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弁護士 岸上大起

「専ら補助事業に使用」と言われましたが、公式Q&Aが挙げる交付規程の条文には、そう書かれていません

このページの結論

補助金で導入した設備について、事務局から「補助事業により取得した資産は、原則として専ら補助事業に使用される必要がある」「既存事業で用いれば目的外使用であり、残存簿価相当額等を納付することになる」と言われました。公式のよくあるご質問にも同じことが書かれています。そういうものなのでしょうか。

公式のよくあるご質問が根拠として挙げる条文には、そのようなことは書かれていません。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金交付規程4条2項は、補助対象経費が補助事業の実施期間内に発生した経費であることを定め、事業類型ごとの補助対象経費等を別紙2に委ねた条文であって、「専ら」という語も、取得した財産の使用方法に関する定めもありません。同交付規程の本則と別紙を通じて「専ら」の語が用いられているのは、債権譲渡に係る協議を定めた12条2項(3)の1か所だけで、取得した財産の使用方法を定めたものではありません。

「専ら補助事業のために使用される」という言葉は、補助事業の手引き28頁の補助対象経費の解説にあり、そこでは「専ら補助事業のために使用される機械・装置……の購入……に要する経費」と、補助対象経費の側の要件として書かれています(公募要領21頁は「専ら本事業のために」)。会計検査院の意見表示も、同じ言葉を経費の要件として記しています。公募要領の重要事項欄には、これとは別に、財産の使用義務の形の記載もありますが、それは交付規程の条文ではありませんので、本文3で分けて述べます。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 公式の説明を、そのまま引用します

補助金で導入した設備について、交付主体や事務局から、「補助事業により取得した資産は、原則として専ら補助事業に使用される必要がある」と言われることがあります。公式のよくあるご質問にも、同じ文言が書かれています。まず、その公式の説明を、そのまま引用します。以下の引用は、いずれも2026年10月23日に閲覧したものです。

ものづくり補助金のよくあるご質問

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(交付主体は全国中小企業団体中央会です)の「よくあるご質問」(2026年4月2日版。表紙には2026.3.31とも記されています)は、「5.補助対象経費について」のNo.8で、次のように述べています。問いは、「「汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費」は補助対象外経費とされていますが、具体的に教えてください。」というものです。

引用(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金「よくあるご質問」(2026年4月2日版)17頁「5.補助対象経費について」No.8の回答)「交付規定第4条第2項に基づき、補助対象経費は専ら補助事業(事業計画書に記載された事業)のために使用されなければなりません。補助事業の範疇から外れた使用がされてしまう場合には、意思・過失の有無に関わらず、補助金返還になる場合があります。そのため、事業計画の内容から判断し、目的外使用になり得るもので、目的外使用がないことの確認が難しいものは、補助対象外となります。例えば、事務用のパソコン・プリンタ・文書作成ソフトウェア、タブレット端末・スマートフォン、デジタル複合機、キュービクル、乗用エレベータ、家具、3Dプリンター等が補助対象外となります。」

表記は原文のままです。規程の表題は「交付規程」ですので、お手元の書類から探されるときは、こちらで探してください。本稿で問題にするのは、冒頭の「交付規定第4条第2項に基づき」という部分です。

同じ「よくあるご質問」は、「1.補助対象事業について」のNo.1の回答の末尾でも、次のように述べています。こちらは、取得した財産の使用方法についての記述です。

引用(同「よくあるご質問」2頁「1.補助対象事業について」No.1の回答末尾)「なお、本補助事業により取得等した財産については、原則として専ら本補助事業に使用される必要があります。本補助事業以外で用いた場合、目的外使用と判断し、残存簿価相当額等を国庫納付いただく必要がございますのでご注意ください。」

事業再構築補助金のよくあるご質問と、事務局の参考例

事業再構築補助金では、事務局のよくあるご質問「財産処分について」のQ24が、次のように述べています。問いは、このページの設問とほぼ同じものです。

引用(事業再構築補助金「よくあるご質問」(財産処分について)Q24)

