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弁護士 岸上大起

実績報告が30日を過ぎたら交付決定は取消しなのか――交付規程には「猶予することができる」と書かれている

このページの結論

補助事業は終わったのですが、実績報告書の提出が、完了から30日の期限に間に合いそうにありません。公募要領には「期限までに補助事業実績報告書が提出されなかった場合、交付決定を取り消します」と書かれています。一日でも過ぎたら、取消しと全額返還になるのでしょうか。

30日を過ぎたことから、交付決定の取消しが当然に導かれるわけではありません。中小企業新事業進出促進補助金交付規程17条3項は、やむを得ない理由により実績報告書を提出できない場合に期限を猶予することができると定め、22条1項の柱書は、期限内に提出しなかった場合(9号)を含めて、交付の決定の全部若しくは一部を「取り消し、又は変更することができる」という裁量の定め方をしています。補助金適正化法17条1項も「取り消すことができる」であり、同法7条1項5号は、予定の期間内に完了しない場合に報告して指示を受ける道を用意しています。公募要領38頁と手引き10頁・45頁の「取り消します」は、交付規程が自ら置いた猶予の定めと、取消しを裁量とした書き方の両方を落としており、同じ手引きの78〜79頁が「全部もしくは一部の取消し・変更となることがあります」と書いているのとも食い違っています。

もっとも、期限がないとか、守らなくてよいということではありません。30日の期限自体は、補助金適正化法14条が予定する「各省各庁の長の定めるところ」に当たります。間に合わない見込みが立った時点で、やむを得ない理由と提出の見込み日を書いた書面で猶予を求め、送った日が分かる形で記録を残すことが先です。また、30日の起算点となる「補助事業の完了」を、公募要領は「スケジュールどおりに事業が進捗していること」と定義しており、起算日が事業者に分からない作りになっています。文献は、完了は客観的に判断される事実であり、請負業者等への支払の履行は完了の要件ではないとしています。取消しの通知が届いたら、どの事実をもって完了と認定し、何日から数えたのかを確かめるところから始めます。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明――公募要領(第4回)38頁と補助事業の手引き10頁・45頁の三か所は取消しを言い切り、同じ手引きの78〜79頁は「取消し・変更となることがあります」と書いている

中小企業新事業進出促進補助金の公募要領(第4回)(1.0版。令和8年3月。中小機構)は、38頁(PDF39頁)の「(4)実績報告~額の確定」に、次の二つの項目を並べています。以下、公式資料の閲覧日はいずれも2026年10月31日です。

引用(公募要領(第4回)38頁「(実績報告期限の順守)」)「補助事業を完了したときは、その日から起算して30日を経過した日又は補助事業完了期限日のいずれか早い日までに補助事業実績報告書を提出しなければなりません。期限までに補助事業実績報告書が提出されなかった場合、交付決定を取り消します。」
引用(同38頁「(補助事業完了の定義)」)「補助事業の完了とは、原則、応募申請時に提出した事業計画のスケジュールどおりに事業が進捗していることを指します。単に建物の建設や設備の導入が完了しただけでは、補助事業の完了とはみなしません。」

「補助事業の手引き」(2026年8月17日・第1.8版)も、10頁(PDF11頁)の「【実績報告~額の確定】」で「期限までに補助事業実績報告書が提出されなかった場合交付決定を取り消します。」と書き、45頁(PDF46頁)の「3-4-1. 補助事業終了後に実績を報告する際の手続き」では、「根拠規定」として「交付規程第17 条」を挙げたうえで、次のように書いています。

引用(補助事業の手引き45頁)「補助事業を完了したときは、その日から起算して30 日を経過した日、または補助事業完了期限日のいずれか早い日までに、補助事業実績報告書及び必要書類を提出してください。期限までに実績報告書が提出されなかった場合、交付決定取消しとなり補助金が受け取れなくなりますのでご注意ください。」

