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弁護士 岸上大起

自治体の補助金で返す額は、どう計算されるのか――残存簿価方式と、経過年数による按分

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

県や市の補助金で買った設備を、処分制限期間の途中で手放すことになった。あるいは、県の補助金で続けるはずだった事業を途中でやめることになり、交付決定の一部を取り消すと言われた。このとき、返す額はいくらになるのか。――国の補助金については、残存簿価相当額に補助率を掛けるという計算式が公式に示されています。では、自治体の補助金でも同じなのでしょうか。

先に答えを申し上げます。同じではありません。自治体の補助金では、残存簿価を使わず、補助金額を処分制限期間の年数で割って、経過した年数の分だけ差し引く按分式を置いている例があります。補助金の受領の日から事業をやめた日までの日数を、事業継続義務の期間の日数で割る日割り按分式を置いている要綱もあります。残存簿価に補助率を掛けるという国と同じ型の式を置いている県もあります。同じ設備を同じ時期に処分しても、どの式が当たるかで額が変わります。

本稿では、東京都・埼玉県・神奈川県の公表されている基準・要綱・案内を例に、自治体の式にどのような型があるかを原文で確かめ、最後に、自分の補助金の式をどう特定するかを整理します。国(中小機構)の補助金の計算式と手続の順番は「補助事業を続けられないとき――手続の順番、返還額の計算、返還が生じない選択肢」で、「残存簿価相当額」が帳簿の簿価ではないことは「『残存簿価相当額』は、当社の帳簿の簿価ではないのでしょうか」で述べていますので、本稿は自治体の式に徹します。自治体の補助金に補助金適正化法が適用されず、規則・要綱・交付決定通知書の条件で動いていることは、「県や市の補助金の取消し・返還は、国の補助金と何が違うのか」で述べています。

1 東京都の承認基準の式――補助金額を制限年数で按分する

東京都は、都の補助金で取得した財産の処分について、財務局が「補助金等交付財産の財産処分承認基準」(23財主財第38号・平成23年6月1日。改正29財主財第138号・平成29年10月4日、改正31財主財第140号・令和元年10月18日。令和2年4月1日から適用)を定め、公表しています。この基準は、東京都補助金等交付規則(昭和37年東京都規則第141号)24条の承認についての目安を各局に示すもので、法令ではありません。納付は、規則24条の承認に付される条件として求められるものであり、基準は、その承認と条件の目安を示すものです。同基準のQ&Aは、基準の位置づけを次のように説明しています。

引用(補助金等交付財産の財産処分承認基準Q&A・A2)「東京都補助金等交付規則第24条の考え方について、財務局の基準として決定するものである。したがって、各局において更に厳しい基準を要綱によって定めることは可能である。」

この基準の第3の2が、施設等(土地以外の財産)を処分して補助金相当額を都に納付する場合の計算式です。

引用(補助金等交付財産の財産処分承認基準 第3の2)「2 補助金相当額を都に納付する場合
 この場合における納付額の算出については、次の計算式によるものとする。ただし、すでに補助金相当額の全部又は一部を納付している場合は、この限りでない。
 なお、納付額に千円未満の端数が生じる場合は、これを切り捨てるものとする。
(1) 使用、譲渡、取壊し又は交換の場合
 納付額 = 処分財産の補助金額-(処分財産の補助金額/処分財産の制限年数)×経過年数
(2) 貸付の場合
 納付額 = (処分財産の補助金額/処分財産の制限年数)×貸付年数」

式の中に、残存簿価も、減価償却も、補助率も出てきません。出てくるのは、処分する財産に対応する補助金額と、その財産の制限年数と、経過年数の三つだけです。補助金額を制限年数で割って一年あたりの額を出し、経過した年数の分を差し引く。制限年数の半分が過ぎていれば補助金額の半分、全部が過ぎていればゼロになる、直線の按分です。

