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弁護士 岸上大起

補助金で作ったシステム・ソフトウェアにも、財産の処分制限は及ぶのか

このページの結論

補助金で業務システムを開発しました。自社で使い続けながら同業の他社にも使わせたい、あるいはクラウドのサーバーを解約して一度止めたいと考えています。設備と同じように「処分制限財産」として承認が要る、使用許諾は「譲渡」だ、と言われています。ソフトウェアにも処分制限は及ぶのでしょうか。

補助金適正化法22条の処分制限が及ぶのは「政令で定める財産」に限られ、施行令13条はこれを制限列挙しています。ソフトウェアは1号〜3号に入らず、4号の「機械及び重要な器具」の範囲も、単価五〇万円未満の機械及び器具で補助目的達成上特に必要ないと認められるものを除く機械及び器具と取り決められているため、無形の資産が当然に入るとは読めません(小滝300頁)。他方、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程24条1項は「機械、器具及びその他の財産」と定め、様式第7の区分に「無体財産権(知的財産権等)」を置いています。もっとも、承認が要るのは「交付の目的に反して」使用・譲渡等をするときに限られ、補助目的に適合する限り使用も譲渡も自由です(同301頁)。私見としては、自社で使い続けながら使用権を許諾することは「譲渡」に当たらないと考える余地があり、問題は目的に反する貸付けかどうかに戻ります。

補助事業で開発した成果については、交付規程25条1項2号・27条1項が知的財産権の「実施権の設定」を報告と収益納付(適正化法7条2項の条件)の事柄として置いています。ただし同号の定義にプログラムの著作権は挙げられておらず、台帳の区分3に載る無体財産権には24条3項の承認申請が別に問題になり得ます。サーバーの解約や稼働の縮小は、適正化法22条が挙げる処分(「等」なし)のどれにも当たりませんが、何も残さずに解約すると「廃棄」と見られる余地が生じますので、ソースコード・バックアップ・環境構築手順を保全し、再稼働の計画を交付主体に示しておいてください。事業計画の廃止・縮小に当たるときは、交付規程26条1項の届出の問題が別にあります。IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)の交付規程は財産の種類を限定せず単価で切る一方、所有権が補助事業者にない場合を除いており、補助金ごとに答えが違います。

執筆 補助金に関する紛争・法律問題を主に取り扱う弁護士 岸上 大起(埼玉弁護士会・登録番号63780)

1 施行令13条は処分制限財産を制限列挙しており、4号・5号の範囲は交付する側の定めに委ねられています

補助金で業務システムやソフトウェアを作った、あるいは買った。これを他社に使わせたい、売りたい、あるいはサーバーを解約して止めたい。そのとき、設備と同じように「処分制限財産」として承認が要るのか、という問いです。出発点は、やはり補助金適正化法22条です。

引用(補助金適正化法22条)「補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。」

制限がかかるのは「政令で定める財産」に限られます。その政令が補助金適正化法施行令13条です。

引用(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令13条)「法第二十二条に規定する政令で定める財産は、次に掲げるものとする。/一 不動産/二 船舶、航空機、浮標、浮さん橋及び浮ドツク/三 前二号に掲げるものの従物/四 機械及び重要な器具で、各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定めるもの/五 その他各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が補助金等の交付の目的を達成するため特に必要があると認めて定めるもの」(※原文は号ごとに改行されています。引用に当たり「/」で区切りました。)

システムやソフトウェアは、1号の不動産でも、2号の船舶・航空機等でも、3号のそれらの従物でもありません。残るのは4号と5号ですが、どちらも「定めるもの」で終わっています。文献は、この構造を次のように説明しています。

引用(小滝敏之『補助金適正化法解説〔全訂新版(増補第2版)〕-補助金行政の法理と実務-』300頁(株式会社全国会計職員協会、2016))「右のように、施行令は処分制限財産を制限列挙しているが、第四号及び第五号は交付行政庁の指定に委ねているので必ずしもその範囲が明らかではない。そこで補助金等適正化中央連絡協議会においては、右の第四号の財産の範囲について、取得価格又は効用の増加価格が単価五〇万円未満の機械及び器具で補助目的達成上特に必要ないと認められるものを除く機械及び器具とする旨、取り決めている。」
引用(同300頁)「第五号は、もともと第一号から第四号までの類型に入らない財産で、各々の補助目的達成のため処分制限を特に必要と認めるものを交付行政庁の判断において指定することとしているものであるから、類型的にその基準を定めることは困難である。」