三か所とも「取り消します」「取消しとなり」です。この三か所には、条件も留保もありません。読む人には、30日を一日でも過ぎれば交付決定が取り消され、補助金は受け取れない、と読めます。

ところが、同じ手引きの78頁(PDF79頁)「4-4. 補助金返還となるケース」は、「交付決定の取消し等に係る返還<交付規程第22 条>」として、次のように書き、その列挙の10番目(79頁。PDF80頁)に「補助事業者が、補助事業が完了した日から起算して30 日を経過した日又は補助事業完了期限日のいずれか早い日までに、実績報告書を提出しなかった場合」を置いています。

引用(補助事業の手引き78頁「4-4. 補助金返還となるケース」)「次のいずれかに該当する場合に、交付決定の全部もしくは一部の取消し・変更となることがありますが、既に当該取消しに係る部分に対する補助金が交付されているときは、期限を付して当該補助金の全部又は一部の返還が命じられます。」

同じ事務局の「実績報告ガイド」(2026年10月16日・第1.7版)も、1頁(PDF2頁)で「実績報告フェーズにおいては、以下のケースに該当する場合には交付決定の全部もしくは一部の取消し・変更となる場合がありますので、特に留意してください。」としたうえで同じ事由を挙げ、4頁(PDF5頁)では「上記の期限までに実績報告が提出されなかった場合、交付決定が取り消しとなることがありますのでご注意ください。」と書いています。

「取り消します」と、「全部もしくは一部の取消し・変更となることがあります」とでは、意味が違います。前者は取消しが当然に来ると読め、後者は、取り消すかどうか、全部か一部か、取消しか変更かに幅があると読めます。同じ事務局の文書の中で、しかも同じ手引きの10頁・45頁と78〜79頁とで、書き方が食い違っています。どちらが交付規程の定めに合っているのかを、次に見ます。

2 交付規程は、同じ場面に「猶予することができる」と定め、取消しも「することができる」と書いている

手引きが根拠規定として挙げる中小企業新事業進出促進補助金交付規程17条は、次のとおりです。

引用(中小企業新事業進出促進補助金交付規程17条1項・3項。同規程4〜5頁)「第17条 補助事業者は、補助事業が完了したときは、その日から起算して30日を経過した日又は補助事業完了期限日のいずれか早い日までに様式第6による実績報告書を中小機構に提出しなければならない。」
「3 中小機構は、補助事業者が第1項の実績報告書をやむを得ない理由により提出できない場合は、期限について猶予することができる。」

1項が期限を定め、3項が、やむを得ない理由により提出できない場合に期限を猶予することができると定めています。猶予の制度が、交付規程の中に置かれています。公募要領38頁と手引き10頁・45頁は、この3項に一言も触れていません。それどころか、「猶予」という語は、公募要領(第4回)、補助事業の手引き(第1.8版)、実績報告ガイド(第1.7版)の三つの資料のどこにも出てきません。手引き45頁は「根拠規定 交付規程第17 条」と併記しながら、同条3項の猶予を落としています。

取消しの条文も同じです。

引用(同交付規程22条1項柱書・9号。同規程5〜6頁)「第22条 中小機構は、第12条第1項第4号の補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請があった場合又は次の各号のいずれかに該当する場合には、第9条第1項の交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することができる。」
「(9)補助事業者が、第17条第1項に定める期限内に実績報告書を提出しなかった場合」

「取り消し、又は変更することができる」です。取り消さなければならない、とは書かれていません。全部を取り消すとも書かれていません。期限内に提出しなかったことは、交付決定の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することができる場合の一つに挙げられているにとどまります。

