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弁護士 岸上大起

補助事業の実施の状況を調べないまま交付決定を取り消すことは許されるのか――法が置いた段階的な手段

このページの結論

補助事業の実施の状況を調べないまま、交付決定を取り消すことは許されるのか

補助金適正化法は、遂行の状況の報告(12条)、遂行命令・一時停止命令(13条)、額の確定に当たっての調査(15条)、是正措置命令(16条1項)を第三章「補助事業等の遂行等」に置き、交付決定の取消し(17条1項)を次の第四章「補助金等の返還等」の冒頭に置いています。これらの判断の基礎となる事実を交付主体が自ら集めるための権限として、報告の徴取・立入検査・質問の定め(23条1項)も置かれています。

解説書も裁判例も、義務違反があるというだけで直ちに取消権を行使してよいものではないという理解を示しています。そうであれば、補助事業が現に実施されたのかどうかは、取消しをするかどうかを判断するに当たって当然に考慮すべき事情であり、交付主体が自ら23条1項の調査権限を行使せず、実施の状況を把握しないまま取消しをしたのであれば、考慮すべき事情を考慮していない処分として争う余地があると考えております。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

補助事業は計画のとおりに実施し、設備も現に動いている。それなのに、実施の状況を尋ねられることも、現地を見に来られることもないまま、交付決定を取り消すという通知が届いた。――このようなとき、取消しはそのまま受け入れるほかないのでしょうか。

先に答えを申し上げます。補助金適正化法は、交付決定をした後の規律として、補助事業の遂行の状況を報告させる定め(12条)、交付決定の内容や条件に従って遂行されていないと認めるときに遂行を命じ、従わなければ一時停止を命ずる定め(13条1項・2項)、実績報告を受けて補助金の額を確定する際の調査の定め(15条)、成果が交付決定の内容に適合しないと認めるときの是正措置命令の定め(16条1項)を、第三章「補助事業等の遂行等」に置いています。交付決定の取消し(17条1項)は、この章ではなく、次の第四章「補助金等の返還等」の冒頭に置かれた規定です。そして、これらの判断の基礎となる事実を交付主体が自ら集めるための権限として、報告の徴取・立入検査・質問の定め(23条1項)が、雑則の章に置かれています。

補助金適正化法の解説書も裁判例も、補助事業者に義務違反があるというだけで直ちに取消権を行使してよいものではない、という理解を示しています。そうであれば、補助事業が現に実施されたのか、補助対象経費が現に支出されたのかという実施の状況は、取消しをするかどうかを判断するに当たって当然に考慮すべき事情であり、交付主体が自ら23条1項の調査権限を行使せず、実施の状況を把握しないまま取消しをしたのであれば、考慮すべき事情を考慮していない処分として争う余地があると考えております。

以下では、法が置いた段階を条文で確かめ、解説書と裁判例がこれをどう読んでいるかを見たうえで、取消通知とその前の経緯のどこを確かめるべきかを述べます。なお、取消しに裁量があるのか、全部の取消しか一部の取消しかという量の問題は、「補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか」で扱っています。本稿は、その手前の「取消しの前に何がされることになっているのか」を扱います。

以下は、中小機構が交付する事業再構築補助金のように、補助金適正化法が適用され、又は中小機構法16条により準用される補助金を念頭に置いた整理です。事務局が交付主体となる補助金(負担付贈与契約型)は、同法が「補助金等」として規律する対象ではありませんので、本稿で述べる12条以下の規律がそのまま当てはまるものではありません。この類型の全体像は事務局が交付する補助金で、国の補助金を財源として国以外の者が交付する給付金が「間接補助金等」に当たる場合の規律についてはこのサイトが扱う補助金で述べています。

1 法が置いた順番――報告させ、命じ、調べる

補助金適正化法は、交付決定をした後に交付主体がとるべき手段を、順を追って定めています。条文で確かめます。

まず、補助事業者は、各省各庁の長の定めるところにより、補助事業の遂行の状況を報告しなければならないとされています(12条)。交付主体は、この報告によって事業の進み具合を知ることになります。

その報告等によって、補助事業が交付決定の内容や条件に従って遂行されていないと認めるときは、交付主体は遂行を命ずることができ、その命令に違反したときは一時停止を命ずることができます。