4号の範囲として取り決められているのは「機械及び器具」です(同書301頁注(5)が挙げるのは、昭和46年5月12日付蔵計第1618号「補助金等適正化法第二十二条の規定に基づく同法施行令第十三条第四号により各省各庁の長が定める機械及び重要な器具の範囲について」です)。無形の資産であるソフトウェアやシステムのプログラムが、4号の「機械及び重要な器具」に当然に入るとは読めません。そうすると、ソフトウェアを処分制限財産とするには、5号により、交付の目的を達成するため特に必要があると認めて「定める」ことが要る、というのが法令の側の建てつけです。この点は、Q&A「補助金で入れたソフトを解約したら『残存簿価の返還』と案内された」の4でも述べています。

なお、同書300頁に引かれている施行令の条文は「各省各庁の長が定めるもの」となっていますが、現行の条文は、上記のとおり「各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定めるもの」です。中小機構が交付する補助金では、この「補助実施法人の代表者」が中小機構の理事長を指します(同施行令1条2項・別表、中小機構法16条)。この点の整理は、Q&A「50万円未満の設備や、工事一式で計上したものは、処分制限の対象になるのか」で述べています。

もう一つ、押さえておきたいことがあります。文献は、ソフトウェアのような無形の資産が「財産」でないとは言っていません。むしろ、補助事業の成果として生まれた特許権等について、次のように述べています。

引用(同298頁)「これらの財産(無体財産権として財産の一種とみるべきである。)の目的外処分(直ちに譲渡し利益を得るなど)を禁止するのみでは不十分と考えられ、むしろ事業完了後条件においてその成果を公表させるとともに、特許権等の実施等効率的な使用の義務を課する必要があるものと思われる。」

無体財産権も財産の一種であり、その目的外処分を禁止することはあり得る、という前提です。したがって、問題は「ソフトウェアは財産か」ではなく、「お手元の補助金について、ソフトウェアを処分制限財産とする定めが置かれているか」です。

2 交付規程は「機械、器具及びその他の財産」と包括的に定め、台帳の区分には「無体財産権」が置かれています

そこで交付規程を見ます。以下の条数・頁数と文言は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程(令和3年6月15日規程令3第13号。最終改正規程令7第5号)のものです。

引用(同交付規程24条1項。同規程7頁)「取得財産等のうち、処分(補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等をいう。)を制限する財産(以下「処分制限財産」という。)は、取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産とする。」

「機械、器具及びその他の財産」です。施行令13条4号の「機械及び重要な器具」より広く、「その他の財産」を含めています。そして、取得財産等管理台帳(様式第7)は、区分を三つに分け、その三つ目に無体財産権を置いています。

引用(同交付規程様式第7(取得財産等管理台帳)注2・注5。同61頁)「(注2)「区分」は、建物、機械・装置・工具・器具、無体財産権(知的財産権等)、とします。」
「(注5)機械装置等の類型・種類の分野として、ロボット、情報家電、自動車、医療・バイオ、産業機械、環境・エネルギー、航空宇宙、半導体、構造物、光学機器、鉄鋼、衣料生活資材、印刷情報記録、食料品、化学工業、その他、の16項目からお選びください。無体財産権の類型・種類の分野として、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、その他、の5項目からお選びください。」

台帳の表の行には、「3 無体財産権(知的財産権等を他社から取得した場合)」と書かれています(同61頁)。他社から買ってきた特許権や商標権、あるいはパッケージソフトの権利を単価50万円以上で取得したのであれば、区分の三つ目(無体財産権)に、類型・種類は注5の「その他」として台帳に載る、という建てつけです。交付規程の側は、無形の資産を処分制限財産に含める書き方をしている、ということになります。

