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弁護士 岸上大起

「検査員に対する個人攻撃や個人情報の漏洩は、発覚した時点で交付決定を取り消します」と書かれていますが、その取消しは、どの条文に基づくのですか

このページの結論

公募要領に「検査員に対する個人攻撃や個人情報の漏洩は、発覚した時点で交付決定を取り消します」と書かれていました。別の頁には、口頭審査の内容を人に話したことが判明した場合も交付決定の取消しの対象になるとあります。検査で納得できない指摘を受けても、言い返せば全額取消しになるのでしょうか。顧問の税理士や弁護士に相談することもできないのでしょうか。

交付決定を取り消すことができるのは、補助金適正化法17条1項が挙げる三つの場合です。①補助金等の他の用途への使用、②補助事業等に関して交付の決定の内容又はこれに附した条件への違反、③その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分への違反です。検査員に対する言動は、補助事業の遂行とも補助金の使途とも別の事実であり、このどれにも当たりません。交付規程22条1項が挙げる13の号にも、これに対応する号はありません。そして、17条1項は「取り消すことができる」、交付規程22条1項も「取り消し、又は変更することができる」という文言です。「発覚した時点で……取り消します」という書き方は、法律と交付規程が置いた裁量を、公募要領の側で消しているものです。

もっとも、検査に協力しないでよい、ということではありません。報告をせず、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者に対しては、適正化法31条3号が罰則(3万円以下の罰金)を置いています。立法が検査拒否に対して用意したのはこの罰則であって、交付決定の取消しではありません。検査の場で問われているのは、協力するかどうかではなく、どこまでが検査の限度かという点です。立入検査の権限は「補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるとき」に限られ、目的達成上必要最小な限度にとどめられなければなりません(同法23条1項、小滝312頁)。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明――公募要領39頁・48頁と「補助事業の手引き」76頁

中小企業基盤整備機構の中小企業新事業進出促進補助金「公募要領(第4回)」(1.0版。令和8年3月)は、39頁(PDF40頁)に次の記述を置いています(以下、公式資料の閲覧日はいずれも2026年10月23日です)。まず、書かれていることをそのまま引きます。

引用(公募要領(第4回)39頁)「補助事業の進捗状況等の確認のため、補助金支払い以降も、会計検査院や事務局等が抜き打ちで実地検査に入ることがあります。実地検査では、必ず検査員の指示に従い、検査に協力する必要があります。この検査の結果により、交付規程に基づき補助金の返還命令等の指示がなされた場合は、これに必ず従わなければなりません。また、検査員に対する個人攻撃や個人情報の漏洩は、発覚した時点で交付決定を取り消します。」

同じ事務局の「補助事業の手引き」(2026年8月17日・第1.8版)の76頁(PDF77頁)「4-3. 事務局等による検査」は、三つの箇条書きを並べています。

引用(補助事業の手引き76頁)「検査では、必ず検査員の指示に従い、検査に協力する必要があります。事務局が正当と認める理由なく協力を拒否する場合は、交付決定を取り消します。」/「補助事業に関して予告なく実施することがあります。検査により補助金の返還命令等の指示がなされた場合は、これに必ず従わなければなりません。」/「検査員に対する個人攻撃や個人情報の漏洩は、発覚した時点で交付決定を取り消します。」(※原文は箇条書きです。引用に当たり「/」で区切りました。)

同じ向きの記述は、審査の段階についても置かれています。公募要領48頁(PDF49頁)の口頭審査の項です。

引用(公募要領(第4回)48頁)「公平性の観点から、口頭審査の内容を他者に口外することは禁止します。口頭審査の内容を他者に口外したことが判明した場合は、不採択もしくは採択・交付決定の取消、補助金返還の対象となります。」

同じ頁には、「審査対応者が申請事業者自身でないことが判明した場合は、不採択もしくは採択・交付決定の取消、補助金返還の対象となります。」「口頭審査中の申請者からの質問は一切受け付けません。」という記述も並んでいます。手引き5頁(PDF6頁)の「口頭審査内容口外の禁止」も、同文です。

