分制限財産の処分による補助金の全部または一部相当額の納付等が必要となる場合がある」と書き、同42頁も「ただし、収益納付や処分制限財産の処分により補助金の減額等がなされる場合があります。」と書いています。この補助金については、収益納付があることを前提に動くことになります。

次のような場合は、ご回答になる前にご相談ください

  • 補助事業で収益が出たことを理由に、補助金の納付を求める通知を受け取った
  • 納付を求められた金額の算定根拠が示されておらず、計算の当否を確かめられない
  • 公式のよくあるご質問には「収益納付は求めません」と書かれているのに、納付を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 事業計画の目標(付加価値額等)に届かなかった(Q&A)/補助事業を続けられないとき――手続の順番、返還額の計算、返還が生じない選択肢(コラム)

4 法律が置いている四つの限界

収益納付の条件が附されている場合でも、求めうる範囲には限りがあります。補助金適正化法7条2項の文言と文献から、四つに分けて整理できます。

第一に、「当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り」という制約があります。補助事業の完了により相当の収益が生ずると認められる場合であっても、当然にその収益を納付させうるわけではありません。文献は、事業の公共性・公益性の見地から公共部門が一定の経費を分担し事業の遂行を確保することとしている類のものについては、交付の目的からみてその収益のすべてを納付させることは適当とは考えられないとし、公共財・公共サーヴィスの供給事業に対する補助金等については、完了後に何らかの収益が生ずるとしても、当該収益を国庫に納付させることは必ずしも公益と私益の調整を図るために必要と考えられるわけではないとしています(小滝・前掲162〜163頁)。

第二に、納付させうるのは「補助事業等の完了により」生ずる収益です。前記3で引いたとおり、補助金の交付と収益の発生との間に相当因果関係のないものは対象になりません。文献は、補助事業等の経費に充当するため受け入れた寄附金(負担付贈与)、受益者負担金、原因者負担金等の特定収入について、金額のいかんにかかわらず収益納付条件の対象とはならないものと解されようとしています(小滝・前掲163〜164頁)。

第三に、「相当の収益」が生ずると認められる場合に限られます。文献は、極めて些少な収益についてまで納付させることとすべきではないとしています。他方で、「生ずると認められる」収益であればよいのですから、必ずしも損益計算書上に計上された利益ではなくとも差し支えないものと解されるとも述べています(小滝・前掲164頁)。納付を求める側にとって有利な部分と不利な部分が同じ頁に並んでいますので、どちらか一方だけを引いて説明されているときは、原本をご確認ください。

第四に、納付を命じうるのは「交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額」です。補助金等の金額を上回る収益が生じた場合であっても、交付した補助金等の金額を超える額を納付させることはできません(小滝・前掲164頁)。前記2で引いた事業再構築補助金(新市場進出)交付規程27条1項の「補助金額を上限とする金額」という書き方も、この上限を受けたものと読むのが自然です。もっとも、同項の文言は、上限を定めるにとどまり、いくらを納付させるのかの算定方法を定めていません。収益が生じたことが確認されれば上限額をそのまま命じうる、という読み方をとることはできないと考えております。同項は法律の条件の枠内で働くものであり、法律が納付させうるものとしているのは、交付と相当因果関係のある収益の範囲です。

算定の基準を示さないまま命じる運用への批判

この点については、古くから指摘があります。碓井光明教授は、収益納付の仕組みについて次のとおり述べています。

引用(小滝・前掲163頁注(10)が引く碓井光明『公的資金助成法精義』202頁(2007))「このような(公益と私益の)調整の趣旨は理解できるが、調整の必要性の判断権が省庁の長に委ねられている点は、大いに疑問である」/「少なくとも、省庁の長は、収益納付の基準設定と公表義務を負っていると解すべきである」

この指摘について、文献は「傾聴すべき見解であり、各省各庁の長は収益納付の実態の情報公開に努めるべきであろう。」としています(小滝・前掲163頁)。収益納付の判断と算定の基準を、あらかじめ設定して公表すべきであるという考え方です。