ここで、経費の区分と財産の区分とを混同しないでください。同交付規程の別紙2は、補助対象経費の区分を「建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費」としています(同11頁以下。枠ごとに同じ区分の表が置かれています)。システムの構築費が「機械装置」と一つの区分にくくられているからといって、できあがったシステムが「機械」や「器具」になるわけではありません。経費の区分は支出の性質による分類であり、処分制限財産の範囲を決めるのは、施行令13条と交付規程24条1項、そして台帳の区分です。自社で開発したシステムを台帳の区分2(機械・装置・工具・器具)に載せるべきだと言われたときは、この区別を指摘することになります。

もっとも、交付規程は、一般には、交付主体が自ら定めた内部的な規範(講学上の行政規則)であって、それ自体が国民を直接拘束する法規ではありません。この点は、Q&A「交付規程に違反したと言われたら」で述べています。ただし、処分制限財産の範囲については、話が一段階進みます。24条1項が施行令13条5号の委任を受けてされた「定め」であれば、その限りで、交付規程の条項が処分制限財産の範囲を画することになるからです。5号は定めの形式を限定していませんので、交付規程の条項という形でされた定めであること自体は、否定しにくいところです。交付規程は1条で、適正化法・施行令・中小機構法その他の法令の定めによるほか、この規程の定めるところによるとしていますが、24条1項が5号の定めとしてされたものかどうかを明示してはいません。私見としては、問題は、「その他の財産」という包括的な一語をもって、5号が求める「交付の目的を達成するため特に必要があると認めて」の判断がされたといえるのかであり、ここには疑問の余地があると考えております。他方で、交付規程の条項が交付決定に附された条件(補助金適正化法7条3項)として取り込まれているのであれば、その条件への違反という形で問題になり得ます。どちらの経路で言われているのかを、交付決定通知書の記載で確かめることになります。

また、「他社から取得した場合」という台帳の文言が示すとおり、買ってきた無体財産権と、補助事業の中で自社が開発して生まれた成果とは、交付規程の中で別の扱いを受けています。後者について交付規程が置いているのは、25条2項(補助事業において知的財産権が発生した場合は、その権利は補助事業者に帰属する)と、25条1項2号の報告、27条1項の収益納付です。この帰属・報告・収益納付の仕組みは、Q&A 「補助金で生まれた特許や著作権を、売ったり使わせたりしたとき」 で述べています。本稿では、後記4で、使用許諾との関係に絞って触れます。

IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)の交付規程は、別の書き方をしています

ソフトウェアそのものを対象とする補助金では、定め方が違います。中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金交付規程(通常枠)(令和8年(2026年)10月9日。同年11月2日施行)31条1項は、前段で、取得財産等について補助事業の完了後においても善良なる管理者の注意をもって適切に管理しなければならないと定めたうえ、「また、取得価格の単価が50万円以上の取得財産(以下「処分制限財産」という。) については、これを補助金の交付の目的以外での使用、他の者への貸付け、譲渡、他の物件との交換、廃棄又は債務の担保の用に供してはならない。ただし、あらかじめ事務局の承認を受けた場合は、この限りでない。」としています(同規程11頁(PDF12頁))。財産の種類を限定せず、単価だけで切る書き方です。他方で同条5項は「前四項については、処分制限財産の所有権が補助事業者に存しない場合は適用しない。」とし、台帳(様式第3)の注2は、区分を「(イ)構築物(ロ)機械装置・工具器具(ハ)その他」としています(同規程PDF21頁)。ライセンスやクラウドの利用権にとどまる部分が31条の対象外であることは、前記Q&A「補助金で入れたソフトを解約したら」の3で述べています。

つまり、同じ中小機構が所管する補助金でも、「無体財産権」を区分に置く交付規程と、「所有権が補助事業者に存しない場合は適用しない」とする交付規程とがあります。ソフトウェアに処分制限が及ぶかどうかは、補助金ごとに、交付規程の条文と台帳の様式を読んで答えるほかありません。

