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弁護士 岸上大起

「補助事業を他社に丸投げしている」と言われた――外注していると交付決定を取り消されるのか

このページの結論

補助事業の開発部分をほとんど外注していることを事務局から問題にされました。補助金の丸投げだと言われていますが、外注は認められないのでしょうか。交付決定を取り消されるのでしょうか。

外注そのものは禁じられていません。公募要領が補助対象外事業としているのは、「事業の主たる課題の解決そのものを他者へ外注又は委託する事業」、あるいは「補助事業の主たる内容そのものを他者へ外注又は委託する事業、及び具体的な補助事業の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業」であって、外注の有無でも、外注費の多寡でもありません。したがって、争点は、主たる課題の解決又は主たる内容のうち、事業者自身が担った部分が何かを示せるかどうかに絞られると考えております。

機械装置・システム等の製作を外注する場合は「機械装置・システム構築費」に計上せよとされており、外注費の区分には補助上限額(補助対象経費総額(税抜き)4分の1)が付されています。制度は外注があることを前提に組まれていると考えております。他方、グループ会社への外注は別の条項の問題です。技術導入費・外注費・専門家経費の支出先に同一の事業者(みなし同一事業者を含む)を含めることはできないとされていますので、分けて確かめることになります。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 「丸投げ」という言葉を、要件の文言に戻す

開発や製作をほとんど外注している、と指摘を受けることがあります。「丸投げではないか」「補助事業を自分でやっていない」という言い方をされます。もっとも、「丸投げ」という語は、補助金の制度のどこにも置かれていません。公募要領が置いているのは、補助の対象外となる事業を列挙した条項であり、その中の一つが外注・委託に関するものです。言われていることに答えるには、まずその文言に戻ることになります。

文言は、補助金ごとに少し違います。中小企業省力化投資補助事業(一般型)の公募要領(第5回公募)は、補助対象外となる事業を挙げる節で、次のように定めています。

引用(中小企業省力化投資補助事業(一般型)「公募要領」(第5回公募。2025年12月。独立行政法人中小企業基盤整備機構)13頁「1-7.補助対象外となる事業」)「以下に該当する事業は補助対象外とします。該当するとされた場合は不採択、採択決定の取消又は交付決定の取消を行います。」「※申請内容から判断します。また、該当することが判明した時点で補助対象外となります。事前に十分に確認してください。」「事業の主たる課題の解決そのものを他者へ外注又は委託する事業」

一方、中小企業新事業進出促進補助金と、これを統合した新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、より細かく書いています。

引用(「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領」(第1回。1.3版・令和8年9月。独立行政法人中小企業基盤整備機構)25頁「1-5.補助対象外となる事業」①。中小企業新事業進出促進補助金「公募要領」(第3回)20頁「5-2.補助対象外事業」①も同文)「補助事業の主たる内容そのものを他者へ外注又は委託する事業、及び具体的な補助事業の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業」

前者は「事業の主たる課題の解決そのもの」、後者は「補助事業の主たる内容そのもの」です。後者には、これに加えて「具体的な補助事業の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業」という書き方が足されています。いずれも、外注の有無を問うものでも、外注費の多寡を問うものでもありません。問われているのは、事業の主たる課題の解決そのもの、あるいは主たる内容そのものを、外に出してしまったのかという一点です。

ご自身の補助金・公募回に適用される版の公募要領を手元に置き、その文言を確かめることから始めていただくのがよいと考えております。同じ趣旨の条項でも、「他者」と「他社」の書き分けまで含めて、版ごとに表記が揺れています。

2 外注そのものは禁じられていません

外注が禁じられていないことは、同じ公募要領の経費の側を見ると、はっきりします。外注費は、補助対象経費の一区分として正面から立てられています。

引用(前掲「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領」(第1回)29頁「(検査・加工・設計等に係る)外注費」)「補助事業遂行のために必要な検査等・加工や設計等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費」「※1 機械装置・システム等の製作を外注する場合は、「機械装置・システム構築費」に計上してください。」「※2 外注先との書面による契約の締結が必要です。」「※3 事業計画書に、外注先の概要及び当該外注先の選定理由を具体的に記載する必要があります。交付審査において必要性が認められない場合は、補助対象外となる場合があります。」

この区分には、補助上限額として「補助対象経費総額(税抜き)4分の1」という枠が付されています。外注を禁ずるのであれば、経費区分を設けて上限で調整する必要はありません。制度は、外注があることを前提に組まれていると考えております。

さらに重要なのは、上の※1です。機械装置・システム等の製作を外注する場合は、外注費ではなく「機械装置・システム構築費」に計上せよ、とされています。機械装置・システム構築費は、この補助金の中心となる経費区分です。つまり、設備やシステムそれ自体を外部に作らせることは、制度の上では当然のこととして想定されており、ただ計上する区分が違うだけなのです。システム開発を外部のベンダーに請け負わせたこと自体が補助対象外事業に当たる、という読み方は、この※1と整合しないと考えております。