問い「補助金で取得した資産を既存事業に使用することを検討していますが、財産処分の手続きは必要ですか。」

回答「補助事業により取得した資産は、原則として専ら補助事業に使用される必要があります。既存事業等、補助事業以外で用いた場合、目的外使用と判断し、残存簿価相当額等を国庫に納付いただく必要がございますのでご注意ください。

※「専ら補助事業に使用」とは、新たに取り組む事業として事業計画書に記載されている事業にのみ使用することを指しています。過去から行っている既存の事業や、事業計画書に記載されている事業とは異なる事業に取得財産を用いる場合には、「専ら補助事業に使用」しているとはみなすことができないため、財産処分の手続きが必要となります。

※財産処分が必要となる行為については、よくあるご質問(財産処分について)のQ4を参照してください。」

同じ事務局が作成した「補助事業により取得した資産について『財産処分』となる参考例」(令和8年5月。掲載ページの更新日は2026年5月11日です)も、2枚目「注意すべきポイント」の冒頭で同じことを述べ、3枚目で具体例を挙げています。この資料には印刷頁番号が付されていませんので、枚数で示します。

引用(事業再構築補助金事務局「補助事業により取得した資産について『財産処分』となる参考例」(令和8年5月)2枚目)「・補助事業により取得した資産(取得財産)は、原則として専ら補助事業に使用される必要があります。」
引用(同3枚目「「財産処分」となる参考例① 補助事業により取得した資産を目的外使用(転用)した場合」)「その後、テイクアウト店に係る赤字が拡大したなどとして、補助事業であるテイクアウト店を閉店し、補助事業により取得した店舗及び厨房機器を既存事業等にのみ使用した。」

ここまでが、公式の説明です。以下、どこが誤っているのかを、箇所を特定して述べます。

2 挙げられた条文には、そう書かれていません

ものづくり補助金のよくあるご質問No.8は、「交付規定第4条第2項に基づき」と、根拠の条文を特定して挙げています。そこで、その条文を開きます。以下は、23次締切に適用される交付規程(制定・令和7年2月25日、最終改訂・令和8年8月5日。附則により令和8年8月5日から施行し、令和8年8月7日から適用。全国中小企業団体中央会)の4条2項です。

引用(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金交付規程(最終改訂・令和8年8月5日)4条2項)「2 補助対象経費は補助事業の実施期間(以下「事業実施期間」という。)内において発生した経費とし、事業類型ごとの補助対象経費、補助金の額及び補助率等は別紙2の通りとする。」

この条文が定めているのは、二つです。補助対象経費は事業実施期間内に発生した経費であること(いつ発生した経費か)と、事業類型ごとの補助対象経費・補助金の額・補助率等は別紙2によること(どの類型でいくらか)です。「専ら」という語はありません。取得した財産を補助事業の完了後にどう使わなければならないかについての定めも、ありません。

委ねられた先の別紙2も開きます。別紙2は「【事業類型】(交付規程第4条第2項)」という見出しのもと、枠ごとの補助金額、補助率、設備投資の要件、補助対象経費の区分名を表で示したものです。ここにも「専ら」という語はありません。

さらに申し上げれば、この交付規程の本則(1条から31条まで)と別紙1から別紙4までを合わせた全14頁のうち、「専ら」の語が用いられているのは1か所だけです。その1か所は、債権譲渡の禁止を定めた12条2項(3)で、交付決定の内容の変更により譲渡対象債権の内容に影響が及ぶ場合の対応について、「専ら補助事業者と債権を譲り受けた者の間の協議により決定されなければならないこと」とするものです。取得した財産の使用方法を定めたものではありません。