これは、一つの補助金に限られた書き方ではありません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金「公募要領(第1回)」も、57頁(PDF58頁)に「検査員に対する個人攻撃や個人情報の漏洩は、発覚した時点で交付決定を取り消します。」を、52頁(PDF53頁)に口頭審査の口外禁止を、いずれも同じ文言で置いています。

2 交付決定を取り消すことができるのは、17条1項の三つの場合です

法律の文言から確かめます。本補助金に補助金適正化法が及ぶのは、中小機構法16条による準用です。

引用(補助金適正化法17条1項)「各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」

挙げられているのは三つです。①補助金等の他の用途への使用、②補助事業等に関して交付の決定の内容又はこれに附した条件への違反、③その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分への違反です。検査員に対する言動は、補助金をどこに使ったかという話でも、補助事業をどう遂行したかという話でもありません。補助事業の遂行とは別の事実です。

交付規程の側も同じです。中小企業新事業進出促進補助金交付規程(令和7年4月21日規程令7第1号。規程令7第17号及び規程令8第2号による改正後のもの)22条1項は、取消しができる場合を13の号で列挙しています(同規程6頁。PDF7頁)。法令・本規程・本規程に基づく処分若しくは指示への違反(1号)、補助事業以外の用途への使用(2号)、補助事業に関する不正、怠慢、その他不適当な行為(3号)、事情の変更等(4号)、申請内容の虚偽・重複受給等(5号)、賃上げ計画の未表明(6号)、資本金・従業員数等の操作(7号)、完了期限日までの未完了(8号)、実績報告書の未提出(9号)、事業化状況の報告の不履行(10号)、反社会的勢力排除に関する誓約事項への違反(11号)、みなし大企業等への該当(12号)、その他公募要領で定める事項への該当(13号)です。検査員への言動に対応する号は、置かれていません。

そうすると、事務局の側が持ち出せるのは、3号の「補助事業に関する不正、怠慢、その他不適当な行為」か、13号の「その他公募要領で定める事項に該当した場合」のどちらかになります。

3号は、「補助事業に関する」という限定が付いています。検査員への言動は、補助事業に関する行為ではありません。13号は、公募要領に書けば何でも取消事由になる、という読み方を許す文言です。もっとも、交付規程の条項それ自体が補助条件として交付決定に取り込まれているかどうかは、別に検討を要する問題です。この点は、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べていますので、本稿では立ち入りません。ここで申し上げるのは、公募要領に書かれたことを条件と見るとしても、条件には法律上の限界があるということです。

適正化法7条1項は、交付の決定に附する条件の類型を五つ挙げています。経費の配分の変更の承認、経費の使用方法に関する事項、内容の変更の承認、中止又は廃止の承認、予定の期間内に完了しない場合等のすみやかな報告と指示です。検査員への言動は、どれにも当たりません。同条3項は、「これらの規定に定める条件のほか、各省各庁の長が法令及び予算で定める補助金等の交付の目的を達成するため必要な条件を附することを妨げるものではない」としています。しかし、その限界が4項に置かれています。

引用(補助金適正化法7条4項)「補助金等の交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、いやしくも補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであつてはならない。」

文献は、この限界を次のように述べています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』169頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「「必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするような」補助条件は、違法・無効な附款といわなければならない」

私見としては、検査員に対する言動を取消事由とする定めは、補助金の交付の目的を達成するため必要な条件とは言いにくく、7条4項の限界との関係で、違法・無効な附款と見る余地があると考えております。「個人攻撃」という語が法令上の概念ではなく、どのような言動が該当するのかが文言から定まらないことも、同じ向きに働くと考えております。

