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弁護士 岸上大起

自分に落ち度がないのに補助事業を続けられなくなった――補助金はどうなるのか

このページの結論

自社の落ち度ではない事情で、補助事業を続けられなくなりました。交付する側からは、交付決定を取り消すので補助金を全額返してほしい、加算金も付くと言われています。そういうものなのでしょうか。

交付決定の取消しには、事業者の義務違反によるもの(補助金適正化法17条1項)と、事業者の責めに帰すべき事情によらない事情の変更によるもの(同10条1項)があり、原因も効果も違います。事情の変更による取消しであれば、すでに経過した期間に係る部分は取り消すことができず(同10条1項ただし書)、したがってその部分の返還を求められることもありません。加算金も付きません(同19条1項は17条1項の処分による返還に限っています)。

さらに、取消しにより特別に必要となった残務処理の経費と、契約の解除により必要となった賠償金の支払に要する経費には、補助金が交付されます(同10条3項、同法施行令6条)。もっとも、続けられなくなった原因が事業者の責めに帰すべき事情によるときは17条の取消しとなり、効果は反対の向きに振れますので、原因が自社の側にないことを示す資料を早めに固めることが要になると考えております。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 取消しには二つあり、原因も効果も違う

補助事業を続けられなくなったとき、交付決定の取消しには二つの道筋があります。一つは、事業者の側に義務違反があったという道筋です(補助金適正化法17条1項)。もう一つは、事業者の責めに帰すべき事情によらずに、交付決定の後に事情が変わったという道筋です(同法10条1項)。

引用(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律10条)

「(事情変更による決定の取消等)

第十条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をした場合において、その後の事情の変更により特別の必要が生じたときは、補助金等の交付の決定の全部若しくは一部を取り消し、又はその決定の内容若しくはこれに附した条件を変更することができる。ただし、補助事業等のうちすでに経過した期間に係る部分については、この限りでない。

2 各省各庁の長が前項の規定により補助金等の交付の決定を取り消すことができる場合は、天災地変その他補助金等の交付の決定後生じた事情の変更により補助事業等の全部又は一部を継続する必要がなくなつた場合その他政令で定める特に必要な場合に限る。

3 各省各庁の長は、第一項の規定による補助金等の交付の決定の取消により特別に必要となつた事務又は事業に対しては、政令で定めるところにより、補助金等を交付するものとする。

4 第八条の規定は、第一項の処分をした場合について準用する。」

文献は、本法が交付決定の撤回に関し、事情変更による撤回(取消し)と相手方の義務違反による撤回(取消し)の二者について10条及び17条において規定しているとしたうえで、事情変更による取消しと相手方の義務違反による取消しとは、その原因を異にするばかりでなく、その効果を著しく異にすると述べています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』182頁(株式会社全国会計職員協会、2016))。

同書は、効果の違いを三点に整理しています。第一に、取消しに基づく返還に加算金が付加されるか否か。第二に、取消しに伴い特別の補助金等が交付されるか否か。第三に、取消しの効果が既往に及びうるか否かです(同195頁)。三点とも、事情変更による取消しのほうが事業者に有利な向きに働きます。以下、順に見ていきます。

なお、独立行政法人中小企業基盤整備機構が交付する助成金についても、中小機構法16条により補助金適正化法の規定が罰則を含めて準用され、「各省各庁の長」は「独立行政法人中小企業基盤整備機構の理事長」と読み替えられます。以下に引く交付規程も、その1条で、本補助金の交付については適正化法、同法施行令、中小機構法及びその他の法令の定めによるほか、この規程の定めるところによるとしています。条数と文言は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)のものです。