なお、第3の2(1)が挙げるのは「使用、譲渡、取壊し又は交換の場合」であり、廃棄は挙げられていません。第3の1(2)が「取壊し又は廃棄」と並べているのと違います。包括承認事項に当たらない廃棄について納付を求められた場合は、どの定めによる額なのかを確かめることになります。

「制限年数」について、基準は直接の定義を置いていません。規則24条ただし書は、承認が不要になる期間を「補助金等の交付の目的、交付額または当該財産の耐用年数を勘案して別に知事が定める期間」としており、同基準の第2の2(2)は、この「別に知事が定める期間」について減価償却資産の耐用年数等に関する省令を準用するとしています。第3の2の「制限年数」も、この期間によることになります。

引用(補助金等交付財産の財産処分承認基準 第2の2(2))「規則第24条に規定する別に知事が定める期間を経過した場合
 なお、当該期間については、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用する。」

自治体の補助金には補助金適正化法と同施行令は適用されませんので、国の補助金について処分制限期間を「省令のとおり」とすることの当否を論じた議論が、そのまま当たるわけではありません。もっとも、規則24条ただし書も「勘案して別に知事が定める期間」という建て付けですので、省令の準用がその「勘案」に当たるのかという同じ形の問いは、都の補助金についても立つと考える余地があります。

「経過年数」の数え方は、Q&Aが月単位であることを明らかにしています。

引用(同Q&A・Q10/A10)「Q10 補助金相当額を都に納付する場合に、経過年数、貸付年数などに、例えば「15年と10か月」のような1年に満たない端数があるときは、どう算出するのか?
A10 当該基準における年数の計算は、月単位で行うこととしている。
 したがって、質問のケースでいえば、「190か月」で計算を行うものである。
 なお、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月として計算する。これは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令と同じ考え方によるものである。」

一方で、第3の2の「経過年数」をいつからいつまで数えるのかは、基準にもQ&Aにも明示されていません。Q&Aにあるのは、第3の1(1)アなどにいう包括承認の「10年」の起算日について「補助事業が完了した日である。」(A7)としたものと、新基準の適用の時点を分ける「財産処分をする」日について「補助金により購入した器具の「廃棄日」や、建物の「取り壊し開始日」などである。」(A24)としたものです。いずれも別の問いへの答ですので、「経過年数」も補助事業の完了の日から廃棄日・取壊し開始日までと取るのが自然だとしても、そこは所管局に確かめる点になります。

この式の特徴を二つ挙げます。第一に、残存簿価を使いませんので、圧縮記帳をしていたかどうか、法人か個人事業主か、定率法か定額法かといった、国の「残存簿価相当額」で問題になる論点が、この式では生じません。第二に、国の式では、法人の機械装置について定率法で減価償却費を計算しますので、取得から間もない時期ほど残存簿価相当額が急に下がります。これに対し、東京都の式は直線の按分ですから、同じ時期に処分すると、国の式より納付額が大きくなることがあります。第6節で同じ数字を当てはめて確かめます。

なお、土地については別の定めがあります。同基準の第4の2は、土地を使用又は交換する場合も、譲渡又は貸付する場合も、「納付額 = 処分財産の補助金額」としており、経過年数による按分はありません。土地には耐用年数がないからです。土地の有償譲渡・有償貸付については、譲渡額又は貸付額に都の補助率を乗じた金額が処分財産の補助金額に満たないときはその金額を納付額とする、譲渡額又は貸付額が評価額に比して著しく低価でその理由を合理的に説明できないときは評価額を用いる、という注記が付いています。

2 災害・火災・老朽化による取壊し・廃棄は、報告だけで承認があったものとされ、納付も伴わない

式に当てはめる前に、そもそも納付が生じない場合が定められています。東京都の基準の第2の1は、承認が必要となる場合を定めたうえで、「包括承認事項」については、知事への報告があったものを承認があったものとして取り扱うとしています。

