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弁護士 岸上大起

行政から求められた資料は、どこまで出さなければならないのか――報告徴収・現地調査の「必要な限度」

このページの結論

行政から求められた資料は、どこまで出さなければならないのか

まず、求められた資料には、できる限り応じた方がよいと考えております。額の確定の後の報告の求めは補助金適正化法23条1項に基づくものと考えられ、これに応じないことは、法令又はこれに基づく処分への違反として交付決定の取消しの理由にされ得ます(17条1項)。報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者には、罰則の定めもあります(31条3号)。

そのうえで、求める側の権限も無制限ではありません。報告徴収も立入検査も「補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるとき」という要件で限られており、文献は、不必要に詳細なデータを徴収することは避けるべきであろうとし、立入検査等の権限は目的達成上必要最小な限度にとどめられなければならない(比例原則)としています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』312頁(株式会社全国会計職員協会、2016))。これは断るかどうかという話ではなく、その求めがどの条文を根拠とするものか、その条文が許している限度はどこまでかを分けて整理する話であると考えております。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

実績報告を出したあとも、資料の提出を重ねて求められる。――こうしたとき、どこまで出さなければならないのでしょうか。

そのうえで、結論の後半を申し上げます。求める側の権限も、無制限ではありません。報告を求める権限も立入検査の権限も、「補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるときは」行使することができるものとされており(23条1項)、額の確定に当たって行われる調査も、「必要に応じて行う現地調査等により」成果が交付決定の内容及び条件に適合するかどうかを調べるものとされています(15条)。交付決定に附する条件についても、交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者に干渉するようなものであってはならないという限界が定められています(7条4項)。

ですから、これは断るかどうかという話ではないと考えております。その求めはどの条文を根拠とするものか、その条文が許している限度はどこまでか、応じられる部分はどこまでかを分けて整理し、応じられないと考える部分についてはその理由を書面で述べる、という話として組むのが筋であろうと考えております。

なお、検査の場に職員が来たときの応対――協力すべきことと、その場で即答する必要がないことの区別、残しておく記録――については、「補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか」で述べています。本稿が扱うのは、その手前にある「求められた資料の範囲」と、「その求めの根拠となる条文の見分け方」です。

以下は、中小機構が交付する事業再構築補助金のように、補助金適正化法が適用され、又は中小機構法16条により準用される補助金を念頭に置いた整理です。事務局が交付主体となる補助金(負担付贈与契約型)は、同法が「補助金等」として規律する対象ではありませんので、資料の提出の求めについても、まず交付規程の定めを確かめることになると考えております(この類型の全体像は事務局が交付する補助金で述べています)。

1 まず、できる限り応じる――取消しの理由を作らない

資料の提出を求める根拠として、まず挙がるのが補助金適正化法23条1項です。

引用(補助金適正化法23条1項)「各省各庁の長は、補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるときは、補助事業者等若しくは間接補助事業者等に対して報告をさせ、又は当該職員にその事務所、事業場等に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。」

この規定に基づく報告の求めに応じなかった場合には、そのことが法令又はこれに基づく処分への違反であるとして、同法17条1項に基づく交付決定の取消しがされることが考えられます。同項が定める取消事由は、①補助金等の他の用途への使用(第1類型)、②交付決定の内容又はこれに附した条件への違反(第2類型・補助条件違反)、③その他法令又はこれに基づく処分への違反(第3類型・法令違反)の3つですが、求めに応じないことは、このうち3つ目(第3類型)に当たるとされ得るところです。この3つの類型の呼び名は、交付決定の取消し・返還請求の整理に合わせています。

さらに、報告をしないこと自体に罰則が定められています。31条3号は、23条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者を、三万円以下の罰金に処するものとしています。中小機構が交付する補助金についても、中小機構法16条が補助金適正化法の規定を「罰則を含む。」ものとして準用していますので、この罰則の定めが及びます。

交付規程も、同じ方向の定めを置いています。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程20条は、中小機構が、補助事業の適切な遂行のため必要があると認めたときは、報告を求め、事業所等に立ち入って帳簿書類その他の物件を検査し、関係者に質問することができるとしたうえで、「この場合において、補助事業者は協力するものとする」と定めています。

ですから、出発点は、応じられるものには応じておくことです。交付決定の取消しの理由を作らないという意味で、まずここを押さえておいていただきたいと考えております。以下で述べるのは、そのうえで、どこまでが「必要な限度」なのかという話です。