完了後の義務を定めた条文は、別にあります

同じ交付規程には、補助事業の完了後の義務を定めた条文が、現にあります。

引用(同交付規程20条1項(財産の管理等))「第20条 補助事業者は、補助対象経費(補助事業の一部を第三者に実施させた場合における対応経費を含む。)により取得し、又は効用が増加した財産(以下「取得財産等」という。)については、補助事業の完了後においても、善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従って、その効率的運用を図らなければならない。」

定められているのは、善良な管理者の注意をもって管理することと、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を図ることです。「専ら」でも「のみ」でもありません。中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。最終改正は規程令7第5号)23条1項も、ほぼ同じ文言で同じ義務を定めています。

そして、同じ交付規程は、何が「処分」なのかを、自分で定義しています。

引用(同交付規程20条3項)「3 全国中央会は、補助事業者が取得財産等を処分(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等をいう。以下同じ。)する場合、残存簿価相当額又は鑑定評価額若しくは処分により得られた収入額又は見込まれる収入額の全部若しくは一部を指定する口座に納付させることができるものとする。」

括弧書きの基準は、「補助金の交付の目的に反する使用」です。「補助事業以外の使用」でも「専ら補助事業に使用していないこと」でもありません。事業再構築補助金でも同じで、同(新市場進出)交付規程24条1項が、同じ括弧書きで処分の中身を定めています。

そうすると、二つの回答の誤りは、それぞれ別のところにあります。No.8は、補助対象経費について「専ら補助事業……のために使用されなければなりません」と述べ、その根拠として4条2項を挙げています。しかし、4条2項にも別紙2にも、「専ら」の語はありません。他方、No.1は、取得等した財産の使用方法を述べていますが、根拠となる条文を一つも挙げていません。交付規程が完了後の財産について置いている条文は20条であり、その文言は、先に引いたとおり「専ら」でも「のみ」でもありません。この二つの回答は、4条2項が定める補助対象経費の要件と、20条が定める完了後の義務とを、同じものとして扱っていると言わざるを得ません。

この点は、同じ交付主体が作成した補助事業の手引きと読み比べると、はっきりします。手引き13頁は、「(12)取得財産等の管理(交付規程第20条)」という見出しのもとで、完了後の義務を20条1項と同じ言葉(善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従って、その効率的運用を図ること)で書いています。続く「(13)取得財産の処分(交付規程第21条)」も、処分を「補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等」と書いています。手引き28頁(注8)も同じで、完了後の義務を「善良な管理者の注意をもって管理し、補助金交付の目的に従ってその効果的運用を図らねばなりません」としています。手引きは、条文どおりに書いているのです。

「納付いただく必要がございます」という言い切りについて

よくあるご質問No.1は、「本補助事業以外で用いた場合、目的外使用と判断し、残存簿価相当額等を国庫納付いただく必要がございます」としています。もっとも、先に引いた20条3項の末尾は、「納付させることができるものとする」です。納付を求めるかどうか、全部か一部かは、交付主体の判断に委ねられた形になっています。常に納付が必要であるかのような言い切りは、同じ交付規程の文言と合っていないと言わざるを得ません。

3 「専ら……のために使用される」は、どこに書かれているか

では、「専ら補助事業のために使用される」という言葉は、どこにあるのでしょうか。あります。ただし、置かれている場所が二つに分かれており、意味が違います。

(1)補助対象経費の区分――手引き28頁・公募要領21頁

ものづくり補助金の「補助事業の手引き(23次締切)」(令和8年8月7日版)28頁は、「◆補助対象経費の解説」という見出しのもとで、次のように述べています。

引用(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金「補助事業の手引き(23次締切)」(令和8年8月7日版)28頁)

「交付規程第4 条及び別紙2 の補助対象経費の内容は、次のとおりとします。」(中略)