引用(補助金等交付財産の財産処分承認基準 第2の1)「補助事業者等が都の補助事業等により取得し、又は効用を増加した財産を、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供しようとするときは、規則第24条の規定により、原則としてあらかじめ知事の承認が必要である。ただし、次の(1)又は(2)に該当する財産処分(以下「包括承認事項」という。)であって、知事への報告があったものについては、上記に関わらず、知事の承認があったものとして取り扱うものとする。」
「(2) 次のア又はイのいずれかに該当する場合の施設等の取壊し又は廃棄
 ア 災害又は火災により全壊、半壊、全焼又は半焼した場合
 イ 老朽化等、構造上危険な状態にある場合」

そして、同基準の第3の1は「補助金相当額の納付を伴わず承認する場合」を定め、その(2)で、取壊し又は廃棄のうち包括承認事項に当たるものと、その取壊しに際してやむを得ず行う建物以外の工作物等の取壊し又は廃棄を挙げています。

引用(補助金等交付財産の財産処分承認基準 第3の1(2))「(2) 取壊し又は廃棄
  次のア又はイのいずれかに該当する場合
 ア 包括承認事項
 イ アの取壊しに際して、やむを得ず行う建物以外の工作物等の取壊し又は廃棄」

災害や火災で全壊・半壊・全焼・半焼した施設等の取壊し・廃棄と、老朽化等により構造上危険な状態にある施設等の取壊し・廃棄は、報告があれば承認があったものとして扱われ、補助金相当額の納付も伴わない、ということです。第1節の計算式は、こうした場合には出番がありません。Q&Aは、報告の扱いについて「補助金所管局においては、補助事業者から財産処分の報告書を受理したことをもって知事の承認があったと取り扱うこととして差し支えない。」(A19)とし、報告の時期については「知事への報告があった時点で承認があったとみなすものであるため、あくまでも財産処分が行われる前に報告を受ける必要がある。」(A20)としています。報告は、取壊しや廃棄の前に出すものだということです。

国の補助金でも、災害・火災による場合(補助事業者等の責めに帰することのできない事由による場合に限られます)や立地上・構造上危険な状態にある場合の取壊し・廃棄は、報告書の提出で承認を受けたものとみなされ、国庫納付を求めないこととされています。この点は「災害や火災で使えなくなった設備、危険で取り壊した建物――承認と納付は必要か」で述べています。東京都の基準は、国と同じ型の例外を置いているということです。

このほか、同基準の第2の2(1)は、処分を行う財産が規則24条各号に該当しない場合は承認が不要であるとし、同条5号の知事が指定するものを「取得価格又は効用の増加額が単価50万円以上の工作物、機械及び器具で、補助目的達成上特に必要と認められるものとする。」としています。Q&Aは、国の基準に50万円未満の承認が不要である旨の記載がない事業についても「都規則第2の2(1)と同じく取り扱うこととする。」(A23)としています。規則24条5号の指定による限り、単価50万円未満の器具は承認の対象にならず、納付の対象にもなりません(同条6号の「前各号のほか、補助金等の交付の目的を達成するため特に必要があると認めるもの」として指定されている場合は別です)。

3 交付要綱の日割り按分式――事業継続義務の期間で割る

第1節の式は、設備や建物といった財産を処分する場面のものです。これとは別に、補助金の交付決定そのものの一部が取り消され、受け取った補助金の一部を返す場面があります。東京都の補助金の交付要綱の中には、この場面の式を要綱の中に置いているものがあります。財産の処分の場面とは式の置き場所も対象も違いますが、補助金の受領から時間がたつほど返還額が減るという按分の考え方は、同じです。以下、その定めを言葉で説明します。

この型の要綱は、まず、交付を受けた者が、一定の期間、事業を継続しなければならないと定め、知事がやむを得ないと認める場合はこの限りでないというただし書を付けています。事業継続義務に違反したときは取消事由になり、事情変更による取消し又は義務違反による取消しをした場合には、要綱が定める額を返還しなければならないとされています(この返還の条にも、知事がやむを得ないと認める場合はこの限りでないというただし書があります)。

