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弁護士 岸上大起

外注先や再委託先がルール違反をしたら、自分の交付決定まで取り消されるのか

このページの結論

補助事業の一部を外注し、再委託していました。その外注先・再委託先が補助金のルールに反することをしたと言われ、当社の交付決定も取り消すと通知が来ています。自分に落ち度がなくても取り消されてしまうのでしょうか。

まず、その相手が補助金適正化法2条4項の「間接補助事業者等」に当たるのかを分けることになります。同項1号の「間接補助金等」は「国以外の者が相当の反対給付を受けないで交付する給付金」ですので、対価を受け取って役務や物を提供した外注先・再委託先・仕入先は、間接補助事業者等には当たらないと考えております。相手が間接補助事業者等に当たる場合には、同法17条2項により、補助事業者等に義務違反がなくても交付決定を取り消すことができる定め方になっています。

もっとも、「取り消すことができる」という定め方ですので、違反があったというだけで直ちに取消しができるものではありません(名古屋高判平成5年2月23日判タ859号260頁)。また、17条2項による取消しに係る返還には、返還期限の延長・返還命令の全部又は一部の取消し(18条3項)と、加算金・延滞金の免除(19条3項)が用意されています。いずれも施行令9条・12条により申請によって行うものとされており、申請書には相手方に是正・回収を求めてとった措置を書くことになりますので、経過を書面で残しているかどうかが分かれ目になると考えております。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 「間接補助事業者等」に当たるのかどうかを先に分ける

補助事業の一部を外注し、あるいは再委託した先が、補助金のルールに反することをした。そう言われて、自分の交付決定まで取り消されるのかというご相談があります。この問いは、条文の上では、まず一つのことを確かめるところから始まります。その相手が、補助金適正化法が定める「間接補助事業者等」に当たるのか、それとも、対価を受け取って仕事をした取引先にとどまるのか、という区別です。

補助金適正化法17条2項は、間接補助事業者等の違反を理由として、補助事業者等の交付決定を取り消すことができると定めています。逆にいえば、相手が間接補助事業者等に当たらないのであれば、同項が働く場面ではありません。ところが、指摘を受けた書面では、この区別がされていないことがあります。

「間接補助金等」の定義は、次のとおりです。

引用(補助金適正化法2条4項1号)「国以外の者が相当の反対給付を受けないで交付する給付金で、補助金等を直接又は間接にその財源の全部又は一部とし、かつ、当該補助金等の交付の目的に従つて交付するもの」

要となるのは「相当の反対給付を受けないで交付する給付金」という部分です。そして、同条5項は、間接補助事業等とは前項1号の給付金の交付又は同項2号の資金の融通の対象となる事務又は事業をいうとし、同条6項は、間接補助事業者等とは間接補助事業等を行う者をいうとしています。つまり、間接補助事業者等とは、補助金を財源とする給付金を、対価なしに交付してもらった者です。

機械を売った業者、工事をした請負人、システムを作ったベンダー、作業の一部を請け負った下請先は、いずれも仕事や物の対価を受け取っています。対価を受け取って役務や物を提供した者は、「相当の反対給付を受けないで交付する給付金」を受けた者ではありません。したがって、通常の外注先・再委託先・仕入先は、間接補助事業者等には当たらないと考えております。17条2項を根拠として挙げられたときは、まずここを確かめることになります。

2 17条2項は、こちらに落ち度がなくても取り消せる定め方になっている

相手が間接補助事業者等に当たる場合、すなわち、受け取った補助金を財源として、対価なしに他の者へ給付金を交付する形の補助事業である場合には、話が変わります。この場合、17条2項が正面から働きます。

引用(補助金適正化法17条2項)「各省各庁の長は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」

読んでいただきたいのは、取消しの相手方が「補助事業者等に対し」となっている点です。違反をしたのは間接補助事業者等なのに、取り消される側は補助事業者等です。しかも、条文は、補助事業者等に義務違反があったことを要件としていません。

文献も、この点をはっきりと書いています。本法は、間接補助金等の交付決定の取消しそのものを直接規律することとせず、間接補助事業者等の義務違反を理由として、直接、補助金等の交付決定の取消しを行うことができるという構成をとることとしたものであると説明されています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』247頁(株式会社全国会計職員協会、2016))。そして、補助事業者等が間接補助事業者等に対して適切な指導監督を行っている場合について、この場合、補助事業者等の義務違反はないことに留意すべきであるとしたうえで、なお交付行政庁は交付決定を取り消し、補助関係を消滅させうることとしたものであると述べています(同248頁)。