2 その求めの根拠を確かめる――額の確定の前か、後か

限度を考える前に、確かめておくことがあります。その求めが、どの条文を根拠とするものかです。補助金適正化法には、資料を調べるための規定が2か所に置かれています。

一つは、同法15条です。実績報告を受けた交付主体が、補助金の額を確定するために行う調査の規定です。

引用(補助金適正化法15条)「各省各庁の長は、補助事業等の完了又は廃止に係る補助事業等の成果の報告を受けた場合においては、報告書等の書類の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、その報告に係る補助事業等の成果が補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件に適合するものであるかどうかを調査し、適合すると認めたときは、交付すべき補助金等の額を確定し、当該補助事業者等に通知しなければならない。」

もう一つが、前記の23条1項です。こちらは、額の確定の前後を問わず、予算の執行の適正を期するため必要があるときに行使することができる権限として、雑則の章に置かれています。

この2つは、使える場面が違います。15条は、実績報告を受けて額を確定するための調査の規定ですから、既に額の確定を受けた後の求めについて、15条を根拠とすることはできないと考えております。額の確定の後に資料の提出を求められた場合、その根拠は23条1項になると考えております。逆に、額の確定を待っている段階であれば、15条の「必要に応じて行う現地調査等」として求められていることも、23条1項に基づいて求められていることもあり得ます。

根拠が違えば、限度の立て方も違ってきます。15条であれば、成果が交付決定の内容及び条件に適合するかどうかを判断するために必要かどうかが基準になります。23条1項であれば、予算の執行の適正を期するために必要かどうかが基準になります。そこで、求めを受けたときは、どちらを根拠とするものなのかを確かめ、分からなければ尋ねておくことになります。

なお、交付決定から取消しに至るまでに法が置いた段階(遂行の状況の報告、遂行命令、額の確定の調査、是正措置命令)の全体像は、「補助事業の実施の状況を調べないまま交付決定を取り消すことは許されるのか」で述べています。

3 15条の「現地調査等」が確かめること

15条の条文を、もう一度読んでみてください。調査の対象とされているのは、「その報告に係る補助事業等の成果が補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件に適合するものであるかどうか」です。そして、その手段は「報告書等の書類の審査」と「必要に応じて行う現地調査等」とされています。「必要に応じて行う」という限定が、条文に書かれているところです。

交付決定は、交付申請書とこれに添付した見積書等によって、何にいくらを充てるかを定めたうえでされています。そうすると、額の確定の段階で確かめられるべきことは、その決定のとおりに補助事業が実施されたかどうかです。注文書、納品書、実際に支払ったことの裏付け、現物の写真といった資料によって、決定の内容と実際に実施された事業の内容が適合すると判断できるのであれば、それ以上の資料がなくても額の確定はできると考えております。

この点に関して、補助対象経費と直接の関係のない事業年度の総勘定元帳の提出を求められることがあります。額の確定や補助金の支払という意味で必要のないものであれば、必要がないと述べていただいて差し支えないと考えております。この点は、「事業再構築補助金の交付期限(支払遅滞)とその他自主返納問題等について」の13「差し戻し・追加書類要求への対応」でも触れています。

もっとも、「適合する」が交付決定の内容との完全な一致を意味するものではないことや、計画と実績の差異がどこまで許されるかは、それ自体が一つの論点です。この点は、「額の確定(補助金適正化法15条)とは何か」で、解説書の記述に即して述べています。

4 23条1項の限度――「必要があるとき」という要件

23条1項の権限は、「補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるときは」行使することができるものとされています。解説書は、この規定について、交付行政庁の行政調査の権限及びその限界について定めた規定であると説明しています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』311頁(株式会社全国会計職員協会、2016))。権限を定めた規定が、同時にその限界を定めた規定でもあるという読み方です。

その限界について、同書は、立入検査等の権限は目的達成上必要最小な限度にとどめられなければならない(比例原則)とし、報告徴収についても、不必要に詳細なデータを徴収することは避けるべきであろうとしています(同312頁)。この2つは、「補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか」で既に紹介したとおりです。あわせて、同書は、報告徴収が、事業の遂行の状況の報告(同法12条)と異なる点は報告の時期・内容等が弾力的であることにあるとしたうえで、本条の報告徴収の権限は極めて強制的色彩の強いものであるだけに、その運用にあたっては十分な配慮が必要と思われる、としています(同312頁)。