「1.機械装置・システム構築費

① 専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費

② 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費」

同補助金の「公募要領(23次締切分)」(令和8年2月6日版)21頁にも、ほぼ同じ記載があります(公募要領の文言は「専ら本事業のために使用される」です)。

ここで「専ら補助事業のために使用される」が修飾しているのは、機械・装置そのものではなく、「……の購入、製作、借用に要する経費」です。つまり、その支出を補助対象経費として計上できるかどうかという、入口の基準です。

入口の基準であることは、No.8の問いが引いている補助対象外経費の原文を開けば、一読で分かります。手引き16頁は、補助対象外経費を列挙する中で、次のように定めています。

引用(同手引き16頁⑲)「⑲汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費(ただし、補助事業のみに使用することが明らかなものは除く)」

括弧書きのただし書が付いています。補助事業のみに使用することが明らかなものは、補助対象から外さない、という定めです。汎用品の購入費を補助金の計算に入れてよいかどうかを決める基準であって、完了後にその設備をどう使うべきかを定めたものではありません。

同じ構造は、会計検査院の記述にも表れています。

引用(会計検査院「令和6年度決算検査報告」意見を表示し又は処置を要求した事項(令和7年10月27日付け中小企業庁長官・独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長宛て)474頁)「また、専ら再構築事業のために使用される建物の建設、機械装置の購入等に要する経費等が補助の対象とされている。」

ここでも「専ら……のために使用される」は「経費」にかかっており、「補助の対象とされている」で結ばれています。経費の要件です。

入口で「専ら補助事業のために使用される設備の購入費でなければ補助対象経費にならない」ということと、出口で「取得した財産は補助事業にのみ使ってよい」ということとは、別のことです。前者は、交付申請・額の確定の場面で、その支出を補助金の計算に入れてよいかを決める基準です。後者は、完了後に財産をどう扱うべきかという義務であり、交付規程では20条(事業再構築補助金では23条・24条)が、「専ら」ではない言葉で定めています。

(2)公募要領の重要事項欄には、使用義務の形の記載があります

もう一つの場所が、公募要領の冒頭に置かれた重要事項の欄です。こちらは、経費ではなく財産の使用について書かれていますので、正面から取り上げます。

引用(同「公募要領(23次締切分)」(令和8年2月6日版)冒頭の重要事項「(補助金を使用した財産の処分制限)」の項。この項には印刷頁番号が付されていません)「本補助事業により取得等する財産については、法に基づき売却、転用、破棄等の処分に制限が課されます。財産を処分する場合、残存簿価相当額又は時価(譲渡額)により、当該処分財産に係る補助金交付額を限度に国庫納付しなければなりませんのでご注意ください。また、本補助事業により取得等した財産については、原則として専ら本補助事業に使用される必要があります。本補助事業以外で用いた場合、目的外使用と判断し、残存簿価相当額等を国庫納付いただく必要がございますのでご注意ください。」

この記載については、三つ申し上げます。第一に、ここも「法に基づき」としか書かず、何条に基づくのかを書いていません。後記4のとおり、その法の条文は「交付の目的に反して」を基準としています。

第二に、公募要領・補助事業の手引き・よくあるご質問は、交付規程の条文ではありません。交付規程31条1項は、全国中央会が経済産業省及び中小機構と協議の上、本規程に定めるもののほか必要な事項について「定めることができる」とするものです。同28条も、全国中央会が手引き等に従い実施するものとすると定めるもので、主語は全国中央会であり、補助事業者の義務を定めた条文ではありません。

第三に、仮に「専ら……のみ」という内容を交付決定の条件として附するのであれば、その条件は補助金適正化法7条4項の枠の中になければなりません。同項は、交付の決定に附する条件は公正なものでなければならず、交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであってはならない、と定めています。交付規程の条項や公募要領の記載が補助条件に取り込まれているといえるかという見方そのものは、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」と、コラム「既存事業との併用」で整理しています。

公募要領と手引きの記載は、交付規程の条文ではありません。入口の経費の要件を出口の財産の使用義務として用いる読み替えを支える条文は、交付規程にも補助金適正化法にも見当たらないと考えております。