そして※2・※3は、外注先との書面による契約と、事業計画書への外注先の概要及び選定理由の記載を求めています。外注先を事業計画書に書かせ、その選定理由まで書かせたうえで交付決定をするという仕組みです。計画に書いたとおりの外注をしていることが、なぜ「計画に反する」ことになるのか。ここは、指摘をする側に説明していただくほかないと考えております。

法律の側の組み立ても同じです。補助金適正化法11条1項は、補助事業者等は、法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもって補助事業等を行わなければならないと定めています。基準は「交付の決定の内容及びこれに附した条件」です。その内容には、交付申請の際に提出し、審査を受けた事業計画書の役割分担が含まれます。補助金適正化法7条1項が条件を附するものとし、同条3項が目的達成のため必要な条件を附することを妨げないとしているのも、この枠組みです。公募要領の条項が交付決定に附された条件に取り込まれているかどうかという見方そのものは、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。

3 線はどこに引かれているか――「主たる課題の解決そのもの」

では、どこで線が引かれているのか。文言は「主たる課題の解決そのもの」「主たる内容そのもの」です。「そのもの」という語が二度重ねて置かれていることに、意味があると考えております。外注した部分が多いかどうかではなく、その事業が解こうとしている課題の核にあたる部分を、事業者が手放したのかどうかが問われているからです。

もう一つの書き方、「具体的な補助事業の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業」も、同じ方向を向いています。ここで補助対象外とされているのは、実施の大半を外に出し、かつ、自らは企画だけを行う事業です。「企画だけ」という限定が置かれていますので、企画のほかに事業者が担っている工程があるのであれば、この文言には当たらないと考えております。

判断の資料についても、公募要領は書いています。前記1に引用したとおり、省力化投資補助事業の公募要領は「※申請内容から判断します」と明記しています。判断の対象は、まず申請の内容です。そうすると、答え方の出発点は、事業計画書に書いた役割分担に戻ることになります。

示すべきは、事業者が担った課題解決の中身です

私見としては、争点は、主たる課題の解決又は主たる内容のうち、事業者自身が担った部分が何かを示せるかどうかに絞られると考えております。外注の金額や比率を下げる話ではありません。段階ごとに分けて示すのが分かりやすいと考えております。

  • 何を作るのかを決めた段階。解こうとした課題、採った方針、採らなかった方針とその理由。
  • 仕様を決めた段階。仕様書・要件定義書の作成者と、その決定に事業者が関与した記録。
  • 作らせる段階での関与。外注先への指示、打合せの記録、仕様変更の判断。
  • 検証の段階。試験の計画と結果、不具合の指摘、手直しの指示と確認。
  • 運用の段階。誰が操作し、誰が保守し、誰が改良の判断をしているのか。

これらは、事業の遂行状況をどう示すかという問題と重なります。残し方と出し方は、コラム「補助事業を続けていることを、どう示すか」で述べています。

4 会計検査院が問題にしているのは、外注の多さではありません

この要件は、会計検査院の検査報告にも現れます。令和6年度決算検査報告は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について、要件を次のように記しています。

引用(会計検査院「令和6年度決算検査報告」464頁)「事業の主たる課題の解決そのものを他社へ外注又は委託する事業に該当しない事業であることなどが要件となっている」

そして、同頁は、不当と認めた事態の型を挙げています。外注に関わるのは、次の型です。

引用(同464頁)「導入した機械装置を専ら他社に使用させて事業計画書に記載されている事業を自ら実施しておらず、補助の対象とならない事態」

ここで指摘されているのは、外注費が多いことでも、工程の多くを外に出したことでもありません。導入した機械装置を専ら他社に使用させ、事業計画書に記載された事業を自ら実施していなかったという、事業の実施主体そのものが入れ替わっていた事態です。設備を他社の従業員だけが使っていたという、外形から確かめられる事実が取り上げられています。

そうすると、「外注している」ことと、「事業計画書に記載されている事業を自ら実施していない」こととは、別の事柄として扱われていると考えております。前者は制度が織り込んでいることであり、後者が要件に触れる事態です。指摘を受けたときは、どちらを言われているのかを分けることになります。設備を誰が使っているのか、事業計画書に書いた事業を誰が営んでいるのかという問いであれば、それは外注の問題ではなく、実施主体の問題です。