精算が終わったから調査はない、とは言えません

他方で、同じ解説書は、次のようにも述べています。

引用(小滝・前掲312〜313頁)「これらの権限の行使も、『補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるとき』に限定されることは、報告徴収の場合と同様であるが、必要がある限り、額の確定(精算手続)により補助関係の消滅した後においても、これを行うことは可能と解される。」

補助事業が完了し、額の確定も済んでいるのだから、もう調査に応じる必要はない――という読み方は、この記述に照らすと採ることができません。前記の交付規程も、補助事業終了後に予告なく実地検査を実施することができるとしています(同交付規程27条4項前段)。限度を論ずることはできますが、時期が過ぎたことを理由に求め自体を否定することはできないと考えております。

次のような場合は、回答の期限が来る前にご相談ください

  • 実績報告を出した後、追加の資料の提出を繰り返し求められている
  • 自社では持っていない書類の提出を求められ、提出できない状態が続いている
  • 資料を出さなければ交付決定を取り消すという趣旨の連絡が来た
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 立入検査(実地検査)の場での応対(Q&A)/補助金の減額確定への対応(対応ページ)/交付決定の取消し・返還請求(対応ページ)

5 7条4項――必要な限度をこえる指示と補助条件

ここからは当職の見解です。

交付決定には、条件が附されます。同法7条1項は、交付の目的を達成するため必要があるときは、同項が掲げる事項につき条件を附するものとし、同条3項は、これらのほか、交付の目的を達成するため必要な条件を附することを妨げないとしています。そして、交付決定に附された条件の中に、交付主体の指示に従うべきことが含まれていることがあります。そうすると、資料の提出を求めることが「指示」であるとして、これに従わなかったことが補助条件への違反――前記の取消事由の2つ目(第2類型)――であると扱われることが考えられます。

しかし、交付決定に附する条件には、法律上の限界が定められています。

引用(補助金適正化法7条4項)「補助金等の交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、いやしくも補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであつてはならない。」

条件そのものが必要な限度をこえてはならないとされているのですから、条件に基づく指示も、同じ限度の内側にあるものに限られることになります。そうであれば、必要な限度をこえる指示に従うことは、そもそも補助条件になり得ず、そのような指示に従わなかったことが補助条件違反となることもないと考えております。

取消事由の2つ目が何を指すかについて、解説書は次のように述べています。

引用(小滝・前掲244頁)「交付決定の内容(従たる内容の補助条件も含む。)に違反するとは、具体的には交付決定の内容に不適合な事業を遂行し、あるいは補助対象事業そのもの若しくは補助条件を遂行ないし履行しない不作為が認められる場合をいうが、いずれも補助目的達成を阻害する義務違反行為として取消事由とされている。」

補助目的の達成を阻害する義務違反であることが前提とされています。交付の目的を達成するために必要な限度をこえる指示に従わなかったことが、補助目的の達成を阻害する義務違反に当たるとは考え難いところです。

ここで言えるのは、取消事由の2つ目についてだけです

大切なのは、ここから先です。7条4項によって否定することができるのは、取消事由の2つ目(第2類型・補助条件への違反)です。これに対して、23条1項に基づく報告の求めに応じないことは、取消事由の3つ目(第3類型・その他法令又はこれに基づく処分への違反)に当たり得ます。解説書は、この3つ目の「法令」について、次のように述べています。

引用(小滝・前掲245頁)「第三は、補助事業者等が、その他『法令又はこれに基く各省各庁の長の処分』に違反した場合である。ここに『法令』とは、本法及び本法施行令を含む各種補助法令を、『これに基く各省各庁の長の処分』とは、当該補助法令に基づく交付行政庁の個別行政処分を意味するが、いずれも第一一条第一項において遵守すべきものとされている内容と同一である。」

ここでいう「本法」は補助金適正化法そのものですから、同法23条1項に反することは、この3つ目の類型に当たり得るということになります。したがって、7条4項の筋は、「必要な限度をこえる求めであれば応じなくても取り消されない」という結論を導くものではないと考えております。補助条件への違反としては主張し得るとしても、法令への違反という別の筋が残っているからです。

そのため、必要な限度をこえると考える部分があるときも、求めを放置するのではなく、理由を述べて回答しておくことが要るところだと考えております。第1節で、できる限り応じた方がよいと申し上げたのは、この意味においてです。また、ある求めが必要な限度をこえるものであるかどうかは、交付決定の内容、提出済みの資料、求められている書類の内容によって決まりますので、一般に線を引くことはできません。

