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弁護士 岸上大起

補助金で入れた設備・施設を別の用途にも使いたい――手続が要らないのはどこまでか

このページの結論

補助金で導入した設備や、補助金で改装した施設を、補助事業以外の用途にも使いたいと考えています。どこまでなら、財産処分の承認手続が要らないのでしょうか。

経済産業省の通達(平成16・6・10会課第5号)は、三つの場合を、補助金等の交付の目的に反しない使用として財産処分には該当せず、手続を経ることを要しないものとしています。①業務時間外や休日等を利用して補助目的たる事業の遂行に支障を来さない範囲で一時的に転用する場合、又は施設の一部(施設延べ床面積の概ね10%を超えない範囲。ただし、150平方メートルを上限とする。)についての付帯設備の設置その他当該転用が極めて軽微であると認められる場合、②機能の維持、回復又は強化を図るための改造を行う場合、③技術開発補助金等における成果の商品化等に必要な技術開発に使用する場合の三つです。列挙は「その他これらに準ずる場合」を含む形で置かれており、限定列挙ではありません。

これとは別に、補助事業の遂行に支障を来さない範囲で当該年度を超えない範囲で行う転用又は貸付けについては、報告書の提出によって22条の承認を受けたものとみなし、国庫納付は求めないとされています(貸付けの場合は管理協定の締結と原則無償)。もっとも、この通達は経済産業大臣等が承認をするための基準ですので、お手元の補助金の交付規程がこれを踏まえる定めを置いているかどうかを、先に確かめることになります。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 「どこまでなら手続が要らないのか」という問い

補助金で導入した設備や、補助金で改装した施設を、補助事業以外の用途にも使いたい、という場面があります。空いている時間帯に別の作業で動かしたい、施設の一角に別の設備を据え付けたい、繁忙期だけ別の用途に回したい、といった形です。

このとき先に思い浮かぶのは、承認を受けないで交付の目的に反して使用してはならないという定めです(補助金適正化法22条)。もっとも、補助事業以外にも使ったというだけで、直ちに承認を要する財産処分になるわけではありません。

当職は、補助事業にも使用している限り、財産は補助目的に沿って管理・使用されており、原則として22条の目的外使用には当たらないと考えております。この整理は、既存事業との併用のページとコラム「既存事業との併用」で述べています。以下に述べるのは、それとは別の話です。仮にその立場に立たないとしても、国の基準自体が、交付の目的に反しない使用として財産処分には該当せず、手続を経ることを要しないとしている場合を具体的に挙げています。このページでは、その「手続が要らない範囲」だけを扱います。

2 取扱基準が「財産処分には該当しない」としている場合

経済産業省の通達「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16・6・10会課第5号。大臣官房会計課。令和元年5月7日改正。以下「取扱基準」といいます。)があります。補助金適正化法施行令13条に定める財産(処分制限財産)について、経済産業大臣(補助金適正化法26条の規定により事務を委任されている者を含みます。取扱基準は、これを「大臣等」としています。)が22条の承認をするための基準等の取扱いを定めたものです(取扱基準1頁)。

先に、この通達の位置づけを確かめておきます。22条のただし書が「政令で定める場合」としている適用除外は、施行令14条1項が定めるもの、すなわち補助金等の全部に相当する金額を納付した場合(1号)と、交付の目的及び耐用年数を勘案して定める期間を経過した場合(2号)の二つです(補助金適正化法施行令14条1項2号)。これから述べる取扱基準2.(2)は、この政令の列挙には入っていません。ですから、2.(2)は22条ただし書の法令上の例外ではなく、当該使用が22条の「交付の目的に反して使用」そのものに当たらないという解釈を、承認をする側の行政庁が自ら示したものと読むことになります。10%・150平方メートルという数字も、法令が定めた基準ではありません。

取扱基準は、まず「財産処分」の中身を定義しています。転用は「処分制限財産の所有者の変更を伴わない目的外使用」とされ、ほかに譲渡、交換、貸付け、担保に供する処分、取壊し、廃棄が並んでいます(同1〜2頁)。そのうえで、次の定めが置かれています。

