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弁護士 岸上大起

返還のほかに何をされるのか――社名の公表、入札の資格、次の交付決定

このページの結論

補助金の交付決定を取り消され、返還を命じられました。返還のほかに、社名を公表されたり、入札や取引から外されたり、今後の補助金の交付決定を受けられなくなったりするのでしょうか。

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)の中に、補助事業者等の名称や違反の内容を公表することを定めた規定はありません。実務で告げられる「補助事業者等の名称及び不正の内容の公表」、「中小機構の所管する契約について、一定期間指名等の対象外とすること」、「相当の期間補助金等の全部又は一部の交付決定を行わないこと」は、いずれも交付決定通知書の様式の中の注意の記載と公募要領の記載を根拠とするもので、法律に要件と手続が定められている返還・加算金・罰則とは質が違います。したがって、返還のほかに何をされるのかは、お手元の取消通知書と交付決定通知書・公募要領のどの記載に基づくものかを分けて確かめることから始まります。

交付決定通知書が挙げる「相当の期間補助金等の全部又は一部の交付決定を行わないこと。」は、昭和29年4月13日「補助金等に係る予算の執行の適正化」に関する閣議了解事項に由来するもので、その了解は詐欺その他不正の手段による受交付と他の用途への使用の場合を対象とし、国が法律に基き義務として交付するもの以外のものについて定めています(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』277頁注(3))。既に交付決定を受けた同種の補助金の支払を止める措置(補助金適正化法20条)とは別のものです。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 返還のほかに何が来るのかを、根拠の定めで分ける

交付決定の取消しと返還の命令を受けた事業者の方から、返還そのものよりも、社名を公表されるのではないか、入札に参加できなくなるのではないか、今後の補助金の申請ができなくなるのではないか、というご心配をいただくことがあります。お金の話よりも、こちらのほうが事業の先行きに響くというお受け取り方です。

この種のご心配は、まとめて「制裁」として語られがちですが、根拠となる定めはばらばらです。先に、根拠の所在で分けてしまうのが早いと考えております。

  • 補助金の返還、加算金・延滞金。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」といいます。)17条、18条1項、19条という法律の規定に根拠があります。
  • 刑事罰。補助金適正化法29条から32条までに根拠があります。
  • 既に交付決定を受けている別の補助金の支払の一時停止、受け取るはずの補助金との相殺。補助金適正化法20条に根拠があります。
  • 事業者の名称と不正の内容の公表。法律の中に、これを定めた規定はありません。
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」といいます。)が発注する契約について、一定期間、指名等の対象外とすること。これも法律の中に規定はありません。
  • 相当の期間、補助金の交付決定を行わないこと。これも法律の中に規定はなく、由来は昭和29年の閣議了解事項です(後記6)。

前の三つと後の三つは、質が違います。前の三つは、要件と手続が法律に書かれていて、争う道筋もはっきりしています。後の三つは、交付決定通知書と公募要領に書かれているだけで、要件・範囲・期間・方法が書かれていません。このページでは、後の三つを扱います。

2 公表――補助金適正化法の中に根拠となる規定はありません

まず、法律の側を確かめます。補助金適正化法を通して読んでも、補助事業者等の名称や違反の内容を公表することを定めた規定はありません。同法の中で「公表」という語が使われているのは、交付の申請が到達してから交付の決定をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めて公表するよう努めなければならないとする6条2項の一か所だけで、これは行政庁の側の努力義務を定めたものです。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和30年政令第255号)にも、事業者の名称の公表を定めた規定はありません。

取消し以後の場面を定めた規定を並べると、17条(交付の決定の取消し)、18条(補助金等の返還)、19条(加算金及び延滞金)、20条(他の補助金等の一時停止等)、21条(徴収)、21条の2(理由の提示)、22条(財産の処分の制限)、そして29条から32条までの罰則となります。公表は、この並びの中に入っていません。

中小機構の助成金についても同じです。中小機構法16条は補助金適正化法の規定を準用するものですが、準用される側の法律に公表の規定がないのですから、準用によって公表の根拠が生まれることもありません。

