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弁護士 岸上大起

小規模事業者持続化補助金の補助事業を事業譲渡したい――承継の届出がない補助金ではどうするのか

このページの結論

小規模事業者持続化補助金で設備を入れて始めた事業を、設備ごと他社に引き継がせたいと考えています。事業再構築補助金には承継の届出があると聞きましたが、持続化補助金の交付規程を見ても、承継の様式が見当たりません。どうすればよいのでしょうか。

小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程(2023年3月3日制定・全国商工会連合会)には、補助事業そのものを他の者に承継させる手続の定めがありません。「承継」の語が出てくるのは、交付決定によって生じる権利の譲渡・承継を禁じる14条1項だけです。商工会議所地区事務局の現行の交付規程(2025年4月25日制定・2026年3月6日改定)でも同じです。事業再構築補助金の交付規程が、実施期間中は承認申請(12条1項6号・様式第3-3)、完了後の事業計画期間中は届出(26条1項2号・様式第14-2)という承継の受け皿を置いているのとは違います。受け皿がない以上、設備を含む事業譲渡は、財産処分の承認申請(様式第12。2023年版25条3項、2025年版25条6項)の枠組みで通すことになり、承認には納付の条件が付き得ます。

財産処分の取扱い(2024年3月28日制定・商工会議所地区事務局)は、「譲渡」を「補助金交付の目的に反する、処分制限財産の所有者の変更」と定義し(2条1項2号)、納付の条件は「事情を勘案して」付さないことができるとしています(3条3項)。事業の継続が担保された譲渡は、この定義の「譲渡」に当たらないと考える余地があり、譲受人が小規模事業者等に当たることを確かめたうえで、承認申請書の「処分の理由」にそのことを書いて、納付の条件を付さないよう求める交渉として組むことになります。中止・廃止の申請(様式第5)で代用すると、取消しと返還の入口に入りますので出さないでください。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 持続化補助金の交付規程には、補助事業を「承継」させる手続がない

補助金で始めた事業を他社に引き継がせたいとき、最初に確かめることは、その補助金の交付規程に「承継」の受け皿があるかどうかです。事業再構築補助金にはあります(後記2)。ところが、小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程(2023年3月3日制定・全国商工会連合会)には、補助事業そのものを他の者に承継させる手続の定めが置かれていません。

以下の条数と文言は、この2023年3月3日制定の交付規程のものです(持続化補助金は、商工会地区と商工会議所地区とで事務局と交付規程が分かれており、版も公募回ごとに改まります。他の版については後記のとおりです)。この交付規程の全文で「承継」という語が出てくるのは、次の1か所だけです。

引用(小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程14条1項本文)「補助事業者は、第9条第2項の規定に基づく交付決定によって生じる権利の全部または一部を全国連会長の承諾を得ずに、第三者に譲渡し、または承継させてはならない。」

これは「債権譲渡の禁止」の条文で、補助金の交付を受ける権利(請求権)を他人に移してはならないという定めです。補助事業を引き継がせることについての定めではありません。計画変更の承認を定める12条1項が挙げているのは、経費の配分の変更(1号)と補助事業の内容の変更(2号)だけで、承継の号はありません。15条は中止・廃止の承認申請、様式の一覧(様式第1〜第14)にも、承継の申請書や届出書はありません。

商工会議所地区事務局の現行の交付規程(小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>交付規程。2025年4月25日制定・2026年3月6日改定)でも同じです。全文で「承継」の語が出るのは債権譲渡の禁止の14条1項だけで、12条1項の計画変更の承認は経費の配分の変更(1号)と補助事業の内容の変更(2号)、15条は中止・廃止の申請、様式は第1から第14までで、承継の申請書も届出書もありません。

つまり、持続化補助金では、「事業ごと引き継がせます」という申出を受け止める様式が、交付規程の側に用意されていないのです。このことが、事業譲渡の進め方を事業再構築補助金とは別のものにします。

2 事業再構築補助金との対比――承認申請(様式第3-3)と届出(様式第14-2)

事業再構築補助金の交付規程は、承継の手続を時期に応じて二つ置いています。以下は中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)のものです。