3 補助目的に適合する限り、使用も譲渡も自由です

ソフトウェアが処分制限財産に当たるとしても、承認が要るのは、22条が列挙する行為を「補助金等の交付の目的に反して」行うときに限られます。文献は、この点を次のように述べています。

引用(同301頁)「処分制限の内容は、「各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない」ということである。したがって、補助目的に適合する限り、補助事業者等は自由に使用、譲渡等の処分を行うことができる。例えば、地方公共団体が公営住宅建設費補助金の交付を受けて建設した公営住宅を住民に賃貸し、あるいは工業団地造成利子補給金の交付を受けて造成した工業団地を企業等に工業団地用に譲渡し、貸し付けること等は、補助目的に適合する典型的な事例であり、これらの処分を行うについて交付行政庁の承認を受ける必要がないことはいうまでもない。」

公営住宅を住民に貸すことは、補助金で建てた建物を他人に貸すことですが、それが補助目的そのものですから承認は要らない、という説明です。ソフトウェアに置き換えれば、こうなります。補助金で作ったシステムを顧客に使わせて料金を取る事業(SaaSや受託のサービス)が事業計画そのものであれば、顧客に使用権を許諾することは、補助目的に適合する使用であって、承認を要する処分ではありません。事業計画書に、そのシステムを誰にどう使わせて売上を立てるかが書かれているはずです。その計画どおりに使わせているのであれば、22条の「交付の目的に反して」に当たらないと考えております。

逆に、事業計画では自社の業務効率化のために作るとしていたシステムを、計画にない形で他社に売り切る、あるいは別の事業にだけ使うようになった、という場合は、「交付の目的に反する」使用・譲渡になり得ます。問われているのは、ソフトウェアという財産の種類ではなく、交付の目的との関係です。「目的外使用」とは何かは、Q&A「補助金の『目的外使用』とは何か」で、既存事業と併せて使う場合は「補助金で取得した財産を既存事業に併用することについて」で述べています。

4 自社で使い続けながら、使用権を他社に許諾することは「譲渡」か、「貸し付け」か

よくあるのは、補助金で作ったシステムを自社でも使い続けつつ、同業の他社や取引先にも使わせたい、という場面です。これは22条の「譲渡」に当たるのでしょうか。

譲渡とは、財産の権利そのものを相手に移すことです。使用権を許諾しても、著作権やプログラムの権利は自社に残ります。自社で使い続けている以上、財産が手元から出ていってもいません。私見としては、使用権の許諾は「譲渡」には当たらないと考える余地があります。22条の列挙の中で性質が近いのは「貸し付け」です。物を相手に使わせて自分の手元に権利を残すという点で、使用許諾は貸付けに似ています。そうすると、「譲渡ではない」で話は終わらず、問題は、その許諾が「補助金等の交付の目的に反して」された貸付けに当たるかどうかに戻ります(前記3)。買ってきたソフトウェアの権利(台帳の区分3に載るもの)については、この「目的に反するか」の判断と、24条3項の承認申請・同6項の納付の問題として整理することになります。

補助事業の中で自社が開発したシステムについては、交付規程は、別の条文を置いています。25条1項2号は、「補助事業に係る発明、考案等に関する特許権、実用新案権、意匠権又は商標権等」を「知的財産権」と定義し、それを「譲渡し、若しくは実施権を設定した場合」には、その取得状況を事業化状況・知的財産権報告書で報告するものとしています(同規程8頁)。そして27条1項は、次のように定めています。

引用(同交付規程27条1項。同規程8〜9頁)「中小機構は、第25条第1項の規定に基づき提出された事業化状況・知的財産権報告書により、補助事業者が補助事業の事業化、知的財産権の譲渡又は実施権の設定及びその他補助事業の実施結果の他への供与による収益が生じたことを確認したときは、補助事業者に対し、補助金額を上限とする金額の納付を命ずることができるものとし、補助事業者は当該納付命令にしたがって納付しなければならない。ただし、当該事業化状況・知的財産権報告書の決算が赤字の場合は、納付を免除するものとする。」