3 「発覚した時点で……取り消します」――「取り消すことができる」との違い

次に、取消しの効果の書き方です。17条1項は「取り消すことができる」、交付規程22条1項も「取り消し、又は変更することができる」という文言です。いずれも、取り消すかどうかを判断する余地を残した書き方です。これに対し、公募要領39頁と手引き76頁は「発覚した時点で交付決定を取り消します」「交付決定を取り消します」と言い切っています。

この点について、文献は次のように述べています。

引用(同書245頁)「なお、取消権の行使は交付行政庁の裁量事項に属するものというべきである」
引用(同書244頁)「取消権の行使にあたっては、交付決定の内容違反が極めて広範な取消事由であるだけに、補助目的達成の可否について形式的、一時的にではなく、補助関係の全過程を通じて総合的に判定のうえ行うこととすべきであろう」

同書244頁は、これに続けて「一時的な不作為をもって直ちに補助関係を消滅させることは当を得ないものというべきである」とし、「したがって、これらの命令処分をまっては所期の目的が達成されえないような、相手方の重大な義務違反を責めるに足る主観的事情があると認められる場合に、取消権を発動することが相当であると解される」としています。同書246頁注(5)は、碓井光明「補助金」現代行政法体系10巻財政(1984)247頁の「事業遂行命令や是正措置命令により容易に目的を達しえたとみられる事業について、いきなり交付決定の取消をなすことは、裁量権の濫用になるものと思われる。」という指摘を引いています。

裁判例も、同じ向きです。

引用(名古屋高判平成5年2月23日(訟月39巻11号2247頁、判タ859号260頁)。同書246頁注(6)の引用による)「補助金等の交付決定の取消権の行使については、補助事業者の義務違反(条件違反行為)があるというだけで直ちにこれを行い得るものと解すべきではなく、補助目的遂成の可否について補助関係の全過程を通じて総合的に判定し、補助金等交付の初期の目的を達成することが困難となった時点において初めてその取消権を行使すべきものと解するのが相当である。」

この判決と第一審(名古屋地判平成4年4月23日。訟月39巻11号2262頁、判タ799号243頁、判時1443号130頁)の読み方は、コラム「補助金の交付決定は、どのようなときに取り消すことができるのか――裁判例紹介」で正面から扱っています。取消権の行使が裁量にかかることと、その裁量の限界については、Q&A「取消しは、違反があれば必ず行われるのか」で述べています。

私見としては、「発覚した時点で……取り消します」という書き方は、17条1項が「取り消すことができる」と定め、交付規程22条1項が「取り消し、又は変更することができる」と定めた裁量を、自ら行使しないと宣言するものであり、この定めの理解が浅いと言わざるを得ません。実際に取消処分がされた場面では、補助関係の全過程を通じて総合的に判定したのか、より軽い手段で目的を達しえたのではないかという点が、争う側の入口になります。

4 口頭審査の口外禁止――交付決定より前の出来事を、取消事由にできるのか

公募要領48頁は、口頭審査の内容を他者に口外したことが判明した場合に、「不採択もしくは採択・交付決定の取消、補助金返還の対象となります」としています。ここには、時点の問題があります。

口頭審査は、採択の前に行われる審査の一部です。交付決定は、採択の後に補助金交付申請を経て行われます(交付規程9条1項)。したがって、口頭審査の時点では、交付決定はまだ存在していません。17条1項が取消事由とするのは「補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件……に違反したとき」です。存在していない交付決定に附された条件に、それより前の言動が違反する、という組み立ては成り立ちにくいものです。

私見としては、口頭審査の内容を人に話したことを理由とする交付決定の取消しについては、17条1項の取消事由に当たらないとして争う余地があると考えております。もとより、口頭審査で虚偽の説明をした場合は別です。それは申請内容の虚偽の問題であり、交付規程22条1項5号の問題です。ここで申し上げているのは、審査で何を聞かれ何と答えたかを人に伝えた、という一事を取消事由とすることについてです。

もう一つ、文言の広さの問題があります。禁止の対象は「他者」であり、例外が置かれていません。文言どおり読めば、顧問の税理士、認定支援機関、代理人の弁護士に伝えることまで含まれることになります。