公表という行政の作用の位置づけについては、学説上の議論があります。行政制裁の範囲を論じた文献は、行政制裁を名あて人に義務を課したりその権利を制限したりする効果を有するものに限定すると、違反企業名の公表によって企業が信用を失い甚大な経済的不利益を被ってもそれは行政制裁ではないことになるが、事実上のものであっても重大な不利益を及ぼす行政作用を行政制裁の射程外とすることは適切ではないと思われる、としています(宇賀克也「行政制裁」ジュリスト1228号51頁(有斐閣、2002))。もっとも、同じ箇所は、公表の中には情報提供を直接の目的とし名あて人に不利益を課すこと自体を直接の目的としないものもあり、実際には直接の目的をいかに解すべきか必ずしも明確でない場合もあるとも述べています(同頁)。同頁注(9)は、かかる公表について法律の留保が及ばないとした判例として、東京地判平成13年5月30日判時1762号6頁を挙げています(当職として同判決の原本を確認できておりませんので、同論文が挙げているものとして記します)。

つまり、公表に法律の根拠が要るかどうかが一律に決まっているわけではありません。私見としては、公表の中身によって分けて考えるべきで、事業者の名称と「不正の内容」を結びつけて公にすることは、制度の運用状況を知らせる情報提供とは質が違い、名指しされた事業者に回復の難しい不利益を生じさせるものであると考えております。したがって、公表を告げられたときは、それがどの定めに基づき、何を目的として、どの範囲で行われるものなのかを、書面で確かめることから始めるのが実際的であると考えております。

3 公表の根拠とされているもの――交付決定通知書と公募要領の記載

では、公表は何を根拠に告げられるのか。実務では、交付決定通知書の中の記載と、公募要領の中の記載が挙げられます。交付規程が定める交付決定通知書の様式に、次の記載があります。

引用(中小企業省力化投資補助金交付規程(令和6年6月24日規程令6第4号。規定令8第9号による改正までのもの)様式第1(交付決定通知書)記6。同規程23頁)「なお、これらの規定に違反する行為がなされた場合、次の措置が講じられ得ることに留意してください。また、補助事業者等の不正経理等の防止に万全を期していただけますようお願いします。
(1)適正化法第17条第1項若しくは第2項の規定による交付決定の取消し、第18条第1項の規定による補助金等の返還又は第19条第1項の規定による加算金の納付
(2)適正化法第29条から第32条(地方公共団体の場合は第31条)までの規定による罰則
(3)相当の期間補助金等の全部又は一部の交付決定を行わないこと。
(4)中小機構の所管する契約について、一定期間指名等の対象外とすること。
(5)補助事業者等の名称及び不正の内容の公表」

この記載の読み方について、二つ申し上げます。第一に、(1)と(2)は法律の条を挙げていますが、(3)(4)(5)は条を挙げていません。これは、挙げるべき条がないからです。第二に、この部分は「次の措置が講じられ得ることに留意してください」という注意の書き方で、措置をとる権限を定めた条文の形をとっていません。

公募要領の側も、同じ書き方です。

引用(中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第5回公募。2025年12月、独立行政法人中小企業基盤整備機構)33頁。「(2)補助金等適正化法違反行為の禁止」の項)「補助事業者が「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(以下「補助金等適正化法」という。)等に違反する行為等(例:他の用途への無断流用、虚偽報告など)をした場合には、補助金の交付取消・返還、不正の内容の公表等を行うことがあります。また、補助事業実施期間中に他の補助金で同様の行為等をした場合にも、補助金の交付決定取消・返還を行うことがあります。」
引用(小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉第20回公募 公募要領41頁(5))「補助事業者が「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30 年法律第179 号)」等に違反する行為等(例:他の用途への無断流用、虚偽報告など)をした場合には、補助金の交付決定の取消・返還命令(加算金の徴収を含む)、不正の内容の公表等を行うことがあります。また、法令に違反していることが明らかな場合、当該法令による罰則の他、採択取消、交付決定取消や交付済み補助金の全額返還(加算金付き)等の処分を受ける可能性があります。」