2 どういう場合が「事情の変更」に当たるのか

10条2項は、取消しができる場合を限定しています。そして、同項の「その他政令で定める特に必要な場合」は、同法施行令5条が次のとおり定めています。

引用(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令5条)「(事情変更による決定の取消ができる場合)
第五条 法第十条第二項に規定する政令で定める特に必要な場合は、補助事業者等又は間接補助事業者等が補助事業等又は間接補助事業等を遂行するため必要な土地その他の手段を使用することができないこと、補助事業等又は間接補助事業等に要する経費のうち補助金等又は間接補助金等によつてまかなわれる部分以外の部分を負担することができないことその他の理由により補助事業等又は間接補助事業等を遂行することができない場合(補助事業者等又は間接補助事業者等の責に帰すべき事情による場合を除く。)とする。」

文献は、施行令5条が指すのは、事業遂行手段として不可欠な土地、機械器具、原材料等の生産手段の取得入手が不能となった場合、あるいは裏負担分の原資の調達が不能となったごとき場合であると説明しています(小滝・前掲191〜192頁)。補助金でまかなわれない自己負担分の資金調達が断たれた場合も、ここに入るという読み方です。

10条2項が例示する「天災地変」についても、同書は、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火爆発等の異常な自然現象の発生を挙げたうえで、同項はこのような自然現象の変化のみに限定する趣旨ではなく、社会経済事情(社会経済情勢等)の変化を含むものと解して差し支えないとしています(同190〜191頁)。取引先の倒産や事業環境の急変が原因である場合も、直ちに枠の外ということにはなりません。

もっとも、同書は、「その後の事情の変更」とは、交付決定を行った時点以降、当該交付決定を行った際に存在した客観的条件に変化が生じた場合をいい、主観的条件の変化、例えば補助事業者等の事業遂行意思の消滅等は含まれないとし、当事者の責に帰することのできない客観的な事情の変更でなければならないとしています(同186頁)。気が変わった、やる気がなくなったという話ではない、ということです。

分かれ目は「原因が自社の側にあるか」です

施行令5条のかっこ書は、補助事業者等の責に帰すべき事情による場合を除いています。文献も、このような場合でも、事業者の怠慢その他事業者の責に帰すべき事由による場合には、本条の取消原因とはならず、17条の取消事由として既往にさかのぼって交付決定の取消しが行われることに注意すべきであるとしています(同192頁)。

つまり、同じ「続けられなくなった」という結果であっても、原因が自社の側にあるかどうかで、適用される条文が変わり、効果が反対の向きに振れます。ですから、原因を示す資料をどれだけ具体的に出せるかが、この場面の要になります。何を残しておくかは、後記7で挙げます。

交付規程の側にも、受け皿となる号が置かれています。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程22条1項4号)「(4)補助事業者が、交付の決定後生じた事情の変更等により、補助事業の全部又は一部を継続する必要がなくなった場合」

通知書が引いている号を確かめることになります。号ごとに取消しの事由と効果が違うという見方そのものは、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。また、取消事由に当たる事実があることと、取り消すかどうかの判断とが別であることは、コラム「補助金の交付決定は、どのようなときに取り消すことができるのか(名古屋地判平成4年4月23日・名古屋高判平成5年2月23日)」で扱っています。

3 すでに経過した期間に係る部分は、取り消せない

10条1項ただし書は、「補助事業等のうちすでに経過した期間に係る部分については、この限りでない。」としています。ここが、義務違反による取消しとの大きな違いです。

文献は、本条の取消しは既往に遡及することができない性質のものであるから、補助事業等の一部が既に執行され、一定の事業経費が費消されている場合には、客観的事情の変化により事業を継続しえなくなったからといって、交付決定の全部を取り消し、補助金等を全く交付しない(あるいは既交付分を全て返還させる)こととすることは許されないとし、この点を確認的に規定したのが本項のただし書であると述べています。そして、「経過した期間に係る部分」すなわち既執行部分については、事情変更を理由として取り消すことができない以上、補助金等の返還を求められることもないことに注意しなければならないとしています(同187頁)。

政府の方針も、同じ向きを示しています。同書は、平成10年5月29日に閣議決定された「第二次地方分権推進計画」が、国庫補助事業を中断する場合について、適正化法10条1項においては各省各庁の長は交付の決定を事業等の執行が済んでいない部分に限って取り消すことが出来るとする趣旨を定めており、同項の適用があるときには既に事業者等の執行が済んだ部分について補助金等の返還を求められることはないという方針を決定したものであることを引いています(同188頁)。

