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弁護士 岸上大起

補助金で導入した設備を取り外して保管している――管理義務に反すると言われたら

このページの結論

補助金で導入した設備が使えなくなり、取り外して保管しています。交付主体からは、効率的に運用する義務に反する、財産を処分したのではないかと言われています。返還になるのでしょうか。

取り外して手元に置いていることは、交付規程24条1項が「処分」として挙げる行為(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等)のいずれにも当たらないと考えております。交付規程23条1項が課しているのは、取得財産等を善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を図る義務であり、現物を自社で保管して管理していることは、むしろこの義務を果たしている状態であると考えております。

もっとも、保管しておけば何もしなくてよい、という話ではありません。取得財産等管理台帳(同23条2項・様式第7)で現物を管理し、交付の目的に沿って再び運用する計画を立てて交付主体に書面で報告し、控えを残しておくことが要になると考えております。使用できなくなった財産の取壊し・廃棄について報告で足りるとする定めもありますが(同24条5項)、文言上は、災害又は火災による場合と、立地上又は構造上危険な状態にある場合に限られています。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 言われていることを二つに分ける

補助金で導入した設備が使えなくなり、取り外して手元に保管している、という場面があります。この状態について交付主体から指摘を受けたとき、言われていることは、条文の上では二つに分かれます。一つは、財産を「処分」したのではないかという指摘です(交付規程24条1項、補助金適正化法22条)。もう一つは、取得した財産を善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を図る義務に反するのではないかという指摘です(同交付規程23条1項)。根拠となる条文が違い、問われている事柄も違いますので、どちらを言われているのかを先に分けることになります。

前者については、財産の「処分」がされていない以上、財産処分に伴う納付は生じないという整理を、Q&A「補助事業を途中でやめたい・縮小したいとき」で述べています。このページでは、後者、すなわち交付規程23条1項の義務を正面から扱います。以下の交付規程の条数と文言は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)のものです。

2 取り外して手元に置いていることは、交付規程が挙げる「処分」ではない

交付規程は、処分を制限する財産を定める条文の中で、「処分」が何を指すのかを括弧書きで示しています。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程24条1項)「取得財産等のうち、処分(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等をいう。)を制限する財産(以下「処分制限財産」という。)は、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産とする。」

挙げられているのは、交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等です。いずれも、財産を手元から外に出す行為か、別の用途に使う行為です。取り外した設備を自社で保管し、現物を手元に置いている状態は、このどれにも当たらないと考えております。

法律の側も同じ組み立てです。本補助金について補助金適正化法が及ぶのは、中小機構法16条による準用です(同条は、中小機構法15条1項6号等の規定により機構が交付する助成金について、補助金適正化法の規定を罰則を含めて準用するものとしています)。補助金適正化法22条は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならないと定めています。承認を要する行為として並んでいるのは、やはり財産を外に出す行為と、別の用途に使う行為です。保管は、その列挙のいずれにも当たらないと考えております。

3 交付規程23条1項が課している義務の中身

引用(同交付規程23条1項)「補助事業者は、補助対象経費(補助事業の一部を第三者に実施させた場合における対応経費を含む。)により取得し、又は効用の増加した財産(以下「取得財産等」という。)については、補助事業の完了後においても、善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従って、その効率的運用を図らなければならない。」

定められているのは、善良な管理者の注意をもって管理することと、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を図ることの二つです。義務の内容は、財産を管理することと、その使用の効率を図ることであって、常時稼働していることそれ自体ではないと考えております。

この型の義務は、もともと、補助事業の完了後にも及ぶ補助条件として組まれてきたものです。補助金適正化法7条1項は、交付の決定をする場合において、法令及び予算で定める交付の目的を達成するため必要があるときは、次に掲げる事項につき条件を附するものとすると定めています。そして、同条3項は、1項・2項に定める条件のほか、交付の目的を達成するため必要な条件を附することを妨げるものではないとしています。文献は、交付行政庁は任意的補助条件の一種たる事業完了後条件において、補助事業等により取得し又は効用の増加した財産について事業完了後も善管注意をもってその効率的な使用を図るべきことを、補助事業者等に対して義務づけることができることとされていたところであると説明しています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』296〜297頁(株式会社全国会計職員協会、2016))。交付規程23条1項が交付決定に附された条件(事業完了後条件)として取り込まれているとすれば、それはこの型の条件に当たるものと考えております。