いずれも「不正の内容の公表等を行うことがあります」という書き方です。どのような場合に公表するのか、何をどこまで公表するのか、いつ公表するのか、公表の前に事業者に言うべきことを言う機会を与えるのかは、書かれていません。

ここで押さえておきたいのは、交付規程と公募要領の位置づけです。交付規程は、補助金を交付する側が自ら定めた内部の基準であって、行政規則です。補助金適正化法4条は、補助金等に関しては、他の法律又はこれに基く命令若しくはこれを実施するための命令に特別の定のあるものを除くほか、この法律の定めるところによるとしています。交付規程は、ここでいう「特別の定」に当たりませんので、法律より重い義務を事業者に課すことはできません。公募要領も同じです。この点は、Q&A「交付規程に違反したと言われたら――交付規程を守ることは『補助条件』なのか」で述べています。

私見としては、これらの記載は、法律上の根拠がある措置(取消し・返還・加算金・罰則)についての予告としては意味をもちますが、法律に根拠のない公表を行う権限を新たに作り出す根拠にはならないと考える余地があります。もっとも、この点を正面から述べた裁判例を当職として確認できておりませんので、実際の場面では、次の4で述べるとおり、記載そのものの文言に沿って範囲を詰めていくことが現実的であると考えております。

4 「不正の内容の公表」と告げられたときに確かめること

交付決定通知書も公募要領も、公表の対象を「不正の内容」と書いています。ここが出発点になります。

取消しの理由が「不正」に当たるのか

公募要領は、違反する行為等の例として「他の用途への無断流用、虚偽報告など」を挙げています。これに対して、実際の取消しの理由は、これと異なるものであることが少なくありません。報告の期限を守れなかったこと、財産を処分する前に承認を受けなかったこと、事業計画に掲げた数値に届かなかったことなどです。

私見としては、取消しの理由が、虚偽の報告や他の用途への流用といった意味での「不正」に当たらない場合には、通知書・公募要領が公表の対象として書いている「不正の内容」には当たらないと述べる余地があると考えております。取消しを受けたことと、不正があったとされることは、同じではありません。この区別は、公表の場面だけの話ではなく、ほかの補助金の申請の場面でも効いてきます(Q&A「補助金の返還を争っている間、ほかの補助金は止められたり、相殺されたりするのか」の6で、公募要領が補助対象外とする事業者の列挙の読み方を述べています)。

出発点は、お手元の取消通知書が挙げている条と号です。補助金適正化法17条1項のどの号によるものか、交付規程の取消しの条のどの号によるものかを、文面から拾っていただくことになります。取消しの理由は示されなければならないものですので(補助金適正化法21条の2)、挙げられている号と、書かれている理由とが対応しているかも確かめます。

公表の範囲と時期

記載の文言は「補助事業者等の名称及び不正の内容の公表」です。文言のとおりに読めば、公表されるのは名称と不正の内容であって、取消しに至る経緯の評価や、事業者の側の主張に対する反論までが対象になるわけではないと考えております。公表の文案を示すよう求め、事実と評価が混ざっていないかを確かめる余地があると考えております。

時期も問題になります。取消しや返還命令については、審査請求や取消訴訟によって結論が変わることがあります。結論が出る前に名称と「不正の内容」を公にされてしまうと、後から処分が取り消されても、信用の毀損は戻りません。私見としては、不服申立てや訴訟を予定している場合には、その帰結が出るまで公表を留保するよう、理由を付して書面で求める余地があると考えております。不服申立ての宛先と期間は、Q&A「交付決定の取消しの通知に不服があるとき、どこに言えばよいのか」で述べています。

口頭で「公表することになります」と告げられているだけの段階であれば、まず書面での明示を求めることになります。公表するのかしないのか、するとすればいつ、どこに、何を載せるのかが書面になっていなければ、こちらから述べるべきことも定まりません。取消しの前の段階でできることは、コラム「取消し前にすべきこと」で述べています。

次のような場合は、ご回答になる前にご相談ください

  • 取消しや返還命令とあわせて、社名と不正の内容を公表すると告げられている
  • 今後の入札や、中小機構の発注する契約から外されると言われている
  • 相当の期間、補助金の交付決定を行わないと告げられている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: ほかの補助金は止められたり相殺されたりするのか(Q&A)/残存簿価相当額の納付を求められたら(コラム)