  • 補助事業の実施期間中――「補助事業の全部又は一部を他に承継させようとするとき」は、あらかじめ承認申請書を提出し、承認を受けることとされています(同交付規程12条1項6号。同項柱書は様式第3-1から第3-3のいずれかによるものとし、様式第3-3がその本文で12条1項6号を根拠条項として掲げています)。様式第3-3の標題は「中小企業等事業再構築促進補助金に係る補助事業承継承認申請書」で、承継の内容・理由、承継者の情報、契約書案の写し、承継者の誓約書などを添えることになっています。
  • 補助事業完了後の事業計画期間中――「事業計画の全部又は一部を他に承継させようとするとき」は、様式第14-2による届出書を速やかに提出することとされています(同交付規程26条1項2号)。様式第14-2の標題は「中小企業等事業再構築促進補助金に係る補助事業完了後の事業計画の承継届出書」です。

様式第14-2の別紙は、承継者が次のことを誓約する書面です。

引用(同交付規程 様式第14-2の別紙「誓約書」)「……補助事業完了後の事業計画期間における事業の承継に関し、被承継者が独立行政法人中小企業基盤整備機構に対して有する一切の権利義務を○○○○年○月○日付で承継し、当該事業を、責任を持って続行し、その成果の事業化又は事業化の継続に努めることを誓約します。」

事業再構築補助金では、承継者が事業を「責任を持って続行」することを誓約させたうえで、補助事業を引き継がせる道が交付規程の中に用意されています。この届出制の意味と、事業の継続を担保した譲渡が補助金適正化法22条の「交付の目的に反して」する譲渡に当たらないと考えていることは、Q&A「補助事業を事業譲渡したら、補助金の返還や罰則の対象になるのか」とコラム「事業再構築補助金により取得した財産を含む補助事業を事業譲渡するという解決方法について」で述べています。このページでは繰り返しません。なお、コラムで述べている届出制の意味は、補助事業完了後の事業計画期間の局面のものです。実施期間中の承継は、上記のとおり承認申請です。

持続化補助金には、この様式第3-3にも様式第14-2にも当たるものがありません。承継の届出を出そうにも、出す先の条文がないのです。

3 受け皿がないときは、財産処分の承認申請(様式第12)の枠組みで通す

承継の手続がない以上、設備を含む補助事業を他社に移すことは、交付規程の上では「処分を制限された取得財産等」を「処分」する場面として扱われます。持続化補助金の交付規程(2023年3月3日制定・全国商工会連合会)は、次のように定めています(商工会議所地区事務局の2025年4月25日制定の交付規程では、同じ定めが25条6項に置かれています)。

引用(小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程25条3項)「補助事業者は、前項の規定により定められた期間内において、処分を制限された取得財産等を処分しようとするときは、あらかじめ様式第12による「取得財産の処分承認申請書」を全国連会長に提出して、その承認を受けなければならない。」

処分を制限される財産は、取得価格または効用の増加価格が単価50万円(消費税および地方消費税相当額を含まない。)以上の機械、器具、備品およびその他の財産です(同交付規程25条1項)。制限される期間は、補助金交付の目的および減価償却資産の耐用年数等に関する省令を勘案して全国連会長が別に定める期間とされています(同条2項)。様式第12の記載事項は、「品目および取得年月日」「取得価格および時価」「処分の方法」「処分の理由」の四つです。

したがって、持続化補助金で補助事業を事業譲渡するときは、補助金で取得した処分制限財産について、様式第12の「処分の方法」に事業譲渡であること(譲受人が補助事業を引き継いで続けること、有償か無償か)を、「処分の理由」に事業を続けられなくなった経緯と、譲受人による継続の見込みを書いて、承認を申請することになります。承継の様式がない補助金では、この四つの欄が、事業譲渡の内容を交付主体に伝える唯一の正規の入口です。

「処分」の定義には「補助金交付の目的に反する」が入っています

もっとも、承認申請の枠組みで通すことと、その譲渡が交付規程のいう「処分」に当たると認めることとは、別のことです。持続化補助金では、「処分」の定義を、取扱いの文書が次のように定めています。以下は「小規模事業者持続化補助金」<一般型>において補助事業者が補助対象経費により取得し、または効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(2024年3月28日制定・商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局。以下「取扱い」といいます。)のものです。