別の補助金の交付規程も、同じ建て方です。中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金交付規程(令和7年10月14日最終改定)は、16条1項で「補助事業者は、補助事業が完了(廃止の承認を受けた場合を含む。)したときは、その日から起算して30 日を経過した日又は補助事業の実施期間の終了日のいずれか早い日までに様式第7による実績報告書を事務局に提出しなければならない。」と定め、同条2項で「補助事業者は、第1項の実績報告書をやむを得ない理由により提出できない場合は、事務局は期限について猶予することができる。」とし(同規程5頁。2項の主語が「補助事業者は」「事務局は」と二重になっているのは原文のままです)、21条1項柱書で「交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又は変更することができる。」としたうえで、その7号に「補助事業者が、第16 条第1項に定める期限内に実績報告書を提出しなかった場合」を置いています(同規程6〜7頁)。猶予の定めがあり、取消しは裁量である、という形は共通です。

公募要領38頁と手引き10頁・45頁の「取り消します」は、交付規程が自ら置いた猶予の定めと、取消しを裁量とした柱書の書き方の、両方を落としています。同じ手引きの78〜79頁と実績報告ガイド1頁が「全部もしくは一部の取消し・変更となることがあります」と書いているのは、この柱書を受けたものであり、規程に忠実なのはこちらです。公式の文書の中で、規程と案内が食い違い、案内の中でも頁によって食い違っているわけです。

3 補助金適正化法の仕組み――期限は置けるが、取消しは裁量であり、遅れそうなときは報告して指示を受ける道がある

中小機構が交付する本補助金に補助金適正化法が及ぶのは、中小機構法16条の準用によります。そのうえで、法の仕組みを三つに分けて確かめます。

(1)実績報告の期限そのものは、置くことができる

補助金適正化法14条は、補助事業者等は、各省各庁の長の定めるところにより、補助事業等が完了したときは、補助事業等の成果を記載した補助事業等実績報告書に各省各庁の長の定める書類を添えて各省各庁の長に報告しなければならないと定めています。「各省各庁の長の定めるところにより」とありますので、報告の期限を定めること自体は、法が予定しているものです。交付規程17条1項の30日の期限も、この定めに当たります。期限がないとか、守らなくてよいとか、申し上げているのではありません。

(2)取消しは「取り消すことができる」であり、裁量である

補助金適正化法17条1項は、補助事業者等が交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基づく各省各庁の長の処分に違反したときは、交付の決定の全部又は一部を取り消すことができると定めています。義務違反があれば取り消さなければならない、という条文ではありません。違反があるというだけで直ちに取消権を行使し得るものではなく、補助目的の達成が困難になったといえる時点で初めて取消権を行使すべきであるとする裁判例と文献の整理は、Q&A「補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか」と、Q&A「公募要領に『報告しなかった場合には、補助金返還を求めることがあります』と書かれていますが」で引いています。報告書の提出が遅れたという不作為は、そこで引いた文献の言葉を借りれば「一時的な不作為」の典型です。補助事業そのものは完了し、設備は据え付けられ、経費も支払われているのに、報告書が30日に間に合わなかった。その一事で補助目的の達成が困難になったといえるのか。ここが、争点になります。

そして、同法15条は、報告を受けた各省各庁の長に、報告に係る補助事業等の成果が交付の決定の内容及びこれに附した条件に適合するものであるかどうかを調査し、適合すると認めたときは額を確定して通知することを義務づけています。遅れて出された報告書であっても、報告を受けた以上、この調査の義務は生じ、適合すると認めたときは額を確定しなければなりません。期限に遅れたことが「これに附した条件」への不適合に当たるのかどうかも、この調査のうえで判断されるべき事柄です。額の確定が何を判断する手続なのかは、コラム「額の確定(補助金適正化法15条)とは何か」で述べています。

(3)遅れそうなときは、報告して指示を受ける道が法に用意されている

補助金適正化法7条1項5号は、交付の決定に附すべき条件として、「補助事業等が予定の期間内に完了しない場合又は補助事業等の遂行が困難となつた場合においては、すみやかに各省各庁の長に報告してその指示を受けるべきこと」を掲げています。法が用意しているのは、報告して指示を受けるという道であり、期限を過ぎたら自動的に取り消すという仕組みではありません。交付規程15条(事故等の報告)がこれを受けていますが、同条は「自己の責任によらない理由により」という、法にはない限定を冠しています。同じ文言の限定を置く事業再構築補助金の交付規程15条と、同補助金の事務局が「認められない例」を列挙している運用については、前記のコラム「補助事業が期限までに終わらないとき」の第7節で検討しています(補助金は別ですが、条文の文言は同じです)。