5 「指名等の対象外」は、国の入札参加資格を一律に失うことではありません

交付決定通知書の記載の(4)は、「中小機構の所管する契約について、一定期間指名等の対象外とすること。」です。文言のとおり、中小機構が発注者となる契約についての取扱いを述べたものです。国の各省庁が行う競争入札の参加資格を一律に失うという意味ではありません。

補助金の取消しを受けたことで取引の道が全部閉じてしまうのではないか、というご心配をいただきますが、記載の射程はここまでです。私見としては、通知書や事務局からの連絡に「指名停止」という言葉が出てきたときは、それが中小機構の契約についてのものなのか、所管官庁の指名停止の措置を指しているのかを分けて確かめ、措置を講じたのであればその通知を書面で示すよう求めるのがよいと考えております。措置を講じた旨の通知がないのであれば、まだ措置はないということになります。

これとは逆向きの不利益も、頭に置いておいていただきたいところです。交付規程は、補助事業者が契約の相手方を選ぶ場面について、補助金交付等停止措置又は指名停止措置が講じられている事業者を相手方としてはならないとしています。つまり、措置を受けた事業者は、他社の補助事業の発注先から外れることになります。補助金に関わる事業者としての取引への影響という意味では、こちらのほうが現実の売上に響くことがあります。この定めの内容は、Q&A「補助金の返還を争っている間、ほかの補助金は止められたり、相殺されたりするのか」の6で述べています。支援する側・売る側の立場で調査や登録の取消しを受ける場面は、Q&A「支援事業者としての登録が取り消されると、関与した顧客の交付決定も全部取り消されるのでしょうか」で述べています。

6 「相当の期間、交付決定を行わない」の根拠は昭和29年の閣議了解です

交付決定通知書の記載の(3)は、「相当の期間補助金等の全部又は一部の交付決定を行わないこと。」です。これは、既に交付決定を受けた補助金の支払を止める措置(補助金適正化法20条)とは別のもので、これから先の交付決定をしないという取扱いです。

この文言の由来は、文献が示しています。補助金適正化法案の閣議決定の際に、あわせて次の閣議了解がなされていたとされています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』277頁注(3)(株式会社全国会計職員協会、2016)。昭和29年4月13日「補助金等に係る予算の執行の適正化」に関する閣議了解事項)「詐欺その他不正の手段によつて補助金等の交付を受け、又は補助関係利益(本法の間接補助金等に相当する)を得た場合、及び補助金等の他の用途への使用又は補助関係利益の他の用途への使用があった場合」において「補助金等に係る予算の執行の適正を期するため必要があるときは、爾後交付の決定をする補助金等のうち、国が法律に基き義務として交付するもの以外のものにつき、補助事業者等に対し、相当の期間補助金等の全部又は一部の交付の決定を行わないこととすること。」

交付決定通知書の(3)の文言が、この了解の文言とほぼ重なっていることが分かります。そして、了解のほうには、通知書に落ちていない限定が三つ付いています。

  • 対象となる行為が限定されています。詐欺その他不正の手段による受交付と、補助金等の他の用途への使用(及びこれに対応する補助関係利益の場合)です。報告の期限を守れなかったこと、財産を処分する前に承認を受けなかったこと、計画に掲げた数値に届かなかったことは、この文言には入っていません。
  • 対象となる補助金が限定されています。「国が法律に基き義務として交付するもの以外のもの」です。
  • 期間が限定されています。「相当の期間」であって、無期限ではありません。

私見としては、取消しの理由が詐欺その他不正の手段や他の用途への使用に当たらない場合に、「相当の期間、交付決定を行わない」とされることには疑問があり、その根拠と期間を書面で明らかにするよう求める余地があると考えております。了解の文言が「必要があるとき」としていることからも、取消しを受けた事業者について一律にこの取扱いをする筋のものではないと考えております。