4 条文の基準は「交付の目的に反して」です

公募要領が「法に基づき」とする法は、ものづくり補助金については、交付規程1条が挙げる補助金等適正化法です。事業再構築補助金については、独立行政法人中小企業基盤整備機構法16条による準用です(同(新市場進出)交付規程1条も適正化法・施行令・機構法を挙げています)。条文は、次のとおりです。

引用(補助金適正化法22条)「補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」

補助金適正化法22条が承認にかからせているのは、「補助金等の交付の目的に反して」する使用等です。「専ら補助金の交付の目的のためにのみ」使用しなければならない、とは書かれていません。小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』301頁(株式会社全国会計職員協会、2016)も、補助目的に適合する限り、補助事業者等は自由に使用、譲渡等の処分を行うことができるとしています。22条の解釈そのものと、公営住宅・工業団地の例は、コラム「財産処分の承認を受けたら、補助金を返さなければならないのか」で述べていますので、ここでは繰り返しません。

22条の射程を正面から述べた裁判例もあります。

引用(東京地判平成2年1月30日判タ736号151頁)「同法二二条は、補助事業等による取得財産を補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供することを規制するものであるが、これは、事務費等のサービス給付に係る補助金等にあっては資金が目的どおり消費されることによって補助目的が達成されたものとみることが可能であるのに対し、施設整備のための事業費補助金等にあっては、単に資金が目的どおり消費されるだけではなく、補助事業等の終了後も当初の目的どおりに使用されるのでなければ補助目的が達成されたとはいえないことから、実質的に補助金等の他用途使用と変わらない結果となるおそれのある行為を規制したものであると解される。」

地方裁判所の判決です。前掲小滝298〜299頁注(2)は、控訴審(東京高裁、平成二年(行ウ)第一〇号、平成二年七月一九日判決)においても支持されていると注記していますが、控訴審判決そのものは公刊物に見当たりませんので、文献がそのように注記しているという形で引くにとどめます。この判決が示した規制の範囲は、「実質的に補助金等の他用途使用と変わらない結果となるおそれのある行為」です。同判決は、完了後も当初の目的どおりに使用されることを求めていますが、それは「事業計画書に記載された事業にのみ使用する」ことと同じではありません。同判決の全文の読み方は、コラム「補助金で取得した設備を廃棄することは「処分」か」で述べています。

公式文書どうしも、食い違っています

公式の説明は、この点について、文書ごとに言っていることが違います。先ほど引用した参考例①が前提にしているのは、「補助事業であるテイクアウト店を閉店し、補助事業により取得した店舗及び厨房機器を既存事業等にのみ使用した」という事案でした。補助事業をやめたうえで、既存事業に「のみ」使った場合です。ところが、よくあるご質問Q24は、この「のみ」を落として、「既存事業等、補助事業以外で用いた場合」と書いています。補助事業に使いながら既存事業にも使っている場合まで、同じ扱いにする書き方です。挙げられている具体例の射程と、結論として書かれている基準とが、一致していません。

同じ参考例の2枚目には、承認を得る必要がある処分を分類した表が置かれています。その先頭の欄は、次のとおりです。

引用(同参考例2枚目「「財産処分」の承認を得る必要がある処分」の表)「目的外使用(転用) 処分制限財産の所有者の変更を伴わない目的外使用(補助事業以外の使用)をすること。」

括弧書きで、「目的外使用」が「補助事業以外の使用」と言い換えられています。しかし、同(新市場進出)交付規程24条1項が定める処分の中身は、「補助金の交付の目的に反する使用」です。この表は、交付規程が置いた定義を、別の言葉に置き換えていると言わざるを得ません。