引用(取扱い2条1項2号)「(2)譲渡:補助金交付の目的に反する、処分制限財産の所有者の変更」

取扱いの側も、所有者が変わること自体を「譲渡」としているのではなく、「補助金交付の目的に反する」所有者の変更を「譲渡」としています。これは、補助金適正化法22条が「補助金等の交付の目的に反して」譲渡することを承認の対象としているのと同じ組み立てです(商工会議所地区事務局の2025年4月25日制定の交付規程は、この定義を2条に取り込んでいます)。譲受人が補助事業を引き継いで続け、取得財産がそのまま補助事業に使われ続けるのであれば、その所有者の変更は「補助金交付の目的に反する」ものではなく、取扱いの定義する「譲渡」には当たらないと考える余地があります。

ここで、持続化補助金の処分の制限が何によって事業者を縛っているのかを押さえておきます。持続化補助金は、中小機構が事務局(全国連または商工会議所地区事務局)に交付する補助金を、事務局が小規模事業者に交付する仕組みです。交付規程1条は中小機構の定める交付要綱を引き、処分の承認をする者も全国連会長または商工会議所地区事務局とされています。補助金適正化法22条の宛先は「補助事業者等」ですから、この仕組みで受給事業者の財産処分を縛っているのは、同条そのものではなく、交付規程25条の定め(適正化法22条の処分の制限を引いて組み立てられています)が交付決定に附された条件として取り込まれた限りであると考えております。この構造は、Q&A「ものづくり補助金の手引きは『補助金等適正化法第11条第2項に従い』と書いていますが」で述べたものと同じです。

私見としては、持続化補助金についても、事業の継続を担保した事業譲渡は、交付規程25条が適正化法22条を引いて組み立てている処分の制限の対象となる譲渡には当たらないと考えておりますが、持続化補助金には承継の届出という受け皿がありませんので、その考えを書面で示しながら、手続としては様式第12の承認申請の枠組みを使う、という組み方になります。承認申請書の「処分の理由」の欄に、譲受人が補助事業を続けること、取得財産が補助目的のまま使われることを書き、「補助金交付の目的に反する」譲渡ではないと考えている旨を添えるのが、この二つを両立させる書き方です。

4 承認に付く納付の条件と、その額の算定

様式第12の承認申請を出すと、承認には納付の条件が付き得ます。交付規程(2023年3月3日制定・全国商工会連合会)は、取得財産等を処分することにより収入があり、またはあると見込まれるときは、その収入の全部もしくは一部を全国連に納付させることがあると定め(同交付規程24条4項)、これを25条3項の承認をする場合に準用しています(25条4項)。

以下の納付の条件と額は、商工会議所地区事務局の取扱いのものです(同事務局の2025年4月25日制定の交付規程は、同じ内容を25条8項から11項に置いています)。商工会地区(全国連)に、これに相当する定めがあるかは、当職は確認できていません。取扱いは、承認の際の条件と額を、次のように定めています。

引用(取扱い3条1項・3項)「第3条 補助事業者からの財産処分の申請について、商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局(以下、「商工会議所地区事務局」という。)が交付規程第25条第3項の承認をする場合には、原則として、次条で定める金額を商工会議所地区事務局に納付する(補助金交付前に承認する場合には、納付すべき金額を交付額と相殺する。以下同じ。)旨の条件を付すものとする。」
「3 前2項の規定に関わらず、事情を勘案して、納付の条件を付さないことができる。」
引用(取扱い4条1号・2号)「(1)有償譲渡又は有償貸付けに係る納付額は、処分制限財産に係る補助金額を上限として、譲渡金額又は貸付金額(ただし、当該譲渡金額又は貸付金額が残存簿価相当額又は鑑定評価を行った場合の鑑定評価額に比して著しく低価である場合において、その理由を合理的に説明することができないときは、残存簿価相当額又は鑑定評価額)に補助率(補助金交付額が補助対象経費総額に占める割合。以下同じ。)を乗じて得た額とする。」
「(2)転用、無償譲渡、無償貸付け、交換、取壊し又は廃棄の場合の納付額は、処分制限財産に係る補助金額を上限として、残存簿価相当額に補助率を乗じて得た額とする。ただし、鑑定評価を行う場合には、鑑定評価額に補助率を乗じた金額と前記の金額で高い方とする。」