この納付は、補助金適正化法7条2項により交付決定に附された条件(補助事業の完了により相当の収益が生ずると認められる場合に、交付の目的に反しない場合に限り、補助金の全部又は一部に相当する金額を納付すべき旨の条件)に基づくものであり、交付規程27条1項はその条件の中身です。補助事業で生まれた知的財産権について、実施権の設定、すなわち他社に使わせることは、起きることを前提に報告させ、収益が出れば納付させる事柄として置かれています。私見としては、補助事業で開発した成果の使用許諾が当然に24条3項の承認の対象になるという扱いは、この組立てと整合しないと考える余地があります。

ただし、二つ留保があります。一つは、25条1項2号の「知的財産権」の定義に、ソフトウェアの中核であるプログラムの著作権が挙げられていないことです。その限りでは、同号が直接当てはまるのは特許権等であり、ソフトウェアの使用許諾は、27条1項の「その他補助事業の実施結果の他への供与による収益」の側で受けていると読む余地があります。もう一つは、前記のとおり、台帳の区分3に載る無体財産権については、24条3項の承認申請と同6項の納付が別に問題になり得ることです。報告・帰属・収益納付の仕組みそのものは、Q&A「補助金で生まれた特許や著作権を、売ったり使わせたりしたとき」で、収益納付の四つの限界は、Q&A「補助事業がうまくいって利益が出た――補助金を返さなければならないのか(収益納付)」で述べています。

IT導入補助金の公募要領は「供与することは認められず」と書いています

これに対し、デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領(通常枠)(2026年10月9日新規作成)は、34頁(PDF35頁)で次のように書いています。

引用(同公募要領34頁(ソ))「補助対象経費により取得したソフトウェア本体は、有償・無償に関わらず他者に供与することは認められず、事業期間中や補助金交付後に関わらず当該行為が発覚した時点で、交付決定の取消し(補助金交付後においては交付決定の取消しに加え交付規程に基づく補助金の返還。)とする。また、補助対象経費により取得したソフトウェアの使用権(アカウント、ライセンス等)においても、当該補助事業者以外の他者に有償供与することは認められない。ただし、本事業の趣旨・目的に沿う場合において、当該ソフトウェアの使用権を他者へ無償供与する場合のみ、補助対象とする。」

三つのことを指摘しておきます。第一に、この記述は「認められず」「発覚した時点で、交付決定の取消し」と書き、承認の道を示していません。22条は、承認を受けないでしてはならない、という承認制の規定であって、絶対的な禁止ではありません。同補助金の交付規程31条1項ただし書も「あらかじめ事務局の承認を受けた場合は、この限りでない。」としています。公募要領の記述は、交付規程自身が置いている承認の道に触れていない書き方になっています。

第二に、この記述は、「ソフトウェア本体」の供与と「使用権」の供与とを分け、後者について「本事業の趣旨・目的に沿う場合」の無償供与を認めています。本体を渡すことと使用権を許諾することとが別の行為であること、そして使用権の許諾が趣旨・目的に沿うかどうかで扱いが変わることを、事務局自身が前提にしているということです。これは、前記3・4で述べた整理と同じ方向です。

第三に、本補助金で導入するITツールの多くはIT導入支援事業者が提供するソフトウェアの利用権であり、補助事業者がその「本体」を他者に供与できる立場にあることは、ふつうはありません。交付規程31条5項は、所有権が補助事業者に存しない処分制限財産に31条を適用しないとしています。公募要領の(ソ)が実際に意味をもつのは、買い取ったソフトウェアを補助事業者が第三者に渡す場面に限られると考える余地があります。公式の記述をどう読むかという一般論は、Q&A「導入から一年未満でやめたら、『いかなる事由であれ』取消し・全額返還・加算金なのでしょうか」で述べています。

次のような場合は、相手方に回答される前にご相談ください

  • 補助金で作ったシステムを他社に使わせることについて、「財産処分の承認が要る」と言われている
  • ソフトウェアの使用許諾を「譲渡」として、交付決定の取消しや返還を告げられている
  • サーバーの解約や稼働の縮小を「廃棄」「処分」として扱われている
いまの状況を相談する →お電話:070-3618-5126(受付:平日10:00〜18:00、出られないときは折り返します)