引用(平成16・6・10会課第5号 2.(2)柱書)「(2)なお、次に掲げる場合その他これらに準ずる場合には、補助金等の交付の目的に反しない使用として財産処分には該当せず、本取扱いに定める手続を経ることを要しないこととする。」

掲げられているのは、次の三つです。

引用(同 2.(2)①)「① 業務時間外や休日等を利用して補助目的たる事業の遂行に支障を来さない範囲で一時的に転用する場合、又は処分制限財産(施設に限る。)の一部(施設延べ床面積の概ね10%を超えない範囲。ただし、150平方メートルを上限とする。)について付帯設備の設置を行う場合その他当該転用が極めて軽微であると認められる場合。」
引用(同 2.(2)②)「② 補助目的たる事業を遂行するために必要な、処分制限財産の機能の維持、回復又は強化を図るための改造を行う場合。」
引用(同 2.(2)③)「③ 技術開発補助金等における処分制限財産について、当該補助事業等の成果の全部又は一部を商品化するために必要な技術開発(試作品をもとに需要者の意見等を踏まえて商品化に向けた改良を行う等、本格的に商業ベースでの生産を行う段階に入る直前までの段階を含む。)、又は当該補助金等の交付決定の対象となった事業の目的を達成するために必要と認められる関連技術の開発(基礎研究、応用研究、実用化研究等のいかなる段階にあるかを問わない。)に使用する場合。」

柱書を落とさないでください。「次に掲げる場合その他これらに準ずる場合には」とされています。①から③までは限定列挙ではなく、これらに準ずる場合も、交付の目的に反しない使用として財産処分には該当しないものとされています。

また、この三つは、承認を受けたうえで納付を免れるという話ではありません。そもそも財産処分に該当せず、「本取扱いに定める手続を経ることを要しない」とされています。承認申請も、承認に付さなければならないとされている国庫納付条件(同3.(1)・同2頁)も、納付額の算定(同4.・同3頁)も、前提を欠くことになります。

法律の側から見ても同じ向きになります

22条の承認の対象をどう捉えるかについては、最三小判令和3年3月2日民集75巻3号317頁についての最高裁判所判例解説民事篇が、補助事業等により取得した財産を補助事業者等において補助目的に沿って管理しなくなることであると解されるという整理を示しています(荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)86頁)。この整理の引用は、Q&A「補助金の『目的外使用』とは何か」に置いています。

この枠組みに当てはめても、取扱基準2.(2)の三つは、いずれも補助目的に沿った管理・使用が続いている場面であると考えております。①は補助事業の遂行に支障を来さない範囲であることを要件にしており、②は補助目的たる事業を遂行するために必要な改造であり、③は当該補助事業等の成果の商品化等に必要な技術開発です。補助目的に沿って管理しなくなった状態とは、場面が違います。

22条の規制する行為を、条文の趣旨に照らして限定した裁判例もあります。東京地判平成2年1月30日判タ736号151頁は、同条が「実質的に補助金等の他用途使用と変わらない結果となるおそれのある行為を規制したものであると解される」と述べたうえで、次のように判示しました。

引用(東京地判平成2年1月30日判タ736号151頁)「したがって、補助金等の目的どおりに建設され、その後も目的どおり使用されていた施設を未だ耐用年数が十分残っている段階で解体するような行為は、それ自体経済的合理性の観点からその当否が検討される余地のあるものであるとしても、同条の規制する行為の対象には含まれないというべきであるから、本件クラブハウスの解体撤去が同条に違反するとの原告の主張は失当である。」

場面は解体ですので、転用の場面にそのまま及ぶものではありません。もっとも、22条の規制する行為を、条文に並んだ言葉だけでなく、その趣旨から定めるという読み方が示されている点は、押さえておいてよいと考えております。なお、文献は、この判示に「余りにも文理解釈にすぎるとの疑問が残る」と述べる一方で、「控訴審判決もこれを支持している」としています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』308頁注(21)(株式会社全国会計職員協会、2016))。控訴審判決そのものは公刊物に見当たりません。この判決と、法律・政令・通達・交付規程が「処分」として挙げる行為の食い違いは、コラム「補助金で取得した設備を廃棄することは『処分』か」で詳しく述べています。