同書は、この定め方を、最終的に補助目的が達成されない以上は補助関係を消滅させる公益上の必要が認められること、補助事業者等は実質的には中間交付者としての地位を有するにすぎず、補助金等の利益を直接享受する者ではないこと、という二つの理由で説明しています(同248頁)。言い換えれば、自分が使うために受け取った補助金ではなく、他に配るために受け取った補助金だから、という説明です。

もっとも、同書は、この規定が通常の取消しとは性質を異にすることも書いています。17条2項による取消しを、補助事業者等自身の義務違反による取消しと全く同一に取り扱うことは均衡を失するとして、本法は、18条3項で返還に関し両者の場合を別個に取り扱いうることとし、19条の加算金の付加に関しても別個に取り扱うこととして、両者の均衡を実質的に図ることとしているとしています(同248頁)。また、同書は、国が直接の関係をもたない間接補助事業者等の義務違反を取り上げて、補助事業者等の責めの有無にかかわらず補助事業者等との関係を打ち切るものであって、本法の強い決意を示す特異な規定であるという指摘を引いています(同249頁注(9)が引く杉村章三郎『財政法(新版)』325〜326頁)。

ここは、楽観のできないところです。「自分は悪くない」という一事では、17条2項による取消しを止めることはできません。止めるための道筋は、後記3と4の二つです。

間接補助金等の交付決定を取り消すのは、国ではありません

あわせて確かめておきたいのが、だれがだれに向けて処分をするのかという点です。交付行政庁は間接補助事業者等と直接の補助関係を有しませんので、交付行政庁が間接補助金等の交付決定の取消し(交付契約の解除)を行うことは認められないというべきであるとされています(小滝・前掲249頁注(8))。間接補助金等の交付決定を取り消すのは、交付行政庁ではなく、補助事業者等です。

国の交付金を原資とする自治体の補助金で、事業者の違反によって国が自治体への交付決定を取り消すという場面の整理は、コラム「役所の担当者に言われたとおりにしたのに全額返還と言われたら」で述べています。また、事務局が交付する補助金について、事務局が事業者の交付決定を取り消す根拠として17条2項を挙げることはできないという点は、コラム「ものづくり補助金の取消しは取消訴訟で争えるか」で述べています。

3 違反があったというだけで、直ちに取り消せるわけではありません

17条2項は、「取り消すことができる」という定め方です。取り消さないという選択も、一部だけ取り消すという選択も、条文の中にあります。そして、この「できる」の使い方について、裁判例があります。

名古屋高判平成5年2月23日判タ859号260頁は、補助金等の交付決定の取消権の行使について、補助事業者の義務違反があるというだけで直ちにこれを行い得るものと解すべきではなく、補助目的を達成することの可否について補助関係の全過程を通じて総合的に判定し、補助金等の交付の目的を達成することが困難となった時点において初めてその取消権を行使すべきものと解するのが相当であると判示しています(破産財団債権の確認を求める訴訟の控訴審判決です。上告審の判断は、当方では確認できておりません。)。文献は、この判示を自説を支持するものとして引いています(小滝・前掲246頁注(6))。

同書は、この考え方を、より一般的な形でも示しています。受益者側の原因による授益的行政行為の取消しについて、原則として、法令違反の事実をもって直ちに取消しうるのではなく、まず他の処分等によって行政目的の実現に努力すべきであって、相手方の態度その他の事情から、このような方法によっては行政目的の実現が不可能であるという場合にかぎって取消しが認められると解すべきであるという指摘と、事業遂行命令や是正措置命令により容易に目的を達しえたとみられる事業について、いきなり交付決定の取消しをなすことは裁量権の濫用になると思われるという指摘を、いずれも引いています(小滝・前掲246頁注(4)・注(5))。

そうすると、間接補助事業者等の違反を理由に交付決定を取り消すという場面では、取り消す前に、是正のための措置や指示によって目的を達する余地がなかったのかが問われることになります。この点は、取消しの裁量の問題として、Q&A「取消しに裁量はあるのか」でも述べています。