返還額の定めは、知事が交付決定の全部を取り消した場合は、交付を受けた補助金の全額です。一部を取り消した場合は、交付を受けた補助金額から、その補助金額に、補助金の受領の日(この日を算入します)から取消事由に該当した日の前日までの日数を、補助金の受領の日から事業継続義務の期間の末日までの日数で除した割合を乗じた額(1円未満切捨て)を差し引いた額、とされています。

一部取消しの場合の式を言葉にすると、受領した補助金額から、「補助金額×(受領の日から取消事由に該当した日の前日までの日数)/(受領の日から事業継続義務の期間の末日までの日数)」を差し引いた額です。事業を続けた日数に対応する分は返さなくてよく、続けなかった日数に対応する分を返す、という日割りの按分です。

この式で読み落とせない点が三つあります。

  • 全部取消しか一部取消しか。全部を取り消されれば全額です。按分の式が働くのは一部取消しのときだけですので、取消しの範囲が、額を決める最初の分かれ目になります。この型の要綱は、複数年度にわたって交付決定がされている場合に取消しがどの年度に及ぶかについても定めを置いています。
  • 取消事由に該当した日がいつか。事業をやめた日が一日違えば、差し引く額が一日分変わります。この日が明らかでない場合は、都がその取消事由を知った日によるとされていますので、いつ事業継続義務に反する状態になったのかを示す資料があるかどうかで、計算の基礎になる日が変わります。
  • 分母は、事業継続義務の期間の末日までの日数です。処分制限期間ではなく、事業継続義務の期間の末日が分母の終期に対応しています(事業継続義務は年度の終了後の年度数で、返還額の式は補助金の受領の日からと、起算点の書き方は違います)。

同じ東京都の補助金でも、第1節の財産処分の基準と、この型の要綱の返還額の式とは、場面も分母も違います。財産を処分する場面なのか、交付決定の一部が取り消される場面なのかを、まず分けて読むことになります。

次のような場合は、計算の前提を確かめる段階でご相談ください

  • 県や市から財産処分に伴う納付額や返還額の通知が届いたが、どの式で計算されたのかが書かれていない
  • 通知された額が、残存簿価で計算した額とも、按分で計算した額とも合わない
  • 災害・火災・老朽化による取壊しなのに、納付を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 廃棄処分・廃業(対応ページ)/国の補助金の計算式と手続の順番(コラム)/「残存簿価相当額」は帳簿の簿価ではない(Q&A)

4 埼玉県の案内の式――月割りの按分

埼玉県の「埼玉県電気自動車等導入費補助金」は、県の案内ページ(2026年10月30日閲覧)で、処分制限期間内に車両等を売却・下取り・抹消・リース解約した場合の返金額の算定方法を、次のように示しています。

引用(埼玉県「埼玉県電気自動車等導入費補助金事業」案内ページ)「返金額の算定方法は「補助金額×残存期間/財産処分制限期間」です。
(例)275,000円の補助を受けた車両を初度登録から20か月後に処分する場合は、275,000円×(28か月/48か月)=160,416円
※残存期間は月割りで計算。
残存月数=処分制限期間月数(例:4年=48か月)- 経過月数
経過月数は、車両の登録日の翌日を1日目とし、1か月未満は切り上げる。」

補助金額に、残存期間を処分制限期間で割った割合を掛ける。これは、第1節の東京都の式を月単位で書いたものと同じ型です。補助金額から、経過した期間に対応する分を差し引くのですから、「補助金額-補助金額×経過月数/制限月数」と「補助金額×残存月数/制限月数」は同じ額になります。

この補助金の交付要綱(埼玉県電気自動車等導入費補助金交付要綱。令和7年4月1日施行)の18条は、処分制限期間と財産の種類を別表6に委ね(1項。普通自動車・小型自動車の自家用乗用車は4年、V2H充放電設備は8年など)、承認を受けなければならない処分として「補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、廃棄し、貸し付け又は担保に供する場合」を挙げ(2項)、納付については次のように定めています。