引用(補助金適正化法13条)「各省各庁の長は、補助事業者等が提出する報告等により、その者の補助事業等が補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件に従つて遂行されていないと認めるときは、その者に対し、これらに従つて当該補助事業等を遂行すべきことを命ずることができる。」(1項)
「各省各庁の長は、補助事業者等が前項の命令に違反したときは、その者に対し、当該補助事業等の遂行の一時停止を命ずることができる。」(2項)

補助事業が完了すると、補助事業者は成果を記載した実績報告書を提出します(同法14条)。これを受けた交付主体は、書類の審査と、必要に応じて行う現地調査等によって、成果が交付決定の内容と条件に適合するかどうかを調査することとされています。

引用(補助金適正化法15条)「各省各庁の長は、補助事業等の完了又は廃止に係る補助事業等の成果の報告を受けた場合においては、報告書等の書類の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、その報告に係る補助事業等の成果が補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件に適合するものであるかどうかを調査し、適合すると認めたときは、交付すべき補助金等の額を確定し、当該補助事業者等に通知しなければならない。」

調査の結果、成果が交付決定の内容と条件に適合しないと認めるときは、適合させるための措置をとるべきことを命ずることができます(同法16条1項)。この是正措置命令は、「補助事業等の完了又は廃止に係る補助事業等の成果の報告を受けた場合において」と定められているとおり、実績報告を受けた段階の手段です。実績報告より前の段階については、前記の遂行命令(13条1項)が用意されています。

そして、これらの判断の前提となる事実を交付主体が自ら集めるための手段が、同法23条1項です。この規定は、ここまでに挙げた規定とは別の章(雑則)に置かれた権限規定ですが、交付決定をした後の各段階で共通して使われるものです。

引用(補助金適正化法23条1項)「各省各庁の長は、補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるときは、補助事業者等若しくは間接補助事業者等に対して報告をさせ、又は当該職員にその事務所、事業場等に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」

報告を求めること、立ち入って帳簿書類を検査すること、関係者に質問すること。補助事業が実際にどう行われたのかを知るための手段は、法律の上で交付主体に与えられているということです。この権限の中身と限界(必要最小限度にとどまること、実力による強制が予定されていないこと等)は、「補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか」で扱っています。

2 取消しは「補助金等の返還等」の章の冒頭にある

ここまでに挙げた規定のうち、11条から16条までは、補助金適正化法の第三章「補助事業等の遂行等」に置かれています。交付決定の取消しを定める17条は、そこではなく、次の第四章「補助金等の返還等」の冒頭にあります。章の名のとおり、補助関係を続けるための章と、補助関係を終わらせて返還を求めるための章とが、分けて置かれているということです。

その17条1項は、取消しについて「取り消すことができる」と定めています。

引用(補助金適正化法17条1項)「各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」

「取り消さなければならない」ではありません。取消事由に当たる事実があることと、現に取消権を行使してよいこととは、同じではないということです(同法17条1項)。取消事由そのものが3類型に限られることと、裁量の限界については、交付決定の取消し・返還請求のページで述べています。

なお、同条3項は、補助金の額の確定があった後にも取消しの規定の適用があるとしています。額の確定を受けた後であっても取消しはあり得るということですが、裏を返せば、額の確定(15条)がされているということは、交付主体が一度は、書類の審査と必要に応じた現地調査等によって、成果が交付決定の内容と条件に適合すると認めたということでもあります(同法15条)。

3 解説書――他にとるべき適切な方法がない場合に限定して

この配列を、補助金適正化法の解説書はどう読んでいるでしょうか。小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』(株式会社全国会計職員協会、2016)は、16条の解説において、まず、交付決定を取り消して既交付分の返還を求める措置は、資金回収を通じて国の損失を防ぐ消極的な効果をもつとしても、より広い社会経済的効果の側面からみれば、資金の投下により実現された事業成果を積極的に活用する方策とはいい難いと述べたうえで(同237〜238頁)、次のように続けています。