3 10%・150平方メートルという数字の読み方

①の数字は、よく引かれるわりに、どこに掛かるのかが読み分かれます。文言を分けると、①は二つの場合を並べています。

  • 業務時間外や休日等を利用して、補助目的たる事業の遂行に支障を来さない範囲で一時的に転用する場合
  • 処分制限財産(施設に限る。)の一部について付帯設備の設置を行う場合その他当該転用が極めて軽微であると認められる場合

面積の数字は、後者の括弧の中にあります。分母は施設の延べ床面積で、概ね10%を超えない範囲、かつ150平方メートルが上限です。前者、すなわち業務時間外や休日等を利用した一時的な転用には、面積の定めは置かれていません。こちらは時間で区切る考え方ですので、面積の数字をそのまま当てはめる場面ではないと考えております。

対象が設備である場合は、この区別がそのまま効きます。括弧は「処分制限財産(施設に限る。)」としていますので、面積の数字は設備には掛かりません。したがって、補助金で導入した設備を業務時間外や休日等に別の用途で動かすことは、面積の数字とは関係なく、①の前半で読むことになります。これに対し、設備を常時別の用途に回すのであれば、①の前半には収まりませんので、②(機能の維持、回復又は強化を図るための改造)、③、又は柱書の「これらに準ずる場合」のどれに当たるのかを組み立てることになります。

施設の側にも、読み落としやすい点があります。取扱基準は、取壊しの定義の中で「処分制限財産(施設(土地を含む。以下同じ。)に限る。)」としており、以後の「施設」には土地が含まれます(同2.(1))。補助事業で取得・造成した土地の一部を別の用途に使う場面も、この条項の射程に入ります。

面積を超えたときに、何が残るのか

括弧の外には「その他当該転用が極めて軽微であると認められる場合」という定めが置かれています。「その他の」ではなく「その他」ですので、付帯設備の設置と、極めて軽微であると認められる場合とは、並列に置かれた別個の事項です。付帯設備の設置を含む例示だと読む必要はありません。

また、「当該転用」が何を受けるのかも押さえておくことになります。①の冒頭は「一時的に転用する場合」ですので、「当該転用」は①が対象としている転用全体を受けると読むのが素直であると考えております。直前の付帯設備の設置に伴う転用だけを指すと読む余地もありますが、①の文の組み立てからは、そこまで狭く限る理由は見当たらないと考えております。

そうであれば、面積の数字を超えたというだけで直ちに財産処分に当たることになるのではなく、なお極めて軽微と認められるかどうかが問われると考える余地があります。もっとも、数字の中に収まっている場合に比べて、説明すべきことは増えます。私見としては、転用部分の面積と時間の割合、原状回復の容易さ、補助事業の稼働に生じる影響の有無が、軽微といえるかどうかの手がかりになると考えております。

②についても、ひとこと申し添えます。補助事業を続けるために設備に手を入れること、能力を上げることは、ここでは財産処分ではなく、むしろ交付の目的に沿った使用として扱われています。改造したから目的外使用だ、という組み立てにはならないと考えております。

4 年度を超えない一時的な転用・貸付けは、報告書で足りるとされています

前記2とは別に、取扱基準は、承認申請の手続そのものを簡略にする定めを置いています。

引用(平成16・6・10会課第5号 5.(1)柱書)「(1)次に掲げる財産処分に該当する場合には、財産処分の承認申請手続にかかわらず、別紙様式1(以下「報告書」という。)を大臣等に提出することによって、補助金適正化法第22条の承認を受けたものとみなし、国庫納付は求めないこととする。ただし、報告書において記載事項の不備など必要な要件が具備されていない場合は、この限りでない。」

その③が、一時的な転用・貸付けです。

引用(同 5.(1)③)「③ 補助目的たる事業の遂行に支障を来さない範囲で、一時的に(当該年度を超えない範囲で)行う転用又は貸付け。ただし、貸付けの場合には次の条件を付した上で行うものに限る。
a.使用予定者との間で当該一時使用に係る管理協定を締結すること。
b.原則無償貸付けとする。ただし、実費相当額の負担を求める場合は、この限りではない。」

ここは、前記2とは組み立てが違います。前記2は、そもそも財産処分に該当しないという整理です。これに対して5.(1)③は、財産処分には当たることを前提に、報告書の提出によって承認を受けたものとみなし、国庫納付は求めない、というものです。どちらで通すのかによって、出す書面が変わります。