申請者が自らの申請について専門家の助言を受けることは、審査の公平性を害するものではありません。弁護士には守秘義務があり(弁護士法23条)、相談の内容が他に流れることはありません。私見としては、専門家への相談を含む形で「他者」を読むことは、補助金の交付の目的を達成するため必要な限度を超えており、7条4項の限界に触れる余地があると考えております。

条件という形をとっていない場合についても、文献は次のように述べています。

引用(同書320頁)「補助条件の形式をとらなくとも、実質的に補助金交付の前提条件として相手方に不当な干渉を加えるものは、すべて本条に違反する行為とみるべきであろう。」

もっとも、ここでいう「本条」は24条(不当干渉等の防止)であり、同条を正面から持ち出すことには難しさがあります。同条の名宛人は「国又は都道府県の職員」であって、中小機構法16条による読替えの後は「独立行政法人中小企業基盤整備機構又は都道府県の職員」となりますが、公募要領や手引きを出しているのは事務局です。また、同書320頁は、同条について「本条はいわゆる訓示的規定である」とも述べています。実務で持ち出すことになるのは、7条4項の限界のほうです。

5 「事務局が正当と認める理由なく」――限度を画すのは23条と比例原則です

手引き76頁は、「事務局が正当と認める理由なく協力を拒否する場合は、交付決定を取り消します」としています。拒否に正当な理由があるかどうかを、事務局が認めるかどうかで決める書き方です。

法律は、検査の要件を客観的に定めています。

引用(補助金適正化法23条1項)「各省各庁の長は、補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるときは、補助事業者等若しくは間接補助事業者等に対して報告をさせ、又は当該職員にその事務所、事業場等に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」

「補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるとき」です。「事務局が必要と認めるとき」ではありません。そして、同条2項は「前項の職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の要求があるときは、これを提示しなければならない」とし、3項は「第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」としています。文献は、この権限の限度をこう述べています。

引用(同書312頁)「行政機関の職員が、補助行政執行上必要があるとはいえ一般私人の事務所等に立ち入り、検査し、質問することは私権の制限となるので、立入検査等の権限は目的達成上必要最小な限度にとどめられなければならない(比例原則)。」

同書313頁は、本法の立入検査権・質問権の行使について、罰則による実効性の担保があること等を勘案すれば「直接の物理的強制は許容されないものと解すべきであろう」とし、「したがって、相手方の抵抗を排除してまで強制的に立入検査等を行うことは、差し控えるべきものと思われる」としています。

そのうえで、重要なのは、協力しなかった場合に法律が何を用意しているかです。適正化法31条3号は、23条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者を、3万円以下の罰金に処するとしています。立法が検査拒否に対して置いたのは、この罰則です。交付決定の取消しではありません。

6 公式の説明は、一方当事者の見解です

中小機構・中小企業庁・各事務局の説明は、公正な第三者による解説ではなく、補助金をめぐる紛争の一方当事者の見解です。公式の説明だからと鵜呑みにするのは非常に危険です。

本件について申し上げれば、次のとおりです。交付決定を取り消すことができる場合は、適正化法17条1項が三つに限って定めています。交付規程22条1項も、13の号を挙げて定めています。検査員への言動と、口頭審査の内容を人に話したことは、そのどこにもありません。そして、17条1項は「取り消すことができる」、交付規程22条1項は「取り消し、又は変更することができる」という文言です。それにもかかわらず、公募要領39頁と手引き76頁は「発覚した時点で……取り消します」と言い切っています。

この書き方が実務で何をもたらすかを申し上げます。検査で納得できない指摘を受けたときに、根拠を尋ねること、資料提出の範囲を確かめること、検査の記録の訂正を申し出ること、立会人を置くこと――いずれも、正当な防御です。それが「個人攻撃」「協力拒否」と評価されるのではないかと恐れて、誤った指摘にその場で同意してしまうのであれば、失うものは大きいと考えております。後に取消処分や返還命令を争う段階で、検査の場の経過は、主張の出発点になります。