引用(小滝・前掲238頁)「したがって、交付決定の取消しは、他にとるべき適切な方法がない場合に限定して行われるべきものと考えられ、既存の補助事業等の成果を交付決定の内容に即して是正させ、積極的に補助目的を達成させることが可能と認められる場合には、補助関係を直ちに終結させることなく、引き続き事業の是正措置を講じさせることにより補助目的を達成するよう努めることが、非高権的な形成活動たる補助金行政のあるべき姿と考えられる。」

17条の解説でも、同じ理解が繰り返されています。まず、交付決定が瑕疵なく成立した以上、これに基づいて形成された補助関係は「既得の権利利益の保護及び既成の法律秩序の維持の見地から、みだりにこれを消滅させることは許されない」とされ、17条は、交付主体の撤回権を法律上明示的に留保して相手方の信頼の保護との調和を図った規定であると位置づけられています(同242頁)。

そのうえで、取消権の行使については、同じ244頁の次の二か所で述べられています((1)と(2)の間には、不作為の場合について着手命令を発すべきことを述べた一文が挟まっています)。

引用(小滝・前掲244頁)(1)「取消権の行使にあたっては、交付決定の内容違反が極めて広範な取消事由であるだけに、補助目的達成の可否について形式的、一時的にではなく、補助関係の全過程を通じて総合的に判定のうえ行うこととすべきであろう。」
(2)「交付決定の内容に不適合な事業を実施している場合においても、完了前にあってはなお是正の余地のある限り、事業遂行命令(第一三条第一項)をもって対処することが妥当と考えられ、事業が不適合のまま完了実績報告がなされた段階においても、なお是正の余地のある限り是正措置命令(第一六条第一項)をもって対処すべきものと考えられる……したがって、これらの命令処分をまっては所期の目的が達成されえないような、相手方の重大な義務違反を責めるに足る主観的事情があると認められる場合に、取消権を発動することが相当であると解される。」

「補助関係の全過程を通じて総合的に判定」するとは、ある一時点の形式的な不適合だけを見るのではなく、交付決定から現在までの経過を通して、補助の目的が達成され得るかどうかを見るということです。そして、是正の余地がある限りは命令によって対処すべきであり、取消しはその先にある、というのがこの解説書の理解です。

次のような場合は、手続が進む前にご相談ください

  • 交付決定を取り消す予定であるという事前通知が届いた
  • 是正の機会も説明の機会もないまま、取消通知が届いた
  • 補助事業は完了し、額の確定を受けているのに、返還を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 交付決定の取消し・返還請求(対応ページ)/交付決定取消しの事前通知が届いたら(Q&A)/取消しに裁量はあるのか(Q&A)

4 裁判例――義務違反があるというだけでは足りない

裁判例も、同じ区別をしています。名古屋高判平成5年2月23日訟月39巻11号2247頁、判タ859号260頁は、承認を受けない担保提供について、補助金適正化法22条に反する行為であると同時に交付決定に附された条件にも反する行為であり、その時点で17条1項所定の取消事由が生じたとしたうえで、「直ちに取消権を行使し得る状態であったかはともかくとして」と述べ、取消事由が生じたことと取消権を行使できることとを分けています。そして、取消権の行使は、補助事業者の義務違反(条件違反行為)があるというだけで直ちに行い得るものと解すべきではなく、補助目的達成の可否について補助関係の全過程を通じて総合的に判定し、補助金等交付の初期の目的を達成することが困難となった時点において初めて行使すべきものと解するのが相当であると判示しました(この判示の全文は、「補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか」に引用しています)。なお、同判決については上告がされていますが、上告審の裁判は公刊物に見当たりません。

この事件で交付主体が実際にとった行動も、あわせて見ておく意味があります。判決が認定したところによれば、交付主体は、条件違反と法令違反の事実を知った後も、補助の対象である園舎が保育園として将来にわたって使用されることが補助目的の達成のために望ましいとして、県や市と連絡をとりながら、根抵当権の設定登記の抹消や保育園の運営を正常化するための努力を求め、取消権の行使を控え続けていました。そして、他の債権者の申立てにより破産宣告を受けることが避けられない状況となった後も、園舎が保育園として将来にわたって使用されることが望ましい方策であること、補助事業者が保育園の運営を断念していないこと等を理由として、取消権の行使を破産宣告の後に行うこととし、破産宣告の翌日に至って、交付決定を取り消し、返還命令を発しています。