交付規程の条項が補助条件に取り込まれているかどうかという見方そのものは、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。

そうすると、取り外した設備を自社で保管し、現物を管理していることは、同項の義務に反するものではなく、むしろ善良な管理者の注意をもって管理していることにほかならないと考えております。

もっとも、保管しておけば何もしなくてよい、という話ではありません。同項は、管理することと併せて、交付の目的に従って効率的運用を図ることも求めています。交付の目的に沿って再び運用する計画を立て、その計画を交付主体に示しておくことが、保管の事実と同じだけ重要になると考えております。この点は、後記5で述べます。

規模を縮小して稼働を続ける場合

使えなくなった部分を取り外す一方で、残った部分で事業を続けるという選択もあります。事業の規模を縮小して、取得財産の稼働を続ける場合です。このような場合、取得財産は補助金の交付の目的に沿って使用され続けていますので、財産の「処分」にも、交付の目的に反する使用にも当たらないと考えております。処分制限財産の処分がない以上、処分の承認申請(同交付規程24条3項)を要する場面でもなく、財産処分に伴う納付の前提も欠くことになると考えております。

もっとも、規模の縮小が事業計画の一部の廃止に当たる場合には、届出の要否を別に確かめることになります(同交付規程26条1項1号)。「目的外使用」という言葉が何を指しているのかは、Q&A「補助金の『目的外使用』とは何か」で整理しています。

なお、補助率の引上げを受けている場合の引上げ分の扱いは別の問題ですので、Q&A「補助事業を途中でやめたい・縮小したいとき、補助金はどうなるのか」をご覧ください。

4 稼働が止まった原因が、事業者の責めに帰すべき事由によらないとき

稼働が止まった原因が、事業者の責めに帰すべき事由によらないことがあります。そのような事由によって一時的に稼働が止まったことをもって、善良な管理者の注意をもってする管理及び効率的運用の義務に違反するということはできないと考えております。義務は、事業者が果たすべきものとして課されているものです。事業者の側で避けることのできない事情によって稼働が止まっている状態を、義務に違反した状態と評価することは難しいと考えております。

そのため、稼働が止まった原因と、その後の経過を示す資料は、早めに確保しておいてください。原因が事業者の側にないことを示せるかどうかで、この指摘への答え方が変わります。

使用できなくなった場合の手続の定めは、災害・火災等に限られています

交付規程には、使用できなくなった財産について、承認の手続を簡略にする定めが置かれています。処分制限財産が災害又は火災(補助事業者等の責めに帰すことができない事由による場合に限る。)により使用できなくなった場合、若しくは立地上又は構造上危険な状態にある場合の取壊し又は廃棄を行った場合は、様式第12-4による財産処分報告書を提出することにより、財産処分の承認を受けたものとみなすことができるとされています(同交付規程24条5項)。

もっとも、この定めは、文言上、災害又は火災による場合と、立地上又は構造上危険な状態にある場合に限られています。設備が使えなくなったからといって、承認の手続が一般に要らなくなるわけではありません。処分制限期間内に保管をやめて取壊し・廃棄に進むのであれば、あらかじめ承認申請書(様式第12-1)を提出して承認を受けることが原則とされています(同条3項)。

同項が承認を要するものとしているのは、処分を制限する期間内において処分制限財産を処分しようとするときです。期間が経過していれば、同項の承認を要しません。手元に置いたままである限り、この手続の問題は生じません。動かれる前に、まず処分制限期間が経過しているかどうかを確かめ、そのうえで、どちらの手続によることになるのかを確かめておいてください。期間の数え方は、コラム処分制限期間は何年かと、Q&A「事業再構築補助金は5年たてば自由に処分できるのか」で述べています。

次のような場合は、ご回答になる前にご相談ください

  • 取り外して保管している設備について、「効率的運用義務に反する」と言われている
  • 保管していることをもって、財産を処分したのではないかと言われている
  • 設備の稼働が止まっていることについて、書面で説明を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 「目的外使用」とは何か(Q&A)/補助事業を続けられないとき――手続の順番、返還額の計算、返還が生じない選択肢(コラム)