関連ページ: 補助金で入れたソフトを解約したら「残存簿価の返還」と案内された(Q&A)/50万円未満の設備や、工事一式で計上したものは、処分制限の対象になるのか(Q&A)

5 サーバーの解約や稼働の縮小は、交付規程が挙げる「処分」ではありません

システムの場合、設備と違って、「止める」ことの形がいくつもあります。クラウドのサーバーを解約する、利用者を減らして稼働を縮小する、一部の機能を止める、といった形です。これらは処分制限財産の「処分」に当たるのでしょうか。

22条が承認の対象としているのは、交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付け、担保提供の五つで、「等」は付いていません。稼働を止めること、縮小することは、このどれにも当たりません。他方、交付規程24条1項は、処分を「補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等」と定義しており、廃棄を加えたうえで「等」で閉じています。「等」を根拠に、稼働の停止や縮小も処分だと言われることがあります。しかし、処分制限は22条が法律で定めた制限であり、交付規程はその範囲を超えて承認の対象を広げる根拠にはなりません(前記2。交付規程は行政規則です)。私見としては、「廃棄等」の「等」は、22条の列挙と廃棄に準ずる行為を指すにとどまり、財産を手元に置いたまま使用を止めることまで含むとは読めないと考える余地があります。設備を取り外して保管している場合について、保管は処分ではなく、むしろ善良な管理者の注意をもって管理している状態だということは、Q&A「補助金で導入した設備を取り外して保管している――管理義務に反すると言われたら」で述べています。システムの休止も、同じ整理になると考える余地があります。

ただし、システムには設備と違う点が一つあります。クラウドのサーバーを解約すると、プログラムやデータがその場で消えることがあり、それは「廃棄」に近づきます。設備なら倉庫に置いておけば現物が残りますが、システムは、残す手当てをしなければ残りません。そこで、休止を「廃棄」と見られないようにするためには、再稼働できる状態を保ち、そのことを記録しておくことが要ります。私見としては、次のものがそろっていれば、財産は手元に管理されたままであって、処分はされていないと説明できると考えております。

  • ソースコード、設定ファイル、データベースのバックアップ。取得した日と保管場所が分かる形で残してください。
  • 環境構築の手順書。どのサーバーに何を入れればまた動くのかが書かれたものです。
  • ドメイン、SSL証明書、外部サービスのアカウントなど、再稼働に要る権限の一覧と、その管理者。
  • 取得財産等管理台帳(様式第7)の「保管場所及び設置場所(所在地)」欄を、現にバックアップを置いている場所に合わせた記載。
  • 休止の理由と、交付の目的に沿って再び運用する計画。書面又はメールで交付主体に示し、送った日が分かる形で控えを残してください。

交付規程23条1項は、取得財産等について、補助事業の完了後においても、善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を図らなければならないと定めています。バックアップと手順書を保全することは、システムという財産についての、この管理義務の履行そのものだと考えております。逆に、何も残さずにサーバーを解約してしまうと、「廃棄」として扱われる余地が生じます。廃棄が22条の承認の対象に含まれるかという論点は、コラム「廃棄処分」と「補助金で取得した設備を廃棄することは『処分』か」で述べています。

もう一つ、財産処分とは別の経路があります。休止や縮小が、事業計画そのものをやめること、縮めることに当たる場合です。交付規程26条1項は、補助事業完了後の事業計画期間において「事業計画の全部若しくは一部を廃止しようとするとき」は、様式第14-1又は第14-2による届出書を速やかに提出しなければならないとし、同条2項は、事業計画の全部の廃止に係る届出を行った場合は当該届出日に事業計画期間が終了したものとする、としています(同規程8頁)。財産処分の承認は要らなくても、事業計画の廃止・縮小として届出の問題になり得る、ということです。全部の廃止の届出は事業計画期間を終わらせますので、出す前に、休止が一時的なものか、計画の一部の変更で足りるのかを検討しておく必要があります。「財産処分ではないから何も要らない」とは、ここでは言えません。