「意思・過失の有無に関わらず」について

ものづくり補助金のよくあるご質問No.8は、「意思・過失の有無に関わらず、補助金返還になる場合があります」としています。もっとも、補助金適正化法17条1項は、取消事由に当たる場合について「取り消すことができる」と定めており、取り消すかどうか、全部を取り消すか一部にとどめるかは、交付する側の裁量に委ねられています。この点は、Q&A「補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか」で述べています。

本稿は、公式の説明の根拠がどこで崩れているかを扱うものです。併用そのものが目的外使用に当たるのかという結論は、Q&A「補助金の「目的外使用」とは何か」、既存事業との併用(対応ページ)、コラム「既存事業との併用」で既に述べていますので、そちらをご覧ください。

次のような場合は、ご回答になる前にご相談ください

  • 「専ら補助事業に使用されていない」として、残存簿価相当額等の納付を求められている
  • 公式のよくあるご質問や手引きの記載だけを示されて、是正や誓約を求められている
  • 既存事業にも使っていることについて、書面で説明を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 「目的外使用」とは何か(Q&A)/補助事業を続けられないとき――手続の順番、返還額の計算、返還が生じない選択肢(コラム)

5 公式の説明は、公正な第三者の解説ではありません

ここまで見てきたとおり、「専ら補助事業に使用」という基準は、条文から出てきたものではありません。では、それは何かというと、補助金をめぐる紛争の一方当事者である中小企業庁と機構の見解です。そのことは、当方が申し上げるまでもなく、公表された資料そのものが示しています。会計検査院の意見表示は、同じ474頁の中で、規程の内容と、交付主体の立場とを、書き分けています。

引用(会計検査院「令和6年度決算検査報告」意見を表示し又は処置を要求した事項(令和7年10月27日付け)474頁)

「交付規程等によれば、事業主体は、原則として、再構築事業により取得し、又は効用の増加した財産については、再構築事業完了後においても、事業再構築補助金の交付の目的に従って、効率的運用を図らなければならないこととされている。」

「上記について、中小企業庁及び機構は、事業主体が再構築事業により取得するなどした処分制限財産は原則として事業計画書に記載された事業再構築(以下「計画新規事業」という。)にのみ使用される必要があるとしている。」

前の段落は、「交付規程等によれば」と述べ、規程の内容として「交付の目的に従って、効率的運用を図らなければならない」を挙げています。後の段落は、「中小企業庁及び機構は……としている」と述べ、「にのみ使用される必要がある」を交付主体の立場として位置づけています。「のみ」は、規程の内容としてではなく、一方の当事者の見解として書かれているのです。

そして、検査院は、この見解に基づく集計が、交付規程上の目的外使用の認定とは別のものであることを、自ら明示しています。同報告は、計画新規事業に使用されていないなどの処分制限財産の状況を図表4にまとめていますが、その注で、次のように述べています。

引用(同477頁 図表4の注⑶)「「既存事業等にのみ使用」及び「既存事業等にも使用」に該当する処分制限財産については、処分制限財産は原則として計画新規事業にのみ使用される必要があるとする使用範囲の考え方に基づき集計したものであり、交付規程等に定められた目的外使用に当たるとの判断に基づき集計したものではない。」

この注が対象としているのは、図表4の四つの区分のうち、「既存事業等にのみ使用」と「既存事業等にも使用」の二つです。まさに本稿が扱っている場面について、検査院は、機構の「のみ」という考え方に沿って数を数えただけであって、数えられたものが交付規程上の目的外使用に当たるとは言っていない、とわざわざ断っているわけです。図表4の数の内訳と、報告書全体が何を指摘したものかは、Q&A「補助金で買った設備を、計画した新規事業に使っていない(遊休)と言われたら」と、コラム「補助金の返還を求められるのは、どのような場合か」で述べています。

もっとも、同じ報告は、事業者の側の認識についても記していますので、そちらも引いておきます。

引用(同477頁)「また、14 事業主体においては、既存事業等に処分制限財産を使用しても問題ないと認識していたためなどとしていて、処分制限財産の使用範囲を十分に理解していなかった。」