「経過した期間」は、時間の経過ではなく現実の執行状況で決まります

ここは誤解されやすいところです。文献は、「経過した期間」という文言上、補助事業等の予定期間のうちの経過期間部分については取消し等をなしえないように解される余地があるがとしたうえで、事業の執行の有無にかかわらず単に時間の経過のみによって対応部分の取消し等が制限されるものと解することは合理的ではないとし(単なる時間の経過は、相手方の信頼を保護すべき論拠とはなり難いからである、との理由が付されています)、現実の事業の執行状況に応じて措置しうるものと解すべきであるとしています(同187頁)。さらに、反面として、予定以上に事業が進ちょくしている場合には、未経過期間部分についても既執行部分については取消し等をなしえないものと解すべきであるとしています(同188頁)。

ですから、暦の上でどこまで来たかではなく、どの時点までに何をどれだけ実施し、いくら費消したのかを示せるかどうかが問題になります。予定より前倒しで進めていた場合には、その分だけ取り消せない範囲が広がる、という読み方になります。

交付規程22条2項は、この限界を超える根拠にはなりません

交付規程22条2項は、「中小機構は、前項の取消しをした場合において、既に当該取消しに係る部分に対する補助金が交付されているときは、期限を付して当該補助金の全部又は一部の返還を命ずる。」としており、1項各号のどの号による取消しかで書き分けていません。これを読んで、事情の変更による取消しでも既交付分は全部返すものだと受け取ってしまう方がおられます。

しかし、同項が返還の対象としているのは「当該取消しに係る部分」です。適正化法10条1項ただし書により取り消すことができない既執行部分は、そもそも「取消しに係る部分」になりません。そして、交付規程1条は、本補助金の交付については適正化法及び同法施行令その他の法令の定めによるほか本規程の定めるところによるとしており、適正化法の下に置かれた定めであることを自ら明らかにしています。交付規程22条2項が、中小機構法16条により準用される適正化法10条1項ただし書の限界を超えて、既執行部分の返還を命ずる根拠になるものではないと考えております。

4 加算金は付かない

補助金適正化法19条1項は、加算金の対象となる場面を文言で限定しています。

引用(補助金適正化法19条1項)「補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。」

対象は「第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分」に限られています。10条による取消しは、ここに書かれていません。文献も、原始的瑕疵ある交付決定の取消し及び事情変更による交付決定の取消しについては加算金が付加されないが、相手方の義務違反に対する交付決定の取消しに基づく補助金等の返還については一定の加算金が付加されると整理しています(同195頁)。

交付規程も、同じ区別を自ら置いています。

引用(同交付規程22条3項)「中小機構は、前項の返還を命ずる場合には、第12条第1項第4号の補助事業の全部若しくは一部の中止若しくは廃止の申請を承認した場合、並びに第1項第4号、第5号及び第6号に規定する場合を除き、その命令に係る補助金の受領の日から納付の日までの期間に応じて、年利10.95パーセントの割合で計算した加算金の納付を併せて命ずるものとする。」

加算金の対象から外れているのは、中止・廃止の申請を承認した場合と、1項4号・5号・6号の場合です。事情の変更による取消し(4号)は、はじめから加算金の対象外とされています。交付規程自身が4号を他の号と区別して扱っている以上、返還の範囲についても同じ区別が働くものと考える余地があります。加算金・延滞金の仕組みそのものは、Q&A「補助金の返還を求められたら、加算金・延滞金は払うのか」で、交付規程の加算金の定めが補助金ごとに大きく違うことは、コラム「従来のものづくり補助金の取消し・返還請求は取消訴訟で争えるのか(福岡地判平成25年2月4日とその控訴審)」で述べています。

