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弁護士 岸上大起

申請した額より少ない交付決定が来た――条件も付いている。納得できないとき何ができるのか

このページの結論

申請額より少ない額で交付決定が来ました。条件も付いています。納得できません。どうすればよいのでしょうか。

申請額を減らした交付決定は、補助金適正化法6条3項の修正決定です。同項は「適正な交付を行うため必要があるとき」に限って修正を認めており、同条4項は、修正に当たって補助事業等の遂行を不当に困難とさせないようにしなければならないと定めています。交付決定の内容又はこれに附された条件に不服があるときは、同法9条により、各省各庁の長の定める期日までに申請の取下げをすることができます。

交付規程の側には修正して決定することを定めた条項がなく、減額の根拠は準用される補助金適正化法6条3項に求めるしかありませんので、同条4項の限界も当然に一緒に付いてきます。他方、条件だけを切り離して争えるかどうかは、その条件が交付決定の重要な要素となっているかによります。私見としては、付された条件が講学上の「負担」に当たり、交付決定の重要な要素をなさないと評価できる場合には、条件だけを独立に争う余地があると考えております。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 一通の通知書の中で、二つの別の話が起きています

交付決定通知書を開くと、申請した額より少ない額が書かれており、併せていくつかの条件が付されている、ということがあります。届いた書面は一通ですが、条文の上では、ここで起きていることは二つに分かれます。

一つは、申請した事項に修正が加えられたということです。補助金適正化法は、申請に係る事項に修正を加えて交付決定をすることができると定め(同法6条3項)、その修正の限界を同条4項に置いています。もう一つは、交付決定に条件が附されたということです。条件については同法7条が置かれ、その限界が同条4項に書かれています。

そして、この二つのどちらについても不服があるときの受け皿として、同法は9条に「申請の取下げ」という条文を置いています。9条は、交付決定の内容又はこれに附された条件に不服があるときに使う条文で、交付決定が出た後に申請者の側から動かせる、法律上の明文の手段です。もっとも、これは交付決定そのものをなかったことにするものですので、使うかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

2 申請額より少ない交付決定は、6条3項の「修正決定」です

補助金適正化法6条1項は、申請に係る書類等の審査等により調査をし、「補助金等を交付すべきものと認めたときは」すみやかに交付決定をしなければならないと定めています。これだけであれば、行政庁にできることは、申請どおりに決定するか、交付すべきものと認めないか、の二つしかないことになります。申請額を減らして決定する権限は、これとは別に、同条3項に書かれています。

引用(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律6条3項)「各省各庁の長は、第一項の場合において、適正な交付を行うため必要があるときは、補助金等の交付の申請に係る事項につき修正を加えて補助金等の交付の決定をすることができる。」

ここで押さえておきたいのは、交付規程の側には、修正して決定することを定めた条項が置かれていないことです。たとえば中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)9条1項は、交付申請書の内容を審査し、「補助金を交付すべきものと認めたときは、交付決定を行い、様式第2による交付決定通知書を補助事業者に通知するものとする」と定めるだけで、修正という言葉は出てきません。交付規程の条番号と文言は補助金ごと・版ごとに違いますので、お手元の交付規程で確かめてください。

つまり、申請額を減らして決定する権限の根拠は、交付規程ではなく、独立行政法人中小企業基盤整備機構法15条1項6号、16条により準用される補助金適正化法6条3項に求めるしかありません。そうしますと、同じ条文の4項に置かれた修正の限界も、当然に一緒に付いてくることになります。根拠条文を一つだけ取り出して使うことはできないからです。

この修正決定という権限が、なぜわざわざ法律に書かれたのか。小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』(株式会社全国会計職員協会、2016)は、申請者が一般水準を超える高度の事業を予定し高額の設計単価で積算された事業費を基礎に過大な補助金等を申請したり、適正規模を超えた事業計画を提出したりするようなケースを挙げ、そのすべてをいったん却下して訂正のうえ出し直させることは事務の効率性の見地から妥当な処理とはいえないとして、行政の手続経済の観点から置かれた規定であると説明しています(同書135〜136頁)。申請者の利益のために置かれた条文というより、却下して出し直させる手間を省くために置かれた条文だということです。