検査院は、合規性等の観点から検査を行う機関です。その検査は、交付主体が現に用いている使用範囲の考え方を前提として行われます。他方で、その考え方が交付規程上の目的外使用に当たるかどうかという法的な当否については、先に引いた注⑶が明示的に留保しています。したがって、この一文は、事業者の認識が交付主体の運用と違っていたことを述べたものであって、「のみ使用」という基準が条文から出てくることを示すものではないと考えております。

加えて、同報告は、機構らの実際の運用についても、次のように記しています。

引用(同475頁 図表2「処分制限財産の使用範囲の概念図」の注)「計画新規事業に関連して事業計画書に既存事業に係る取組も記載されている場合もあることから、中小企業庁及び機構は、事業計画の詳細や処分制限財産の使用実態を踏まえて目的外使用か否かを判断している。」

「のみ」と言いながら、実際には事業計画書の記載と使用の実態を見て判断している、ということです。この注は、次の節で述べる動き方に、そのままつながります。公式の説明だからといって、鵜呑みにしないでください。公式の説明は、通説の整理でも、中立の第三者の解説でもなく、相手方の主張です。

6 この説明を示されたときに確かめること

(1)挙げられた条文を、自分で開いて読む

是正の指示、誓約書への署名、納付の通知を受け取ったら、そこに挙げられた条文を、適用される版の交付規程で開いてください。交付規程の条番号は、補助金ごとに違い、同じ補助金でも公募回ごとに違います。ものづくり補助金では、完了後の財産の管理を定めるのは20条、処分の制限を定めるのは21条ですが、事業再構築補助金(新市場進出)では23条と24条です。挙げられた条文に、言われている内容が現に書かれているかどうかは、開けば分かります。

(2)どの条文のどの要件に基づく判断なのかを、書面で尋ねる

よくあるご質問、手引き、公募要領に書いてあることと、交付規程に書いてあることとは、別です。応じる前に、①根拠となる条文(交付規程の条項番号と、適用される版)、②その条文のどの要件に当たるとの判断か、③その判断の前提となった事実、を書面で尋ねてください。口頭のやり取りは残りません。返ってきた書面の内容が、交付規程の文言と合っているかを確かめることが、出発点になります。

(3)事業計画書に既存事業との関係を書いていたなら、その記載を示す

前記5で引用したとおり、中小企業庁及び機構は、事業計画書に既存事業に係る取組も記載されている場合があることから、事業計画の詳細や使用の実態を踏まえて判断している、とされています。申請時の事業計画書に、既存事業との相乗効果や、既存の設備・人員・販路を使うことを書いていたのであれば、その記載を示してください。それは、「事業計画書に記載されている事業」の範囲そのものに関わります。

(4)補助事業に使っている事実を残す

取得した財産を補助事業に使っている事実を示せるかどうかは、どの整理に立つとしても要になります。稼働の記録、補助事業に係る売上・受注の記録、取得財産等管理台帳(ものづくり補助金では交付規程21条1項・様式第7)を、日付の分かる形でそろえておいてください。実地検査の場で何を見られるのかは、前記のコラム「補助金の返還を求められるのは、どのような場合か」で述べています。

(5)既に納付してしまった場合

既に残存簿価相当額等を納付してしまったという場合でも、取り戻すことができる場合があります。手順は、返納を求められたら(対応ページ)と、前記のコラム「既存事業との併用」で述べています。返還額の計算そのものは、コラム「補助事業を続けられないとき」をご覧ください。

「専ら補助事業に使用されていない」「目的外使用に当たる」として、残存簿価相当額等の納付や是正の指示を受けている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご回答や誓約書をお出しになる前にご相談ください。交付決定通知書、適用される版の交付規程、交付主体から受け取った書面があれば、挙げられている条項が何を定めたものかという形で、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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