5 残務処理の経費と契約解除の賠償金には、補助金が交付される

ここは、ほとんど知られていない定めです。10条3項は、取消しにより特別に必要となった事務又は事業に対しては補助金等を交付するものとすると定め、その中身を施行令6条が具体化しています。

引用(補助金適正化法施行令6条)「(決定の取消に伴う補助金等の交付)
第六条 法第十条第三項の規定による補助金等は、次に掲げる経費について交付するものとする。
一 補助事業等に係る機械、器具及び仮設物の撤去その他の残務処理に要する経費
二 補助事業等を行うため締結した契約の解除により必要となつた賠償金の支払に要する経費
2 前項の補助金等の額の同項各号に掲げる経費の額に対する割合その他その交付については、法第十条第一項の規定による取消に係る補助事業等についての補助金等に準ずるものとする。」

文献は、この定めの趣旨を、本条の取消事由が客観的条件の変化によるものであり、補助事業者等の責に帰せられるべきものでないところから、交付行政庁の職権による取消しに伴って生ずる損失のすべてを相手方に負担させることは適当ではなく、少なくとも取消しに伴って直接的に発生する損失相当額(残務処理経費及び損害賠償支払経費)は取消権を行使する交付行政庁において分担することが公平の原則に適合するものと考えられたからであると説明しています。そして、本条3項が「補助金等を交付するものとする」という義務的な規定をおいたものと解することができるとしています(同193頁)。補助負担率は、施行令6条2項により、取消しをした当初の交付決定に係る補助金等の補助負担率と同一とされています(同頁)。

もっとも、自動的に振り込まれるものではありません。同書は、この特別事務事業費に対する補助金等も適正化法に定義する補助金等に含まれ、その交付手続はすべて同法の規制に従うこととなるから、事情変更による取消しがあれば当然に交付されることとなるわけではなく、相手方の交付申請に基づき所要の審査を経て適正と認められた場合に交付決定がなされることとなるとしています(同194頁注16)。

ですから、取消しの通知を受け取った段階で、返還の話だけを進めるのではなく、設備の撤去や原状回復に要する費用、解約した発注の賠償金の支払に要する費用を拾い出し、この申請をするかどうかを併せて検討することになります。私見としては、事情の変更による取消しであることを争う場面では、この申請をすること自体が、17条ではなく10条の場面であるという当方の整理を示す行動にもなると考えております。

次のような場合は、ご回答になる前にご相談ください

  • 自社の落ち度ではない事情で補助事業を続けられなくなり、全額の返還を求められている
  • 取消しの通知に加算金の計算が付いているが、どの条文による取消しなのかが書かれていない
  • すでに実施した分についても返還を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 加算金・延滞金は払うのか(Q&A)/補助事業を続けられないとき――手続の順番、返還額の計算、返還が生じない選択肢(コラム)

6 事務局の「よくあるご質問」の一行には、この区別がない

事業再構築補助金の事務局が公表している「よくあるご質問」には、この場面を正面から取り上げた問いが置かれています。引用します。

引用(事業再構築補助金「よくあるご質問」Q&A番号 faq0049)「Q 補助事業終了後の事業計画期間内に事業を継続できなくなった場合、補助金の返還が求められるのか。
A 残存簿価相当額等により、補助金交付額を上限として返還を求めます。」

出典はhttps://jigyou-saikouchiku.go.jp/faq.html#faq0049です(当職が2026年10月23日に閲覧したもの)。この一行の回答には、三つのことが書かれていません。

  • どの条文に基づく返還なのかが示されていません。「残存簿価相当額等」による納付は、取得財産の処分に伴う納付の建て付けであり(同交付規程24条6項)、交付決定の取消しに伴う返還(同22条2項)とは別の仕組みです。前者は処分制限財産を処分するときの納付であり、後者は交付決定を取り消したことの帰結です。どちらの話をしているのかが分からないままでは、言われた金額の当否を確かめることができません。
  • 「継続できなくなった」原因が区別されていません。適正化法は、事業者の責めに帰すべき事情による場合(17条1項)と、そうでない場合(10条1項・2項、施行令5条)とを分けており、交付規程22条1項も、4号として事情の変更の場合を別に置いています。原因を問わず同じ結論になるという定め方は、法令にも交付規程にもありません。
  • 事情の変更による場合の三つの帰結(既執行部分は取り消せないこと、加算金が付かないこと、残務処理の経費等に補助金が交付されること)が、いずれも書かれていません。