なお、文献は、補助金適正化法20条の趣旨の説明の中で、交付の停止という措置の限界にも触れています。

引用(小滝・前掲274頁)「そもそも事業遂行義務に違反して補助金等の返還を命ぜられ、しかも当該返還義務すらも履行しようとしない補助事業者等は、「国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれる」補助金等(第三条)の交付対象としては適格性を欠くものというべきであるから、事後補助対象事業者として採択する必要性は認められないものといえよう。したがって、制裁的意味を含めて、一般的に他の補助金等の交付を停止する措置をとることも可能と考えられるが、補助法令上国の補助負担が義務づけられている類の事業にあっては、単なる行政措置として義務的負担金の交付停止措置を講ずることは、当該補助法令に抵触することとなるため、当然には認められないという問題がある。」

ここで前提に置かれているのは、返還を命ぜられ、しかもその返還義務すらも履行しようとしないという場面です。返還命令の当否を争っている段階、あるいは納付の方法について協議している段階は、この前提とは違うと考えております。

そして、新しく別の補助金に申請できるかどうかは、この(3)の問題でもなく、補助金適正化法20条の問題でもありません。申請しようとしている補助金の公募要領が、どのような者を補助対象外としているかによって決まります。この点は、Q&A「補助金の返還を争っている間、ほかの補助金は止められたり、相殺されたりするのか」の6で述べています。交付申請が不交付・差し戻しになったときの考え方は、Q&A「補助金の交付申請が却下された。争うことはできるのか」で述べています。

7 動かれる前に確かめること、残しておくもの

返還のほかの取扱いを告げられたときに、そろえておいていただくものを挙げます。

  • 取消通知書・返還命令書。根拠として挙げられた条と号、示された理由、返還を命じられた額が分かるものです。「不正」に当たるとされているのかどうかは、ここから読みます(前記4)。
  • 公表・指名等・交付決定を行わないことを告げた書面。口頭で告げられただけの場合は、どの定めに基づき、何を、いつ、どこに公表するのかの明示を書面で求めることになります。
  • 交付決定通知書。記6に当たる注意の記載がどう書かれているかを確かめます。補助金と版によって文言が違いますので、ご自身の補助金の通知書の文言で見ていただく必要があります(前記3)。
  • 申請した回の公募要領と交付規程。版と公募回を控えておいてください。「不正の内容の公表」の記載の位置と文言が、検討の土台になります。
  • 事務局とのやり取りの記録。日付、担当の部署、言われた内容を、こちらの手控えに残しておいてください。後から「そのような説明はしていない」となる場面を避けるためです。
  • 取引先との関係で影響が出ている事実が分かるもの。発注先から外されたという連絡などです。不利益の重さを示す資料になります(前記5)。

そのうえで、順序について一つ申し上げます。公表や指名等の取扱いは、取消しと返還命令があって初めて出てくるものです。入口である取消しの当否を争うのであれば、期間の制約があります。取消訴訟の出訴期間と「正当な理由」の考え方は、Q&A「交付決定の取消しから6か月を過ぎたら、取消訴訟は起こせないのか」で述べています。公表を止めてほしいという話だけを先に進めても、取消しが残れば根は残ります。私見としては、公表や取引への影響が心配な場面であればなおさら、入口の取消しの当否と併せて組み立てるべきであると考えております。

返還額そのものの計算と、納付を求められた場面での考え方は、コラム「残存簿価相当額の納付を求められたら」と、返還・残存簿価の返納を求められたらのページで述べています。加算金・延滞金は、Q&A「補助金の返還を求められたら、加算金・延滞金は払うのか」で述べています。取消し・返還請求の全体像は、交付決定の取消し・返還請求のページにあります。

取消しや返還命令とあわせて社名と不正の内容を公表すると告げられている事業者の方、中小機構の発注する契約や取引先の補助事業から外されると言われている事業者の方、相当の期間は補助金の交付決定を受けられないと告げられている事業者の方、顧問先・支援先からこのご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、ご回答をお出しになる前にご相談ください。取消通知書、公表や指名等を告げた書面、申請した回の公募要領と交付規程、交付決定通知書があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