そして、修正の方向は減額に限られません。

引用(小滝・前掲書136〜137頁)「具体的にいかなる修正をなしうるか明文の規定はないが、修正決定権が法律上明定された趣旨からいって、前記制限の範囲内にある限り、減額修正を行うことも、増額修正を行うことも可能であると解される。ただし、全く申請がなされていない事項を新規に追加して増額修正することは、申請主義の建前を基本的に崩すこととなるので、認められないものというべきであろう。」

私見としては、ここから次のことが言えると考えております。申請した取組のうち一部だけが認められないという場合、法律が本来想定している処理は、その分を減らした修正決定です。申請の全部を却下して出し直させることは、6条3項が置かれた趣旨からは遠い処理になります。交付決定の段階で、一部の経費や一部の取組について説明を求められているときは、それが申請全体の却下に向かう話なのか、その部分を減らす修正決定に向かう話なのかを、早い段階で確かめておく余地があると考えております。

3 修正には限界があります――6条4項

6条3項の次に、同条4項が置かれています。

引用(同法6条4項)「前項の規定により補助金等の交付の申請に係る事項につき修正を加えてその交付の決定をするに当つては、その申請に係る当該補助事業等の遂行を不当に困難とさせないようにしなければならない。」

修正の必要性の判断そのものは、行政庁に委ねられています。小滝解説は、この点を次のように述べています。

引用(小滝・前掲書136頁)「修正決定は、補助金等の「適正な交付を行うため必要があるとき」に限り行うことができるが、その必要性の判断は行政庁の裁量に任されている。」

もっとも、同書は続けて、行政庁の自由裁量で申請者の意図する内容と大きく離れた修正決定がされることは問題であるとして、4項が修正の乱用を規制する規定として置かれたことを説明しています(同書136頁)。同書によれば、この4項は当初の政府原案にはなく、国会審議の過程で追加されたものです。

引用(同書136頁)「修正決定の限界を定めたこの第四項の規定は、当初の政府原案にはなく、国会審議の過程で追加されたものである。」

さらに、同書は、4項の位置づけについて次のように述べています。

引用(同書136頁)「ただし、「補助事業等の遂行を不当に困難とさせ」るような修正決定は、もともと第三項の「適正な交付を行うため必要があるとき」に含まれないものと解されるので、第四項の規定は、その意味では確認的規定にすぎないものといってよいであろう。」

私見としては、この整理は、争い方を考えるうえで使えると考えております。4項が確認的規定にすぎないということは、裏から読めば、事業の遂行を不当に困難とさせるような修正は、3項の要件である「適正な交付を行うため必要があるとき」を欠いている、ということです。そうしますと、問題は4項違反という独立の違法だけではなく、3項の要件を満たさない修正決定という、権限の行使そのものの問題になります。

具体的にどういう場合に「遂行を不当に困難とさせ」ることになるのかは、事業の中身によります。設備の一部が落とされたために残りの設備だけでは計画した生産ができない、建物の工事の一部が落とされたために取得する機械を設置できない、といった、落とされた部分が残った部分の前提になっている場合には、この主張を立てる余地があると考えております。この主張は、事業を実行してしまう前のほうが立てやすいものです。実行した後では、不当に困難ではなかったという評価を受けやすくなります。

4 付いた「条件」が何なのかを見分けます――7条の補助条件

次に、付された条件です。補助金適正化法7条1項は、経費の配分の変更や事業内容の変更について承認を受けるべきこと、中止・廃止について承認を受けるべきこと、予定の期間内に完了しない場合等にすみやかに報告して指示を受けるべきこと等を列挙し、同条2項が収益納付の条件、同条3項がそのほかに必要な条件を附することを妨げないことを定めています。収益納付の条件については、Q&A「補助事業がうまくいって利益が出た――補助金を返さなければならないのか(収益納付)」で述べています。交付規程の側も、条件を付することができる旨の条項を置いています。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程9条3項)「中小機構は、第1項の通知に際して必要な条件を付することができる。」

ここで、法律が「条件」と呼んでいるものの正体を押さえておく必要があります。小滝解説は、7条が行政行為の附款について定めた規定であるとした上で(同書147頁)、次のように述べています。