なお、交付規程22条1項13号は「その他公募要領で定める事項に該当した場合」を取消事由に挙げています。公募要領38頁の記載は、この号を通じて取消事由に取り込まれる、という主張があり得ます。もっとも、13号に当たるとしても、柱書は「取り消し、又は変更することができる」のままであり、17条3項の猶予の定めが消えるわけでもありません。公募要領の一行が、規程の柱書と3項を書き換えることはできません。

そのうえで、同法7条4項は、交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであってはならないと定めています。公募要領と手引きの「取り消します」が、交付決定に附された条件として読まれるのであれば、それは、交付規程自身が置いた猶予の定めを無いことにし、法が裁量とした取消しを自動化するものです。私見としては、この書き方が7条4項の「公正」の要請に沿っているとは考えにくく、少なくとも、条件としての効力を主張されたときには、交付規程17条3項・22条1項柱書との食い違いを正面から指摘する余地があると考えております。条件としての効力が争われたときの帰結は、Q&A「交付決定に付いている『条件』だけを無効だと言えるのか」で述べています。

4 「補助事業の完了」の意味が動くため、30日の起算点が事業者に分からない

もう一つ、見落とされやすい問題があります。30日の期限は「補助事業を完了したとき」から数えます。では、「完了」はいつなのか。公募要領38頁は、前記のとおり、「原則、応募申請時に提出した事業計画のスケジュールどおりに事業が進捗していることを指します。単に建物の建設や設備の導入が完了しただけでは、補助事業の完了とはみなしません。」と書いています。実績報告ガイド4頁(PDF5頁)は、起算点について、「実績報告の提出期限を決定する起点となる「補助事業の完了」とは、単に建物の建設や設備の導入が完了しただけではなく、応募申請時に電子申請システムで入力した「スケジュール」の実施内容がすべて完了している必要があります。」と書いています。同ガイド5頁(PDF6頁)は、これとは別に、完了期限までに済ませる事項として、「補助事業完了期限までに、契約(発注)、納入、検収、支払い等のすべての手続きが完了し、応募申請時に電子申請システムの【補助事業実施期間のマイルストーン(月単位)】の「実施内容」欄に記載されたものがすべて完了している必要があります。」としています。

なお、期限の数え方も資料の間でそろっていません。公募要領38頁と交付規程17条1項は「30日を経過した日」ですが、手引き10頁は「その日から起算して30 日後又は補助事業完了期限日のいずれか早い日までに」と書いています。一日の違いですが、徒過すれば取消しと書く資料が、その一日をそろえていないわけです。

建物が建ち、設備が据え付けられても「完了」ではない。しかし「完了」から30日で報告しなければ取消し。この二つを組み合わせると、事業者は、起算日がいつなのかを自分で判断できないまま、徒過すれば取消しという結果だけを引き受けることになります。設備の据付けを「完了」とみて30日以内に報告すれば、「スケジュールどおりの進捗ではない」として受け付けられないおそれがあり、進捗が整うのを待てば、「据付けから30日を過ぎている」と言われるおそれがあります。

「補助事業等が完了したとき」の意味は、補助金適正化法14条の問題です。文献は、次のように説明しています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』217頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「ここで「補助事業等が完了したとき」とは、交付決定の対象となった事務事業が完全に終了したとき(補助対象工事の竣工時等)を意味することはいうまでもないが、事実行為としての完了の有無は客観的に判断されるべきものであり、補助事業者等の主観的判断によって決すべきものではないであろう。」
引用(同218頁注(2))「間接補助方式をとらない補助事業等にあっては、補助事業等が事実上完了していれば十分であり、請負業者等に対する支払債務の履行は事業完了の要件とはならない。」