6 24条をどう位置づけるか

「必要な限度」について、補助金適正化法には、もう一つの規定があります。同法24条です。

引用(補助金適正化法24条)「補助金等の交付に関する事務その他補助金等に係る予算の執行に関する事務に従事する国又は都道府県の職員は、当該事務を不当に遅延させ、又は補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等若しくは間接補助事業者等に対して干渉してはならない。」

まず、この条文の名宛人を確かめておく必要があります。「国又は都道府県の職員」です。中小機構が交付する補助金について同条が働くのは、中小機構法16条が補助金適正化法の規定を準用し、24条中の「国」を「独立行政法人中小企業基盤整備機構」と読み替えると定めていることによります。他方、事務局が交付主体となる補助金については、条文の主語が国又は都道府県の職員である以上、事務局の職員に同条が直接適用されるわけではありません(この点は事務局が交付する補助金で述べています)。

そのうえで、同条が規律する事務の範囲は広いものとされています。解説書は、「補助金等の交付に関する事務」とは交付申請書の受理・審査に始まり、交付決定、概算払等の支払事務から額の確定、精算払等に至るおよそ補助金等の交付手続に関するすべての事務を意味するとしたうえで、「交付に関する事務」とは必ずしも解し難い立入検査、質問等の行政調査や状況報告の審査事務等についても、規律の対象とするために「その他補助金等に係る予算の執行に関する事務」が付加的に規定されたものと解されるとしています(小滝・前掲319頁)。資料の提出を求める行為や、提出された資料を審査する事務も、同条の射程に入るということです。

また、同書は、7条4項が補助条件についての限界を定めていることを述べたうえで、次のように続けています。

引用(小滝・前掲320頁)「補助条件の形式をとらなくとも、実質的に補助金交付の前提条件として相手方に不当な干渉を加えるものは、すべて本条に違反する行為とみるべきであろう。」

もっとも、同書は、同じ320頁で、本条はいわゆる訓示的規定であるとも述べています。訓示的規定とは、事務に従事する職員が守るべき筋道を示した規定という意味で用いられる言葉です。ですから、同条に沿わない扱いがあると考えられる場合でも、そのことから直ちに資料の提出を拒むことができるという帰結が導かれるわけではなく、24条を単独で持ち出して提出を断る、という使い方はできないと考えております。この条文は、7条4項と並べて、「必要な限度」がどこまでかを測るときの物差しとして読むのが穏当なところだと考えております。

7 第三者が保有している資料を求められたとき

求められた資料のうち、自社では作成も保管もしていないものが含まれていることがあります。第三者が自ら作成し、自らの手元に置いている書類です。こうした書類は、相手が応じてくれなければ、こちらがどれだけ努めても手に入りません。

このようなときに大切なのは、提出を求める相手に照会をした経過を残しておくことです。いつ、どのような方法で、何の提出を求めたか。相手から返事があったか、なかったか。電話で済ませず、文書かメールで照会し、送った控えを残しておいてください。

経過を残す意味は2つあると考えております。一つは、応じようとしてもなお得られなかったという経過そのものが、その求めが補助事業者に不可能を強いるものであり、必要な限度をこえるものであったことを示す土台になるということです。もう一つは、資料が出せないことについて、交付主体に対して説明できる材料になるということです。何もせずに出せないままにしていたのか、努めたけれども得られなかったのかは、その後の評価において違ってくるところだと考えております。

8 断るのではなく分ける――書面の組み立て

回答の書面は、断るのではなく分けるという組み立てになると考えております。順序は次のとおりです。

  • はじめに、検査や帳簿書類の提出を拒む意向はないことを述べる。応じられるものは応じる、という立場を先に示す。
  • 次に、応じた部分を具体的に挙げる。既に提出済みの資料があれば、いつ何を出したかを書く。
  • そのうえで、必要な限度をこえると考える部分について、なぜそう考えるのかを述べる。根拠とされている条文(15条か、23条1項か)と、その条文が何を確かめるための規定なのかに沿って書く。
  • 最後に、それでも確認する必要があるのであれば、提出を求める書類を書面で明示するよう求める。何を、どの条文に基づき、何のために求めているのかを、書面の形で残してもらう。

最後の点は、形式的なことのようにみえて、後になって効いてきます。求めの内容が書面で特定されていれば、どこまで応じたのか、どこが残っているのかが、双方にとって明らかになります。逆に、口頭での求めが積み重なっていくと、何に応じていないのかという事実自体が曖昧になります。