事業譲渡の場面で押さえておく点は三つです。

  • 有償の譲渡なら「譲渡金額×補助率」、無償の譲渡なら「残存簿価相当額×補助率」で、いずれも処分制限財産に係る補助金額が上限です(4条1号・2号)。事業譲渡契約で設備にいくらの対価を付けるかが、そのまま納付額の計算の基礎になります。譲渡金額が残存簿価相当額に比べて著しく低く、その理由を合理的に説明できないときは、残存簿価相当額に置き換えられます(1号の括弧書き)。対価を低く付けるなら、その理由(設備の状態、市場での値付け、引継ぎに伴う負担など)を説明できる資料を用意しておくことになります。
  • もっとも、2023年版の交付規程24条4項が納付させることがあるとしているのは、処分により「収入があり、またはあると見込まれるとき」の「その収入の全部もしくは一部」です。無償の譲渡には収入がありませんので、取扱い4条2号が残存簿価相当額を基礎に納付額を定めていることは、この版の24条4項の定めを超えるものではないかと考える余地があります。承認に付される納付の条件には限界があることは、コラム「承認の附款としての納付命令とその限界について」で述べています。なお、商工会議所地区事務局の2025年4月25日制定の交付規程は、24条4項に「残存簿価相当額又は鑑定評価額若しくは処分により得られた収入額又は見込まれる収入額」と書き込んでおり、版によって納付の根拠の書き方が違います。お手元の版で確かめてください。
  • 処分のための撤去費用等が生じる場合は、譲渡金額または残存簿価相当額等からその費用の額を控除した後に補助率を乗じるとされています(4条4号)。事業ごと引き継がせるときに設備を移設する費用が「処分のための撤去費用等」に当たるかは、契約でどちらが負担するかと併せて整理しておく事柄です。
  • 納付の条件は「原則として」付すものとされる一方で、「事情を勘案して、納付の条件を付さないことができる」と定められています(3条1項・3項)。この3項が、事業譲渡では要になります(後記5)。

なお、取扱いが引用している交付規程は2024年3月28日制定の商工会議所地区のもので、このページで引用した交付規程(2023年3月3日制定・全国商工会連合会)とは版と地区が異なります。取扱いが引く24条4項・25条1項から3項は、2023年版でも同じ条数にありますが、25条2項の「別に定める」主体は版によって異なります(2023年版は「全国連会長が別に定める期間」、取扱い5条1項は「商工会議所地区事務局が別に定める期間」と引いています)。また、商工会議所地区事務局の2025年4月25日制定(2026年3月6日改定)の交付規程では、処分の定義が2条に、処分の承認申請が25条6項に、納付の条件と額が25条8項から11項に置かれ、条数が動いています。お手元の交付決定通知書に書かれた交付規程の版で、条数と文言をお確かめください。処分制限期間については、後記5(1)で述べます。

次のような場合は、契約書を作る前にご相談ください

  • 持続化補助金で入れた設備ごと、事業を他社に引き継がせたい
  • 承継の様式がないと言われ、廃止の申請を出すよう案内されている
  • 財産処分の承認申請を出したら、納付の条件を付けると言われた
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 補助事業を途中でやめるとき――廃業か、事業譲渡か(対応ページ)/財産処分の承認を申請したら、残存簿価相当額を納めることになるのか(Q&A)

5 承認の条件の交渉として組む――何を、どの順で出すか

持続化補助金の事業譲渡は、承継の届出で済む事業再構築補助金と違い、「承認」と「納付の条件」をめぐる交渉として組むことになります。順番は次のとおりです。

(1)処分制限期間が残っているかを先に確かめる

承認を要するのは、処分を制限する期間内に処分しようとするときです(2023年版25条3項)。期間が過ぎていれば、この承認申請も納付の条件も問題になりません。その期間は、地区と版で違います。商工会議所地区では、2024年の取扱い5条1項が5年(減価償却資産の耐用年数等に関する省令で4年以下となっているものは同省令に準じた期間。店用簡易装備、看板・ネオンサインが3年の例として挙げられています(参考1)。中古資産は同条2項で短縮され、2年が下限です)と定めていますが、同事務局の2025年4月25日制定の交付規程25条3項は「補助金交付の目的および……省令……の定めに従い管理しなければならない」と書き改めており、5年という数字は文言から消えています。商工会地区(全国連)については、「全国連会長が別に定める期間」(2023年版25条2項)の定めを、当職は確認できていません。お手元の交付決定通知書に記載された交付規程の版と、その地区の定めで期間を確かめたうえで、取得財産等管理台帳(様式第11-1)の取得年月日から数えてください。