引用(小滝・前掲書148頁)「本法は、他の多くの実定法と同様、行政行為の附款一般をもって「条件」と称しているところであり、講学上の条件、期限、負担、撤回権の留保を含む広義の意味で用いているのである。とりわけ、本法の「条件」は、内容的には「負担」(行政行為の主たる意思表示に付随して、相手方に一定の作為、不作為、受忍等の義務を命ずる従たる意思表示)にあたるものが多いことに注意すべきである。」

つまり、交付決定通知書に並んでいる「条件」は、法律上の条件(効果の発生を将来の事実の成否にかからしめるもの)であることもありますが、多くは負担、すなわち、一定の作為・不作為・受忍の義務を命ずるものです。後記6で述べるとおり、この見分けが、条件だけを切り離して争えるかという問題に直結します。

条件の限界は、同法7条4項に書かれています。

引用(同法7条4項)「補助金等の交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、いやしくも補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであつてはならない。」

この4項も、6条4項と同じく、比例原則の確認規定と理解されています。もっとも、小滝解説は、確認規定にとどまらない意味があるとして、次のように述べています。

引用(小滝・前掲書169頁)「しかし、補助条件については、その違反に対し交付決定そのものが取り消され、補助金等を返還しなければならない場合も出てくるので、確認的規定とはいえ、補助条件が必要な限度を超えた不当なものとならないよう、交付行政庁が配慮すべき旨法律上明らかにしておくことが適当と考えられる。」

条件が付くということは、将来、その条件に違反したとして交付決定を取り消され、返還を命じられる入口が一つ増えるということです。交付規程に従うことが補助条件になるのかという問題は、Q&A「交付規程に違反したと言われたら――交付規程を守ることは『補助条件』なのか」で述べています。交付決定の段階で条件の数と中身を確かめておくことに実益があるのは、この先の取消しの入口になるからです。

次のような場合は、事業に着手される前にご相談ください

  • 申請した額より少ない額で交付決定が来たが、減らされた理由が書かれていない
  • 落とされた部分が残った部分の前提になっており、このままでは計画した事業ができない
  • 交付決定に付された条件の意味が分からないまま、着手を求められている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 補助金の「減額」とは何か(Q&A)/交付規程を守ることは「補助条件」なのか(Q&A)

5 内容又は条件に不服があるときは、申請を取り下げることができます――9条

交付決定の通知は、同法8条により、決定の内容と、条件を附した場合にはその条件を知らせるものです。そして、その通知を受け取った者に不服があるときの条文が、9条です。

引用(同法9条1項)「補助金等の交付の申請をした者は、前条の規定による通知を受領した場合において、当該通知に係る補助金等の交付の決定の内容又はこれに附された条件に不服があるときは、各省各庁の長の定める期日までに、申請の取下げをすることができる。」

同条2項は、この取下げがあったときは、当該申請に係る補助金等の交付の決定はなかったものとみなすと定めています。交付規程の側にも、期日を定めた条項が置かれています。

引用(中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程10条)「補助事業者は、補助金の交付決定の通知を受けた場合において、交付の決定の内容又はこれに付された条件に対して不服があり、補助金の交付の申請を取り下げようとするときは、当該通知を受けた日から10日以内にその旨を記載した書面をもって中小機構に申し出なければならない。」

通知を受けた日から10日という、短い期日です。交付決定の内容を読み込み、落とされた部分が事業に与える影響を見積もり、条件の意味を確かめるには、短いと申し上げざるを得ません。法律の側は「各省各庁の長の定める期日までに」としか定めておらず、日数を決めているのは交付規程です。この点について、小滝解説は次のように述べています。

引用(小滝・前掲書179頁)「ただし、右の撤回の期限も絶対不変のものと解する必要はなく、「各省各庁の長の定める期日」経過後においても、やむをえない事由があると認められるときは、補助事業等執行の適期内にある限り撤回を認めうるものと解して差し支えないであろう。」

私見としては、10日を過ぎたから取下げの申出が受け付けられないとは限らないと考えております。事業の執行の適期内にあり、期日を守れなかったことについて事情があるのであれば、その事情を書いて申し出る余地があると考えております。