この特例が地方公共団体だけのものではない点も、確かめておきます。5.(1)①は地方公共団体が行う財産処分に限られていますが、報告書の様式がそのことを区分して示しています。別紙様式1は、「5.承認申請等の特例について」の該当項目の欄で、「・地方公共団体」については5.(1)①a.・b.を、「・地方公共団体及びその他の者」については5.(1)②・5.(1)③を掲げています(同7頁)。③は、地方公共団体以外の者も対象とされています。

出し方にも定めがあります。報告書は別紙様式1(同7頁)で、記載要領は、5.(1)③に該当する場合には別紙様式2による一時使用報告書を添付するものとしています(同8頁)。別紙様式2は、事業名、研究課題名、設備等の名称・取得日・処分制限期間、設備等使用者(所属・氏名)、年度内使用日等、転用か貸付かの区分、一時使用者、「転用又は貸付先における研究開発等の事業内容」、管理協定の内容、貸付額の内訳(実費負担を求める場合のみ)を書く様式です(同9頁)。もっとも、この様式は研究課題名や研究開発等の事業内容の記載を求め、記入例の所属も大学とされており、研究開発の場面を前提に組まれています。研究開発以外の一時使用でこの様式を使うことになるのかどうかは、提出先に確かめることになります。

そして、柱書のただし書が効きます。記載事項に不備があれば、承認とみなす効果は生じないとされています。さらに、大臣等は必要に応じて、報告書により承認とみなした財産の活用状況について報告を受け、又は確認をすることができるとされています(同4頁)。出して終わりではないということです。

もっとも、どの書面でどこに出すのかは補助金ごとに違います。中小機構が交付する補助金の交付規程には、一時使用に対応する様式が置かれていません(後記5)。報告書を自分で作って出しに行かれる前に、後記5をお読みください。

次のような場合は、お出しになる前にご相談ください

  • 補助金で取得した設備・施設を、補助事業以外の用途にも使いたいと考えている
  • 一部を別の用途に使っていることについて、事務局から「財産処分に当たる」と言われている
  • 年度内だけ別の用途に使う、他社に一時的に貸す、といった計画がある
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 既存事業との併用(対応ページ)/「目的外使用」とは何か(Q&A)

5 この基準が当てはまる補助金、当てはまらない補助金

取扱基準は、大臣等が22条の承認をするための基準として定められたものです(同1頁)。ですから、どの補助金にも同じ数字が当てはまる、という性質のものではありません。お手元の補助金について、どの定めが使われるのかを確かめる必要があります。

中小機構が交付する補助金の場合

独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付する補助金については、中小機構法16条によって補助金適正化法が準用されます。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)は、「処分」の中身を次のように定義しています。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程24条1項)「取得財産等のうち、処分(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等をいう。)を制限する財産(以下「処分制限財産」という。)は、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産とする。」

交付規程自身が、「処分」を「補助金の交付の目的に反する使用」等に限っています。取扱基準2.(2)は、当該使用が「交付の目的に反しない使用」であることを示すものですので、これに当たる場合は、そもそも同項の「処分」に当たらないと考える余地があります。承認申請を要するのは、処分制限期間内に処分制限財産を「処分しようとするとき」です(同条3項・様式第12-1)。

これを補強するのが、納付を定める同条6項の後段です。

引用(同交付規程24条6項後段)「なお、当該処分については、補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(平成16・6・10会課第5号)の各規定を踏まえ取り扱うものとする。」

この後段は、納付額の算定について会課第5号を参照する趣旨の部分として引かれることが多く、当方もコラム「納付命令」とコラム「補助事業を続けられないとき」でそのように引いています。もっとも、文言は「各規定を踏まえ取り扱うものとする」であって、4.に限られていません。交付規程24条1項の文言と併せて読めば、取扱基準2.(2)に当たるかどうかを検討しないまま、補助事業以外に使ったというだけで同項の「処分」として扱うことはできないと考える余地があります。