(2)譲受人が「小規模事業者等」に当たるかを確かめる

交付規程3条が定める補助金の目的は、「地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ること」であり、2条2号は補助事業者を、商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律に定める小規模事業者と特定非営利活動法人(「小規模事業者等」)に限っています。譲受人が小規模事業者等でないとき(中小企業や大企業に引き継がせるとき)は、後記(4)の「交付の目的に沿う譲渡である」という組み立てが、そこで崩れます。事業再構築補助金の様式第3-3が承継者の登記事項証明書・決算関係書類・役員名簿の添付を求め、「補助事業者同士で事業承継する場合、一つの補助事業しか実施できません」(注3)と注記しているのも、承継者の適格を見る建てつけです。譲受人の候補が決まった段階で、その者が小規模事業者等に当たるかを先に確かめてください。

(3)様式第12に、事業譲渡であることを書き切る

「処分の方法」には、譲受人が補助事業を引き継いで続けること、取得財産がそのまま補助事業に使われること、有償か無償か、有償ならその額を書きます。「処分の理由」には、事業を続けられなくなった経緯と、譲受人による継続の見込みを書きます。あわせて、事業譲渡契約書の案と、譲受人が補助事業を続けることを約する書面を添えてください。事業再構築補助金の様式第3-3・第14-2が添付を求めている「承継に関する当事者の契約書案の写し」と「承継者の誓約書」は、持続化補助金でも、交付主体に継続の担保を示す資料として同じ働きをします。

(4)納付の条件を付さないことを、理由を付けて求める(商工会議所地区では取扱い3条3項)

納付の条件を付さないことができる「事情」として、取扱いは具体的な場合を列挙していません(2025年版の交付規程25条10項も同じです)。そこで、こちらから事情を組み立てて示すことになります。柱になるのは、次の二つだと考えております。一つは、取扱い2条1項2号が「補助金交付の目的に反する」所有者の変更だけを「譲渡」としていることです。事業の継続が担保された譲渡は、この定義の「譲渡」に当たらないと考える余地があり、仮に承認の枠組みで扱うとしても、交付の目的に反しない処分に納付の条件を付す理由は乏しいと考える余地があります。もう一つは、交付規程3条が定める補助金の目的(小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ること)です。譲受人が小規模事業者等であって補助事業を続ける場合には、事業が別の者の手で続くことはこの目的に沿うものであって、設備を廃棄して事業を終わらせる場合と同じ扱いをする理由はないと考える余地があります。

納付させるかどうかと、いくら納付させるかは、交付規程の文言(「納付させることがある」)のとおり、交付主体の判断に委ねられています。基準に当たる事情があるのに、それを検討した様子のないまま納付を求められたときの考え方は、Q&A「『国庫納付条件を付さないことができる場合』を検討しないまま残存簿価相当額の納付を命じられました」で述べています。

(5)譲渡人に残る義務を契約に落とす

承認を受けて事業を譲渡しても、交付決定の名宛人である譲渡人の義務が消えるわけではありません。持続化補助金では、事業実施期間の終了日の属する月の翌月から1年間の事業効果等の状況を、その期間の終了日の翌日から30日以内に様式第14で報告する義務(同交付規程29条)と、帳簿・証拠書類を補助事業の完了の日の属する年度の終了後5年間保存し、要求があればいつでも閲覧に供せるようにしておく義務(同交付規程11条2項)が、譲渡人に残ります。譲受人がこれらの報告に必要な数字や資料を出すこと、取得財産を補助事業に使い続けること、再び処分するときは譲渡人に先に知らせることを、事業譲渡契約書に入れておいてください。契約に置く条項の中身は、コラムの6で述べています。

(6)補助金ごとに「承継」の受け皿があるかを先に確かめる

このページで述べたことは、持続化補助金に限った話ではありません。補助金ごとに、交付規程に承継の承認申請や届出の定めがあるかどうかが違い、それによって、事業譲渡を「承継」として通せるのか、「財産処分」の承認申請として通すほかないのかが分かれます。複数の補助金で取得した設備が一つの事業に混ざっていることも珍しくありません。譲渡の話を進める前に、設備ごとにどの補助金のどの版の交付規程が当たるのかを分け、承継の受け皿の有無と、処分制限期間の残りを、一つずつ確かめることから始めてください。

持続化補助金で始めた事業を他社に引き継がせたい事業者の方、引き継ぐ側として検討している事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、承認申請書と契約書を作る前にご相談ください。交付決定通知書、取得財産等管理台帳、譲渡の相手との話の経過があれば、承継の受け皿の有無と処分制限期間の残りから順に、具体的に検討できます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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