「取下げ」の正体は、講学上の撤回です

9条の取下げは、単なる手続上の取りやめではありません。小滝解説は、その法的性質を次のように整理しています。

引用(小滝・前掲書178頁)「申請の「取下げ」とあるのは、講学上の撤回にあたるものであり、したがって、第一項は交付申請の撤回権について創設的な規定をおいたものと解することができる。」

私人の公法上の行為は、それに基づいて行政行為がされた後は、通常は自由に撤回できないものと解されています。交付決定が出た後に申請を取り下げられるのは、9条が特にそれを認めたからです。同書は、その理由として、交付決定は補助事業等の遂行を命ずる処分ではなく、事業を遂行すれば一定金額の交付を請求する権利を与える設権行為にすぎないこと、申請内容を修正して決定されることもあるのだから、申請内容と異なる交付決定の内容に不服がある場合には申請主義の建前からしても申請者の意思を尊重することが適当であることを挙げています(同書178頁)。

不服がなくても使えるのか――事情が変わった場合

9条1項は「不服があるときは」と書かれています。そこで、不服はないが事情が変わったので取りやめたい、という場合に使えるのかが問題になります。小滝解説は、これを認めています。

引用(小滝・前掲書179頁)「前記の趣旨から考えても、補助事業等を遂行する意思を有しない者をすべて拘束しなければならない理由に乏しいものと解されるところであり、したがって、例えば、交付申請者が、申請以後裏負担分の資金調達ができる見込みがなくなった等の事情の変更により交付決定内容に不服はないが、当該事業の執行は取りやめたいというがごとき場合においては、申請の撤回を認めて差し支えないものと解される。」

自己資金や借入れの見込みが立たなくなった場合が、名指しで挙げられています。同書は、同条2項の効果についても、不服がない場合の撤回にも同様に適用があるものと解してよいとしています(同書180頁)。交付決定を受けたが着手前に資金の見込みが崩れた、という場面で、まず検討する条文はここだと考えております。着手後に事業を縮小・中止する場合の扱いは、Q&A「補助事業を途中でやめたい・縮小したいとき、補助金はどうなるのか」、自らに落ち度がない事情で続けられなくなった場合はQ&A「自分に落ち度がないのに補助事業を続けられなくなった――補助金はどうなるのか」で述べています。また、財産処分の承認申請や事業計画の廃止届を出してしまった後の取下げは、別の問題ですので、Q&A「財産処分の承認申請・事業計画の廃止届を出してしまった――取り下げられるのか」で述べています。

なお、取下げは、交付決定をなかったものとみなす効果を生みます。交付決定によって得た地位を、自分から手放すということです。減らされた額でも事業を進めたいという場合に、取下げを選ぶ理由はありません。9条は、進めない、という判断をしたときの出口です。

6 条件だけを切り離して争えるのか

実際に多いのは、交付決定そのものは受けたい、しかしこの条件は困る、という場面です。この点について、小滝解説は、まず法律上用意されている手段を整理した上で、現実の需要との食い違いを指摘しています。

引用(小滝・前掲書170頁)「補助事業者等は、補助条件に不服があるときは補助金等の交付申請そのものを取り下げることができる(第九条)ほか、地方公共団体にあっては、違法不当な補助条件の付された交付決定を不服として、交付行政庁に対して不服の申出ができることとされている(第二五条)。しかしながら、現実には、交付決定によって取得した補助金等交付請求権まで放棄することは欲せず、特定の違法な補助条件のみの無効確認又は取消しを求めることを欲する場合が多いであろう。」

ここで、同法25条の不服の申出は、条文上、不服のある「地方公共団体」の手段として定められています。民間の事業者には、この経路はありません。そうしますと、民間事業者について法律が正面から用意している手段は、9条の取下げだけだということになります。条件だけが困るという場面について、法律に明文の受け皿がないわけです。

そこで、条件だけを争えるかという問題になります。同書は、続けて次のように述べています。

引用(小滝・前掲書170頁)「このような場合には、違法な補助条件のみを独立に争うことができるか否か問題であるが、当該補助条件が交付決定の重要な要素となっていない場合には、これを独立に争うことができるものと解する余地はあろう。」