引用(埼玉県電気自動車等導入費補助金交付要綱18条4項・5項)「4 知事は、前項の規定により財産処分等を承認するときに、必要であると認める場合には、補助金の全部又は一部に相当する金額の納付を請求するものとする。
5 補助対象者は、前項の規定による補助金の全部又は一部に相当する金額の請求を受けたときは、これを県に納付しなければならない。」

要綱には「補助金の全部又は一部に相当する金額」とあるだけで、計算式は書かれていません。式は、案内ページの側にあります。案内の式が18条4項の「必要であると認める場合」の判断を拘束するものかどうかは別の問題ですが、自治体の補助金では、このように、要綱が納付の枠だけを定め、額の出し方は案内や内部の基準に置かれていることがあります。要綱だけを読んで「式がない」と思わず、案内と基準まで探すことになります。

5 神奈川県の取扱要領の式――残存簿価×補助率、国と同じ型

これに対し、国と同じ型の式を置いている自治体もあります。神奈川県の「中小企業者等を対象とした補助金に係る財産処分等の取扱要領」(令和6年3月22日施行。最終改正・令和8年4月3日施行)は、別表に掲げる交付要綱(中小企業生産性向上促進事業費補助金交付要綱、神奈川県小規模事業者デジタル化支援推進事業費補助金交付要綱など)による補助金の財産処分について、返還金の額を次のように定めています。

引用(中小企業者等を対象とした補助金に係る財産処分等の取扱要領8条1項・2項)「第8条 前条第1項の財産処分に係る返還金の額については、次表の区分ごとに算定した財産処分返還額を合算した額とし、補助金交付額を上限とする。ただし、知事が特に認める場合は、この限りでない。」
(表のうち)「目的外使用 目的外使用開始時点での残存簿価に補助率を乗じて得た額」「譲渡 有償 譲渡額又は所有権移転時点での残存簿価のいずれか高い金額に補助率を乗じて得た額」「譲渡 無償 所有権移転時点での残存簿価に補助率を乗じて得た額」「取壊し 取壊し時点での残存簿価に補助率を乗じて得た額」「廃棄 廃棄時点での残存簿価に補助率を乗じて得た額」
「2 財産処分における残存簿価等は次に定める方法により算定する。
(1)残存簿価 = 取得価額(補助対象経費) - 減価償却額
(2)減価償却額 = 取得価額(補助対象経費) × 償却率 × 経過月数 ÷ 12月
(3)補助率 = 補助金交付額 / 補助対象経費」

残存簿価に補助率を乗じる。国の「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16・6・10会課第5号)が、転用・無償譲渡・無償貸付け・交換・取壊し・廃棄の場合の国庫納付額を、処分制限財産に係る補助金額を上限として「残存簿価相当額に補助率を乗じて得た額」とするのと同じ型です。国の式の原文と、D=A×C/Bという公式の説明は、「補助事業を続けられないとき」の第2節と第9節で引用しています。

同じ型でも、違いはあります。有償譲渡について、国の通達は譲渡額に補助率を乗じることを原則とし、譲渡額が残存簿価相当額等に比して著しく低価でその理由を合理的に説明できないときに限って残存簿価相当額等を用いますが、神奈川県の要領は、譲渡額と残存簿価の「いずれか高い金額」を常に基礎にします。減価償却額の計算は、取得価額に償却率と経過月数を乗じる形ですので、未償却残高に償却率を乗じていく定率法の計算ではなく、取得価額を基礎にした計算です。経過月数は、取得等した日(取得であれば納品日)から財産処分をした日までを月単位で数え、一月に満たない端数は一月とされます(同条4項)。取得価額には、原則として、処分制限財産を事業の用に供するために直接要した備品・工事等の費用や、引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税など購入に要した付随費用も含まれます(同条3項)。