  • 補助金適正化法。4条(他の法令との関係。「補助金等に関しては、他の法律又はこれに基く命令若しくはこれを実施するための命令に特別の定のあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。」)、17条(交付の決定の取消し)、18条(補助金等の返還)、19条(加算金及び延滞金)、20条(他の補助金等の一時停止等)、21条1項・2項(徴収)、21条の2(理由の提示)、22条(財産の処分の制限)、29条から32条まで(罰則)。同法の中で「公表」の語が用いられているのは6条2項(交付の決定までに通常要すべき標準的な期間の公表の努力義務)のみで、補助事業者等の名称の公表を定めた規定はない
  • 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和30年政令第255号)。補助事業者等の名称の公表を定めた規定はない(「公表」の語が用いられているのは基金事業等に係る運営及び管理に関する基本的事項の公表についてのみ)
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構法16条(同法15条1項6号等の規定により機構が交付する助成金について、補助金適正化法の規定を罰則を含めて準用する)
  • 中小企業省力化投資補助金交付規程(令和6年6月24日規程令6第4号。規定令8第9号による改正までのもの)様式第1(交付決定通知書)記6(同規程23頁。「なお、これらの規定に違反する行為がなされた場合、次の措置が講じられ得ることに留意してください。」として、(1)適正化法17条1項・2項による取消し、18条1項による返還、19条1項による加算金、(2)適正化法29条から32条までの罰則、(3)相当の期間補助金等の全部又は一部の交付決定を行わないこと、(4)中小機構の所管する契約について一定期間指名等の対象外とすること、(5)補助事業者等の名称及び不正の内容の公表を列挙する。(3)(4)(5)には根拠の条が挙げられていない)
  • 中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第5回公募。2025年12月、独立行政法人中小企業基盤整備機構)33頁「(2)補助金等適正化法違反行為の禁止」(補助金等適正化法等に違反する行為等(例:他の用途への無断流用、虚偽報告など)をした場合には、補助金の交付取消・返還、不正の内容の公表等を行うことがある旨)
  • 小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉第20回公募 公募要領41頁(5)(補助金等適正化法等に違反する行為等(例:他の用途への無断流用、虚偽報告など)をした場合には、交付決定の取消・返還命令(加算金の徴収を含む)、不正の内容の公表等を行うことがある旨)
  • 小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』(株式会社全国会計職員協会、2016)277頁注(3)(当初の補助金適正化法案の閣議決定の際にあわせてなされた昭和29年4月13日「補助金等に係る予算の執行の適正化」に関する閣議了解事項の引用。「詐欺その他不正の手段によつて補助金等の交付を受け、又は補助関係利益……を得た場合、及び補助金等の他の用途への使用又は補助関係利益の他の用途への使用があった場合」において「爾後交付の決定をする補助金等のうち、国が法律に基き義務として交付するもの以外のものにつき、補助事業者等に対し、相当の期間補助金等の全部又は一部の交付の決定を行わないこととすること。」)
  • 同274頁(事業遂行義務に違反して返還を命ぜられ、しかも当該返還義務すらも履行しようとしない補助事業者等は交付対象としての適格性を欠くとしつつ、補助法令上国の補助負担が義務づけられている類の事業については単なる行政措置として義務的負担金の交付停止措置を講ずることは当然には認められないこと)。あわせて275〜276頁(20条の交付停止の二要件、「同種の事務又は事業」の範囲、「相当の限度において」の限界)
  • 宇賀克也「行政制裁」ジュリスト1228号51頁(有斐閣、2002)(行政制裁を名あて人に義務を課したりその権利を制限したりする効果を有するものに限定すると、違反企業名の行政機関による公表の結果、企業が信用を失い甚大な経済的不利益を被ってもそれは行政制裁ではないことになるが、事実上のものであっても重大な不利益を及ぼす行政作用を行政制裁の射程外とすることは適切ではないと思われるとする。あわせて、公表の中には情報提供を直接の目的とし名あて人に不利益を課すこと自体を直接の目的としないものもあり、実際には直接の目的をいかに解すべきか必ずしも明確でない場合もあるとする。同頁注(9)は、かかる公表について法律の留保が及ばないとした判例として東京地判平成13年5月30日判時1762号6頁を挙げる=当職として同判決の原本は未確認)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

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※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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