この一行の回答をもって、原因を問わず全額の返還が当然であるとすることはできないと考えております。同じ「よくあるご質問」のうち、補助事業の縮小・実施場所の変更・廃止・破産手続についての問い(Q&A番号 faq0167・faq0168・faq0169・faq0171)は、いずれも事務局へのお問い合わせを案内するにとどまり、どの条文によるどの手続なのかを示すものではありません。問い合わせをする前に、適正化法と交付規程のどちらの建て付けの話なのかを自分の側で押さえておくことをお勧めいたします。

公表されている説明に書かれていないことを、書かれていないままに受け入れる必要はありません。通知書や事務局の案内が条文を挙げていないときは、どの条文のどの項・どの号によるものかを書面で尋ねることから始めることになります。事前の通知や弁明の機会については、Q&A「交付決定取消しの事前通知が届いたら」で述べています。

7 どう動くか

この場面で早めに手を付けておくとよいことを、順に挙げます。

  • 受け取った書面が引いている条文を確かめる。交付規程22条1項のどの号か、適正化法10条の話か17条の話か、返還は交付決定の取消しに伴うものか財産の処分に伴う納付か。ここが決まらないと、争う筋も決まりません。
  • 続けられなくなった原因を示す資料を確保する。取引先や貸主から届いた通知、契約の解除に関する書面、融資や出資が得られなくなった経緯が分かるやり取り、被害や滅失の記録、行政の指示や許認可に関する書面など、原因が自社の側にないことを外から確かめられるものです。施行令5条のかっこ書に当たらないことを示す材料になります。
  • 事業の執行状況を期間で区切って整理する。どの時点までに何を実施し、どの経費をいくら費消したのかを、証拠書類と結び付けて並べます。10条1項ただし書の「すでに経過した期間に係る部分」は、単なる時間の経過ではなく現実の執行状況で判断されるとされていますので(小滝・前掲187頁)、ここを数字で出せるかどうかが、取り消せない範囲の広さに直結します。
  • 残務処理の経費と、契約の解除により必要となった賠償金の支払に要する経費を拾い出す。施行令6条1号・2号に対応するものです。交付を受けるには申請が必要とされていますので(同194頁注16)、拾い出しは早いほうがよいと考えております。
  • 加算金の計算が付いた通知を受け取ったら、どの取消しによる返還なのかを確かめる。19条1項の文言は17条1項の処分に限られていますので、10条による取消しであれば、加算金の根拠を欠くことになります。
  • 期間を確かめる。10条4項により8条が準用され、取消しは通知によって行われます。文献も、相手方に取消し又は変更処分に対する不服があれば、不服申立てをなし、あるいは抗告訴訟をもってこれを争いうると述べています(同194頁)。宛先と期間は、Q&A「取消しの通知に不服があるとき、どこに言えばよいのか」とQ&A「交付決定の取消しから6か月を過ぎたら、取消訴訟は起こせないのか」で述べています。

自分に落ち度がないのに続けられなくなった、という状況は、法律の側では17条ではなく10条の場面として組み立てられています。既に実施した分は取り消せず、加算金は付かず、撤去や解約の費用には補助金が交付される。この三点を押さえて、どの条文の場面なのかを先に決めてから書面を出すことが、結論を分けると考えております。

自社の落ち度ではない事情で補助事業を続けられなくなり、全額の返還や加算金を求められている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご回答や申請書をお出しになる前にご相談ください。交付決定通知書、交付規程、受け取った通知・案内の書面、実施済みの経費が分かる資料があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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