同じ一文は、中小機構が交付する他の補助金の交付規程にも置かれています。中小企業省力化投資補助金交付規程(令和6年6月24日規程令6第4号。規程令7第34号による改正までのもの)25条7項後段と、中小企業新事業進出促進補助金交付規程(令和7年4月21日規程令7第1号。規程令8第2号による改正までのもの)24条6項後段が、いずれも同じく「平成16・6・10会課第5号」の各規定を踏まえ取り扱う旨を定めています。

留保もあります。取扱基準の報告書は「大臣等に提出する」ものとされており、(新市場進出)交付規程に置かれている財産処分の様式は、第12-1から第12-5までです。5.(1)③に対応する一時使用の様式は置かれておらず、「一時使用」という語は同規程の全頁にありません。同規程が報告書の提出による承認のみなしを定めているのは、処分制限財産が災害又は火災(補助事業者等の責めに帰すことができない事由による場合に限る。)により使用できなくなった場合、若しくは立地上又は構造上危険な状態にある場合の取壊し又は廃棄に限られています(同24条5項・様式第12-4。Q&A「保管と管理義務」で述べたとおりです)。年度内の一時的な転用・貸付けを考えるのであれば、どの書面でどこに出すのかを、先に書面で確かめることになります。

小規模事業者持続化補助金の場合

同じ趣旨の除外が、事務局の定める取扱いに置かれています。もっとも、この補助金は商工会地区と商工会議所地区とで交付規程と事務局が分かれていますので、ご自身がどちらの地区の交付規程によっているのかを先に確かめてください。以下は、商工会議所地区事務局が定めた取扱いです。

引用(商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局「「小規模事業者持続化補助金」<一般型>において補助事業者が補助対象経費により取得し、または効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(2024年3月28日制定)2条2項)「2 なお、次に掲げる場合その他これらに準ずる場合には、補助金の交付目的に反しない使用として「処分」には該当しないものとする。
(1)業務時間外や休日等を利用して補助金交付の目的たる事業の遂行に支障をきたさない範囲で一時的に転用する場合
(2)処分制限財産(施設に限る)の一部について付帯設備の設置を行う場合、その他当該転用が極めて軽微であると認められる場合
(3)補助金交付の目的たる事業を遂行するために必要な、処分制限財産の機能の維持、回復又は強化を図るための改造を行う場合」

同じ三つの場合が並んでいますが、(2)には面積の数値が入っていません。10%・150平方メートルという数字は、取扱基準の側にある数字であって、どの補助金でも同じように書かれているわけではない、ということです。なお、同取扱い2条1項(1)も、転用を「処分制限財産の所有者の変更を伴わない、補助金交付の目的に反する使用」と定義しており、交付規程の側と同じ読み方ができます。

この種の定めは交付規程そのものではなく、事務局が別に定める「取扱い」に置かれていることがありますので、交付規程だけを見て「書いていない」と判断しないほうがよいと考えております。

反対に、前記4で述べた報告書による承認のみなしは、この取扱いには置かれていません。同取扱いは5条までで、3条が承認の基準、4条が納付額、5条が財産処分制限期間を定めるにとどまります。年度内であれば報告書で足りる、という読み方はできません。

なお、この類型では交付主体は事務局であり、事務局と補助事業者の関係は交付規程に基づく負担付贈与契約と解しております(負担付贈与契約型の補助金(対応ページ))。ここでの「取扱い」も、行政庁の承認の基準ではなく、契約の内容として読むことになります。

地方公共団体が自ら交付する補助金の場合

補助金適正化法が定める「補助金等」は、国が国以外の者に対して交付するものです(補助金適正化法2条1項)。地方公共団体が自らの予算で交付する補助金には適正化法が及びませんので、ここで述べた数字も当然には当てはまりません。その団体の規則・要綱と交付決定通知書で確かめることになります。

6 事務局の説明との関係

事業再構築補助金の事務局は、「補助事業により取得した資産について『財産処分』となる参考例」(令和8年5月)を公表しています。その2頁の「注意すべきポイント」は、次の三項目です。

引用(事業再構築補助金事務局「補助事業により取得した資産について「財産処分」となる参考例」2頁)「・補助事業により取得した資産(取得財産)は、原則として専ら補助事業に使用される必要があります。
・取得した資産を既存事業等、補助事業以外で用いたり、譲渡や破棄等の処分をする場合は、事務局に「財産処分」の承認を得る必要があります。
・事務局の承認を得ずに処分をした場合、交付決定を取り消される場合があります。」