分かれ目は、その条件が交付決定の重要な要素になっているかどうかです。同書は、附款が違法・無効である場合に本体の行政行為にどう影響するかについて、その附款が行政行為をなすにあたっての重要な要素をなしている場合には行政行為そのものの無効を来すとする見解が通説であるとした上で、重要な要素でない場合を次のように整理しています。

引用(小滝・前掲書169頁)「他方、交付決定の重要な要素をなさない補助条件は、仮に第四項違反の無効なものであったとしても、それによって交付決定までが無効となるわけではなく、当該無効の補助条件の付かない交付決定として効力を生ずるものと解すべきである。」

同書は、下級審の決定を注で挙げています。

引用(小滝・前掲書171頁注22)「違法な行政行為の附款と争訟手続に関し、許可処分に条件が付された場合その条件のみが違法であるときは、その条件の取消しを求めて抗告訴訟を提起することができる(東京地裁、昭和四二年一一月二三日決定、昭和四二年(行ク)五二号)あるいは附款が行政行為の重要な要素でないときは、附款のみの取消しを求めることができる(大阪地裁、昭和四三年六月一四日決定、昭和四三年(行ク)九号)旨の下級審判例がある。」

これらの決定の原本と、その後の経過については、当職は確認しておりませんので、引用は同書の注の記述の限度にとどめます。同書171頁注24は、附款の瑕疵の効果に関する塩野宏『行政法Ⅰ(第二版)』154頁の一般論を引いており、そこでも、その附款なかりせば当該行政行為がなされなかったであろうことが客観的にいえるような場合には附款だけの取消訴訟は許されない、という同じ線が引かれています。同書の引用する文献の原本についても、当職は確認しておりません。

私見としては、実務の順番は次のようになると考えております。まず、付された条件を一つずつ、法律上の条件なのか、負担なのか(前記4)に割り振ります。負担であれば、それは交付決定の主たる内容に付随して義務を命ずるものですので、交付決定の重要な要素をなさないと評価できる場合がありえます。その場合には、条件だけを切り離して争う余地があると考えております。これに対し、その条件があるからこそ交付決定がされたと見られる条件については、切り離して争うことは難しく、交付決定全体を相手にするか、9条で取り下げるかという選択になります。

7 お手元で確かめていただく順番

  • 交付決定通知書と、自分が出した交付申請書とを並べ、どこで差が生じたのかを経費区分ごとに書き出します。落とされたのが特定の経費なのか、単価なのか、数量なのか、補助率や上限額の当てはめなのかで、話が変わります。
  • 減額の根拠として何が書かれているかを確かめます。何も書かれていない場合には、どの経費をどの理由で落としたのかを、書面又はメールで示していただくよう求めてください。口頭のやり取りだけでは、後から確かめることができません。
  • 落とされた部分が、残った部分の前提になっていないかを確かめます。なっている場合は、6条4項の「遂行を不当に困難とさせ」るという主張を立てる余地があります(前記3)。この主張は、着手前のほうが立てやすいものです。
  • 付された条件を全部書き出し、7条1項各号・2項・3項のどれに当たるのかを割り振ります。どの号にも当たらないものが混じっていないか、同条4項の限度を超えていないかを確かめます。
  • 取下げの期日を確かめます。交付規程に期日の定めがあり、通知を受けた日から10日以内とされている例があります(前記5)。日数が短いので、ほかの検討より先に確かめてください。
  • 進めるのか、取り下げるのかを分けて決めます。減らされた額でも進めるのであれば、取下げではなく、条件の整理(前記6)と、着手後の変更の手続(経費の配分の変更・内容の変更の承認)の確認に進みます。
  • 争うことを考える場合は、期間を確かめます。宛先と期間はQ&A「交付決定の取消しの通知に不服があるとき、どこに言えばよいのか」、出訴期間の考え方はQ&A「交付決定の取消しから6か月を過ぎたら、取消訴訟は起こせないのか」で述べています。