なお、IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)では、ITツールの解約・利用停止が「辞退」の手続に結び付けられており、財産処分とは別の経路で取消し・返還の問題になります。その整理は、前記Q&A「導入から一年未満でやめたら」と「補助金で入れたソフトを解約したら」で述べています。

6 どの補助金の、どの版の規程かを先に確かめてください

このページで引いた交付規程は、中小企業等事業再構築促進補助金(新市場進出)交付規程と、中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金交付規程(通常枠。令和8年10月9日)です。前者は「機械、器具及びその他の財産」と定めて台帳の区分に無体財産権を置き、後者は財産の種類を限定せずに単価で切ったうえで、所有権が補助事業者にない場合を除いています。同じ「処分制限財産」という言葉でも、中身が違います。ものづくり補助金、省力化投資補助金、新事業進出補助金、自治体の補助金は、それぞれ別の規程・要綱で、ここでは確かめていません。

ソフトウェアやシステムについて何か言われたときは、次の順に確かめていただくのがよいと考えております。

1 交付決定通知書で、どの補助金の、どの交付規程・要綱が適用されるのかと、交付決定に附された条件の文言を確かめる。改正がある場合は、交付決定の時点の版を見ます。

2 その交付規程の処分制限財産の条項を読み、財産の種類をどう書いているか(「機械、器具及びその他の財産」か、「取得財産」か)、所有権が補助事業者にない場合の除外があるかを確かめる。台帳の様式の区分も併せて見ます。

3 問題のソフトウェアが、他社から買った権利なのか、自社が補助事業の中で開発した成果なのか、ベンダーから使用許諾を受けているだけなのかを、契約書で確かめる。買った権利であれば処分制限財産の問題、開発した成果であれば報告と収益納付の問題、使用許諾だけであれば所有権のない財産の問題として、それぞれ入口が違います。

4 しようとしていること(他社に使わせる、売る、止める)が、事業計画のどこに位置付けられるのかを確かめる。計画どおりの使用であれば、承認の問題は生じません。

5 処分制限期間が経過していないかを確かめる。期間が経過していれば、施行令14条1項2号により処分の制限は適用されません。期間は、交付規程が定めるところによります。減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第三は、ソフトウエアの耐用年数を「複写して販売するための原本」3年、「その他のもの」5年としており、本稿で引いた二つの交付規程も、この省令の年数を基礎に置いています(新市場進出交付規程24条2項・デジタル化・AI導入補助金交付規程31条2項)。しかし、施行令14条1項2号が定めているのは「補助金等の交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して……定める期間」であって、省令の年数そのものではありません。この点は、Q&A「処分制限期間は『減価償却資産の耐用年数等に関する省令のとおり』と書かれていますが」で、期間の数え方は、コラム「処分制限期間は何年か」で述べています。

最後に一つ申し添えます。システムの開発を外部の制作業者に委託した場合、契約書に「成果物の著作権は受託者に帰属する」と書かれていることが珍しくありません。処分制限の前に、そもそもどの権利が自社にあるのかを契約書で確かめておいてください。権利が自社にないものを、自社が「処分」することはできません。委託契約と著作権の行き先、業者との確認書の取り交わし方は、Q&A「補助金で生まれた特許や著作権を、売ったり使わせたりしたとき」で述べています。

補助金で開発・導入したシステムやソフトウェアについて、他社への使用許諾や売却、サーバーの解約や稼働の縮小をお考えの事業者の方、既に「財産処分の承認が要る」「使用許諾は譲渡だ」と言われている方、顧問先・支援先からこのようなご相談を受けている中小企業診断士・行政書士・税理士・ITベンダーの方は、相手方に回答される前にご相談ください。交付決定通知書、交付規程、事業計画書、取得財産等管理台帳、開発委託契約書・使用許諾契約書があれば、具体的な検討ができます。

根拠(条文・公式資料・裁判例)

※ 交付規程は補助金ごと・公募回ごとに版が異なります。条数と文言は、お手元の交付決定通知書に記載された交付規程でご確認ください。

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※ 本ページは一般的な法的整理を示すものであり、個別の事案についての結論を保証するものではありません。

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