なお、取消しに先立って意見を述べる機会が法律上保障されているわけではないことには、注意が必要です。適正化法24条の2は、補助金等の交付に関する各省各庁の長の処分について、行政手続法2章及び3章の規定を適用しないとしています。この点は、Q&A「取消しの前に、言いたいことを聞いてもらえるのか」で述べています。だからこそ、処分より前の段階――検査の場――で記録を残しておくことが要になります。

次のような場合は、お早めにご相談ください

  • 実地検査・随時調査を受けており、求められている資料の範囲に疑問がある
  • 検査の場で指摘に異を唱えたことを「協力拒否」「個人攻撃」と言われている
  • 口頭審査の内容を顧問や代理人に伝えてよいのか迷っている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 立入検査に来ると言われたら(Q&A)/取消しは、違反があれば必ず行われるのか(Q&A)/取消しの前にしておくこと(コラム)

7 検査の場と口頭審査の場で、どう動くか

公募要領の書き方を争うことと、検査の場で何をしておくかは、別のことです。後で争うための材料は、その場でしか残せません。次の四つを整理しておいていただくのがよいと考えております。

  • (1)誰が、何の権限で来たのかを記録に残す。交付規程27条4項が実地検査の主体として挙げているのは、会計検査院、経済産業省又は中小機構です(同規程8頁)。20条の報告徴収・立入検査の主体は中小機構です(同規程5頁)。適正化法23条2項は、立入検査・質問をする職員について、身分を示す証票の携帯と、関係者の要求があるときの提示を義務づけています。文献は、この証票の発行権者は「各省各庁の長」であり、26条の規定により権限の委任が行われた場合においても、発行権者は受任者ではなく委任者(交付行政庁)に留保されているものと解すべきである、としています(同書313頁注(1))。来訪した方の所属・氏名、提示を受けた証票、検査の根拠として示された条項を、その日のうちに書き留めてください。
  • (2)求められた資料は、項目ごとに一覧にして残す。検査の権限は「補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるとき」に限られ、目的達成上必要最小な限度にとどめられなければなりません(適正化法23条1項、同書312頁)。何をいつ求められ、何をいつ出したのかを項目ごとに記録しておけば、後に範囲を争うことができます。口頭で求められたものは、その場で確認して書き留めてください。
  • (3)納得できない指摘には、その場で同意しない。検査の場で示された理解が事実と違うのであれば、同意せず、「確認して回答します」と述べて持ち帰ってください。異を唱えること自体が取消事由になるわけではありません。前記2のとおり、交付決定を取り消すことができるのは17条1項の三つの場合に限られます。他方、23条1項の質問に対して虚偽の答弁をすることは、31条3号の罰則の対象です。黙ることと、事実と違うことを述べることは、まったく別です。
  • (4)検査の直後と口頭審査の直後に、手控えを作る。何を聞かれ、何と答えたか。その日のうちに書けば残りますが、時間が経てば残りません。公募要領48頁の口外禁止を読んで、手控えを作ること自体をためらう必要はないと考えております。禁止されているのは「他者に口外すること」であって、自らの記録を作ることではありません。

最後に一つ申し上げます。公募要領48頁は、「口頭審査中の申請者からの質問は一切受け付けません。」ともしています。審査の場で確かめられないのであれば、確かめられなかったという事実を記録に残すほかありません。不採択・減額・取消しを後に争う段になって、審査の過程で何が前提にされていたのかが問題になることがあります。そのときに手控えがあるかないかで、できることが変わります。

実地検査・随時調査を受けている事業者の方、検査の場で指摘に異を唱えたことを「協力拒否」「個人攻撃」と言われている方、口頭審査の内容を顧問や代理人に伝えてよいのか迷っている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、お早めにご相談ください。交付決定通知書、交付規程、公募要領と手引きの該当頁、検査の際に受け取った書面や求められた資料の一覧があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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