交付決定の段階は、まだ何も実行していない段階です。ここで条件の中身と減額の理由を詰めておくと、後の実績報告・額の確定・取消しの場面で争う材料が残ります。逆に、理由の分からない減額と意味の分からない条件をそのまま受け入れて着手してしまうと、数年後に、その条件に違反したと言われたときに、出発点に戻ることが難しくなります。交付決定通知書と交付申請書の控えを並べて読む作業は、その日のうちに一度は終わります。

申請した額より少ない額で交付決定を受けた事業者の方、意味の分からない条件が付された交付決定を受けて着手を迷っている事業者の方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士の先生方は、事業に着手される前にご相談ください。交付申請書の控え、交付決定通知書(付された条件を含む)、交付規程、事務局とのやり取りがあれば、具体的な検討ができます。交付規程に取下げの期日が定められている場合は日数が短いので、早めにご連絡ください。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

  • 補助金適正化法6条1項(当該申請に係る書類等の審査及び必要に応じて行う現地調査等により調査し、補助金等を交付すべきものと認めたときは、すみやかに補助金等の交付の決定をしなければならない)、同条3項(第一項の場合において、適正な交付を行うため必要があるときは、補助金等の交付の申請に係る事項につき修正を加えて補助金等の交付の決定をすることができる)、同条4項(前項の規定により修正を加えてその交付の決定をするに当つては、その申請に係る当該補助事業等の遂行を不当に困難とさせないようにしなければならない)
  • 補助金適正化法7条1項(交付の条件を附する事項の列挙)、同条2項(収益納付の条件)、同条3項(そのほか交付の目的を達成するため必要な条件を附することを妨げない)
  • 補助金適正化法7条4項(補助金等の交付の決定に附する条件は、公正なものでなければならず、いやしくも補助金等の交付の目的を達成するため必要な限度をこえて不当に補助事業者等に対し干渉をするようなものであつてはならない)
  • 補助金適正化法8条(交付の決定をしたときは、すみやかにその決定の内容及びこれに条件を附した場合にはその条件を補助金等の交付の申請をした者に通知しなければならない)
  • 補助金適正化法9条1項(補助金等の交付の申請をした者は、前条の規定による通知を受領した場合において、当該通知に係る補助金等の交付の決定の内容又はこれに附された条件に不服があるときは、各省各庁の長の定める期日までに、申請の取下げをすることができる)、同条2項(取下げがあったときは、当該申請に係る補助金等の交付の決定は、なかったものとみなす)
  • 補助金適正化法25条1項(不服の申出。不服のある「地方公共団体」の手段として定められており、民間の補助事業者等には同条の経路はない)
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構法15条1項6号、16条(補助金適正化法の準用)
  • 中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。令和7年6月30日施行の改正までのもの)9条1項(交付申請書の内容を審査し、補助金を交付すべきものと認めたときは、交付決定を行い、様式第2による交付決定通知書を通知する。修正して決定することを定めた条項は置かれていない)、同条3項(中小機構は、第1項の通知に際して必要な条件を付することができる)、10条(交付の決定の内容又はこれに付された条件に対して不服があり、補助金の交付の申請を取り下げようとするときは、当該通知を受けた日から10日以内にその旨を記載した書面をもって中小機構に申し出なければならない)=同交付規程3〜4頁
  • 小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』(株式会社全国会計職員協会、2016)135〜136頁(修正決定権が明記された理由。過大申請・適正規模を超えた事業計画の例と、行政の手続経済の観点)、136頁(「修正決定は、補助金等の「適正な交付を行うため必要があるとき」に限り行うことができるが、その必要性の判断は行政庁の裁量に任されている。」「修正決定の限界を定めたこの第四項の規定は、当初の政府原案にはなく、国会審議の過程で追加されたものである。」「ただし、「補助事業等の遂行を不当に困難とさせ」るような修正決定は、もともと第三項の「適正な交付を行うため必要があるとき」に含まれないものと解されるので、第四項の規定は、その意味では確認的規定にすぎないものといってよいであろう。」)、136〜137頁(「具体的にいかなる修正をなしうるか明文の規定はないが、修正決定権が法律上明定された趣旨からいって、前記制限の範囲内にある限り、減額修正を行うことも、増額修正を行うことも可能であると解される。ただし、全く申請がなされていない事項を新規に追加して増額修正することは、申請主義の建前を基本的に崩すこととなるので、認められないものというべきであろう。」)