この要領には、返還金の免除の特例もあります(10条)。個人事業主の法人化、法人の個人事業主化、相続、合併による譲渡について、知事が認めれば返還金を免除することができるとされています。法人化・個人事業主化は事業者の同一性が確認できる場合に、相続・合併は承継者が補助事業を継続する場合に、それぞれ限られています。式の前に、免除の事由に当たらないかを確かめる、という順番は、国の補助金と同じです。

6 同じ数字を当てはめると

取得価額1,000万円(税抜)の機械を、補助率2分の1・補助金500万円で取得し、耐用年数(制限年数)10年のところ、3年(36か月)経過した時点で無償で手放したとします。式の型は国・東京都・埼玉県・神奈川県の四つですが、国の式は償却方法で二通りになりますので、五つの計算で示します。

国(中小機構)の式――残存簿価相当額×補助率(法人は定率法)

計算
残存簿価相当額512万円×補助率2分の1
納付額
256万円

国の式で、償却方法が定額法のとき(個人事業主の場合など)

計算
残存簿価相当額700万円(1,000万円-1,000万円×3年/10年)×2分の1
納付額
350万円

東京都の承認基準の式――補助金額を制限年数で按分

計算
500万円-(500万円/10年)×3年
納付額
350万円

埼玉県の案内の式――補助金額×残存期間/処分制限期間(月割り)

計算
500万円×(120か月-36か月)/120か月
納付額
350万円

神奈川県の取扱要領の式――残存簿価×補助率(償却率を定額法の率で置いた場合)

計算
残存簿価700万円(1,000万円-1,000万円×0.1×36か月÷12月)×2分の1
納付額
350万円

国の式で法人の機械装置を定率法で計算すると256万円、東京都の按分式では350万円です。同じ機械を同じ時期に手放しても、約100万円の差が出ます。定率法は取得から間もない時期の償却が大きいため、早い時期の処分では残存簿価相当額が直線の按分より小さくなるからです。逆に、国の式でも定額法で計算する場合や、神奈川県の要領で償却率を定額法の率で置いた場合は、東京都や埼玉県の按分式と同じ額になります。つまり、自治体の式と国の式の差は、「残存簿価を使うか、補助金額を直線で按分するか」の差というより、「償却を定率法で見るか、直線で見るか」の差として表れます。

これは経過3年のときの数字です。経過年数が制限年数の終わりに近づくほど、定率法と直線の差は縮まりますし、償却率の取り方や保証率の扱いで数字は動きます。どの式が当たるかを確かめずに「残存簿価で計算すれば安くなるはずだ」とも「按分なら安くなるはずだ」とも言えない、ということです。

7 自分の補助金の式を、どう特定するか

以上を踏まえて、県や市の補助金で納付額・返還額を示されたときに、どの式が当たるのかを特定する手順を整理します。

(1)財産処分の納付なのか、交付決定の取消しに伴う返還なのかを分ける

第1節・第4節・第5節の式は、財産を処分する場面のもので、承認に付される条件として納付が求められます。第3節の式は、交付決定の一部が取り消される場面のものです。届いた文書が、どちらの場面のどの条文によるものかを、先に確かめます。取消しに伴う返還であれば、違約加算金や延滞金が付くかどうかも、取消しの根拠条文によって変わります。

(2)要綱、規則、案内、内部の基準の順に探す

式が置かれている場所は、自治体と補助金によって違います。神奈川県のように取扱要領に式がある例、第3節で見た東京都の補助金のように交付要綱に式がある例、埼玉県の電気自動車等導入費補助金のように要綱には「全部又は一部に相当する金額」とだけあって案内ページに式がある例、東京都の財産処分のように財務局の承認基準に式がある例があります。東京都のQ&Aは、基準を「補助事業者に周知してもよい。」(A5)としており、財務局のウェブサイトに掲載されています。自治体の補助金の規則・要綱の探し方は、「県や市の補助金の取消し・返還は、国の補助金と何が違うのか」の第5節で述べています。