私見としては、間接補助事業者等の違反の場面では、この主張はむしろ通りやすいと考える余地があります。自らの違反による取消しの場面と違い、こちらには落ち度がないことを前提にできるからです。前記2の文献の説明も、補助事業者等に義務違反がない場合があることを正面から認めています。違反の是正を間接補助事業者等に求め、回収に動いた経過を書面で示せるのであれば、取消しの範囲を限る主張につながると考えております。

4 救済は二つあり、いずれも申請しなければ始まりません

取消しがされてしまった場合でも、返還の場面には、17条2項の取消しに限って用意された定めがあります。返還そのものについての18条3項と、加算金・延滞金についての19条3項です。

引用(補助金適正化法18条3項)「各省各庁の長は、第一項の返還の命令に係る補助金等の交付の決定の取消が前条第二項の規定によるものである場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、返還の期限を延長し、又は返還の命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。」

「前条第二項の規定によるもの」が、17条2項による取消しです。この定めは、17条1項による取消しに伴う返還の命令には及びません。17条1項の場面に対応する定めが置かれていないことは、Q&A「廃業・破産と補助金の返還」で述べています。17条2項の場面は、この点で、法律上、明らかに有利な位置にあります。

文献は、この規定の趣旨を次のように説明しています。補助事業者等が間接補助金等の回収を図る努力をしているにかかわらず、間接補助事業者等の事情により回収が遅延するような場合には、これらの事情を考慮して、国においても返還の期限を延長する等の配慮を加えることが必要であろうとし、さらに、補助事業者等が適切な指導監督の責務を果たしたにかかわらず、間接補助事業者等の事情によりもはや資金の回収が不能となると認められるような場合には、補助事業者等の自己負担において返還を命ずることは、返還の原因が補助事業者等自身の義務違反にある場合に比して酷に失するおそれもあるので、当該返還を免除しうることとするのが適当と考えられる、としています(小滝・前掲263頁)。

加算金・延滞金の側にも、同じ型の免除があります。

引用(補助金適正化法19条3項)「各省各庁の長は、前二項の場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、加算金又は延滞金の全部又は一部を免除することができる。」

もっとも、加算金については、そもそも付かない場面であることを先に確かめてください。補助金適正化法19条1項は、「第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し」補助金等の返還を命ぜられたときに加算金を納付しなければならないとしています。17条2項による取消しは、この文言に入っていません。文献も、間接補助事業者等の義務違反に対する交付決定の取消しの場合は加算金納付の義務を負わないこととなると整理しています(小滝・前掲268頁)。加算金・延滞金の全体像は、Q&A「加算金・延滞金は払うのか」で述べています。

どちらも申請主義です

ここが、このページでお伝えしたい要です。18条3項・19条3項の救済は、交付する側が気を利かせて適用してくれるものではありません。政令は、申請によって行うものと定めています。

引用(補助金適正化法施行令9条1項・2項)「法第十八条第三項の規定による補助金等の返還の期限の延長又は返還の命令の全部若しくは一部の取消は、補助事業者等の申請により行うものとする。」「補助事業者等は、前項の申請をしようとする場合には、申請の内容を記載した書面に、当該補助事業等に係る間接補助金等の交付又は融通の目的を達成するためとつた措置及び当該補助金等の返還を困難とする理由その他参考となるべき事項を記載した書類を添えて、これを各省各庁の長又は補助実施法人の代表者に提出しなければならない。」
引用(同施行令12条)「第九条の規定は、法第十九条第三項の規定による加算金又は延滞金の全部又は一部の免除について準用する。この場合において、第九条第二項中「当該補助事業等に係る間接補助金等の交付又は融通の目的を達成するため」とあるのは、「当該補助金等の返還を遅延させないため」と読み替えるものとする。」

申請書に書くべき事柄が、政令に書かれています。18条3項の申請では「間接補助金等の交付又は融通の目的を達成するためとつた措置」と「当該補助金等の返還を困難とする理由」、19条3項の申請では「当該補助金等の返還を遅延させないためとつた措置」です。文献も、申請書には、補助事業者等に免責事由があるか否かを判断するため、所要の添付書類を提出させることとしていると説明し(小滝・前掲264頁)、「やむを得ない事情」は申請者において明らかにする責務があるものというべきであろうとしています(同272頁)。