こうしたやり取りは、その場では手間に思えるかもしれません。もっとも、後に交付決定の取消しや減額の話が出てきたときに、交付主体が何を求め、こちらが何を出し、どこに考えの違いがあったのかを示すのは、このやり取りの記録です。取消しを予定する旨の事前通知が届いた場合の読み方は「交付決定取消しの事前通知が届いたら」、減額して確定するという連絡が来た場合の対応は補助金の減額確定への対応で述べています。資料の提出を求められている段階で、回答の期限が来る前にご相談ください。

よくある質問

実績報告の後に、補助対象経費と関係のない事業年度の総勘定元帳まで出すよう求められています。出さなければならないのでしょうか。

額の確定は、報告された補助事業の成果が交付決定の内容及びこれに附した条件に適合するものであるかどうかを、報告書等の書類の審査と必要に応じて行う現地調査等によって調査する手続です(補助金適正化法15条)。注文書、納品書、実際に支払ったことの裏付け、現物の写真といった資料によって、決定の内容と実際に実施された事業の内容が適合すると判断できるのであれば、それ以上の資料がなくても額の確定はできると考えております。額の確定や補助金の支払という意味で必要のないものであれば、必要がないと述べていただいて差し支えないと考えております。もっとも、求めを放置することはお勧めしません。応じられる部分には応じたうえで、必要な限度をこえると考える部分について、その理由を述べて回答することになります。

額の確定(補助金適正化法15条)とは何か(コラム) →

出典:補助金適正化法15条(e-Gov法令検索)

補助事業は完了し、額の確定も受けています。それでも検査や報告の求めに応じなければならないのですか。

文献は、必要がある限り、額の確定(精算手続)により補助関係の消滅した後においても、立入検査等を行うことは可能と解されると述べています(小滝・前掲312〜313頁)。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程も、補助事業終了後に、会計検査院、経済産業省又は中小機構が予告なく実地検査を実施することができるとしています(同交付規程27条4項前段)。精算が終わったことを理由に、求めそれ自体を否定することはできないと考えております。他方で、額の確定を受けた後の求めについて、実績報告を受けて額を確定するための規定である15条を根拠とすることはできないと考えております。根拠が違えば限度の立て方も変わりますので、どの条文に基づく求めなのかを確かめることになります。

補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか(Q&A) →

出典:補助金適正化法23条1項(e-Gov法令検索)

必要な限度をこえる求めだと思います。応じなければ、交付決定を取り消されるのでしょうか。

交付決定に附する条件は、公正なものでなければならず、交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者に干渉するようなものであってはならないとされています(補助金適正化法7条4項)。そこからすると、必要な限度をこえる指示に従うことはそもそも補助条件になり得ず、そのような指示に従わなかったことが補助条件違反(17条1項の2つ目の取消事由=第2類型)となることもないと考えております。もっとも、ここで言えるのは2つ目の取消事由についてであり、23条1項に基づく報告の求めに応じないことは、3つ目の取消事由(第3類型・その他法令又はこれに基づく処分への違反)に当たり得ます。ですから、求めに応じないという対応はお勧めできません。応じられる部分には応じ、必要な限度をこえると考える部分についてはその理由を述べ、それでも確認する必要があるのであれば提出を求める書類を書面で明示するよう求める、という形になると考えております。

出典:補助金適正化法7条4項(e-Gov法令検索)

自社では保管していない資料の提出を求められていますが、相手が応じてくれません。

自社では作成も保管もしていない書類については、提出を求める相手に照会をした経過を残しておいてください。いつ、どのような方法で、何の提出を求めたのか、返事があったのかどうかを、電話で済ませず文書やメールで行い、送った控えを残しておくことになります。応じようとしてもなお得られなかったという経過そのものが、その求めが補助事業者に不可能を強いるものであり、必要な限度をこえるものであったことを示す土台になると考えております。あわせて、資料が出せない理由とこれまでの照会の経過を、交付主体に対して書面で説明しておくことになります。

※ 本稿は、執筆時点の法令・文献に基づく一般的な整理であり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。本稿の第5節から第8節までは当職の見解を含みます。資料の提出を求められた場合に、どこまでが必要な限度に収まるかは、交付決定の内容、提出済みの資料、求められている書類の内容によって異なりますので、本稿の整理がそのまま当てはまるものではありません。交付規程の条番号は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程によるものです。

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