検査報告が返還の指摘に至る事態の型を全体として整理したものは、コラム「補助金の返還を求められるのは、どのような場合か」にあります。

5 みなし同一事業者への外注は、別の問題として確かめる

外注先がグループ会社である場合は、「丸投げ」とは別の条項に触れることがあります。見落とされやすいところですので、分けて確かめておいてください。

第一に、経費の側の制限です。前掲の公募要領29頁は、技術導入費、外注費、専門家経費の支出先に同一の事業者(みなし同一事業者を含む)を含めることはできないとしています。グループ会社への外注費は、そもそも補助対象経費に計上できないという建て方です。

第二に、「みなし同一事業者」の範囲が広いことです。中小企業新事業進出補助金事務局の補助事業の手引きは、親会社が議決権の50%以上を有する子会社、個人が複数の会社それぞれの議決権を50%以上保有する場合、孫会社・ひ孫会社に加え、代表者及び住所が同じ法人、主要株主及び住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人も同一事業者とみなすとしています。配偶者・親子及びその他生計を同一にしている者はすべて同一として取り扱うともされています。資本関係がなくても、代表者と住所が同じであれば入ってきます。

第三に、手引きは、補助事業者が、応募申請日から補助事業の完了までの間に、過去に本補助金の交付決定を受けている事業者のみなし同一事業者に該当することとなった場合は、当該補助事業者の交付決定を取り消すとしています。補助事業の途中で資本関係や役員構成が動いたときに、ここに当たることがあります。

第四に、補助対象外事業の列挙には、外注の条項とは別に、グループ会社(みなし同一事業者に該当する他の事業者)が既に実施している事業を実施するなど、補助事業で新たに取り組む事業の内容が容易に実施可能である事業、という条項も置かれています。グループ内で既に動いている事業を外注の形で取り込んだ場合には、こちらに当たるかどうかも確かめることになります。

次のような場合は、ご回答になる前にご相談ください

  • 開発・製作を外注していることについて、「丸投げ」「主たる課題の解決そのものを外注している」と言われている
  • 事業計画書に書いたとおりに外注したのに、補助対象外事業に当たると指摘されている
  • グループ会社への外注費について、みなし同一事業者に当たると言われている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 交付規程に違反したと言われたら(Q&A)/補助事業の遂行状況は、どう示すのか(コラム)

6 指摘を受けたときに、どう動くか

順番としては、次のようになると考えております。

  • 言われていることを書面で特定していただく。適用される版の公募要領の、どの条項のどの文言に当たると言われているのか。外注の条項なのか、実施主体の問題なのか、みなし同一事業者の問題なのかを分ける。
  • 交付決定の内容を確かめる。交付申請書に添えた事業計画書に、外注先の概要と選定理由をどう書いて交付決定を受けたのかを並べる。計画に書いたとおりの外注であれば、まずその一点を示す。
  • 事業者自身が担った工程を、前記3の段階ごとに示す。作成者と日付の分かる記録で示し、口頭の説明に頼らない。
  • 求められた資料の範囲を確かめる。何をどこまで出すのかという整理は、コラム「行政から求められた資料は、どこまで出さなければならないのか」にあります。
  • 回答を出す前に、取消しの処分に向かう手続のどの段階にいるのかを確かめる。意見を述べる機会については、Q&A「交付決定取消しの事前通知が届いたら」で述べています。

最後に、処分の側の書きぶりについて一言述べておきます。公募要領は、補助対象外事業に該当するとされた場合について「不採択、採択決定の取消又は交付決定の取消を行います」と書いています。これに対し、補助金適正化法17条1項は、交付の決定の全部又は一部を「取り消すことができる」と定めています。補助事業の手引きの側は「不採択または交付決定取消となる場合があります」と書いており、こちらは法の建て方に沿っています。

引用(中小企業新事業進出補助金事務局「補助事業の手引き」(第1.8版・2026年8月17日)15頁「補助対象事業について」)「補助事業が下記に該当する場合は、不採択または交付決定取消となる場合がありますのでご注意ください。」

同じ事務局が出した二つの資料で、書きぶりが分かれています。公募要領の「取消を行います」という書き方からは、法が交付行政庁に与えた裁量の存在を読み取ることができず、この点は正確さを欠くと言わざるを得ません。要件に当たるかどうかが争われている段階で、取消しが決まっているかのように読める記載を示されても、それが取消しの可否を決めるものではないと考えております。裁量の統制の仕方は、Q&A「補助金の交付決定の取消しに裁量はあるのか」で述べています。取消事由そのものの全体像は、交付決定の取消し・返還請求のページにあります。

開発や製作を外注していることについて「丸投げ」「主たる課題の解決そのものを外注している」と指摘されている事業者の方、グループ会社への外注費を問題にされている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご回答をお出しになる前にご相談ください。交付決定通知書、適用される版の公募要領、交付申請書に添えた事業計画書、外注先との契約書と打合せの記録があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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