つまり、分かれ目は、とった措置を書面で示せるかどうかです。口頭で催促したという説明では足りません。残しておいていただきたいものは、次のとおりです。

  • 違反の是正を求めた通知と、その到達が分かるもの(配達証明、送信記録など)。
  • 間接補助金等の交付決定の取消し又は交付契約の解除の通知と、その到達が分かるもの。
  • 返還を求めた請求書と、交渉・回収の経過(日付が分かる形で)。
  • 回収が困難であることを示す資料(相手の資産・事業の状況、支払の不履行の記録、法的手続の有無)。
  • 日ごろの指導監督の記録(交付の条件を相手に守らせるための書面、報告の徴収、実地の確認)。

交付決定の取消しの通知が届いてから集め始めると、間に合わないことがあります。相手の違反に気づいた段階から、同時に残していくのが要になると考えております。

次のような場合は、ご回答やご申請の前にご相談ください

  • 外注先・再委託先の違反を理由に、自分の交付決定を取り消すと言われている
  • 17条2項を根拠として挙げられているが、その相手が間接補助事業者等に当たるのかがはっきりしない
  • 返還の命令が届いたが、相手からの回収ができず、期限の延長や免除を求めたい
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 支援事業者への調査(Q&A)/加算金・延滞金は払うのか(Q&A)

5 調査は取引先にも及びます――契約に書いておく

ここまでは、相手が間接補助事業者等に当たる場面の話です。通常の外注先・再委託先については、別の形で問題が現れます。調査です。

以下に引く交付規程の条数と文言は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。規程令7第5号による改正までのもの)のものです。交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なり、版によって条数と文言が違い得ますので、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でお確かめください。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程18条4項)「中小機構は、補助事業の適正な遂行のため必要があると認めたときは、事業に係る取引先(請負先、委託先及びそれ以下の請負先、委託先も含む。)に対して、現地調査等を行うことができるものとし、補助事業者は当該調査の実施に必要な措置を講じるものとする。」

調査の対象は、取引先だけでなく、「それ以下の請負先、委託先」にも及びます。そして、補助事業者は、その調査の実施に必要な措置を講じるものとされています。自分の帳簿を見せるという話ではなく、他社に調査を受け入れさせるという話です。

これが効いてくるのが、額の確定の場面です。同規程18条1項は、額の確定について定めたうえで、そのなお書きで次のようにしています。

引用(同交付規程18条1項なお書き)「なお、補助対象物件や帳簿類の調査ができない場合等、補助金の交付決定の内容及びこれに付した条件に適合しないときは、当該物件等に係る金額は補助の対象とならない。」

取引先が調査に応じない、あるいは廃業していて帳簿が残っていない。そのために、その物件に係る金額が補助の対象から外れる。実際に起きるのは、この形です。相手の違反という話よりも先に、相手の協力が得られないことが、こちらの金額に跳ね返ってきます。

この運用については、申し上げておきたいことがあります

交付規程18条1項のなお書きは、調査ができないことと、交付決定の内容・条件に適合しないことを、「ができない場合等、……適合しないときは」という形で続けて書いています。しかし、この二つは別の事柄です。調査ができないことは、適合しているかどうかが確かめられないという状態であって、適合していないという認定ではありません。

この区別は、法律の側から見ると、より明らかです。額の確定について、補助金適正化法15条は、各省各庁の長は、補助事業等の完了又は廃止に係る補助事業等の成果の報告を受けた場合においては、報告書等の書類の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、その報告に係る補助事業等の成果が補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件に適合するものであるかどうかを調査し、適合すると認めたときは、交付すべき補助金等の額を確定し、当該補助事業者等に通知しなければならないと定めています。適合するかどうかを「調査」するのは、各省各庁の長の側です。調査ができないことを、そのまま不適合と扱うことは、同条が交付する側に課した調査を、事業者の負担に置き換えることになりかねません。

また、第三者である取引先に調査を受け入れさせることは、事業者が一方的にできることではありません。取引が終わっていれば、なおさらです。交付規程18条4項が事業者に求める「必要な措置」は、事業者の立場からできることに限られると解するのが相当であると考えております。相手が応じないという結果だけを捉えて、補助の対象から外すという扱いには、疑問があります。そして、事業者が取引先に協力を求め、記録に残し、応じられなかった経過を示したのであれば、そこで「必要な措置」は講じられていると考える余地があります。