私見としては、この考え方は、納付を命じられた側の対応にも直結すると考えております。基準が公表されていないのであれば、納付命令を受けた側は、どの収益をどの範囲で捉え、どの計算で納付額を出したのかの説明を求めてよいはずです。前記2で引いた交付規程の条項は、いずれも算定方法を書いていません。算定の根拠を示さずに金額だけを通知する運用は、改めていただきたいと考えております。

5 「納付」は「返還」とは性格が違います――強制徴収の対象ではありません

収益納付が「返還」ではなく「納付」と呼ばれているのは、言葉の選び方の問題ではありません。文献は、収益納付が「納付」と観念されているのは18条の「返還」とはその性格を異にするからであるとし、交付決定の取消しに伴い返還を命じられた補助金等については補助金適正化法21条により強制徴収の対象とされているが、収益納付金は強制徴収の対象とされていないとしています(小滝・前掲164頁)。石油及び可燃性天然ガス資源開発法19条のように、法律上明文で納付金を定め、国税滞納処分の例により強制徴収しうることとされているものは別であるとも述べています。

収益納付を求められている場面と、交付決定が取り消されて返還を求められている場面とは、条文も効果も違います。取消しの要件そのものは補助金適正化法17条1項が定める三つの事由であり、交付決定の取消し・返還請求のページで扱っています。加算金・延滞金は取消しに伴う返還について定められているものですので、Q&A「加算金・延滞金を求められたら」をあわせてご覧ください。収益納付の通知を受けたからといって、取消しを受けたものとして身構える必要はないと考えております。

事業再構築補助金(新市場進出)交付規程27条1項のただし書は、事業化状況・知的財産権報告書の決算が赤字の場合は納付を免除するものとしています。「免除するものとする」という書き方ですので、免除するかどうかを選べる定め方ではないと読んでおります。赤字であるのに納付を求められているのであれば、この一文を示して確かめることになります。

6 求められたときに、どう動くか

収益納付の通知や照会を受け取ったときは、次の順序でお手元の書類を確かめてください。いずれも、事業者ご自身で今日のうちに確かめられるものです。

  • 交付決定通知書を出して、補助金の名称・公募回・交付決定の日と、附された条件を確かめる。収益納付の条件が附されているかどうかが出発点です(補助金適正化法8条)。
  • 通知書が引用している交付規程の版を特定し、収益納付の条項があるか、その条項の対象が自分に及ぶかを読む。前記2のとおり、類型や交付申請の時期で対象が絞られていることがあります。
  • 求められている金額が、交付を受けた補助金の額を超えていないかを確かめる(補助金適正化法7条2項)。
  • 算定の対象とされた収益が、補助事業の完了により生じたものかを分ける。補助事業と関係のない売上げ、寄附金や負担金のような特定収入が混ざっていないかを、計算書類と突き合わせます。
  • 報告書に記載した決算が赤字であれば、免除の定めがあるかを確かめる。事業再構築補助金(新市場進出)であれば、交付規程27条1項ただし書です。
  • 算定の根拠の説明を、書面で求める。どの収益をどの計算で捉えたのかが分からないままでは、当否を確かめることができません。求めたことと求めた日が残る形で出してください。

そのうえで、回答の期限が示されているときは、期限までに書面で出すことになります。期限に間に合わないときは、いつまでに何を出せるのかを先に伝えておいてください。立入検査や実地検査の場で口頭で求められている場合の考え方は、Q&A「補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか」で述べています。

収益が出たこと自体は、補助事業が成功したということです。補助金の制度は、収益が出たら全部取り上げる仕組みにはなっていません。前記1から5のとおり、収益納付は、条件があって初めて生じ、交付の目的に反しない場合に限られ、補助事業の完了により生じた相当の収益に限られ、交付を受けた額を上限とするものです。求められている金額が、この枠に収まっているかどうかを確かめることから始めていただくのがよいと考えております。

補助事業で収益が出たことを理由に納付を求められている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご回答や納付の前にご相談ください。交付決定通知書、交付規程、事務局から受け取った通知、事業化状況の報告書と計算書類があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

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※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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