判決は、この経緯について、次のように認定しています。

引用(名古屋高判平成5年2月23日)「右破産宣告の直前において、既に破産者について本件補助目的が達成される可能性は殆ど消滅するに至っており、本件交付決定について取消権を行使することも止むを得ない状態となっていた」

もっとも、この事件は、交付決定の取消しそのものの適法性を争った訴訟ではありません。審理されたのは、取消し後の返還命令に基づく返還請求権が破産財団に対する財団債権に当たるかどうか(旧破産法47条2号本文にいう破産宣告前の原因に基づいて生じた債権に当たるかどうか)であり、右の認定は、債権発生の基本となる法律関係が破産宣告前に生じていたかどうかを判断する文脈でされたものです。それでも、そこに示された順序――違反があったから取り消したのではなく、補助目的の達成の可能性が消滅した段階に至って取消権の行使が止むを得ないものとなった――は、取消しが法の予定するどの位置にあるのかを示していると考えております。

5 調べないまま取り消したことを、どう争うか

ここからは当職の見解です。

裁量処分は、裁量権の範囲を超え、又はその濫用があった場合に限り、裁判所が取り消すことができるとされています(行政事件訴訟法30条)。その判断の枠組みについて、最一小判平成18年11月2日民集60巻9号3249頁は、都市施設に関する都市計画の決定又は変更を審査する場面について、「その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である」と判示しています。考慮すべき事情を考慮しないことが、処分を違法とする筋道の一つとして挙げられているところです。

では、何が「考慮すべき事情」に当たるのか。この点について、山本拓・最高裁判所判例解説民事篇令和5年度551頁は、次のように述べています。

引用(山本拓・最高裁判所判例解説民事篇令和5年度551頁)「行政裁量の存否及び範囲は、前記2のとおり、行政実体法の解釈問題であるから、具体的な裁量処分との関係で、判断過程にどの程度まで踏み込んだ審査を行うか、どのような事情を考慮・重視すべきか(し得るか)といった点についても、個々の処分ごとに、その根拠法規の解釈を通じて、適切な基準を合理的に導き出す必要があると考えられる。」

考慮すべき事情は、根拠法規の解釈を通じて導かれる。そうであれば、補助金適正化法の解釈を通じて導くことになります。前記のとおり、同法は、第三章「補助事業等の遂行等」において、報告させ(12条)、従うよう命じ(13条1項)、従わなければ一時停止を命じ(同条2項)、実績報告を調査し(15条)、成果が適合しなければ是正を命ずる(16条1項)という段階を置き、そのための事実を得る手段として報告の徴取・立入検査・質問の権限(23条1項)を与えています。これらは、いったん交付を決定した以上は、命令と調査を通じて補助事業を交付決定の目的のとおり実施させ、投下された補助金とその成果を活かすことを予定した仕組みであると読めます。

この読み方に立てば、補助事業が現に実施されたのか、補助対象経費が現に支出されたのかという実施の状況は、17条1項の取消しをするかどうかを判断するに当たって当然に考慮すべき事情であると考えております。そして、交付主体が自ら23条1項の調査権限を行使せず、実施の状況を把握しないまま取消しをしたのであれば、判断の過程において考慮すべき事情を考慮していないものとして、裁量権の逸脱又はその濫用を主張する余地があると考える次第です。

もっとも、これは「義務違反があれば取消しはいつでも違法になる」という意味ではありません。違反の内容が重く、是正によっても補助の目的を達することができないと判断される場面では、取消しがやむを得ないものとされることもあり得ます。前記4の裁判例が、経緯を見たうえで、取消権の行使も止むを得ない状態となっていたと認定したのも、そのような場面です。問題にしているのは、その判断の過程で、補助事業が現にどう行われたのかが調べられ、考慮されたのか、という点です。

6 取消通知とその前の経緯のどこを確かめるか

取消通知や、取消しの事前通知を受け取ったときに確かめていただきたい点のうち、本稿の筋道に関わるのは次の5点です。指摘された事実が3つの取消事由のどれに当たるとされているか、期限までに何をするか、集めておく資料といった全般の確認事項は、「交付決定取消しの事前通知が届いたら」に挙げてあります。