加えて、同規程22条1項3号は、補助事業者が補助事業に関して「不正、怠慢、その他不適当な行為」をした場合を取消事由の一つとして挙げています。もともと漠然とした文言ですので、取引先が調査に応じなかったという結果を、そのまま事業者の「怠慢」や「不適当な行為」として括ることには、慎重であるべきであると考えております。交付規程の条項違反という指摘が、補助金適正化法17条1項の三つの取消事由のどれに当たるのかという問題になることは、前記のQ&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。

支援事業者・販売事業者の側に調査が入った場面の扱いは、Q&A「支援事業者への調査」で、立入検査そのものの性質は、Q&A「立入検査(実地検査)は犯罪捜査なのか」で述べています。

6 契約に書いておけることがあります

前記5の問題は、取引が始まる前であれば、契約で手当てができます。補助事業の一部を外注し、再委託する場合の契約書に、次のような定めを置いておくことです。これは、相手の違反で自分が取り消されるという場面にも、額の確定で経費を落とされるという場面にも、同じように効きます。

  • 資料提出の協力義務。補助金の交付主体、経済産業省又は会計検査院から求めがあったときは、見積書、仕様書、作業記録、納品の記録、下請への発注の記録などを、期限までに提出すること。
  • 現地調査の受入義務。交付規程に基づく現地調査等に応じること。再委託先・再請負先にも同じ義務を負わせること。
  • 帳簿等の保存期間。補助事業に係る書類を、少なくとも補助事業の完了した年度の終了後5年間保存すること(同交付規程17条4項が補助事業者に求める保存期間に合わせるものです)。
  • 連絡先の維持と、事業の譲渡・廃止の際の通知。廃業・移転の場合にも、書類の引継ぎと連絡の方法を定めておくこと。
  • 違反があった場合の責任。相手の行為により補助金の返還、額の減額又は取消しが生じたときの、損害の負担についての定め。

既に契約が終わっている相手については、覚書を交わす余地があります。難しい場合でも、協力を求めた書面と、その回答(応じない旨の返答も含みます)を残しておいてください。前記4で述べた「とつた措置」としても、前記5で述べた「必要な措置」としても、記録が残っているかどうかで説明の仕方が変わります。

7 どう動くか

外注先・再委託先の件で指摘を受けたときの順番は、次のとおりになると考えております。

  • 届いた書面に挙げられている条項を書き出す。17条1項か、17条2項か、交付規程の何条か。挙げられていない場合は、どの条項によるものかを文書で尋ねる。
  • 相手が間接補助事業者等に当たるのかを確かめる。対価を受け取って役務・物を提供した取引先であれば、17条2項の場面ではありません(前記1)。
  • 17条2項の場面であれば、取消しの範囲を限る主張(前記3)と、18条3項・19条3項の申請(前記4)を、同時に組み立てる。申請は申請主義ですので、こちらから出さなければ始まりません。
  • 額の確定の場面であれば、調査ができなかった経過と、こちらが協力を求めた経過を並べる(前記5)。
  • 加算金が付くと書かれていたら、19条1項の文言に当たる場面かどうかを確かめる(前記4)。
  • 期限を確かめる。返還の命令には納期日があり、取消しの通知には不服申立て・取消訴訟の期間があります。

不服申立ての宛先と期間については、Q&A「不服申立ての宛先・期間」をご覧ください。出訴期間が過ぎているように見える場合でも、確かめる点が残ります(Q&A「出訴期間」)。

最後に、一点だけ付け加えます。17条2項の場面は、こちらに落ち度がないことを前提にできる、数少ない場面です。落ち度がないことは、それだけでは取消しを止めませんが、取消しの範囲を限る主張と、返還・加算金の免除の申請の、両方の土台になります。相手の違反が分かった時点から、是正を求め、回収に動き、その経過を書面で残す。それが、後からいちばん効いてくると考えております。

外注先・再委託先の違反を理由に交付決定の取消しや返還を求められている事業者の方、取引先が調査に応じないために経費を補助の対象から外すと言われている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご回答やご申請の前にご相談ください。交付決定通知書、交付規程、届いた通知の書面、外注先との契約書とやり取りの記録があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

関連ページ

※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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