同じ頁の「『財産処分』の承認を得る必要がある処分」の一覧は、目的外使用(転用)を次のように定義しています。

引用(同2頁)「目的外使用(転用) 処分制限財産の所有者の変更を伴わない目的外使用(補助事業以外の使用)をすること。」

読み比べていただきたいのは、括弧の中です。補助金適正化法22条の文言は「交付の目的に反して使用」であり、取扱基準2.(1)の転用の定義も「処分制限財産の所有者の変更を伴わない目的外使用」までで止まっています。これに対して、事務局の資料は、そこに「(補助事業以外の使用)」という括弧書きを足しています。「交付の目的に反して」が「補助事業以外」に置き換わっているのです。

この置き換えは、取扱基準自身の立て方と合わないと考えております。取扱基準2.(2)は、まさに補助事業以外の用途への使用を含む場面について、「補助金等の交付の目的に反しない使用として財産処分には該当せず」と述べているものです。補助事業以外の使用がすべて交付の目的に反する使用であるとすれば、2.(2)の定めは置かれる余地がありません。

また、同資料が「目的外使用」の参考例①として挙げているのは、補助事業である店舗を閉店し、補助事業により取得した店舗及び厨房機器を既存事業等にのみ使用した、という場面です(同3頁)。専ら既存事業だけに使うことと、業務時間外や休日等を利用した一時的な転用、施設の一部への付帯設備の設置、機能の維持・回復・強化のための改造とは、場面が違うと考えております。

そして、同資料の全7頁に、取扱基準2.(2)型の除外についての記載はありません。前記のとおり、三項目の最後は、承認を得ずに処分をした場合に交付決定を取り消される場合があるという注意です。そうすると、この資料は、承認を得ないまま進めたときの取消しのリスクを示すためのものであって、承認が要らない場合を網羅的に示したものではない、という読み方になると考えております。前記5のとおり、交付規程自身が取扱基準の各規定を踏まえて取り扱うとしている以上、2.(2)に当たるかどうかを検討しないまま、補助事業以外に使ったというだけで承認が必要であるとすることはできないと考える余地があります。

承認を要しない目的外使用があり得ること自体は、文献でも述べられています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』302頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「なお、災害時等緊急の場合に小中学校校舎、屋内運動場等を避難用に使用するケース等は、緊急避難的な目的外使用であることにかんがみ、交付行政庁の承認は要しないものと解される。」

引く範囲は限っておきます。同書の同じ頁の前後は、他省庁や他局の所管する施設等への転用について、承認の姿勢をどうすべきかを論じた部分であり、転用一般に承認を要することを前提としています。ですから、この一文から、業務時間外の便宜的な転用まで承認が要らないという結論が出てくるものではありません。それでもなお、同書が、承認を要しない目的外使用の場面を認めていることは、確かめておいてよいと考えております。前記2のとおり、裁判例の側にも、22条の規制する行為を文言に即して限定したものがあります。

7 動かれる前に確かめること、残しておくもの

ここまでの整理を、手を動かす順に並べます。

  • どの補助金の、どの版の交付規程かを先に特定してください。条数、様式番号、処分制限財産の金額の線は、補助金ごと・公募回ごとに違います。
  • 交付規程に、取扱基準(会課第5号)を踏まえる旨の定めがあるかを確かめてください。併せて、事務局が別に定める「取扱い」が公表されていないかも確かめてください。除外の定めは、交付規程ではなくそちらに置かれていることがあります。
  • 使い方を数字で書けるようにしてください。どの財産を、いつ(時間帯・曜日・日数・期間)、どの範囲(施設であれば延べ床面積と転用部分の面積、設備であれば台数・稼働時間)で、どの用途に使うのか。施設の面積は、図面と実測で示せる形にしておいてください。前記3の軽微性の手がかりは、いずれもこの数字から出てきます。
  • 補助事業の遂行に支障を来さないことを示す記録を残してください。2.(2)①も5.(1)③も、この点を要件にしています。補助事業の側の稼働記録、生産記録、受注記録が、そのまま資料になります。
  • 年度を超えないことを確かめてください。5.(1)③は「当該年度を超えない範囲で」としています。年度をまたぐ計画であれば、別の組み立てが要ります。貸付けであれば、管理協定を締結し、原則として無償とし、実費相当額の負担を求めるのであればその内訳を残してください。
  • 取得財産等管理台帳の記載を実態に合わせてください。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程は、取得財産等について様式第7による取得財産等管理台帳を備えるものとし、次条で処分を承認された財産を除き、次条2項に定める期間が終了するまで管理しなければならないとしています(同23条2項)。様式第7には、保管場所及び設置場所(所在地)、構造又は用途、面積の欄があります。面積の欄がある以上、前記3の10%・150平方メートルは、この台帳の記載と直結します。記載が実態と食い違っていると、そこから話が始まってしまいます。
  • 交付主体とのやり取りは書面で残してください。電話で問い合わせた、という事実は後から確かめることができません。照会の書面と、受け取った回答の控えを、送った日が分かる形で残してください。