  • 取消しの前に、補助事業の遂行の状況について報告を求められたこと(12条・23条1項)があるか。あるとすれば、その回答はどう扱われたか。
  • 遂行命令・一時停止命令(13条)や是正措置命令(16条1項)が出されたことがあるか。出されていないとすれば、なぜ命令ではなく取消しなのかが、通知に書かれているか。
  • 補助金の額の確定(15条)を受けているか。受けているとすれば、交付主体は一度は、成果が交付決定の内容と条件に適合すると認めたことになる。
  • 立入検査や関係者への質問(23条1項)が行われたか。行われていないとすれば、交付主体は何を資料として実施の状況を判断したのか。
  • 取消通知に示された理由(同法21条の2)から、以上の経過を読み取ることができるか。

交付決定の取消しに際して理由を示すことは法律上の義務です。理由の書き方そのものを争う筋道については、「取消しの処分性と理由付記の不備」で述べています。

取消通知には、原則として処分があったことを知った日から6か月という出訴期間があります(行政事件訴訟法14条1項)。手元の書類を整理し、上記の経過を確かめるところから始めていただければと思います。補助事業の実施を示す資料――契約書、発注書、納品書、請求書、振込の記録、工事や設置の写真、稼働の記録――は、時間がたつほど集めにくくなります。取消通知や事前通知を受け取った段階で、ご相談ください。

よくある質問

交付決定を取り消す前に、是正の機会を与えなければならないのですか。

補助金適正化法は、実績報告を受けた成果が交付決定の内容と条件に適合しないと認めるときは、適合させるための措置をとるべきことを命ずることができると定めています(16条1項)。実績報告より前の段階については、遂行を命じ、従わなければ一時停止を命ずる規定があります(13条1項・2項)。もっとも、これらは交付主体の権限であり、命令を経なければ取消しができないと明文で定められているわけではありません。解説書は、是正の余地がある限りは命令で対処すべきであり、取消しは、これらの命令をまっては所期の目的が達成されえない場合の手段であるとしています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』244頁(株式会社全国会計職員協会、2016))。

交付決定取消しの事前通知が届いたら(Q&A) →

出典:補助金適正化法16条(e-Gov法令検索)

交付主体は、補助事業の実施の状況を自分で調べなければならないのですか。

補助金適正化法23条1項は、予算の執行の適正を期するため必要があるときは、補助事業者に報告をさせ、職員に事務所・事業場等へ立ち入って帳簿書類を検査させ、関係者に質問させることができると定めています。また、実績報告を受けた場合には、書類の審査と必要に応じて行う現地調査等により、成果が交付決定の内容と条件に適合するかどうかを調査することとされています(15条)。これらの権限を行使するかどうかは交付主体の判断に委ねられていますが、実施の状況を把握しないまま取消しがされたのであれば、考慮すべき事情を考慮していない処分として争う余地があると考えております。

出典:補助金適正化法23条1項(e-Gov法令検索)

補助事業を実際に行っていれば、交付決定の取消しは違法になりますか。

そうとは限りません。補助金適正化法17条1項の取消事由(他の用途への使用・補助条件違反・法令違反)に当たる事実があり、その内容が重く、是正によっても補助の目的を達することができないと判断される場面では、取消しがやむを得ないものとされることもあり得ます。裁判例も、義務違反があるというだけで直ちに取消権を行使できるものではないとしたうえで、補助目的が達成される可能性が殆ど消滅していた事案について、取消権を行使することも止むを得ない状態となっていたと認定しています(名古屋高判平成5年2月23日訟月39巻11号2247頁、判タ859号260頁。上告審の裁判は公刊物に見当たりません。また、この事件で審理されたのは、取消し後の返還請求権が財団債権に当たるかどうかであり、取消処分の適法性が訴訟物とされた事件ではありません)。補助事業の実施の状況は、取消しの可否を判断する上で考慮すべき事情の一つです。

取消しに裁量はあるのか(Q&A) →

※ 本稿は、執筆時点の法令・文献・裁判例に基づく一般的な整理であり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。本稿の第5節は当職の見解であり、交付主体が補助事業の実施の状況を調査しなかったことを理由として交付決定の取消しを違法とした裁判例は、当職が調べた範囲では見当たりません。

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