(3)国の式が使われることもある――財源と、要綱の定め

自治体の補助金であっても、国の式が当たることがあります。東京都の基準のQ&Aは、国庫補助事業や継ぎ足し補助事業については「各省庁の承認基準等に準じることとする。」(A4)とし、都単独の補助であっても、事業ごとの要綱で国の要綱に準じる旨を定めている場合はそのままでよいこと(A6)、リース契約など「国基準に準じた納付額算定が好ましい場合」があること(A21)を述べています。財源に国費が入っているか、要綱が国の基準を引いているかで、都の按分式ではなく各省庁の承認基準によることになり、経済産業省の基準であれば残存簿価相当額×補助率です。

(4)式の中の数字を一つずつ当てる

式が特定できたら、式の中の数字を一つずつ確かめます。按分式であれば、処分財産の補助金額(その財産に対応する補助金の額であって、交付決定額の全体ではありません)、制限年数(省令のどの区分で何年とされたか)、経過年数の起算日と終期(東京都の基準では明示されておらず、所管局に確かめる点です。埼玉県の案内では登録日の翌日から)、月未満の端数の扱いの四つです。日割り式であれば、受領の日、取消事由に該当した日、分母の末日の三つです。残存簿価の式であれば、取得価額、償却率、経過月数、補助率の四つです。処分制限期間が既に経過した財産や、単価が基準に満たない財産が算定に混ざっていないかは、どの式でも先に確かめます。処分制限期間の考え方は「補助金で取得した財産の処分制限期間は何年か」と「処分制限期間は『減価償却資産の耐用年数等に関する省令のとおり』と書かれていますが」で述べています。

(5)式の前に、納付が生じない場合に当たらないかを見る

第2節で見たとおり、東京都の基準は、災害・火災・老朽化による取壊し・廃棄を、報告だけで承認があったものとし、納付も伴わないとしています。神奈川県の要領には法人化・相続・合併などの免除の特例があり、第3節で見た東京都の交付要綱には、知事がやむを得ないと認める場合の返還の除外があります。式に当てはめる前に、こうした定めに当たらないかを確かめます。また、東京都のQ&Aは、「この基準を満たしていれば、補助金の返還を要しない財産処分は必ず認められるのか?」(Q3)という問いに「認められないこともある。」(A3)と答えています。基準は目安であり、承認するかどうか、納付の条件を付すかどうかは、個別の判断です。

なお、自治体の規則・要綱には、処分制限の対象に「取壊し」や「廃棄」を含めている例があり(神奈川県の規則17条、埼玉県の要綱18条2項)、補助金適正化法22条が廃棄を挙げていないことをめぐる議論(「補助金で取得した設備を廃棄することは『処分』か」)は、そのままでは自治体の補助金には当てはまりません。東京都の規則24条は、使用・譲渡・交換・貸付け・担保提供の五つを挙げ、廃棄を挙げていませんが、承認基準の第3は「取壊し又は廃棄」を財産処分の区分として扱っています。規則の文言と基準の扱いが一致しているかは、自治体ごとに確かめる点の一つです。

県や市から示された納付額・返還額について、どの式のどの数字によるものかを突き合わせる段階になりましたら、ご相談ください。式が特定できれば、額の当否は計算で確かめられます。

※ 本稿は、執筆時点の法令・公表資料に基づく一般的な整理であり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。東京都の承認基準(https://www.shougaifukushi.metro.tokyo.lg.jp/Lib/Download.php?sqid=4112)とQ&A(同 sqid=4113)、埼玉県の交付要綱と案内ページ(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0504/ev-phv/1.html)、神奈川県の取扱要領(https://r8seisansei.pref.kanagawa.jp/assets/data/syobunyouryou.pdf)は、いずれも2026年10月30日時点で公開されていたものによります。第3節の日割り按分式は、東京都の交付要綱の一つに置かれている定めを言葉で説明したものです。基準・要綱・案内は自治体・補助金ごとに違い、改正もされますので、ご自身の補助金については、その自治体の現行の定めをご確認ください。第6節の数字は、式の違いを示すための仮のものです。

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