承認が要らない範囲であっても、何も伝えないまま進めることはお勧めしません。取扱基準は、報告書により承認とみなした財産についても、活用状況の報告や確認ができるものとしています。後の実地検査で初めて説明するより、先に書面で示しておくほうが、結局は早いと考えております。検査の場で何を見られるのかは、Q&A「補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか」とQ&A「保管と管理義務」で述べています。

補助金で取得した設備・施設を別の用途にも使うことについて、事務局や交付主体に確認を求めようとしている事業者の方、顧問先・支援先からこのご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、申請書や回答をお出しになる前にご相談ください。交付決定通知書、お手元の交付規程、取得財産等管理台帳、使い方の分かる図面・稼働記録があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

  • 大臣官房会計課「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16・6・10会課第5号。平成18年7月3日・平成20年6月6日・平成21年3月19日・平成22年4月28日・平成27年3月31日・平成29年8月9日・令和元年5月7日改正)1.(1)(2)(同取扱い1頁。処分制限財産=補助金適正化法施行令13条に定める財産。経済産業大臣(補助金適正化法26条の規定により事務を委任されている者を含む。以下「大臣等」という。)が22条の承認をするための基準等の取扱いを定めるもの)
  • 同取扱い2.(1)(同1〜2頁。転用=処分制限財産の所有者の変更を伴わない目的外使用。ほかに譲渡・交換・貸付け・担保に供する処分・取壊し・廃棄の定義。取壊しの定義が「処分制限財産(施設(土地を含む。以下同じ。)に限る。)」としており、以後の「施設」には土地が含まれます)
  • 同取扱い2.(2)柱書及び①②③(同2頁。「次に掲げる場合その他これらに準ずる場合には、補助金等の交付の目的に反しない使用として財産処分には該当せず、本取扱いに定める手続を経ることを要しないこととする。」)、3.(1)(同2頁。承認には国庫納付条件を付さなければならない)、4.(1)から(3)まで(同3頁。国庫納付額の算定)
  • 同取扱い5.(1)柱書・③(同4頁。別紙様式1の報告書の提出による22条の承認のみなしと国庫納付を求めないこと、記載事項の不備など必要な要件が具備されていない場合の除外、活用状況についての報告・確認、当該年度を超えない範囲の一時的な転用又は貸付け、管理協定の締結、原則無償貸付け)、別紙様式1「財産処分報告書」1.④欄(同7頁。「5.承認申請等の特例について」の該当項目を「・地方公共団体」と「・地方公共団体及びその他の者」に分け、後者に5.(1)②・5.(1)③を掲げる)
  • 同取扱い〈記載要領〉3(同8頁。5.(1)③に該当する場合には別紙様式2による一時使用報告書を添付する)、別紙様式2「設備等一時使用報告書」(同9頁。事業名、研究課題名、設備等の名称・取得日・処分制限期間、設備等使用者(所属・氏名)、年度内使用日等、転用・貸付の区分、一時使用者、「転用又は貸付先における研究開発等の事業内容」、①管理協定の内容、②貸付額の内訳(実費負担を求める場合のみ)の各欄。記入例の所属は大学)
  • 中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)23条1項・2項、24条1項から6項まで(同規程7〜8頁。24条1項が「処分(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等をいう。)」と定義し、処分制限財産を取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産とする。24条6項後段が「平成16・6・10会課第5号」の各規定を踏まえ取り扱う旨を定める。財産処分の様式は第12-1から第12-5までで、「一時使用」の語は同規程の全頁にありません)
  • 中小企業省力化投資補助金交付規程(令和6年6月24日規程令6第4号。規程令7第34号による改正までのもの)25条7項後段、中小企業新事業進出促進補助金交付規程(令和7年4月21日規程令7第1号。規程令8第2号による改正までのもの)24条1項・同条6項後段(いずれも同じく「平成16・6・10会課第5号」の各規定を踏まえ取り扱う旨を定めています)