  • 小滝・前掲書147頁(7条は交付決定に付すべき附款=補助条件について規定したものであること)、148頁(「本法は、他の多くの実定法と同様、行政行為の附款一般をもって「条件」と称しているところであり、講学上の条件、期限、負担、撤回権の留保を含む広義の意味で用いているのである。とりわけ、本法の「条件」は、内容的には「負担」(行政行為の主たる意思表示に付随して、相手方に一定の作為、不作為、受忍等の義務を命ずる従たる意思表示)にあたるものが多いことに注意すべきである。」)
  • 小滝・前掲書169頁(7条4項の趣旨。「しかし、補助条件については、その違反に対し交付決定そのものが取り消され、補助金等を返還しなければならない場合も出てくるので、確認的規定とはいえ、補助条件が必要な限度を超えた不当なものとならないよう、交付行政庁が配慮すべき旨法律上明らかにしておくことが適当と考えられる。」。及び「他方、交付決定の重要な要素をなさない補助条件は、仮に第四項違反の無効なものであったとしても、それによって交付決定までが無効となるわけではなく、当該無効の補助条件の付かない交付決定として効力を生ずるものと解すべきである。」)
  • 小滝・前掲書170頁(「補助事業者等は、補助条件に不服があるときは補助金等の交付申請そのものを取り下げることができる(第九条)ほか、地方公共団体にあっては、違法不当な補助条件の付された交付決定を不服として、交付行政庁に対して不服の申出ができることとされている(第二五条)。しかしながら、現実には、交付決定によって取得した補助金等交付請求権まで放棄することは欲せず、特定の違法な補助条件のみの無効確認又は取消しを求めることを欲する場合が多いであろう。」「このような場合には、違法な補助条件のみを独立に争うことができるか否か問題であるが、当該補助条件が交付決定の重要な要素となっていない場合には、これを独立に争うことができるものと解する余地はあろう。」)
  • 小滝・前掲書171頁注22(「許可処分に条件が付された場合その条件のみが違法であるときは、その条件の取消しを求めて抗告訴訟を提起することができる(東京地裁、昭和四二年一一月二三日決定、昭和四二年(行ク)五二号)あるいは附款が行政行為の重要な要素でないときは、附款のみの取消しを求めることができる(大阪地裁、昭和四三年六月一四日決定、昭和四三年(行ク)九号)旨の下級審判例がある。」)、同頁注20(石川敏行「附款の限界と争訟手段」ジュリスト増刊・行政法の争点(新版)79頁ほかを引くもの)、同頁注24(塩野宏『行政法Ⅰ(第二版)』154頁を引き、その附款なかりせば当該行政行為がなされなかったであろうことが客観的にいえるような場合には附款だけの取消訴訟は許されないとするもの)。これらの決定・文献の原本及びその後の経過は当職は確認しておらず、引用は同書の注の記述の限度にとどめています
  • 小滝・前掲書178頁(「申請の「取下げ」とあるのは、講学上の撤回にあたるものであり、したがって、第一項は交付申請の撤回権について創設的な規定をおいたものと解することができる。」。及び交付決定が設権行為にすぎないこと、修正決定がされることもあるのだから申請者の意思を尊重することが適当であること)、179頁(「前記の趣旨から考えても、補助事業等を遂行する意思を有しない者をすべて拘束しなければならない理由に乏しいものと解されるところであり、したがって、例えば、交付申請者が、申請以後裏負担分の資金調達ができる見込みがなくなった等の事情の変更により交付決定内容に不服はないが、当該事業の執行は取りやめたいというがごとき場合においては、申請の撤回を認めて差し支えないものと解される。」「ただし、右の撤回の期限も絶対不変のものと解する必要はなく、「各省各庁の長の定める期日」経過後においても、やむをえない事由があると認められるときは、補助事業等執行の適期内にある限り撤回を認めうるものと解して差し支えないであろう。」)、180頁(9条2項は交付決定の内容に不服がない場合の撤回についても同様に適用があるものと解してよいとするもの)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

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※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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