法の「完了」は、事務事業が完全に終了したときという事実であり、客観的に判断されるものです。文献が排しているのは補助事業者の主観的判断ですが、「客観的に判断されるべきもの」という以上、交付主体の評価によって動くものでもない、というのが当職の読みです。工事であれば竣工時であり、間接補助方式をとらない本補助金のような事業では、請負業者等への支払が済んでいるかどうかは、完了の要件ではないとされています。

これに対し、公募要領とガイド4頁の「完了」は、応募申請時のスケジュールどおりに進捗しているかという評価を足したものです。ガイドは、4頁では支払に触れずスケジュールの完了だけを起算点の要件とし、5頁では支払までを完了期限内に済ませる要件として挙げています。この二つの文は守備範囲が違うはずですが、同じ「完了」の語で並んでいるため、5頁の「支払い等のすべての手続きが完了」が、そのまま起算点の「完了」の中身として読まれかねません。私見としては、ここには二つの別の問題が混ざっていると考えております。一つは、補助対象経費として認めるために実施期間内の支払を求めるという問題で、これは経費の要件の問題です。もう一つは、14条の報告義務がいつ生じ、30日をいつから数えるのかという問題で、これは完了という事実の問題です。前者の要件を後者の起算点に持ち込むと、起算点は、客観的な事実ではなく、事務局がスケジュールの進捗をどう評価するかに左右されることになります。起算点の判断を交付主体が握ったまま、徒過に自動的な取消しを結び付ける組み合わせは、7条4項の「公正」の点でも問題があると考える余地があります。

実務の上では、この問題は、こう使えます。取消しの通知が「30日を過ぎた」ことを理由にしているのであれば、その30日は、どの事実をもって「完了」と認定し、何日から数えたものなのかを、書面で明らかにさせることです。完了の認定日が示されていない、あるいは事業者が完了と認識し得ない時点を起算日としているのであれば、そもそも「第17条第1項に定める期限内に実績報告書を提出しなかった場合」(22条1項9号)に当たるのかどうかから、争うことになります。

5 文面どおりなら、加算金まで連動する

取消しの先には、返還と加算金があります。交付規程22条3項は、返還を命ずる場合には、「第12条第1項第4号の補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請を承認した場合、並びに第1項第4号及び第5号に規定する場合を除き」、補助金の受領の日から納付の日までの期間に応じて年利10.95パーセントの割合で計算した加算金の納付を併せて命ずるものとしています(同規程6頁)。9号(実績報告の遅れ)は、この除外に入っていません。文面どおりに読めば、報告が遅れた、取り消された、全額を返す、受領の日からの加算金も付く、という流れになります。他方で、除外に入っている4号は「補助事業者が、交付の決定後生じた事情の変更等により、補助事業の全部又は一部を継続する必要がなくなった場合」です。報告の遅れが、事業を続けられなくなった事情に由来するのであれば、9号ではなく4号による取消し・返還として扱われるべきではないか、という分岐が立ちます。どの号によるのかで、加算金の有無が変わります。

もっとも、加算金が付くのは補助金適正化法19条1項により、17条1項又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関して返還を命ぜられたときであり、同条3項は、やむを得ない事情があると認めるときは加算金又は延滞金の全部又は一部を免除することができると定めています。交付規程22条3項がこの免除に触れていないこと、免除は申請によって始まることは、Q&A「加算金が付く場合と付かない場合がある」と、Q&A「加算金・延滞金は払うのか」で述べています。ここで申し上げたいのは、順序です。加算金は返還の命令に付き、返還の命令は取消しに付きます。取消しが裁量であり、その前提である「期限内に提出しなかった」の起算点が争えるのであれば、加算金まで含めた全体が、取消しの当否にかかっています。加算金の額だけを見て諦める必要はありません。