5 保管していることを示せるようにしておく

保管しているという事実は、言葉だけでは残りません。次のものをそろえておいていただくと、指摘を受けたときに、そのまま示すことができます。

  • 取得財産等管理台帳(様式第7)。交付規程は、取得財産等について様式第7による取得財産等管理台帳を備えるものとし、処分を承認された財産を除き、処分制限期間が終了するまで管理しなければならないと定めています(同交付規程23条2項)。保管場所の記載は、現に保管している場所に合わせておいてください。
  • 現物の所在が分かる記録。いつの時点で、どこに、どの財産が置かれているのかが分かるものです。
  • 交付の目的に沿って再び運用する計画。何を、どういう形で、いつから再び運用するのかを書いたものです。
  • その計画を交付主体に報告した控え。書面又はメールで出し、送ったものと送った日が分かる形で残してください。口頭で伝えただけでは、後から確かめることができません。
  • 稼働が止まった原因を示す資料(前記4)。

交付規程は、補助事業終了後、会計検査院、経済産業省又は中小機構が、補助事業に関して予告なく実地検査を実施することができるとしています(同交付規程27条4項前段)。検査の場で何を見られるのか、どの順で書面を並べるとよいのかは、コラム「補助金の返還を求められるのは、どのような場合か」と、Q&A「補助金の立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか」で述べています。

6 最高裁判決とその調査官解説との関係

財産の処分については、最高裁判決があります。最三小判令和3年3月2日民集75巻3号317頁です。その判示事項は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとしてされた財産の処分の承認が同法7条3項による条件に基づいてされたものとして適法であるとされた事例」です。同判決は、22条に基づくものとしてされた財産の処分の承認の適法性について判示したものであって、取得した財産を取り外して保管していることが同条の規制する処分に当たる旨を判示したものではないと考えております。

もっとも、同判決の調査官解説は、22条の承認の対象を広く捉える整理を示しています。すなわち、承認の対象は、補助事業等により取得した財産を補助事業者等において補助目的に沿って管理しなくなることであると解され、同条が列挙する行為は、補助目的に沿って管理しなくなる具体例として挙げられているもののように思われるとし、補助目的に沿って管理しない目的外使用の状態になる以上は、承認を要するものと解されるとしています(荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)86頁)。この整理の引用と、場面ごとの当てはめは、Q&A「補助金の『目的外使用』とは何か」で引いています。廃棄の場面については、この整理を、承認の対象に含まれると解する余地を否定し切れないという方向で述べています(後記のコラム「廃棄処分」)。

保管の場面では、同じ整理が逆の方向に働くと考えております。同解説は、22条に基づく承認と、同判決の事案で問題となった7条3項による条件に基づく承認(引用中の「本件交付決定条件に基づく承認」)の効果について、次のようにも述べています。

引用(荒谷謙介・最高裁判所判例解説民事篇令和3年度(上)86頁)「法22条に基づく承認や、本件交付決定条件に基づく承認は、いわば事業実施事業者の善管注意義務を解除する効果を持つものであって、これは補助金等又は間接補助金等により整備された財産の処分の民事上の効果の有無に関わるものではない。」

承認が要るのは、財産を補助目的に沿って管理しなくなるときです。現物を自社で保管し、取得財産等管理台帳に計上し、交付の目的に沿って再び運用する計画を示している状態は、「補助目的に沿って管理しなくなった」ものではないと考えております。この整理を前提にしても、結論は変わらないと考えております。

「使われていない」ことと「目的に反して使われている」こととが別であることは、会計検査院の検査報告の区分の立て方からも、同じことがいえると考えております。遊休は使用されていないという区分であり、補助の目的に反する使用があったとの認定を示すものではないと考えております。この点は、前記のコラム「補助金の返還を求められるのは、どのような場合か」で述べています。

これに対し、保管をやめて取壊し・廃棄をしてしまった場合は、問題の立て方が変わります。廃棄が補助金適正化法22条の承認の対象に含まれるのかという論点については、コラム「廃棄処分」と廃棄処分・廃業のページで述べています。

交付主体から指摘を受けた段階では、どの条文のどの義務に反すると言われているのかが、書面の上で特定されていないことがあります。まずは、言われていることを前記1のように分け、根拠として挙げられた条項を確かめることから始めていただくのがよいと考えております。

取り外して保管している設備について、管理義務や効率的運用義務に反すると言われている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご回答や申請書をお出しになる前にご相談ください。交付決定通知書、交付規程、取得財産等管理台帳、交付主体から受け取った書面があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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