  • 商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局(運営:株式会社日本経営データ・センター)「「小規模事業者持続化補助金」<一般型>において補助事業者が補助対象経費により取得し、または効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(2024年3月28日制定)1条・2条(同取扱い1頁。小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程(2024年3月28日制定)を参照する。2条1項(1)が転用を「処分制限財産の所有者の変更を伴わない、補助金交付の目的に反する使用」と定義し、2条2項(1)(2)(3)が同旨の除外を置く。(2)に面積の数値はありません)、同3条から5条まで(同1〜2頁。承認の基準・納付額・財産処分制限期間。報告書の提出によって承認を受けたものとみなす定めは置かれていません)
  • 小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程(2023年3月3日制定・全国商工会連合会)24条・25条(同規程PDF6頁。25条2項は処分を制限する期間を「全国連会長が別に定める期間」とする規定で、除外の定めではありません。同補助金は商工会地区と商工会議所地区とで交付規程と事務局が分かれています)
  • 補助金適正化法22条(補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない)
  • 補助金適正化法施行令13条(処分を制限する財産=不動産、船舶等、その従物、機械及び重要な器具で各省各庁の長等が定めるもの、その他各省各庁の長等が定めるもの)、同14条1項(22条ただし書の「政令で定める場合」=1号・補助金等の全部に相当する金額を納付した場合、2号・交付の目的及び耐用年数を勘案して定める期間の経過の二つ。取扱基準2.(2)の三つの場合は、この政令の列挙には入っていません)
  • 補助金適正化法2条1項(「補助金等」とは、国が国以外の者に対して交付する補助金、負担金、利子補給金その他政令で定める給付金をいう)
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構法15条1項6号、16条(補助金適正化法の準用)
  • 東京地判平成2年1月30日判タ736号151頁(補助金適正化法22条は「実質的に補助金等の他用途使用と変わらない結果となるおそれのある行為を規制したものであると解される」と述べたうえで、「補助金等の目的どおりに建設され、その後も目的どおり使用されていた施設を未だ耐用年数が十分残っている段階で解体するような行為は、それ自体経済的合理性の観点からその当否が検討される余地のあるものであるとしても、同条の規制する行為の対象には含まれないというべきである」と判示したもの)。小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』308頁注(21)(株式会社全国会計職員協会、2016)は、同判示に「余りにも文理解釈にすぎるとの疑問が残る」としつつ、「控訴審判決もこれを支持している」としています。控訴審判決そのものは公刊物に見当たりません
  • 小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』302頁(株式会社全国会計職員協会、2016)(災害時等緊急の場合に小中学校校舎、屋内運動場等を避難用に使用するケース等は、緊急避難的な目的外使用であることにかんがみ、交付行政庁の承認は要しないものと解されるとするもの。同頁の前後は、他省庁や他局の所管する施設等への転用について承認の姿勢を論じたもので、転用一般に承認を要することを前提としています)
  • 事業再構築補助金事務局「補助事業により取得した資産について「財産処分」となる参考例」(令和8年5月)2頁(注意すべきポイントの3項目、及び「財産処分」の承認を得る必要がある処分の一覧。目的外使用(転用)を「処分制限財産の所有者の変更を伴わない目的外使用(補助事業以外の使用)をすること。」と定義する)、3頁(参考例①=補助事業であるテイクアウト店を閉店し、補助事業により取得した店舗及び厨房機器を既存事業等にのみ使用した場面)。同資料全7頁に、取扱基準2.(2)型の除外についての記載はありません

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

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