次のような場合は、動かれる前にご相談ください

  • 実績報告の期限に間に合わない見込みで、猶予を求めたいが、どう書けばよいか分からない
  • 実績報告書の提出が30日を過ぎたことを理由に、交付決定の取消しを告げられた
  • 「補助事業の完了」がいつなのか事務局と認識が食い違い、起算日を争っている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 補助事業が期限までに終わらないとき、実績報告書を出してよいのか(コラム)/補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか(Q&A)

6 遅れそうなときに出す書面

以上を踏まえた、当職の整理です。順序が大事です。

  • (1)期限の前に、猶予を求める書面を出す。交付規程17条3項の猶予は、中小機構が「することができる」ものであり、申請の様式は定められていません。様式がないからといって、電話で済ませないでください。やむを得ない理由(何が、なぜ、いつから遅れているのか)、提出の見込み日、補助事業そのものは完了していること(又はいつ完了するか)を書いた書面を、電子申請システムの問合せ機能か電子メールで、送った日が分かる形で出してください。「17条3項に基づき期限の猶予を求める」と、条項を明示することをおすすめします。猶予が認められるかどうかと、猶予を求めた記録が残っているかどうかは、別の問題です。後者は、取消しの当否を争うときに効いてきます。
  • (2)補助事業そのものが期限までに終わらないのであれば、事故等報告書を出す。報告書の遅れではなく、事業の遅れである場合は、交付規程15条の事故等報告書(様式第4)の場面です。完了していないのに実績報告書を出すことは、東京地判令和4年11月8日(平成30年(行ウ)第605号)が、それ自体を「不正、怠慢、その他不適当な行為」に当たるとして取消しを適法としていますので、してはいけません(上訴審は確認できていません)。この判決は、前記のコラム「補助事業が期限までに終わらないとき」で紹介しています。
  • (3)「完了」の日を、事実で押さえておく。竣工検査の日、設備の据付けと検収の日、最後の支払の日、スケジュールに書いた各項目を終えた日を、日付の分かる資料で残してください。前記4のとおり、30日の起算点は争点になり得ます。事業者の側で、どの事実をもって完了と認識したのかを示せるようにしておくことが、起算点の主張の土台になります。
  • (4)期限を過ぎてしまったら、すぐに出す。理由も添える。期限を過ぎたことは、提出しなくてよい理由にはなりません。遅れて出された報告であっても、報告を受けた以上、15条の調査の義務は生じ、適合すると認めれば額の確定に進みます。遅れた理由と、補助事業が完了していることを示す資料を添えて、出してください。やり取りの残し方は、Q&A「事務局とのやり取りが申請システムの中にしかない」で述べています。
  • (5)取消しの通知が届いたら、三つを確かめる。どの条項(22条1項9号か、別の号か)に基づくのか。「完了」をいつと認定し、何日から数えたのか。猶予を求めた書面に対する判断が示されているか。この三つが通知に書かれていなければ、そこが争う入口になります。取消しは行政処分であり、処分を知った日から6か月の出訴期間があります(行政事件訴訟法14条1項)。期間の数え方は、Q&A「交付決定の取消しから6か月を過ぎたら」で述べています。

最後に一つ申し上げます。公募要領と手引きは、公正な第三者の解説ではなく、補助金をめぐる紛争の一方当事者が書いた文書です。同じ手引きの78頁と実績報告ガイドが「全部もしくは一部の取消し・変更となることがあります」と書き、交付規程が「猶予することができる」「取り消し、又は変更することができる」と定めている以上、「取り消します」の一行から、取消しと全額返還が当然に出てくるわけではありません。期限は守るに越したことはありませんが、過ぎてしまったときに、何も争えないと決めてかかる必要はないと考えております。

実績報告の期限に間に合わない見込みの方、期限を過ぎたことを理由に取消しを告げられた方、「補助事業の完了」の時点について事務局と認識が食い違っている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、猶予を求める書面を出す前に、あるいは取消しの通知を受け取ったらすぐに、ご相談ください。交付決定通知書、交付規程、スケジュール、完了を示す資料、事務局とのやり取りがあれば、起算点と猶予の主張を具体的に組み立てることができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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